池の平シリーズ最終戦は、村瀬辰樹アルトが圧巻のオーバーオールウィンを達成!

レポート ダートトライアル

2021年10月19日

4月に開幕した2021年の池の平ダートトライアルシリーズは、9月26日、最終戦を迎えた。コロナ禍の中、当初のスケジュール通り、全5戦が無事開催され、3クラスでシリーズチャンピオンが決まった。

2021年池の平ダートトライアルシリーズ第5戦
開催日: 2021年9月26日
開催場所: 池の平ワンダーランド(愛知県豊田市)
主催: FASC

 池の平ダートトライアルシリーズは、愛知・岐阜・長野の県境に位置するレジャー施設、池の平ワンダーランドの中にあるダートトライアルコースで開催されるシリーズだ。所在地は愛知県豊田市となっているが、岐阜の恵那、中津川そして長野の飯田からも1時間程度でアクセスできる立地にある。標高1,100mを超える高地にあり、総延長1,853mのテクニカルなダートトライアルコースだ。

 スタート後は一本道となる林間のコースを抜けて、一番奥のシェルコーナーで折り返す。そしてパドックから見下ろせるゴール前の広場に戻り、タイトなコーナーをクリアしてゴールというのが池の平の定番だ。広場は、大小の島がコースを仕切る形になっているため、どのようなコースアレンジでもブラインドコーナーを攻める形になる。

 今回の天候は残念ながら朝から雨。第1ヒートから所によっては水溜まりができるほどのフルウェットコンディションで競技は始まった。こうした状況を受け、最初のクラスであるFRクラスは、第2ヒートではタイムダウンを強いられて1本目勝負に。しかし、続くFFクラスに入るとタイムは拮抗し始めて、最後の4WDクラスでは逆にタイムアップ傾向となり、バトルが最後まで白熱した。

池の平ワンダーランドのスタート&ゴールが置かれる広場の内周セクション。テクニカルなコーナーが連続する。
外周と呼ばれる林間セクション。ストレートは一部しかなく、その他は微妙なRがついており、ラリー気分も味わえる。
当日のコースレイアウト。内周で複数のコーナーをクリアしてゴールという定番の設定となった。

 西憲之選手と齊藤道夫選手によるチャンピオン争いが持ち込まれたFRクラス。しかし注目の第1ヒートでは、西選手は林間セクションから広場に進入する際にイン側の土手に乗り上げてタイムロス。齊藤選手もウェットセッティングを外してしまい、まさかの5番手でゴールする。

 この二人を尻目にベストタイムを刻んだのが、86を駆る武田大生選手で、地区戦ドライバーの上角好孝選手に2秒差をつける快心の走りを見せる。前述した通り、このクラスは第2ヒートで軒並みタイムダウンとなったため、武田選手がそのまま逃げ切り、今季初優勝を達成した。実は武田選手の86は、メンテナンスを担当し、ドライビングの師匠でもある三枝光博選手が、一か月前の池の平の地区戦でマシンのセッティングを確認すべくダブルエントリーして優勝をさらったというマシン。ドライバーは変わったが、86は池の平2連勝(!!)を達成した形だ。

 地区戦の際には三枝選手の6秒落ちの9位に終わった武田選手だが、「今回は地区戦の時の三枝さんのインカー動画を参考にしながら、当日受けたアドバイスを活かした走りができました。ただ正直、広場に戻ってからの内周はあまり手応えはなくて(笑)、実際タイムも遅かったみたいですが、外周の林間セクションは頑張って踏んだので、それが優勝に繋がったと思います」と振り返った。なおチャンピオン争いは今回、齊藤選手を上回る4位でゴールした西選手が制した。

FRクラスは武田大生選手が、今季初の表彰台を優勝で飾った。
FRクラス優勝の武田選手。ジムカーナからモータースポーツを始めたが、現在はダートトライアルに専念しているそうだ。
FRクラス2位には上角好孝選手が入賞した。
有馬輝芳選手がFRクラス3位を獲得した。
FRクラス表彰の各選手。

