競技を観戦したいあなたへ

教えてセンパイ・ピエールさんインタビュー

五感を揺さぶる"非日常"を堪能! ナマで体験できるのは最後のチャンス!?

実況アナウンサー・ピエール北川さん

ピエール北川さんは、国内のビッグレースでは必ずと言っていいほど“その声”が聞こえてくる、モータースポーツ実況アナウンサーの第一人者です。四輪レースだけはなく、カートやラリー、スピード競技、そして二輪の世界にも精通していて、数々のファンイベントなどでは観客の気持ちを代弁するMCを披露してくれています。そんなピエール北川さんに、競技会場でモータースポーツ観戦したいアナタに、アドバイスをいただきました!

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「まずはやっぱり装備ですね。サーキットは意外と広くて、思った以上の距離を歩くんですよ。やはり、歩きやすい靴を履くことが肝要だと思います。それと、朝から晩まで屋外にいることになるので、完全なアウトドアだと捉えたほうがいいと思います。雨が降ったら雨具が要りますが、雨具は観客席の後ろの視界を遮らないように、カサではなくカッパやポンチョの方がいいですね。場内には不整地な場所もありますから、当日の天候が読めない場合には、お気に入りではなく、汚れてもOKな服装で行ったほうがいいと思います。

ビッグレースでは色々なファンイベントがおこなわれますが、観戦席に居る時間が一番長いと思います。そんな時間のお供に最適なのが大会プログラムです。選手の顔やマシンをプロが撮影した写真で見られますし、レースの内容解説や展開予想といった記事も充実しています。パドックウォークなどでは、お目当ての選手からサインをもらったりできますよね。大会パンフレットは上質な紙を使ってしっかりと製本されてますから、選手のサイン入りともなれば世界で一つしかない本ができますし、実際、歴代の大会パンフレットを宝物のように保存しているベテランも多いですよね。市販書籍のように重版されることもないので、かなりレア物でもあります。初心者の方はぜひ入手しておくことをオススメします。

レース展開を把握するために場内実況を参考にすると思いますが、最近ではアプリも充実しているので、ぜひライブタイミング情報を見てほしいですね。特に、順位が変わりにくいレースでは、順位の判別だけではなく、その前後関係やファステストラップ情報なども分かります。お気に入りの選手を中心にチェックすれば、チームと同じ目線でレースを追いかけることができますから、ぜひこれは一度試してみてほしいですね。

私がサーキットの場内実況を担当する場合、レース番組の実況とは違って、現地にいる観客の皆さんに、できるだけレースの“ディテール”をお届けしようと心がけています。何かが起きたら状況説明に、起きた場所やゼッケンなどの細かい描写を加えたり、この後のレース展開の予想を盛り込むようにしています。レースは見た目では展開が分かりにくいこともありますから、観客席の方々に興味を持って観てもらえるように、“このままだと、こんなことが起きるかも!”といったご提案をたくさん入れ込むように心がけています。

モーターレーシングでは、マシンが繰り出すサウンドや振動、波動や匂いなどなど、日常生活や他のスポーツでは味わえない“非日常”をたくさん体験できると思います。レースは人間がコントロールしていて、あのような戦いが繰り広げられているんです。それを五感で感じ取り、イマジネーションを膨らませること。こういった体験が人生を豊かにするんじゃないかと考えています。ですので、ぜひ一度、競技会場に足を運んでほしいですね。自動車の電動化が進む昨今、内燃機関が発する五感を刺激する体験はなかなかできなくなるかも知れません。モータースポーツを観戦するなら今が最後のチャンスだと思います」。

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2台以上で競争する競技の見どころを紹介

モータースポーツと言えば、すぐにレースのことを思い浮かべる人は多いでしょう。サーキットの路面に刻まれたスターティンググリッドに並んだ色とりどりのマシン。シグナルがブラックアウトすると、一斉にスタートして1コーナーの覇を争う。そしてライバルたちとコース各所で競り合いながら栄光のフィニッシュを目指す……これがレースです。

