全日本カート選手権OK部門がもてぎで開幕。皆木駿輔選手が開幕2連勝を達成!

レポート カート

2024年5月2日

国内最高峰のカートレース、全日本カート選手権OK部門の2024シリーズが栃木県茂木町のモビリティリゾートもてぎ北ショートコースで開幕。皆木駿輔選手(DragoCORSE)が第1戦で5年ぶりの勝利を飾ると、第2戦でも繰り上げでウィナーとなり、開幕2連勝を飾った。

2024年全日本カート選手権OK部門 第1戦/第2戦
2024年ジュニアカート選手権ジュニア部門/ジュニアカデット部門 第1戦/第2戦(ラウンドシリーズ1)
2024 AUTOBACS GPR KARTING SERIES
2024 Rok CUP JAPAN RokSHIFTER 第1戦/第2戦

開催日:2024年4月20~21日
開催地:モビリティリゾートもてぎ北ショートコース(栃木県茂木町)
主催:ホンダモビリティランド株式会社、GPR

GPR KARTING SERIESでは豪華なトロフィーが上位3選手と1位選手所属のチーム代表に贈呈される。第1戦と第2戦でそれぞれデザインが異なっており、記念に残る一品ものだ。
モビリティリゾートもてぎ北ショートコースを囲むフェンスには大会に協賛する各社の横断幕が飾られ、これまでの全日本カート選手権とは異なる雰囲気が漂っていた。
大会総合アドバイザーを務める鈴木亜久里氏と、大会会長の山本左近氏が第1戦の表彰式のプレゼンターを務めた。
大会期間中のレース運営や判定に関する項目について、シリーズを通した独自の判断に基づく提言を競技長に行い、大会における競技運営および判定基準の標準化を図るレースディレクターの責務は塚越広大氏が担う。
GPRの大会競技委員会。左からGPR計時チーフの兵藤正武氏、GPR事務局の大西勝太氏、GPR相談役の鈴木啓三郎氏、GPR顧問の饗庭喜昭氏、GPR代表の松浦佑亮氏、GPR副代表の小林成行氏、GPRレースディレクターの塚越氏、GPRテクニカルディレクターの小久保薫氏、GPR事務局の押切伊香穂氏。

全日本カート選手権OK部門 第1戦/第2戦

 2024年の全日本OK部門は、GPRカーティングシリーズのOKクラスに選手権がかけられる形で、5大会/全10戦のシリーズ戦が行われることになった。それに伴ってレースフォーマットは2023シリーズから刷新され、タイヤも1競技会につき1セット(2023年は第1レース1セット+第2レース1セット)へと変わった。

 もてぎで行われた開幕戦に参加したのは31台。目を引くのはFS-125部門やFP-3部門から上がってきたルーキーの多さだ。そんな中、2グループに分かれて実施されたタイムトライアルで37秒528の最速タイムを叩き出したのは、同部門2018年デビューのベテラン皆木選手だった。

 タイムトライアル(予選)の各グループ上位4名ずつが2周の単独アタックを行うスーパーポールでも、皆木選手はトップタイムをマークして、第1戦のポールポジションを手に入れた。0.007秒差の2番手は野澤勇翔選手(bbR.チームエッフェガーラ)。3番手にはベテランの三村壮太郎選手(AP SPEED with SOVLA)、4番手には最年少13歳のルーキー酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)が続いた。

タイムトライアル(予選)上位8台で争われるスーパーポールを制したのは皆木駿輔選手(DragoCORSE)。

 22周の第1戦ではスタートで野澤選手が順位を下げ、代わって三村選手が2番手に浮上。好スタートで3番手に上がった五十嵐文太郎選手(DragoCORSE)を3周目に酒井選手が抜き返し、三村選手に迫ってきた。酒井選手は7周目に三村選手もパスして2番手に上がり、0.7秒ほど前を行く皆木選手を追っていく。対して三村選手は前を走る2台から徐々に後れを取っていった。優勝争いは皆木選手と酒井選手の一騎討ちだ。

