12月開催のスーパーフォーミュラ最終戦・富士大会、山本尚貴選手が最高峰フォーミュラ3度目の王者に輝く

レポート レース

2021年1月8日

今シーズンは異例の12月下旬開催となったスーパーフォーミュラ。全日本選手権としても2020年最後のレースだったが、4名によるタイトル争いは決勝レース後半まで白熱。激動の一年を締めくくるに相応しい激戦の末、山本尚貴選手がチャンピオンに輝いた。

2020年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権第7戦
開催日:2020年12月19~20日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ(株)、FISCO-C

 12月20日に富士スピードウェイで開催された全日本スーパーフォーミュラ選手権第7戦(最終戦)。チャンピオン争いは平川亮選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF19)と山本尚貴選手(DOCOMO DANDELION M5S SF19)、ニック・キャシディ選手(VANTELIN KOWA TOM 'S SF19)、野尻智紀選手(TEAM MUGEN SF19)の4名にその可能性が残されていた。

 しかし、決勝レースではランキングトップ2の直接対決となり、コース上でのバトルを制した山本選手が平川選手を逆転。山本選手が自身3度目のドライバーズタイトルを獲得した。シーズン最後のレースは坪井翔選手(JMS P.MU/CERUMO・INGING SF19)が勝利し、2020年で唯一となる2勝を記録した。

 異例の12月下旬開催となったスーパーフォーミュラ最終戦も、前戦の鈴鹿大会同様にタイヤウォーマーの使用が認められ、公式予選ではトップタイムが1分19秒台に突入。タイトル獲得の権利を持つ野尻選手がポールポジションを獲得し、坪井選手が2番手、フロントローに並んだ。チャンピオンを争う山本選手は3番手に、平川選手は8番手となった。

 決勝レース前のウォームアップ走行中に、関口雄飛選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL SF19)が車両トラブルに見舞われ、フォーメーションラップではタチアナ・カルデロン選手(ThreeBond Drago CORSE SF19)がエンジンストール。さらにフォーメーションラップ中にシャルル・ミレッシ選手(Goldex Racing SF19)がスピンし、スターティンググリッドには17台のマシンが整列して40周の決勝レースがスタートした。

 好スタートを切ったのはフロントローの坪井選手。4番グリッドの松下信治選手(Buzz Racing SF19)がその後方につき、野尻選手が3番手、山本選手が4番手となる。平川選手も好スタートでポジションを上げ、序盤のうちに山本選手の背後につけた。

 トップ争いは序盤膠着状態が続き、10周終了後のピットウィンドウが開いたところで野尻選手がいち早くピットイン。アンダーカットを狙ったものの、タイヤ交換でミスが出てしまいタイムを失うことに。更に29周目にマシントラブルからタイヤのパンクチャーに見舞われストップ。ポールポジションから逆転タイトルを目指していた野尻選手だったが、ここで戦列を離れることとなった。

 坪井選手は16周を終えるところでタイヤ交換を行い、実質のトップをキープ。後方には松下選手がつけていたが、ピット作業でポジションアップに成功した大湯都史樹選手(TCS NAKAJIMA RACING SF19)が松下選手をかわして2番手に浮上する。

 大湯選手は坪井選手にも迫っていったが逆転のチャンスは巡って来ることなく、坪井選手が今シーズン2度目のトップチェッカーを受けた。大湯選手は鈴鹿大会の初勝利に続いての連続表彰台。松下選手は自身初のスーパーフォーミュラ表彰台となった。

 予選時のトラックリミット違反でタイムを抹消され最後尾からのスタートを余儀なくされたキャシディ選手は、ピットタイミングを遅らせる独自の戦略を採る。前が空いた状態でピットのロスタイムを補う快走を続けたものの、タイトル獲得条件である優勝には届かず、スーパーフォーミュラ卒業と噂される最終レースを4位フィニッシュで終えた。

 実質的に、平川選手と山本選手の二人に絞られたタイトル争いは、お互いにピット作業を終えた後にハイライトを迎えた。先にタイヤ交換を済ませていた平川選手は、ピットアウト直後の山本選手に急接近し、1コーナーからサイド・バイ・サイドの激しい攻防戦が展開された。

 お互い一歩も引かない戦いは、翌周のホームストレートで決着。オーバーテイクシステムを使って平川選手をかわした山本選手が5位でフィニッシュし、自身3度目となるスーパーフォーミュラチャンピオンに輝いた。そして、すでにスーパーGTのGT500クラスチャンピオンを獲得している山本選手は、2度目となるスーパーGTとスーパーフォーミュラのダブルタイトルを獲得することになった。

