中部近畿地区戦ラリー真夏の一戦は、宇治茶のふるさとで開催!
2022年8月8日
JAF中部近畿ラリー選手権の近畿ラウンド今季2戦目となるラリーが、京都宇治田原町を拠点に開催された。
2022年JAF中部近畿ラリー選手権第3戦
2022年JMRC近畿SSラリーシリーズ第2戦
やましろのくにラリー in 宇治田原2022
開催日: 2022年7月23~24日
開催場所: 京都府宇治田原町周辺
主催: T・O・F
JAF中部近畿ラリー選手権は、5月に開催された全日本の一戦、ラリー丹後に併催される形で今年の開幕戦が行われた。6月には愛知で第2戦豊田しもやまラリーが行われ、約一か月のインターバルを経て、今回のやましろのくにラリーin宇治田原を迎えた。この一戦でシリーズを折り返した後は、近畿で1戦、中部で2戦が行われる予定となっている。
やましろのくにラリーは一昨年秋に初開催され、昨年から地区戦へスケールアップ。今年で3回目の開催となる。日本茶の名ブランドとして知られる、宇治茶の主要な生産地である宇治田原町を舞台に開催されるラリーは、実際に宇治茶の茶畑の中を駆け抜けるステージも用意されるなど、地域色に溢れたラリーとして参加者、関係者から好評を博している。
SSはDawara long5.89kmとYantan9.23kmの2ステージが用意された。2本ともこれまでも使われてきたステージだが、Dawara longは今年、距離が伸びている。Yantanは初開催の2020年時は今回とは逆走で設定され、昨年より今年と同じ方向で使われるようになったステージだ。
Yantanは前半は深い森の中の狭い低速の道をひたすら駆け上がるが、後半は視界も開け、道幅も広がるという対照的な性格の道となる。9kmを超える長さもあって、なかなかのタフなステージだが、やましろのくにラリーの名物ステージとして、すっかりと定着してきた感がある。
ラリーは7月23日にまずレッキを行った後、24日9時半に宇治田原町役場をスタート。サービスを挟んで2本の林道をDawara long、Yantanの順に1回ずつ走る計4SS、30.24kmを勝負所として行われた。リエゾンを含めてもトータル距離は66.96kmとコンパクトな設定となっている。
DE-1クラスは、SS1 Dawara longでベストタイムをマークした林正嗣/白崎清之組のインプレッサがSS2 Yantanでリタイヤとなる波乱の展開。このSSを総合ベストで上がった廣嶋真/廣嶋浩組のGRヤリスがトップに浮上する。
廣嶋組はセクション2に入ってもSS3で連続ベストをマーク。最終のSS4では2番手につけていた高田敬蔵/矢野圭佑組のWRXが意地を見せてベストを獲るが、SS3までのビハインドを僅かに埋め合わすにとどまり、廣嶋組が17.5秒差で逃げ切った。
DE-1クラスに移行して2戦目でクラス初優勝を飾った廣嶋組は昨年までセリカでDE-2クラスを戦っていた親子クルー。しばしばDE-1クラスを抑えて総合でもトップを奪う速さを見せ、常勝クルーとして知られていたが、今年からGRヤリスにスイッチした。
「まだターボラグに合わせた走りもできていないし、コーナーでも速度をキャリーできなかったりと、課題は山積です」と、ドライバー担当の廣嶋真選手は反省しきりだったが、「SS1があまりに情けないタイムだったので、再走のSS3で頑張ったのが結果的には効きましたね。SS4は他の選手のタイムも見ながらややペースをコントロールして走りました」と振り返った。
DE-2クラスには、今年の全日本唐津を制した鮫島大湖/横山慎太郎組のスイフトが中部から参戦してきた。しかしSS1は3番手。岩田昇知/山下秀組の86が総合ベストで上がり、松村智/谷内壽隆組のインテグラが0.8秒差の2番手に続いた。岩田選手は昨年のTRD RALLY CUPのチャンピオン。「6月の豊田しもやまラリーで惨敗したので、今日はSS1からプッシュしました」と、そのスピードを地区戦でも見せつけた。
