「まずはやっぱり装備ですね。サーキットは意外と広くて、思った以上の距離を歩くんですよ。やはり、歩きやすい靴を履くことが肝要だと思います。それと、朝から晩まで屋外にいることになるので、完全なアウトドアだと捉えたほうがいいと思います。雨が降ったら雨具が要りますが、雨具は観客席の後ろの視界を遮らないように、カサではなくカッパやポンチョの方がいいですね。場内には不整地な場所もありますから、当日の天候が読めない場合には、お気に入りではなく、汚れてもOKな服装で行ったほうがいいと思います。
ビッグレースでは色々なファンイベントがおこなわれますが、観戦席に居る時間が一番長いと思います。そんな時間のお供に最適なのが大会プログラムです。選手の顔やマシンをプロが撮影した写真で見られますし、レースの内容解説や展開予想といった記事も充実しています。パドックウォークなどでは、お目当ての選手からサインをもらったりできますよね。大会パンフレットは上質な紙を使ってしっかりと製本されてますから、選手のサイン入りともなれば世界で一つしかない本ができますし、実際、歴代の大会パンフレットを宝物のように保存しているベテランも多いですよね。市販書籍のように重版されることもないので、かなりレア物でもあります。初心者の方はぜひ入手しておくことをオススメします。
レース展開を把握するために場内実況を参考にすると思いますが、最近ではアプリも充実しているので、ぜひライブタイミング情報を見てほしいですね。特に、順位が変わりにくいレースでは、順位の判別だけではなく、その前後関係やファステストラップ情報なども分かります。お気に入りの選手を中心にチェックすれば、チームと同じ目線でレースを追いかけることができますから、ぜひこれは一度試してみてほしいですね。
私がサーキットの場内実況を担当する場合、レース番組の実況とは違って、現地にいる観客の皆さんに、できるだけレースの“ディテール”をお届けしようと心がけています。何かが起きたら状況説明に、起きた場所やゼッケンなどの細かい描写を加えたり、この後のレース展開の予想を盛り込むようにしています。レースは見た目では展開が分かりにくいこともありますから、観客席の方々に興味を持って観てもらえるように、“このままだと、こんなことが起きるかも!”といったご提案をたくさん入れ込むように心がけています。
モーターレーシングでは、マシンが繰り出すサウンドや振動、波動や匂いなどなど、日常生活や他のスポーツでは味わえない“非日常”をたくさん体験できると思います。レースは人間がコントロールしていて、あのような戦いが繰り広げられているんです。それを五感で感じ取り、イマジネーションを膨らませること。こういった体験が人生を豊かにするんじゃないかと考えています。ですので、ぜひ一度、競技会場に足を運んでほしいですね。自動車の電動化が進む昨今、内燃機関が発する五感を刺激する体験はなかなかできなくなるかも知れません。モータースポーツを観戦するなら今が最後のチャンスだと思います」。