 レースが中盤戦に入ると、酒井選手が皆木選手にじわじわと近づいていく。残り10周、酒井選手はあと一歩で手が届く距離まで皆木選手を追い詰めた。だが、23歳の皆木選手は13歳の酒井選手にそれ以上の接近を許さず、レース終盤にはむしろわずかに差を広げて見せた。

 逃げ切り成功。結局、皆木選手はトップの座を一度も譲ることなくゴールまで走り切った。2019年以来二度目のOK部門優勝だ。0.373秒差で生涯一度きりのデビューウィンのチャンスを逃した酒井選手は、マシンを降りた途端に悔し涙をにじませる。

 三村選手は単独走行の3位フィニッシュで表彰台へ。4位、5位には全日本OK部門デビュー戦の五十嵐選手と春日龍之介選手(YAMAHA MOTOR Formula Blue)が入り、野澤選手は6位でゴールした。

OK部門 第1戦優勝は皆木選手(DragoCORSE)。
「ペースが他選手と同じかそれより良いのは分かっていたので、自信を持ってレースに臨みました。スタートはうまく決まったけれど、酒井選手がすごく速くて、プレッシャーを感じながらのレースでした」と振り返る皆木選手。「タイヤに優劣があったスペシャルタイヤ時代には良い時も悪い時もあったけれど、イコールコンディションで開幕戦を勝てたことは自信にもつながりますし、すごくうれしいです」と笑みをこぼした。
2位は酒井龍太郎選手(ミツサダ PWG RACING)、3位は三村壮太郎選手(AP SPEED with SOVLA)。
OK部門 第1戦の表彰式。左から2位の酒井選手、1位の皆木選手とDragoCORSEのチーム代表、3位の三村選手。
第1戦決勝でファステストラップをマークした選手に贈られるチャンネル700賞は、37.812秒を記録した酒井選手が獲得。

 第1戦のベストラップ順で決まる第2戦のスターティンググリッドは、酒井選手がポール、その横に皆木選手が並ぶこととなった。グリッド2列目は三村選手と野澤選手、同3列目は春日選手と五十嵐選手だ。第2戦は第1戦より4周長い26周のレース。そのスタートを制したのは皆木選手。アウト側から酒井選手をかわしてトップに躍り出た。2周目には五十嵐選手が三村選手をかわして3番手に上がった。

 皆木選手のリードは0.7秒強。レースが中盤戦に入ると、酒井選手がその差をじりじりと削り取っていく。今度も皆木選手と酒井選手のマッチレースだ。11周目、皆木選手を目の前に捕らえた酒井選手が、2コーナー先で皆木選手の前へ。しかし、皆木選手は続く3コーナーでトップの座を取り返す。22周目にも6コーナーで酒井選手が皆木選手をかわすが、その周のうちに皆木選手が先頭に戻った。

 闘志をみなぎらせながら一丸となってラップを重ねる皆木選手と酒井選手。残り4周、3コーナーでみたび皆木選手をパスした酒井選手が、ようやくラップリーダーの位置を奪った。皆木選手も猛攻を仕掛け、2台は時に真横に並びかけるが、酒井選手はようやくつかんだトップの座を頑として明け渡さない。歓喜のガッツポーズで真っ先にチェッカーをくぐったのは、酒井選手だった。

 だが、これで決着とはならなかった。酒井選手には過度なレーンチェンジがあったとして10秒加算のペナルティが下り、10位に降格。結果は皆木選手の2連勝となった。2位は単独走行を続けた五十嵐選手。吉田馨選手(K.SPEED WIN)が11番グリッドからの8ポジションアップで3位表彰台へ。三村選手は4位に入賞。第1戦で序盤リタイアを喫した武藤雅奈選手(YAMAHA MOTOR Formula Blue)と鈴木悠太選手(brioly racing)が、グリッド最後列付近から大幅に順位を上げて5位と6位になった。

