WRC第3戦サファリで勝田貴元選手が自身2度目の総合2位獲得で表彰台に立つ!
2024年4月10日
2024シーズンのFIA世界ラリー選手権(WRC)はアフリカ大陸へ移動し、3月28~31日、ケニアを舞台に第3戦「サファリ・ラリー・ケニア」が開催された。この、シーズンで最も過酷とも言われるグラベルラリーにTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のマニュファクチャラー登録ドライバーとしてフル参戦している日本人ドライバーの勝田貴元選手もGR YARIS Rally1 HYBRIDで、コ・ドライバーのアーロン・ジョンストン選手とともに参戦した。
2024年FIA世界ラリー選手権 第3戦
サファリ・ラリー・ケニア
開催日:2024年3月28~31日
開催地:ケニア・ナイバシャ周辺
2021シーズンに、2002シーズン以来となるWRCに復帰したサファリはTGR-WRTの得意とするラリーで、2021~2023シーズンにかけて3連覇を達成中。同時に勝田貴元選手にとっても相性の良い一戦となっており、2021シーズンに総合2位入賞を果たし、自身初のWRCでの表彰台に登壇したほか、2022シーズンには3位でポディウムフィニッシュを達成するなど、豊富な実績を持つ。
ラリーのホストタウンは例年どおり、ケニアの首都、ナイロビから北側に約100km離れたナイバシャ湖の近くに置かれたが、開催時期がこれまでの乾季の6月から、雨季となる3月に変更。そのため、レギュレーションで吸気用のパイプとなる「シュノーケル」の装着が認められたことが今回のラリーのトピックスで、TGR-WRTはハードなグラベル路面に備えてサスペンションのアップデートを実施したほか、マディな路面を攻略すべく事前テストからウェット路面での走行を実施していた。
「レッキの間は雨が降ったり止んだりで、降った場合はものすごい量の雨で、コンディションがガラリと変わっていましたが、テスト段階から水溜まりを走行するなど、他のラリーとは違うアプローチをしていたのでクルマのフィーリングは良かったです」と勝田貴元選手は語る。
しかし、シェイクダウンでは7番手タイムに留まったほか、「セッティングは問題なかったんですけど、シェイクダウンでステアリング関連のトラブルがあって、それが解消されませんでした」とのことで不安要素が残るなか、勝田貴元選手はスタートを迎えることとなった。
3月28日・デイ1 / 29日・デイ2 / 30日・デイ3
そのため、28日の木曜日に行われたSS1でも勝田貴元選手は思うような走りができなかったものの、「長いラリーなので、あまりストレスは感じませんでした。金曜日までにトラブルを直せればいいと思っていました」と語る状況でも4番手タイムをマークした。
こうしてトラブルを抱えながらも落ち着いた走りを見せていた勝田貴元選手は、翌29日のデイ2ではコンスタントな走りを披露。「昨年は金曜日に動物に当たってアーム類を曲げていたし、土曜日の天候がどうなるのか読めなかったので、クルマを壊さないようにトラブルを避けたいと思っていました」とのことだったがSS5およびSS6で2番手タイムを出した。
勝田貴元選手は「ステアリング関連のトラブルも金曜日の午後には解消されていました。プッシュするところはプッシュして、そこでは2番手タイムをマークすることができました。抑えすぎたところもありましたがトラブルもなかったし、トップにもそれほど離されなかったので悪くない位置で終えることができました」と語るように、総合トップにつけたチームメイトのカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組から約1分差、総合2番手で続くやはりチームメイトのエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組と3.9秒差の総合3番手でこの日を終えた。
このようにデイ2で順調な走りを披露した勝田貴元選手は、「土曜日から長いステージが始まっていくし、過去の大会でも土曜日に大きく展開が変わることがあったので注意していました」と語りながらも、30日のデイ3で素晴らしい走りを見せる。
「30kmのロングステージなんですけどリスクを避けながらも、いいペースで走ることができました。リスク配分もうまくできていたので、このペースで走ればうまくコマを進められるかな、と思っていました」と振り返ったように、この日のオープニングステージとなるSS8で勝田貴元選手はベストタイムを叩き出した。さらにエバンス選手にタイヤトラブルが発生したことから、総合2番手に浮上した。
続くSS9は4番手タイムをマークし、総合2番手をキープした勝田貴元選手だったが、続くSS10で予想外のハプニングが発生した。「茂みの中に隠れていた岩に当たって、右フロントと右リアのタイヤがパンクしました」とのことで約1分のタイムロス。なんとかこのSSを6番手タイムで終えたが、i20 N Rally1 HYBRIDを駆るHYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAM(ヒョンデ)のティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ組にかわされて総合3番手に後退することになったのである。