しかし鮫島組はSS2から反撃を開始。この日最初のベストを奪って岩田組、松村組を捉えて一気に首位に浮上すると、セクション2でも連続ベストをマーク。最終のSS4では総合ベストも奪って貫禄の走りを見せ、松村組を11.7秒差で従えてトップでゴールした。
次の全日本ターマック戦であるMCSCハイランドマスターズに向けてセッティングテストの目的で参戦したという鮫島選手は、「唐津の後にセッティングを変えて5月の全日本丹後に出たんですが、全然動きが変わってしまってダメだったので、もう一度やり直してみたんです。結果、丹後では曲がらなかったクルマが、ちゃんと曲がるようになりました。セクション2ではタイヤもセッティングもドライに振りましたが、路面もしっかり乾いていたのでバッチリでしたね」と振り返った。
SS4では総合2番手に入る走りを見せて2位を確保した松村選手は、「ソフト目のタイヤで行ったので、日陰の冷えた路面でもグリップしてくれたのが大きかったと思います。ただ僕は荒れたコンディションの方が好きなので、去年のように雨が降ってくれた方が良かったですね」と苦笑。3位に喰い込んだ岩田選手は、「コンスタントにプッシュできたつもりでしたが、SS2、4ではFF勢についていけなかった。クルマの差を差し引いても、“上には上がいるなぁ”、と痛感しました(笑)」と振り返った。
参加12台と今回一番の激戦区となったDE-5クラスは、中部の貝原聖也/西崎佳代子組のヴィッツがSS1でベストを奪うが、SS2は北陸福井から参戦の坂口進/坂口元弥組のストーリアがベストで上がり、セクション1から上位陣が僅差でひしめく接戦となる。
しかしSS3で貝原組が大きく遅れ、坂口組はコースアウトで戦線離脱。このSSを制した山口航平/谷美希組が、貝原組のチームメイトでもある島根剛/濱田翔多組を僅か2秒のリードながらもトップを堅持して、最終のSS4に臨んだ。
山口選手にとっては、SS4 Yantanは、インテグラで参戦した昨年、コースアウトでリタイヤを強いられた鬼門のSS。しかし、今年は、「セクション1で一度走って、危ない所を見極められたので、路面が乾いたこともあってペースを上げられました」と、SS2から20秒もタイムアップする会心の走りを披露。総合でも5番手のタイムでゴールした。
対する島根組はステージ後半で側溝にタイヤを落としてしまい、タイムロス。クラス2番手はキープしたが、山口組を逆転することは叶わず。山口組が、前戦に続いて連勝を決め、シリーズポイントでもトップに立った。
DE-6クラスは参加5台と少数精鋭の戦いとなったが、今回も注目のマシンが速さを見せた。前戦豊田しもやまラリーで衝撃の優勝を飾ったその一台、揚村悠/笠井開生組のエクリプスクロスPHEVは、まずSS1でクラスベストをいきなり叩き出してラリーをリードする。
道が狭く、急な上りが続くSS2では苦戦を強いられた揚村組は3番手でゴール。このSSでベストを奪った南久松奈々/坂井智幸組のヤリスCVTに首位を譲るが、SS3では、6秒差で南久松組を下してこの日2度目のベストを獲得。南久松組に1.3秒差まで詰め寄って最終SSに勝負を持ち込んだ。
だが揚村組は、途中のジャンクションを過ぎて道幅も広くなり、エクリプスクロスにとってもタイムが稼げる後半区間でコースアウトを喫して痛恨のリタイヤ。しかし一方の南久松組も前半区間で濡れた路面に足を取られて2輪を脱輪。最終的には脱出できたものの、絶望的なタイムロスを喫してしまう。
結局、優勝は、この2台のアクシデントに遭遇することなく、クラス先頭ゼッケンで走り切った洪銘蔚/浦雅史組が獲得。開幕戦に続くシリーズ2勝目を飾った。思わぬ形で勝利が飛び込んできた洪選手だが、「最終SSは、SS2でオーバーヒート気味になってしまったので、厳しい道でした。後半が下りだったのが助かりましたね」と、こちらも薄氷の勝利だった様子。このクラスはシリーズ後半もハードなバトルが展開されそうだ。
フォト/山口貴利、チーム・オサムファクトリー、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部