佳境を迎えるスーパーGTはau TOM'S GR Supraが圧勝の2勝目

レポート レース

2024年11月7日

スーパーGTシリーズ第8戦は11月1~3日にモビリティリゾートもてぎで300kmレースとして開催され、GT500クラスは最も重いサクセスウェイトを積むau TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太組)が序盤にトップを奪って独走優勝し、ポイントリーダーを守った。GT300クラスは予選17番手から大逆転でVENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥組)が連勝で今季3勝目。ポイントランキングを2番手に上げた。

2024 SUPER GT Round 8 MOTEGI GT 300km RACE
開催日:2024年11月1~3日
開催地:モビリティリゾートもてぎ(栃木県茂木町)
主催:ホンダモビリティランド株式会社、M.O.S.C.、株式会社GTアソシエイション

 本来ならもてぎラウンドは最終戦としてほとんどの車両のサクセスウェイトが0kgとなり、車両が本来持っている性能でのガチンコ勝負となるはずだった。しかし今シーズンは第5戦鈴鹿が12月に延期になったことから、最終戦のひとつ前のレースということでサクセスウェイトは半減となった。

 前夜から降り出した雨は1日にピークを迎え、これで第5戦鈴鹿から毎戦天候の影響を受けることに。朝に予定されていた公式練習は雨の中でスタートしたものの、コースアウトする車両があり、そのたびに中断。また雨量が増えたことでセッションが中断することもあった。

第5戦鈴鹿以降、雨の開催となっているスーパーGT。今大会でも公式練習と予選ともにその影響を受ける形となった。

予選

 公式予選はGT300クラスで初めて新方式が実施された。新しいスタイルは、まずQ1で全車がコースイン。この結果で上位14台(Upper14)と下位13台(Lower15)に振り分けられ、Q2はU14とL15、それぞれで順位を決めるというもの。なおGT500クラスはQ1とQ2のタイム合算で変更はない。

 天候は雨で路面はウェット、気温17度、路面温度19度で始まったGT300クラスのQ1は20分間行われ、PONOS FERRARI 296(ケイ・コッツォリーノ/リル・ワドゥー組)がトップタイムで、2番手にポイントリーダーのLEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗組)、ランキング4番手のD’station Vantage GT3(藤井誠暢/チャーリー・ファグ組)が11番手、同5番手のStudie BMW M4(荒聖治/ニクラス・クルッテン組)が4番手でU14に残ることができたが、同2番手のmuta Racing GR86 GT(堤優威/平良響組)は21番手、同3番手のVENTENY Lamborghini GT3は23番手とトップ14に残ることができなかった。

 Q2の結果、ポールポジションはapr LC500h GT(小高一斗/中村仁組)で、2番手はStudie BMW M4、3番手はUPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻組)、以下LEON PYRAMID AMG、SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)、PONOS FERRARI 296の順となった。muta Racing GR86 GT は16番手、VENTENY Lamborghini GT3は17番手とそれぞれ逆転を狙うには厳しい位置からのスタートだ。

 GT500クラスは、唯一ダンロップタイヤを履くModulo CIVIC TYPE R-GT(伊沢拓也/大草りき組)がポールポジションを獲得。2番手はARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8(野尻智紀/松下信治組)、3番手は53kgのウェイトを搭載するau TOM’S GR Supra。以下、KeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹組)、ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺組)、ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16(大津弘樹/佐藤蓮組)と上位はホンダ勢とトヨタ勢が占め、日産勢の最上位はMARELLI IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組)の10番手だった。

GT500クラスはModulo CIVIC TYPE R-GT(伊沢拓也/大草りき組)、GT300クラスはapr LC500h GT(小高一斗/中村仁組)がポールポジションを獲得。

決勝

GT500クラス

 2日は前日と打って変わって好天となった。航空自衛隊松島基地のF-2B戦闘機2機による歓迎フライトで盛り上がったサーキットでウォームアップ走行が行われ、レースに向けてのボルテージは上がっていく。気温21度、路面温度32度と、11月とは思えない温度でグリッドでは汗ばむほどとなった。

 13時7分に300kmレースはスタートした。大きな混乱もなく始まったレースだったが、7周目にGT300車両がメインストレートでスローダウンからストップしたことで、フルコースイエロー(FCY)となったものの、これは3分で解除。8周目の1コーナーでARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8の松下選手がModulo CIVIC TYPE R-GTをかわしてトップに立ったが、9周目のS字でGT300車両のホイールが外れてストップしたことで、2回目のFCYとなった。これも3分で解除となったが、リスタートでARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8が遅れ、Modulo CIVIC TYPE R-GTの伊沢選手とau TOM’S GR Supraの坪井選手がこれをかわす。さらに11周目の5コーナーではau TOM’S GR Supraがトップを奪った。

 そんなトップ3台の背後で様子をうかがっていたのはKeePer CERUMO GR Supraの石浦選手で、16周目の90度コーナーで3番手、17周目の90度コーナーで2番手へ順位を上げる。au TOM’S GR Supraは、トップに立ってからは2番手との差を広げ、20周目にその差は10秒となり完全な独走状態に。その後KeePer CERUMO GR SupraとARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8が22周でピットイン。au TOM’S GR Supraは23周でピットインしてトップを守ったままコースへ復帰した。