 シリーズ2位は2ポイント差の平川選手、シリーズ3位は最終戦で2勝目を挙げた坪井選手。シリーズ4位はキャシディ選手。坪井選手と有効同点、合計では上回っていたが、勝利ポイントの差で悔しい4位となった。5位は野尻選手、6位は大湯選手、7位は山下健太選手(ORIENTALBIO KONDO SF19)、8位は福住仁嶺選手(DOCOMO DANDELION M5S SF19)、9位は国本雄資選手(KCMG Elyse SF19)、10位は石浦宏明選手(JMS P.MU/CERUMO・INGING SF19)。

 チームタイトルは、キャシディ選手と中嶋一貴選手(VANTELIN KOWA TOM 'S SF19)を擁するVANTELIN TEAM TOM'Sが獲得。ルーキー・オブ・ザ・イヤーは第6戦鈴鹿大会のJAFグランプリウィナーでもある大湯選手に贈られた。

決勝レースのフォーメーションラップでは関口雄飛選手の車両トラブルによるスタートディレイとなり、波乱含みの幕開けとなった。
仕切り直しの決勝スタート。気温9度、路面温度13度という環境で40周の最終決戦が始まった。ポールポジション野尻智紀選手の隙を突いた坪井翔選手がホールショットを奪う
予選2番手の坪井翔選手がレースの主導権を握り、ピット開けにも事実上のトップをキープ。後半では大湯都史樹選手が松下信治選手と野尻智紀選手をパスして2番手に上げる。
今回も代役参戦となった松下信治選手は、前半では坪井選手を僅差で追っていたものの、レース後半ではペースを上げてきた大湯選手にオーバーテイクされてしまう。
スーパーフォーミュラ最終戦富士大会を制したのは坪井選手。第2戦岡山で初勝利を挙げて以来の今季2勝目となり、シーズン唯一の2勝したドライバーとなった。
第7戦表彰台。優勝は坪井翔選手。2位は大湯都史樹選手。3位は松下信治選手。後半でペースを上げた大湯選手は、坪井選手に約コンマ7秒差にまで詰め寄った。
4人に可能性が残された2020年のタイトル争い。中盤では山本尚貴選手と平川亮選手による直接のバトルが展開され、最終的には山本選手に軍配が上がった。
予選3番手スタートの山本選手は平川選手とのバトルを制して5位フィニッシュ。この結果、スーパーGTに続く逆転でのタイトル確定となり、自身3度目の王座に輝いた。
予選8番手の平川選手は序盤で5番手にアップ。ピット後に山本選手を100Rでアウトからパスしてアンダーカットを狙うが、翌周には山本選手に差し返されて6位に終わる。
予選では1分19秒972という驚速のコースレコードタイムを叩き出した野尻智紀選手が今シーズン2度目のポールポジションを獲得。逆転タイトル獲得を狙える位置に着いた。
10周終了後いち早くタイヤ交換を行った野尻選手だったが、28周終了後、左フロントタイヤがロックしたままコースサイドに停車。そのままレースを終えてしまった。
タイトルコンテンダーのニック・キャシディ選手は、予選Q1における走路外走行判定(しかも2周分)により、最終戦を最後尾からスタートする事態に見舞われてしまう。
最低でも優勝が条件のキャシディ選手は序盤で11番手までポジションを上げ、ピットタイミングを遅らせる作戦で快走。ピット後には平川選手もパスしたが4位に終わった。
2020年のチームチャンピオンは、キャシディ選手と中嶋一貴選手を擁する、舘信秀監督率いるVANTELIN TEAM TOM'Sが獲得した。
2020年スーパーフォーミュラのルーキー・オブ・ザ・イヤーは大湯都史樹選手。JAFグランプリが懸けられた第6戦鈴鹿大会で初優勝を飾っている。
第2戦岡山大会ではチームメイトの坪井選手とワンツーフィニッシュを飾ったベテラン石浦宏明選手。最終戦は12位、2020シリーズは10位に終わった。
最終戦恒例のシーズンエンドセレモニーは、全員集合する形式ではなく、密集を割けて各チームごとに登壇するスタイルに。タチアナ・カルデロン選手も観客に笑顔を見せた。
すべてのチームが観客への挨拶を終えた後、日本レースプロモーションの中嶋悟会長が観客および参加者・関係者に対する謝辞を述べて今シーズンが閉幕した。
今シーズンはソーシャルバブルの概念を導入して、観客と関係者の動線を分離して、チーム毎のバブルも形成。新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止対策が徹底された。
大会期間中には、B-MAX RACING TEAM(Buzz Racing with B-Max)の協力により、競技オフィシャルを対象とした実際の競技車両であるSF19を使った救出訓練が実施された。
開幕戦から観客を受け入れた今シーズンのスーパーフォーミュラ。最終戦には土曜5,300人、日曜9,700人、合計15,000人のファンたちが富士スピードウェイを訪れた。

フォト/石原康、JAFスポーツ編集部 レポート/浅見理美、JAFスポーツ編集部

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