雨の池の平で開催の中部ダートラ地区戦。激戦続く人気のRWDクラスは、今季初参戦の三枝光博86が一本勝負を制す!

レポート ダートトライアル

2021年9月16日

中部地区のJAFダートトライアル地方選手権は、愛知県の池の平ワンダーランドでシリーズ5戦目となる大会が開催され、チャンピオンへの権利を巡る戦いが白熱した。

2021年JAF中部ダートトライアル選手権第7戦
2021年JMRC中部ダートトライアル選手権第7戦
2021年JMRC全国オールスター選抜第7戦
2021年JMRC中部ダートトライアル東海シリーズ第3戦
FASCダートトライアル

開催日:2021年8月22日
会 場:池の平ワンダーランド(愛知県豊田市)
主催:FASC

 今年のJAF中部ダートトライアル選手権は全9戦のシリーズが予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大を受け、輪島市門前モータースポーツ公園で予定されていた第4戦と第8戦が中止を余儀なくされることになった。また5月にオートパーク今庄で開催される予定だった第3戦は10月31日に延期され、事実上の最終戦として行われることが決まった。

 今回の第7戦は当初の予定通りの日時での開催となったが、上記の状況を受け、事実上は今季のシリーズ5戦目としての開催になる。この池の平の一戦が終われば、残るはいずれも今庄での開催となる2戦のみ。結果、今季は門前、池の平で各2戦、今庄で3戦の計7戦のシリーズとなる予定だ。

 お盆明けの開催となったこの一戦は、朝から厚い雲が垂れ込めるというあいにくの天候の中、競技はスタートした。途中から雨が降り出したこともあって路面状況は悪化の一途を辿ったため、第2ヒートではタイムアップが見込めないと判断した選手の中には出走を取り止めるドライバーも現れるなど、結果的には全クラス、第1ヒートのベストタイムが優勝タイムとなる1本目勝負の展開となった。

池の平ワンダーランドはテクニカルなダートトライアルコース。車速の乗る林道区間と、様々なコースアレンジが可能な内周区間に大別される。島の間を縫うように走る内周区間はブラインドコーナーが連続する。このコースを舞台とする池の平ダートトライアルシリーズも毎年、開催されている。
当日のコース図。テクニカルな区間での走行ではワダチの使い方もひとつのポイントとなった。

 中部地区では長く人気を誇っているRWDクラスは、今回、参加が16台と最多エントリーを数え、一番の激戦区となった。86/BRZ勢が圧倒的に多数を占めるが、“本家”のAE86のほか、SW20・MR2、ロードスターそしてアルテッツァと顔触れもバラエティに富む。

 クラスファーストゼッケンながら優勝候補の一人だった三枝光博選手がまず1分32秒30秒を叩き出して始まったこのクラスだが、予想通り、誰もこのタイムを更新できない状態がしばらく続く。1996年に全日本チャンピオンを獲得し、若き天才として名をはせた三枝選手だが、ここ数年は自ら営むモータースポーツショップのお客さんの車両テストを兼ねて参戦するケースが多く、今回もそうした一台である86の動作確認が目的での参戦となった。

 結局、今季、全日本でも優勝をさらっている寺田伸選手が1分33秒台をマークして迫ったが、三枝選手を逆転するドライバーは最後まで現れず。今季このクラスには初参戦となった三枝選手がいきなりの優勝を飾り、健在ぶりを見せつけた。なお寺田選手に続く3位にはアルテッツァを駆った杉田聡選手が入賞した。

激戦区のRWDクラスは、第1ヒートから圧巻の走りを見せた三枝光博選手が優勝。ダートトライアルでRWD車をドライブするのは珍しいが、「仕事ではドリフト車も手掛けているのでRWD車の扱いには慣れています」とのこと。当日の走りのインカー動画を後日、You Tubeに上げたところ、反響が大きかったという。
RWDクラス表彰の各選手。

 Nクラスはシードゼッケン勢の一角、三輪智広選手が第1ヒートでただ一人、1分30秒の壁を破る1分29秒95をマークして、今季初優勝を飾った。「前半の林道区間、奥のフルターンの手前でミスして1秒近くはロスした」と振り返った三輪選手だが、それでも優勝できたのは、「後半区間の内周で、路面が悪い時にタイムを稼ぐ走りができたからでしょうね。ここは若い時からずっと走っているので(笑)。今日は経験の差が出る路面だったと思います」。これでランキングも一気に2番手に浮上。「今庄2連戦で逆転できれば…」とタイトル獲得に意欲を見せた。