 レース後半となってもau TOM’S GR Supraのペースは落ちず、45周目には2番手との差は18秒近くとなっていた。その2番手争いは終盤53周目の4コーナーでARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8の野尻選手が前に出て決着。3番手へ順位を落としたKeePer CERUMO GR Supraは、61周目の2コーナーでARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16に並びかけられるも3番手を守った。

 63周でau TOM’S GR Supraが開幕戦以来のトップチェッカー。約20秒遅れて2位がARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8、3位はKeePer CERUMO GR Supraだった。これでau TOM’S GR Supraの坪井/山下組が21点を加算し、6位でゴールしたSTANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任佑組)とのポイント差を18に広げ、最終戦を有利に戦うこととなった。前戦終了時にランキング2番手だったDeloitte TOM’S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ組)はエンジントラブルか、17周でピットインするとガレージでレースを終えてノーポイント。トップとは23点差の4番手と厳しい状態で最終戦を迎えることとなった。

栃木県警によるパレードランの後、各車フォーメーションラップ開始となった。この日は他にも航空自衛隊松島基地所属のF-2B戦闘機2機による歓迎フライトが行われて会場を盛り上げた。
GT500クラス優勝はau TOM'S GR Supra(坪井翔/山下健太組)。
圧倒的な速さでレースを展開し、トップでゴール。互いの健闘をたたえ合う坪井選手と山下選手。
2位はARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8(野尻智紀/松下信治組)、3位はKeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹組)。
GT500クラス表彰の各選手。

GT300クラス

 GT300クラスは、オープニングラップにUPGARAGE NSX GT3が5番手へ順位を落とし、LEON PYRAMID AMGとSUBARU BRZ R&D SPORTがそれぞれ順位を上げる。序盤に2台の車両がレースから脱落したが、2回のFCYが終わった8周目にはVENTENY Lamborghini GT3が10台抜きで7番手まで大きく順位を上げていた。

 トップのapr LC500h GT、2番手のStudie BMW M4はそれぞれ単独走行となったが、3番手以下は5台が数珠つなぎの状態に。レースの1/3が過ぎた19周目からピットインをする車両が現れ、トップのapr LC500h GT、2番手のStudie BMW M4が20周目にピットイン。apr LC500h GTはタイヤ無交換でコースへ戻った。3番手のLEON PYRAMID AMGと6番手のVENTENY Lamborghini GT3も22周目にピットイン。27周で上位の車両がピット作業を済ませると、トップはapr LC500h GTで、その1.6秒後にLEON PYRAMID AMG、さらにその2.5秒後にVENTENY Lamborghini GT3という順になる。

 30周目にはその3台が1秒の中に収まり、まず90度コーナーでVENTENY Lamborghini GT3の小暮選手が2番手を奪った。apr LC500h GTの小高選手はタイヤを交換していないため、思うようにペースが上がらない。そして34周目の3コーナーで、小暮選手が小高選手をかわしてついにトップに立つ。37周目にはLEON PYRAMID AMGの篠原選手も2番手へ順位を上げた。

 16番手スタートとなったランキング2番手のmuta Racing GR86 GTも早めのピットインからタイヤ無交換作戦で27周目には7番手まで順位を上げたが、apr LC500h GT同様にペースが上がらず、徐々に順位を落としてポイント獲得圏外へ。

 41周目の1コーナーで9番手走行中のSUBARU BRZ R&D SPORTが、2戦連続のブレーキトラブルでコースオフ。これでこの日3回目のFCYとなったが、大きな順位変動はなくレース終盤へ。47周目のヘアピン手前で3番手を守っていたapr LC500h GTはUPGARAGE NSX GT3にかわされて表彰台を失ったばかりか、GT500車両のバトルに巻き込まれてコースオフ。大きく順位を落とすことになった。

 レースはVENTENY Lamborghini GT3が2位LEON PYRAMID AMGに20秒近い差をつけて、16台抜きの連勝。3位はUPGARAGE NSX GT3だった。VENTENY Lamborghini GT3の小暮/元嶋組はこれでポイントリーダーのLEON PYRAMID AMGの蒲生/篠原組との差を5点縮めて11点差とし、最終戦での逆転タイトルも狙える位置へつけた。前戦終了時ランキング2番手だったmuta Racing GR86 GTの堤/平良組は13位でノーポイントに終わったが、大逆転の可能性は残して最終戦に臨むこととなる。

GT300クラス優勝はVENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥組)。
17番手スタートからの大逆転劇を演じ、喜びを爆発させる小暮選手と元嶋選手。
2位はLEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗組)、3位はUPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻組)。
GT300クラス表彰の各選手。
会場ではオフィシャルらが実際のレース車両を使って救出訓練を行っていた。

フォト/石原康、遠藤樹弥、吉見幸夫 レポート/皆越和也、JAFスポーツ編集部

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