OK部門 第2戦優勝は皆木選手(DragoCORSE)。
皆木選手が開幕2連勝を遂げた。「フィニッシュは2番手でしたけれど、結果的に優勝となりうれしいです。(レース中に酒井選手に抜かれてもすぐに抜き返したのは)長年OK部門のレースに携ってきた経験の中で、勝つためにはどうしたらいいのかを考えての走りでした。シリーズが始まる前からチャンピオンは狙っていますし、これで守りに入ることなく攻めの姿勢で全部勝てるようにいきたいと思います」
2位は五十嵐文太郎選手(DragoCORSE)、3位は吉田馨選手(K.SPEED WIN)。
OK部門 第2戦の表彰式。左から2位の五十嵐選手、1位の皆木選手とDragoCORSEのチーム代表、3位の吉田選手。
第2戦決勝でファステストラップをマークした選手に贈られるチャンネル700賞は、38.228秒を記録した武藤雅奈選手(YAMAHA MOTOR Formula Blue)が獲得。

ジュニアカート選手権ジュニア部門 第1戦/第2戦

 ジュニア選手権(ジュニア部門/ジュニアカデット部門)もOK部門と同様、2024年はGPRの各部門のレースにチャンピオンシップがかけられることになった。イアメ・パリラX30エンジンのワンメイクで行われるジュニア部門は出走12台。将来を嘱望される若手がずらりと顔をそろえた濃厚な顔ぶれだ。

 18周の第1戦では、ポールの坂野太絃選手(KP BUZZ)が大集団のバトルから抜け出し、中盤には背後に約1秒のリードを築いた。しかし、2023年の同部門チャンピオンである中西凜音選手(Energy Japan)が終盤に坂野選手を捕らえ、残り3周でパス。これをきっかけに再び熱いバトルが勃発した。

 この混戦状態を利したのが、3番手を走っていた関口瞬選手(DragoCORSE)だった。関口選手は目の前のバトルの間隙を突いて残り2周で2番手に上がると、最終ラップに中西選手もかわし、4ポジションアップを果たして開幕戦のウィナーとなった。澤田龍征選手(PONOS HIROTEX RACING)も関口選手に続いて中西選手の前に出て、2位でフィニッシュ。中西選手は3位、坂野選手は4位でレースを終えた。

ジュニア部門 第1戦優勝は関口瞬選手(DragoCORSE)。
「ペース的にもちょっと苦しくて……」とレース中の心境を語る関口選手。「自分のラインが他の選手より小さいので、最後は6コーナーしかないと思っていました」と狙いどおりの展開で勝利を収めた。
2位は澤田龍征選手(PONOS HIROTEX RACING)、3位は中西凛音選手(Energy Japan)。
ジュニア部門 第1戦の表彰式。左から2位の澤田選手、1位の関口選手とDragoCORSEのチーム代表、3位の中西選手。

 第2戦は22周。そのスタートでは、関口選手が3番グリッドからトップに浮上した。だが、ポールの中西選手は4周目に先頭のポジションを取り返し、前田蒼介選手(Team REGOLITH)と坂野選手も関口選手をかわして2番手・3番手に上がった。

 中西選手は数車身差で前田選手を引き連れラップを重ねると、終盤にそのリードを広げ、通算7勝目を飾った。ジュニア部門初参戦の前田選手は2位でフィニッシュ。澤田選手が4台による3位争いに競り勝って連続表彰台をつかみ取った。

ジュニア部門 第2戦優勝は中西選手(Energy Japan)。
もてぎでは初めてのレースだと言う中西選手。「1戦目でバトル負けして悔しかったけれど、2戦目は逃げ切ることができて、自信を持つことができました。難しいコースだけれど練習で克服できたと思います」
2位は前田蒼介選手(Team REGOLITH)、3位は澤田選手(PONOS HIROTEX RACING)。
ジュニア部門 第2戦の表彰式。左から2位の前田選手、1位のEnergy JAPANのチーム代表と中西選手、3位の澤田選手。

ジュニアカート選手権ジュニアカデット部門 第1戦/第2戦

 ジュニアカデット部門は出走27台となかなかの盛り上がりを見せた。14周の第1戦では、ポールの林樹生選手(AP SPEED with SOVLA)を3番グリッドの島津舞央選手(ERS with SACCESS)が捕らえ、3番手以下を引き離しながら優勝争いを展開。4度に及ぶポジションチェンジの末、林選手が優勝を飾った。

