ラリー 井上裕紀子選手 モタスポ女子インタビュー

全日本ラリー選手権で怒涛の連覇!
「人生に占める割合がすごく大きい」

JAF全日本ラリー選手権ナビゲーター(コ・ドライバー)
井上裕紀子選手

[いのうえゆきこ選手]愛知県出身。小学生のころからラリー参戦を夢見て、大学では自動車部に入部。2000(平成12)年に全日本ラリー選手権にデビューした。近年では豊田自動織機ラリーチームから参戦し、2018(平成30)年まではJN3クラス、2019(平成31)年からはJN5クラスに出場している。層の厚い全日本ラリー選手権では「連覇」の記録を持つ選手はそう多くないが、井上選手はナビゲーター部門10連覇の記録を持つ。人生の伴侶でもあるドライバーの天野智之選手と参戦していて、近年では後進の育成にも力を入れており、全日本タイトルを早々に決めた2019(平成31)年には、後半戦ではナビシートを後進に譲り、チーム運営側へと立場を変えてラリー参戦をサポートした。

「父の運転だと酔わなかった」。クルマ酔いしない運転とは!?

ひと口にモータースポーツと言っても、ルールや走るクルマの種類によって様々なカテゴリーが存在する。
いわゆるサーキットで複数のマシンが一斉にスタートしてゴールを目指すレースやレーシングカート。未舗装路を一台ずつ出走してタイムを競うダートトライアル。平坦な舗装路面で最速タイムを競うジムカーナ。そして、FIA世界ラリー選手権(WRC)が日本で開催されることもあり、全国的に注目を集めているのが「ラリー」だ。
その最高峰である全日本ラリー選手権で、2010(平成22)年から10年以上に渡って連続してナビゲーター部門のチャンピオンに輝いたのが井上裕紀子選手だ。
もともと父親がラリードライバーをしていたが、井上選手が子供の頃には競技から離れていたので、家でモータースポーツの話題が出てくることもなかったという。転機になったのは小学生の頃。
「作文コンクールのテーマがクルマだったんです。そこで父に相談したところ、ラリーの話が出てきて。それが私とラリーの出会いです。思い返せば、父はよくドライブに連れて行ってくれました。私はクルマ酔いする体質なんですけど、不思議と父の運転だと酔わなかったんですよね。それで、『ラリーって何だろう?』、『クルマ酔いしない運転てすごい。そういうのをやりたい』と思うようになりました」。
小学校の卒業文集には、「ライセンスを取ってラリーに出るのが夢」と書いた。運転免許を取得して、実際に競技を始めたのは大学生になってから。
大学の自動車部に入って、女性は井上選手一人だったが……。

「自動車部の仲間だと、クルマの話を四六時中できる。そういう環境に一番飢えていたので、男社会に入ることの戸惑いよりは、楽しい気持ちが大きかったです」。
最初はドライバー志望だったそうだが、「ドライバーはクルマを速く走らせるのが仕事だけど、ラリーはそれだけじゃ勝てない。ナビゲーターはラリー全体をコントロールできることが面白い」ということで、ナビゲーターへ転向することになった。
以前は少なかった女性ラリーストだが、現在ではドライバーも含めてかなり増えてきている。10年以上に渡るナビゲーターチャンピオン連覇という偉業を成し遂げた井上選手。全日本ラリーの長い歴史でも金字塔となっている。
「もともと趣味の一つとして始めたラリーですが、今となっては人生に占める割合はすごく大きくなっています。普通に会社勤めしていたら経験できないようなことも経験できました。知らないことを知ることができる。これは自分にとってすごく面白いことなので、ラリーはそういう楽しさを私に与えてくれる存在になっています」。

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