イープル・ラリー・ベルギーは車両トラブルに見舞われたものの、勝田貴元選手は5位フィニッシュ
2022年8月24日
TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加中の日本人ドライバー、勝田貴元選手が参戦している2022年FIA世界ラリー選手権(WRC)。第9戦「イープル・ラリー・ベルギー」が8月18~21日、ベルギーの西フランダース地方のイープルで開催。GR YARIS Rally1を武器に、道幅が狭く超高速区間が多いこの難関ターマック戦で5位入賞を果たした。
2022年FIA世界ラリー選手権 第9戦「イープル・ラリー・ベルギー」
開催日:2022年8月18~21日
開催地:ベルギー・イープル周辺
「これまでターマックに対しては合わせきれていなくて不安定な部分があったので、ラリー・スペイン、ラリー・ジャパンに向けてパフォーマンスを上げていく……ということを目標にしていました」と語る勝田貴元選手。
18日に行われたシェイクダウンにおいても「フィーリングは悪くなかったけれど、まだ自信を持って走りきれていない状態でした」と振り返る。
さらにデイ1は雨の影響でレインコンディションになっていたことも影響したのだろうか。「SS1、SS2でオーバーシュートしてタイムをロスしてしまいました」と、勝田貴元選手はSS1で8番手タイム、SS2で9番手タイムに留まり、トップから32秒遅れの総合9番手に後退。
それでも「まだタイム的には大きく離れていなかったし、クルマも悪くなかったので、午後のループをうまく合わせて行けばトップ5に入るペースで走れると思っていました」と前向きな姿勢を見せていたのだが、続くSS3で予想外のハプニングに祟られることとなった。
「フィニッシュまで200mでギヤが抜けてしまいました。なんとかEVモードで走り切ったんですけど、1分30秒ぐらいロスしてしまいました」と語り、勝田貴元選手のGR YARIS Rally1にギヤボックスのトラブルが発生。なんとか同ステージを79番手でフィニッシュしたものの、総合順位では21番手まで後退することになったのである。
さらに「チームと交信しながら対応することができて、3速にスタッグした状態でしたがSS4を走り切れました」と、勝田貴元選手はSS4も我慢の走りを強いられ、77番手で同ステージをフィニッシュ。総合順位でもトップから4分12秒遅れの38番手でファーストループを終えることとなった。
「なんとかサービスに戻ることができました。タイムロスをしたけれど、リタイアしなかったことが不幸中の幸いでした」と勝田貴元選手。そして「タイムが大きく離れたし、賭けに出て失敗しても失うものはないので、タイヤ選択やセッティングなど新しいことにトライすることにしました」と気持ちを切り替えてセカンドループにチャレンジ。
「雨が降るか降らないか微妙なところだったんですけど、レインタイヤ4本で出走しました。結果的に雨が降らなかったので外してしまいましたが、ターマックラリーではタイヤ選択が重要になってくるので、これはこれでひとつ勉強になりました」と語るように、セカンドループでも7番手タイムが精一杯……という状況だったが、それでも総合18番手までジャンプアップを果たし、波乱のデイ1をフィニッシュした。
明けた20日のデイ2も「タイム差があったので、自分の仕事に集中してクルマに対する理解を深めることと、ターマックに対する自信を向上させることにフォーカスして出走しました」と前向きな姿勢を見せていた勝田貴元選手だが、またしてもトラブルで苦戦することとなった。
「クルマのフィーリングは良かった」と語るように、勝田貴元選手はこの日のオープニングステージとなるSS9で4番手タイムをマークするものの、「いくつかのステージでハイブリッドシステムが作動しないトラブルがありました。昼のサービスでハイブリッドユニットを交換したんですけど、それでも同じようなトラブルが発生しました」と、今度はハイブリッドのトラブルに見舞われる。
それでも勝田貴元選手は「初日にタイムをロスしていたので冷静に対応できたし、ハイブリッドが使えたところではタイムも良くなってトップとの差も縮まったので、いいフィーリングをつかめました」と、SS13で4番手タイム、SS14およびSS16で5番手タイムをマークするなど、ドライターマックで好タイムを連発。総合順位でも6番手まで浮上してデイ2を走り終えた。
そして21日のデイ3も好天に恵まれ、ドライコンディションの中でタイム争いが展開された。「パワーステージでポイントを獲れるように合わせていきましたが、この日もハイブリッドのトラブルが発生しました。パワーステージでも何区間か、ブーストが効かないことがあったのでタイムロスしてしまいました」
この日もトラブルで苦戦を強いられるものの、それでも勝田貴元選手は最終のパワーステージSS20で5番手タイムをマークし、1ポイントのボーナスポイントを獲得。さらに総合順位でも上位につけていたライバルが脱落したことで、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team Next Generationの勝田貴元選手は総合5位でフィニッシュした。
「金曜日はどうなるかと思っていたんですけど、総合5位で、ターマックでも良いフィーリングをつかむことができたので、スペインに向けて自分自身の改善ができたと思います」と勝田貴元選手。具体的に「昨年に比べるとブレーキングが改善できたと思います。昨年はスムーズなブレーキングを心がけていたのでタイムを少しずつ失っていたけれど、今年はギリギリまで行けている感じがしました」とのことだ。
さらに「滑る舗装とグリップのある舗装の見極めが難しく、グリップが変化するたびにペースを落としていましたが、2日目から理解が深まって自信を持って判断できるようになったことがペースの上がった要因です」と勝田貴元選手は自己分析する。
開幕戦から全てのラリーで入賞したほか、第2戦以降は8戦連続で6位以上のリザルトを記録するなど抜群の安定感を誇る勝田貴元選手は、ドライバーズ選手権でも5番手をキープ。9月8日~11日にかけてギリシャで開催される第10戦「アクロポリス・ラリー・ギリシャ」でも勝田貴元選手の躍進に注目したい。
一方、気になる上位争いについてはHYUNDAI SHELL MOBIS WRT でi20 Rally1を駆るオイット・タナク選手がイープル・ラリー・ベルギーを制して2連勝を達成。TOYOTA GAZOO Racing WRTの最上位はエルフィン・エバンス選手で、チームメイトのエサペッカ・ラッピ選手が3位で表彰台を獲得している。
なお、イープル・ラリー・ベルギーでは水素エンジンを搭載したGRヤリスH2も競技開始前にテストカーとしてデイごとに1つのSSを出走。デイ1はユハ・カンクネン氏、デイ2はTOYOTA GAZOO Racing WRTのチームオーナーである豊田章男氏、デイ3ではカンクネン氏がドライビングを披露し、カーボンニュートラルへの取り組みをラリーファンへアピールしていた。
フォト/TOYOTA GAZOO Racing レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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