国内のJAF公認サーキットには、ファミリーでもお一人様でも楽しめる、珠玉のエンターテインメントがたくさん用意されています。サーキットレースを観戦したい場合は、JAFモータースポーツサイトの競技会スケジュールや、モータースポーツ専門メディア、ドライバーやレースチームが発信するSNS情報を参考にして観たいイベントを決定します。そこからサーキットの公式ホームページを訪れて、あらゆるタイプの観戦席から希望の場所を選んで観戦券を購入します。JAF会員優待を利用できるサーキット(三重県の鈴鹿サーキットや栃木県のモビリティリゾートもてぎなど)もありますので、利用しない手はありません。

スーパーフォーミュラやスーパーGTなどの国内ビッグレースでは、チームのパドックをピットレーンから見学できるパドックパスや、決勝レース直前にスターティンググリッドを見学できるグリッドウォークパスが販売されることがあります。より深くレースを知りたい人は、ぜひ入手して、ドライバーやチーム関係者のナマの表情を確認しましょう。

また、レースの合間には、サーキットのイベント広場で、レーシングドライバーやチーム関係者を招待したトークショーなどもおこなわれています。開催レースに挑む前の心境やレース戦略、映像や記事メディアでは得られないような本音トークなどが飛び出す可能性もあるので、お目当ての決勝レースが始まる前には、ぜひ参加してみてください。

国内最高峰のGTレース、スーパーGTでは、大型バスに乗ってサーキットを走る「サーキットサファリ」という名物イベントもあります。これはGTマシンのフリー走行の時間におこなわれるファンイベントで、GTマシンが大型バスの前後左右を通過していくという、世界でも類を見ない体験ができます。人生で一度は経験しておきたいイベントです。
そして、サーキットやJAF地方本部・支部が主催するツアーイベントがおこなわれることもあります。この催しでは、一般的な観戦券では立ち入ることができない、ピット内部やコントロールタワー、タイヤメーカーの作業場所を始め、コースに取り付けられたサービスロードを体験することができます。サーキットが発信する観戦情報や、サーキットがある地域のJAF地方本部・支部が発信するご当地情報などをチェックしてみてください。

週末をまるごとサーキットで楽しみたいという人には、サーキットに付帯するサーキットホテルを拠点にすることもオススメです。三重県の鈴鹿サーキットや栃木県のモビリティリゾートもてぎにはサーキットホテルが併設されていて、ファミリールームがあったり、観戦券と宿泊をセットにしているケースもあります。これらのサーキットではファミリーやカップルなどを対象に、グランドスタンド周辺に個室の観戦スペースを設けています。

個室の観戦スペースでは、レースの様子がひと目で分かるタイミングモニターが設置されていることもあるので、お一人様でライブ情報を参照しながら観戦したい方にはオススメのスポットです。また、大分県のオートポリスでは、サーキットを一望できる位置にあるバンガローを借りることもできます。サーキット観戦ではどうしても天候に左右されますが、このようなプランを利用すると、快適にレース観戦を楽しむことができます。

三重県の鈴鹿サーキットではFIAフォーミュラ1世界選手権(F1)が開催され、静岡県の富士スピードウェイでは、FIA世界耐久選手権(WEC)が開催されています。このような世界一を決める国際格式の選手権レースは、国内レースに参加しているレーシングドライバーの憧れであり目標でもあります。そういった世界を戦うドライバーの活躍をナマで観られる機会は限られていますので、年に一度のチャンスは逃さず活かしたいものです。

また、国内最高峰のフォーミュラカーレースであるスーパーフォーミュラは、JAF公認サーキットで年間7戦程度開催されています。近年ではF1に匹敵するスピードを持ち、シビアなレーシングスキルが必要とされ、海外からも注目を浴びています。同様に、FIAインターナショナルシリーズとして年間8戦程度開催されているスーパーGTも、世界に通じるグランドツーリングカー(GT)がしのぎを削るシリーズとして長年行われています。近年ではドイツ・ツーリングカー・マスターズ(DTM)との車両規則の統一や、交流戦なども開催されていて、今後の国際的な発展が期待されています。

レースには、プロドライバーがハイレベルな戦いを繰り広げるシリーズだけではなく、若手ドライバーたちによるレースシリーズもあります。スーパーフォーミュラと併催されるスーパーフォーミュラ・ライツには、国際的な活躍を目指す若手ドライバーがしのぎを削っています。また、フォーミュラ・リージョナルも2020(令和2)年に上陸しました。