Nクラスは三輪智広選手が今シーズン初優勝を飾った。
Nクラス表彰の各選手。

 今回も参加15台と多くのエントリーを集めたS1クラスは、混戦が続いているクラスのひとつ。前回の今庄を制した横内由充選手と、ここ2戦連続表彰台の村瀬貴之選手がランキング首位に並ぶが、前回の池の平ラウンドを制した松原功治選手と門前2連勝の石崎雄一選手がともに1ポイント差の2位に控える。ただし北陸の石崎選手は今回、欠場。石崎選手に続く2勝目獲得のドライバーが誰になるかが、ひとつの焦点だった。

 シードゼッケン勢のトライの前まで首位をキープしていたのは、1分31秒22をマークしていた加地真志選手だったが、まずはシード勢の一角、栢(かや)康弘選手が1分30秒13でトップタイムを塗り替える。最終ゼッケンの村瀬選手は栢選手と同じく30秒台に乗せるも逆転は果たせず。松原選手も33秒台にとどまったため、栢選手が今季初優勝を達成した。

S1クラスでも栢康弘選手が今季初優勝を遂げ、ポイントランキングも3位に浮上した。「今日は2週間前に出た池の平シリーズで走ったイメージをキープできたことが大きかったですね。実は前半で大きなミスをしているんですが、村瀬選手も前半区間で遅れたようだったので、後半でタイムを稼げたのが効いて逆転できたんだと思います」。
S1クラス表彰の各選手。
PN1・S1500クラスは岸貴洋選手が早くもシーズン3勝目を獲得した。「イメージした通りのリズムで走れました。夏休みで門前、今庄と練習したのが良かったのか、何とか走りのきっかけを掴みつつあるのかなという気がしているので、この調子をキープしたいですね」と岸選手。
PN1・S1500クラス表彰の各選手
三枝選手の営むM2 factoryに集う若手3人が火花を散らしたPN2クラスは、片田龍靖選手が池の平ラウンド2連覇を達成。
PN2クラス表彰の各選手。
S2クラスは前回の池の平ラウンドも制している服部雅士選手が1分27秒台という断トツのタイムでオーバーオールウィンをさらった。「ワダチにタイヤを入れて、きれいにトレースしようと思った走りが、今日はたまたま、うまく行きました(笑)。前半で稼いでおかないと後できつくなるので、林道区間でよく踏めたのも勝因だと思います」。
S2クラス表彰の各選手。

 一方、JMRC中部ダートトライアル東海シリーズは、シリーズ2戦目が2クラスに分かれて行われた。このシリーズは基本的には池の平と今庄で開催される中部地区戦に併催される初中級者を対象としたシリーズで、今年は各会場2戦ずつ計4戦のシリーズが予定されている。なお東海シリーズと同様にJMRC中部のミドルシリーズに位置付けられている北陸シリーズも、門前と今庄を舞台に開催されており、こちらは地区戦と併催のほか、単独開催も行われている。

 FWDクラスはAE111レビン2台とコルト1台の計3台がエントリーしたが、1秒の間に3台がひしめく、まさに三つ巴の激戦が展開された。優勝を飾ったのは、「路面状況が悪くなってくれた方が、クルマのパワー差がなくなるので勝負できるんです」と振り返ったコルトを駆った太田洋一郎選手。伊藤穣選手のレビンを0.5秒差で振り切って開幕2連勝。最高の形でシリーズを折り返す形になった。4WDクラスは風折佳伸選手が、2番手に4秒差をつけて快勝し、2位に終わった開幕戦のリベンジを果たした。

東海シリーズ2WDクラスでは接戦を制した太田洋一郎選手が開幕2連勝を飾った。
2WDクラス優勝の太田選手。
4WDクラスでは風折佳伸選手が、ライバルを寄せ付けない走りで快勝した。
4WDクラス優勝の風折選手。
RWDクラスを制した三枝選手の父親である三枝光三郎選手は78歳という年齢ながら、今年からダートトライアルを始めた。これまでモータースポーツの経験は一切ない。「息子が地元でやっているモータースポーツイベントを手伝っている内に、自分も走りたくなったんですよ。息子にも勧められたので、“じゃあ、やってみるか”と、まずはダートトライアルに出てみたんです」と光三郎選手。実戦3戦目となった今回も完走を果たして、徐々にスピードも上がってきた。今後の活躍が楽しみだ。

レポート&フォト/JAFスポーツ編集部

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