それでも勝田貴元選手は「残念だったんですけど他の選手もパンクしていましたし、同じことを繰り返さないようにしたいと思っていました」と前向きだった。その結果、SS11でベストタイムをマークし、このSSでヌービル選手がトラブルに見舞われたことで総合2番手を奪還する。
「トップとの差が離れていたので、プッシュして差を詰めていくというよりは、トラブルフリーで走り切ることを意識していました」と語りながらも勝田貴元選手はSS13で2番手タイムを出し、「ダブルパンクチャーは残念でしたが、それ以外は悪くありませんでした」とのことで、デイ3は総合トップのロバンペラ選手と2分8秒9差の総合2番手で終えた。
3月31日・デイ4
勝田貴元選手は「前も後ろも差が開いていましたが、日曜日のポイントも重要になるので、リスクを追い過ぎずに展開を見ながらプッシュしていきたいと思っていました」とのことだったが、31日のデイ4は波乱の展開で幕を開けた。この日のオープニングステージとなるSS14でパンクを喫し、8番手タイムに失速。なんとか総合2番手をキープしたが、出鼻を挫かれることになったのである。
「日曜日のポイントを取れる可能性がなくなってしまったので、最後までクルマを運ぶことにシフトしました。2ループ目は路面が荒れていたので安全運転で走りました」と、切替えた勝田貴元選手は総合2位を獲得し、今季初の表彰台に登壇。ロバンペラ選手、そしてTGR-WRTが今季初優勝を1-2フィニッシュで達成した。
こうしてポディウムフィニッシュを果たした勝田貴元選手だが、「表彰台に立てたので、嬉しさがないわけではないんですけど、勝つという部分にいくまでは全部が嬉しいわけではないです。 “もっとこうすべきだった”など自分の足りない部分が分かるし、これだけのタイム差で負けたということが分かるので悔しさもあります。もちろん、シーズン初の表彰台ですし、カッレとは仲がいいので彼と一緒に表彰台に立てて嬉しいけど、ぜんぜん足りてない部分もあったのでがっかりした気持ちもあります」と複雑な心境を吐露した。
そして「昨年のフィンランドあたりから自分のスピードに対する自信があって、プッシュをすればタイムを稼げる自信を持てるようになりました。これまではプッシュをしていないとタイムを出せない状態でしたが、今はどれくらいのリスク配分で、どれくらいのタイムが出せるかが掴めるようになってきました」と自身の成長を語る。
「今回のサファリ・ラリーはクルマにもタフで、マネメントが必要になるラリーなんですけど、メリハリが付けられるようになってきて、ここのセクションはタイムを犠牲にしても走り切る…… とか、ここはプッシュする、などレッキの段階から決められるようになったし、ラリーでも実践できたので今までの経験が活きてきたと思います」とのことで、勝田貴元選手は今回のラリーを通じて大きな手応えを掴むことになった。
さらにこの一戦では大きな学びもあったようで「優勝するためのアプローチの仕方が勉強になりました」と勝田貴元選手は言う。「序盤の金曜日はリスクを負わずに、土曜日からポジションを上げたいと思っていましたが、ロベンペラ選手は金曜日にプッシュして差を広げて後半は温存してリスクマネジメントしていました。結果的にその差を埋めることができなかったし、差を埋めようとしてタイヤを3本パンクしましたが、ロバンペラ選手はリスク配分しながらパンクを避けて走り切っていた。運もあると思いますが、そういったアプローチの仕方の違いがあったので、いい学びになりました」と振り返った。
このように第3戦のサファリ・ラリー・ケニアで、多くのことを吸収した勝田貴元選手だが、「フィンランドも地元ですし、ジャパンも母国なので、そこで結果を出すということが今シーズンの大きな目標ですが、それまでにも多くのラリーがあります。その中でもポルトガルなどは得意とするラリーなので、そこで自分のパフォーマンスを発揮したいです。それに今年はポイントシステムが変わっているので、チームに貢献できるようなかたちで週末を通してパフォーマンスを出していきたいと思います」とのことだ。
さらに「次のラリーに向けて準備を進めています」と語るように、勝田貴元選手はサファリの翌週に次戦に向けた事前テストを実施する予定となっているだけに、4月18~21日に開催される第4戦「クロアチア・ラリー」でも躍進に期待したい。
フォト/TOYOTA GAZOO Racing、Red Bull Media House レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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