また、スーパーGTと併催されるFIA-F4を始め、スーパーFJ、フォーミュラ4(JAF-F4)などのレースシリーズも、フォーミュラレースのステップアップカテゴリーとして全国のJAF公認サーキットで開催されています。これらは、カート競技から四輪レースにステップアップするドライバーが経験を積むカテゴリーでもあり、久々の日本人フルタイムF1パイロットとなった角田裕毅選手も、それぞれのシリーズで実績を重ねました。

また、JAF公認サーキットでは数多くのクラブマンレースもおこなわれています。こちらは週末だけのサンデーレーサーやジェントルマンドライバーらによる、趣味としてのアマチュア・モータースポーツが展開されています。中でも、ステップアップを目指すドライバーやジェントルマンドライバーが車両をシェアするスーパー耐久シリーズは、参加型レースシリーズの頂点として、多くのドライバーの目標にもなっています。

近年では、自動車メーカーやインポーターが支援するワンメイクレースが入門者向けレースとして多くの参加台数を集めています。そのベース車両も、軽自動車から欧州の本格的なFIA GT3マシンまでと様々です。自分が乗っている、または乗ってみたいマシンが、サーキットではどんなポテンシャルを発揮するのかなどが一目瞭然となるので、彼らの戦いを観ているだけでも、きっと目からウロコの有益な体験が得られることでしょう。

カート競技は、パイプフレームの小型4輪車によるレースですが、その走行ではレーシングに特化した極めてダイレクトなフィーリングを得られるため、車両のコントロール術やライバルとの競り合いを純粋に学べる素材として注目されています。そのため、量産車やフォーミュラカーによる四輪レースでの活躍を前提に、幼少期からモーターレーシングの世界を経験するための、ステップアップカテゴリーとして活用されることもあります。

カートレースは、同時多発的に起きる接近したバトルが見どころです。全日本カート選手権のような、プロドライバーも出場するハイレベルのカートレースを観れば、目の前で起きるあらゆる出来事のクイックな展開に、カルチャーショックを受けるに違いありません。

レースでは、フォーミュラカーレースでも、量産車によるレースでも、轟音を響かせるマシンが一斉にコースを走り、競り合いながらゴールを目指す熾烈なバトルが展開されています。その様子は、観ているだけで心が震わされるものですが、モータースポーツにはレースとは違った、自分との戦いに没頭できるカテゴリーもたくさんあります。

タイムアタック競技の見どころを紹介

ラリーは、ドライバーとナビゲーター(コ・ドライバー)がコンビを組んで、オーガナイザーが決めたルートをトレースしてその正確性を競ったり、閉鎖された公道でのタイムトライアルをおこなって、その走行タイムを競うスポーツです。決められたルートを走るため、コースの形状や路面の状態は、その場に行かないと分かりません。雨が降っても雪が降っても、与えられた環境を二人のクルーで乗り越えなければならないので、無事ゴールを迎えるためには、知力や体力を始めとした、あらゆる総合的なスキルが求められます。

国内最高峰の全日本ラリー選手権には「ギャラリーステージ」と呼ばれるコースサイドの観戦場所が用意されている大会もあります。これらは広い公園内や、山深い林道に設定されるケースが多いですが、いずれにしても、サーキットの観客席と比べると、かなり近い場所から走行を観られるため、ドライバーとナビゲーター(コ・ドライバー)の運転操作だけでなく、クルーの真剣な表情や息遣いなども感じ取ることができるでしょう。

自分との戦いに没頭できるカテゴリーの代表格として、ジムカーナやダートトライアルが挙げられます。これらはスピード競技と呼ばれ、決められたコースを1台ずつ走行して、その走行タイムの優劣で成績を判定するタイムトライアル競技です。

ジムカーナは舗装路、ダートトライアルは未舗装路でおこなわれるタイムトライアルですが、それぞれ90秒程度のコースを一日2回程度しか走れません。そのため、一つのヒートにかける選手の思いは並々ならぬものがあり、スタート前にはかなりのプレッシャーがかかります。これらの最高峰である全日本ジムカーナ選手権や全日本ダートトライアル選手権は、全国のJAF公認スピード競技コースでおこなわれていて、それぞれ観戦できる環境がしっかり整えられている施設もあります。

競技会によっては、出場する選手やマシンが集う「パドック」に立ち入ることができる場合がありますので、それぞれのパドックでは、選手たちの「1本にかける熱き思い」をつぶさに感じ取ることができると思います。

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