第8戦鈴鹿で太田格之進選手が勝利。王座争いは坪井翔選手と牧野任祐選手の最終戦一騎打ちに
2024年11月14日
2024シーズンの全日本スーパーフォーミュラ選手権 第8戦が鈴鹿サーキットで開催され、太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)がスーパーフォーミュラでは初のポール・トゥ・ウィンを飾った。逆転タイトルに向けて後のない野尻智紀選手(TEAM MUGEN)はまさかの予選Q1敗退。決勝では力強い走りで5位まで追い上げたものの、2位表彰台を獲得した坪井翔選手(VANTELIN TEAM TOM'S)との点差は開き、タイトル獲得の権利は消滅。最終戦では坪井選手と牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)による一騎討ちでチャンピオンが争われることになった。
第23回JAF鈴鹿グランプリ
2024年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 第8戦
開催日:2024年11月8~10日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主催:NRC、SMSC、ホンダモビリティランド株式会社
レースウィークを前に、国内トップフォーミュラを15年戦い続け、3度のシリーズチャンピオンに輝いた山本尚貴選手(PONOS NAKAJIMA RACING)がスーパーフォーミュラを勇退すると発表された。金曜日の専有走行では、その山本選手がトップタイムをマーク。直後に行われた記者会見には多くの報道陣が集まった。タイトル争いは、ランキングトップの坪井選手が2位の牧野選手に対し14.5ポイント差と大きなリードを築いて鈴鹿入りを果たしている。同3位の野尻選手とは16.5ポイント差。坪井選手を追いかけるふたりがこの点差をひっくり返すためにはこの鈴鹿大会で2戦とも表彰台に上がることが必須となる。
予選
それぞれにとって重要な第8戦予選では、Q1から大きな波乱が。野尻選手と坪井選手が出走したB組のセッションで、各車がアタックに入ったタイミングで1台がコースアウトを喫し、赤旗中断となってしまう。仕切り直しのタイム計測で坪井選手はトップタイムをたたき出しQ2進出を決めた一方、野尻選手はQ2進出圏内の6番手に対しわずか100分の4秒届かず7番手タイム。2021年の第5戦もてぎ大会以降、必ずポールポジション(PP)争いに名を連ねていた実力者がQ1で敗退することとなった。Q2では太田選手が速さを見せて自身シリーズ初のPPを獲得。2番手には岩佐歩夢選手(TEAM MUGEN)、3番手には佐藤蓮選手(PONOS NAKAJIMA RACING)が続き、牧野選手が4番手、坪井選手が5番手に並んだ。
決勝
決勝は約5時間後にスタートしたが、予選での波乱をさらに上回るようなアクシデントが続出し、サバイバルレースの様相になった。
まずは2番グリッドの岩佐選手にギヤが入らないというトラブルが発生してスタートできず。今季はまだ勝利のない岩佐選手にとってフロントロースタートは絶好のチャンスとなるはずだったが、これで最後尾に下がってしまった。
また17番手スタートだった三宅淳詞選手(ThreeBond Racing)もギヤトラブルが発生。こちらはスタート直後にコースサイドにマシンを止めリタイアとなった。早々に1台が戦列を離れることになり、レースは20台での争いに。
そんな中、まさかのQ1敗退で14番グリッドからのスタートとなった野尻選手はオープニングラップから3ポジションアップ。さらに2周目には国本雄資選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)を捕えてポイント圏内の10番手に上がると、6周目には笹原右京選手(VANTELIN TEAM TOM'S)もかわして9番手まで追い上げてきた。
野尻選手はさらにポジションを上げるため、アンダーカットを狙ってミニマムの10周でタイヤ交換へ。同じ周回数でピットに向かったのは3番手を走行中の牧野選手、5番手走行中の阪口晴南選手(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)、そして7番手走行中の福住仁嶺選手(Kids com Team KCMG)だった。
すると、これに反応して2番手を走行していた坪井選手が翌周にピットイン。トムスのピット作業は素早く、アウトラップ中の牧野選手より前で坪井選手をコースに送り出すことに成功する。坪井選手は自身のアウトラップですでにタイヤが温まった牧野選手の猛追を受けるが、これをしのぎ切ってポジションを死守。坪井選手をかわして前でフィニッシュしてポイント差を縮めたい牧野選手だったが、大きなチャンスを逃すことになった。また、坪井選手と同じタイミングでピットインした佐藤選手は、タイヤ交換の際に左リアタイヤがうまくはまっておらず、ピットアウト直後にタイヤが外れてしまうアクシデントに見舞われた。3番手スタートで表彰台獲得も期待された佐藤選手だったが、ここでリタイアとなった。
トップを快走中の太田選手は12周を終えたところでピットイン。後続と十分なギャップを築いている太田選手は坪井選手の前でコースに復帰する。その後も続々と各車がタイヤ交換を行っていくが、18周を終えるところでピットインした平良響選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)のマシンの右リアタイヤが、コースに戻った直後に外れてしまう。平良選手はピットロード出口付近のコース脇にマシンを止めたが、タイヤは1コーナーの先まで転がり続け、このタイヤと平良選手のマシンを回収するため、レースは20周目に入ったところでセーフティカー(SC)が導入された。
23周目に入るところでリスタートが切られたものの、今度はスプーンカーブで笹原選手と大嶋和也選手(docomo business ROOKIE)が交錯するアクシデントですぐさま2度目のSC導入。車両回収にはやや時間がかかり、29周目に入るところでリスタートとなる。ピット作業後もハイペースで坪井選手との差を広げていた太田選手は、このSC導入でそのマージンを奪われてしまうが、再開後の30周目、そしてファイナルラップと立て続けにファステストラップを塗り替えると、後続を突き放して見事に今季初のトップチェッカーを迎えた。
太田選手の背後では2度のリスタートともに坪井選手と牧野選手のデッドヒートが繰り広げられたが、最後まで牧野選手を抑え切った坪井選手が2位表彰台。3位の牧野選手に対しポイント差を18.5にまで広げることに成功した。野尻選手は、タイヤ交換後は実質6番手から追い上げを開始し、30周目に福住選手をかわして5番手まで上がったものの、あえなくチェッカー。5位入賞でポイントは獲得したが、坪井選手とのポイント差は25.5に開き、翌日のシーズン最終戦を前にタイトル争いから脱落した。
フォト/石原康、遠藤樹弥、吉見幸夫 レポート/浅見理美、JAFスポーツ編集部