 2023年の琵琶湖・石野・神戸シリーズ(コースシリーズ)でジュニア選手権初の女性チャンピオンとなって注目を浴びた島津選手は、0.108秒差で悔しい2位に終わったが、全日本と同時開催のラウンドシリーズでも変わらぬ速さを実証してみせた。優勝争いの後方で繰り広げられた5台による戦いは、6ポジションアップを果たした藤原迪永選手(SD-STYLE)の3位フィニッシュで決着した。

ジュニアカデット部門 第1戦優勝は林樹生選手(AP SPEED with SOVLA)。
「タイムトライアルのタイムを見たら普通にぶっちぎれると思ったから、混戦になったのは予想外でした」と林選手のコメント。だが、最後の逆転をしっかりと狙っていたようだ。
2位は島津舞央選手(ERS with SACCESS)、3位は藤原迪永選手(SD-STYLE)。
ジュニアカデット部門 第1戦の表彰式。左から2位の島津選手、1位の林選手とAP SPEED with SOVLAのチーム代表、3位の藤原選手。

 18周の第2戦では、一時トップから7番手までが一列に連なる中、藤原選手、林選手、島津選手が優勝争いを展開した。先頭で最終ラップを迎えたのは島津選手だったが、10コーナーでトップ浮上を仕掛けた林選手と島津選手が接触。ゴール目前の思わぬドラマで、この日が誕生日だった藤原選手が逆転勝利を手にした。2位は阿部瑠緯選手(ミツサダ PWG RACING)。粂川輝陽斗選手(チームエッフェガーラ)が3位に入り、島津選手は6位でこのレースを終えた。

ジュニアカデット部門 第2戦優勝は藤原選手(SD-STYLE)。
笑顔を見せながら「ゴールした時はとってもうれしかったです」と藤原選手。「(3番手に下がった時も)勝てると思っていました」と自信があったようだ。「次の大会でもまた1位を獲りたいです」
2位は阿部瑠緯選手(ミツサダ PWG RACING)、3位は粂川輝陽斗選手(チームエッフェガーラ)。
ジュニアカデット部門 第2戦の表彰式。左から2位の阿部選手、1位の藤原選手とSD-STYLEのチーム代表、3位の粂川選手。

Rok CUP JAPAN RokSHIFTER 第1戦/第2戦

 同時開催のShifterは出走こそ6台にとどまったものの、四輪レースのトップドライバー、元&現役の全日本トップカーター、ミッションカートの腕利きと豪華な顔ぶれがそろった。

 18周の第1戦では、OK部門とダブルエントリーの鈴木悠太選手(brioly racing)が、ポールから発進すると松下信治選手(TONYKART R.T.J.)の追走を振り切ってデビューウィンを果たした。松下選手は0.5秒弱の差で2位。3位には富田星羅選手(KP BUZZ)が入った。

Shifter 第1戦優勝は鈴木悠太選手(brioly racing)。
初レースで分からないことが多かったという鈴木選手ながら「思ったより自分のペースが良くなかったんですけど、抜かれる感じではなかったです。でも、結構プレッシャーをかけられていましたが、なんとか勝つことができました」
2位は松下信治選手(TONYKART R.T.J.)、3位は富田星羅選手(KP BUZZ)。
Shifter 第1戦の表彰式。左から2位の松下選手、1位のbrioly racingのチーム代表と鈴木選手、3位の富田選手。

 22周の第2戦では、第1戦のトップ争いの順位が入れ替わり、松下選手が追いすがる鈴木選手から逃げ切って優勝を飾った。3位は最終ラップに富田選手を逆転した宮本颯斗選手(LUCE MOTOR SPORTS)のものとなった。

Shifter 第2戦優勝は松下選手(TONYKART R.T.J.)。
「スタートを決めて、あとは死ぬ気で守り切ろうと思っていました。相手は15歳なんでね、若いですから」と鈴木選手をライバル視していた松下選手。ゴール後はロニー・クインタレッリ氏が勝利を祝福した。
2位は鈴木選手(brioly racing)、3位は宮本颯斗選手(LUCE MOTOR SPORTS)。
Shifter 第2戦の表彰式。左から2位の鈴木選手、1位のTONYKART R.T.J.のチーム代表と松下選手、3位の宮本選手。

フォト/JAPANKART、今村壮希、長谷川拓司、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部

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