 続くFFクラスは、今季2度目の参戦となった高橋悟志選手が、松原功治選手を0.25秒抑えて暫定トップに立つ。3番手には水野匠選手が続いてZC33Sスイフトが上位3台を独占した。第2ヒートでは高橋選手が1本目から0.13秒落ちとほぼ同等のタイムを叩き出したのに対して松原選手は大きくタイムダウン。代わって第1ヒートはコースオフでノータイムに終わった森博喜選手が高橋選手に迫ったが、0.5秒届かず。高橋、松原、森のオーダーで最終戦は終了した。

 全日本ラリーのトップドライバーとして知られる高橋選手だが、今季はラリーはお休み。池の平は20代の頃からフリー走行で走り慣れたコースだが、池の平のシリーズは一昨年、初めて出場した。「ワダチができたり、路面の荒れ方がラリーで走るダートに似ているので、ラリードライバーにはオススメのコースです。長いコースになると勝てるので、その辺はラリー屋だからかもしれませんね(笑)。今日は、やることはやったかなという走りでしたが、いつも、優勝するより先輩の森さんに勝つのが目標なので(笑)、それができたので満足です」と、同じ全日本ラリーチャンピオン経験者である森選手を抑えての勝利に笑顔を見せていた。

FFクラスは、ラリーストの高橋悟志選手が今季初優勝を飾った。
FFクラス優勝の高橋選手。「息子がダートラを見るのが好きなので一緒に観戦に行っている内に自分もやってみようか、という気になりました(笑)」。全日本ラリーも来季は復帰したいとのことだ。
FFクラスの2位は今季2度目の参戦となった松原功治選手が獲得。
FFクラスのベテラン森博喜選手は第2ヒートで3位まで順位を上げた。
FFクラス表彰の各選手。

 4WDクラスは唯一、軽自動車で参加の村瀬辰樹選手が第1ヒートから2番手を5秒以上も突き離すタイムでトップに立つ。このクラスは第2ヒートでタイムアップ傾向となり、村瀬選手も第1ヒートのタイムをさらに大きく縮める1分37秒66というタイムをマーク。文句なしのオーバーオールウィンも決めて、シリーズチャンピオンの座も射止めた。

「2本目の前の慣熟歩行で歩いた際に思っていたほど路面が荒れていなかったので、悪い所さえ避ければタイムアップはできると思っていました。アルトでも勝負できるコースレイアウトだったし、何より雨でパワー差が縮まるので天候も味方してくれましたね」と村瀬選手。父親の村瀬秋男選手は全日本ダートトライアル選手権でアルトで長く活躍した中部を代表する改造車ドライバーとあって、アルト遣いの遺伝子を受け継いだ。

「ランサーもたまに乗ると面白いなと思いますが、ランサーのようなハイパワー4WDに勝てると、やっぱりアルトが本当に面白いクルマだなと思うんですよ(笑)。もうクルマは煮詰め切った感じはあるんですが、トータルで考えるとやっぱりこのクルマになっちゃうので、しばらくは乗り続けたいですね」と村瀬選手。来季もディフェンディングチャンピオンとして、このシリーズに臨む予定だ。

4WDクラスで圧巻の走りを見せて優勝した村瀬辰樹選手。
4WDクラス優勝の村瀬選手。今季前半は2リッター4WDターボ勢の後塵を拝したが、後半の2戦を連勝してチャンピオンも手繰り寄せた。
4WDクラス2位には親子でダブルエントリーしたベテランの伊藤祥充選手が入賞した。
4WDクラスで今季2勝目を狙った佐野龍弥選手だが、3番手に甘んじた。
4WDクラス表彰の各選手。
FRクラスシリーズ上位入賞の(左から)2位齊藤道夫、チャンピオン西憲之、3位榊原浩之の各選手。
FFクラスシリーズ上位入賞の(左から)2位森博喜、チャンピオン栢康弘の各選手。(3位宮里広大選手は当日欠場)。
FRクラスシリーズ上位入賞の(左から)2位佐野龍弥、チャンピオン村瀬辰樹、3位清水憲治の各選手。
フォト&レポート/JAFスポーツ編集部
ページ
トップへ