野尻智紀選手が初戴冠、決勝レースは大津弘樹選手が初勝利

レポート レース

2021年10月27日

2021年の全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦がツインリンクもてぎで開催。今シーズンがフル参戦初年度の大津弘樹選手(Red Bull MUGEN Team Goh)が、ポールポジションからスーパーフォーミュラ初勝利を決めた。また5位でフィニッシュした野尻智紀選手(TEAM MUGEN)が、最終戦を残して初のシリーズチャンピオンを確定させた。

2021年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦
開催日:2021年10月16~17日
開催地:ツインリンクもてぎ(栃木県茂木町)
主催:M.O.S.C、株式会社モビリティランド

 週末のツインリンクもてぎはぐずついた天気となった。特に予選日は雨の量や降り出すタイミングが非常に予測しづらく、各車にタイヤ選択や戦略の違いが表れた。唯一ドライコンディションで走行できたQ1では、野尻選手が8月に更新したばかりのコースレコードを1秒以上削り、1分29秒757をマーク。

 しかしQ3ではチームメイトでもある大津選手が、周りがウェットタイヤでアタックする中、ただ一人スリックタイヤで挑み、2番手に大差をつけて自身初のポールポジションを獲得した。2番手には昨年王者の山本尚貴選手(TCS NAKAJIMA RACING)がつけ、野尻選手は3番手からタイトル獲得を目指すことになった。

ル・マン24時間で活躍した小林可夢偉選手や中嶋一貴選手、コロナ禍で入国が叶わなかった外国人ドライバーも参戦し、ようやくほぼフルメンバーがそろってもてぎでスーパーフォーミュラが行われた。

 決勝レースはウェットコンディションでスタートしたが、すでに雨は止んでおり、徐々に路面コンディションは回復。どのタイミングでスリックタイヤへと交換するかがカギになると考えられた。

 抜群のスタートダッシュを見せたのは山本選手だったが、大津選手は冷静にラインを守り切ってトップを死守。野尻選手はオープニングラップで7番手まで順位を落としてしまう。

 代わって山下健太選手(KONDO RACING)が3番手に上がるが、その山下選手を阪口晴南選手(P.MU/CERUMO・INGING)が9周目にオーバーテイク。さらに関口雄飛選手(carenex TEAM IMPUL)も山下選手を攻略して4番手に上がった。

 急激なペースダウンに見舞われた山下選手がスリックタイヤに交換したのは9周目。ただ路面上にはウェットパッチも残り、同じタイミングでスリックタイヤに交換した宮田莉朋選手(Kuo VANTELIN TOM'S)が1コーナーでコースオフしたほか、サッシャ・フェネストラズ選手(KONDO RACING)も5コーナーでスピンを喫し、マシンを停めてしまった。このためレースはセーフティカー(SC)が導入され、同時に続々とマシンがピットになだれ込んできた。

 レースは14周目にリスタート。SC中にタイヤ交換を行わなかった山本選手と平川亮選手(carenex TEAM IMPUL)、福住仁嶺選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)は路面が乾ききらないうちにマージンを築こうとプッシュするが、すでにスリックタイヤのタイムが彼らを上回る状況に。たまらず3台はピットに向かい、大きくポジションを下げることとなってしまった。

 17周目にタチアナ・カルデロン選手(ThreeBond DragoCORSE)が2コーナー立ち上がりでクラッシュし、2度目のSCが導入される。21周目にレースは2度目のリスタートを迎えたが、3コーナーで再びアクシデントが発生。小林可夢偉選手(KCMG)とポジション争いを繰り広げていた坪井翔選手(P.MU/CERUMO・INGING)がブレーキをロックさせてコースアウトし、さらに後方では山本選手と平川選手が接触。この2台はガードレールにもぶつかり、大きなダメージを負ってしまう。そしてレースはすぐさま、3度目のSC導入となった。

 この時点でトップは大津選手がキープし、後方には阪口選手、牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、関口選手、野尻選手と続いていた。残り10周でレースが再開すると、牧野選手、関口選手、野尻選手の3番手争いがヒートアップする。

 特に、ここで優勝しなければタイトル争いから外れてしまう関口選手は猛プッシュで牧野選手に襲い掛かり、28周目の3コーナーでついに攻略。さらに阪口選手に迫ろうとしたが、33周目の最終コーナー立ち上がりで痛恨のオーバーランを喫し、34周目に牧野選手に捕えられることに。再び4番手に下がってしまった。

 白熱していたのは表彰台争いだけではなく、トップ争いも終盤に接近戦へ。阪口選手はオーバーテイクシステム(OTS)を巧みに使って大津選手の背後まで迫り、28周目の3コーナーではアウト側から並びかけるが、大津選手はOTSを使わず、しっかりとラインを抑えてこれを阻止。さらに31周目、32周目と立て続けにファステストラップを塗り替えて阪口選手との差を広げていった。

 終盤はその差をきっちりと守ってチェッカー。昨年第2戦のスポット参戦でスーパーフォーミュラデビューを果たし、今季がフル参戦初年度の大津選手が、自身初のスーパーフォーミュラ優勝を飾った。2位は阪口選手、3位には牧野選手が入った。野尻選手は関口選手に続き5位でフィニッシュ。これにより、最終戦を待たずに野尻選手のシリーズタイトル獲得が確定した。

持てる力を存分に発揮することだけを考えて決勝に臨んだという大津弘樹選手。念願のスーパーフォーミュラ初優勝を遂げた。
第6戦の表彰式。左から2位の阪口晴南選手、1位の大津選手、3位の牧野任祐選手が登壇した。
野尻智紀選手は5位入賞を果たしてポイントを獲得。鈴鹿の最終戦を残しながら、シリーズ参戦8年目にして悲願のタイトルを確定させた。

フォト/石原康 レポート/浅見理美、JAFスポーツ編集部

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