スーパーフォーミュラ最終戦は太田格之進選手が2連勝!坪井翔選手が初のチャンピオン確定!!
2024年11月15日
全日本スーパーフォーミュラ選手権の最終戦は、「JAF鈴鹿グランプリ」の冠がかけられた一戦。そして坪井翔選手(VANTELIN TEAM TOM'S)と牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)によるチャンピオン争いに決着がつく一戦でもある。決勝は、前日に2024シーズン初優勝を遂げた太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が終始リードし、文句なしの2連勝。その後方で2位フィニッシュを果たした坪井選手が参戦6年目にして悲願の国内トップフォーミュラのチャンピオンに輝いた。
第23回JAF鈴鹿グランプリ
2024年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 第9戦
開催日:2024年11月8~10日
開催地:鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)
主催:NRC、SMSC、ホンダモビリティランド株式会社
予選
泣いても笑っても国内トップフォーミュラの今季最終戦。前日に行われた第8戦のような絶好のレース日和とまでは行かず、やや曇り空の下で公式予選がスタートした。
まずはQ1のA組で、これが国内トップフォーミュラでラストレースとなる山本尚貴選手(PONOS NAKAJIMA RACING)が、その決断が悔やまれるような快速ぶりを披露してトップタイムをマークする。逆転タイトルを手にするために予選トップ3が欲しいランキング2番手の牧野選手が、山本選手に続いて2番手通過。開幕戦のポールシッターである阪口晴南選手(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)や、富士スピードウェイでの第4戦と第6戦でポールポジション(PP)を獲得した福住仁嶺選手(Kids com Team KCMG)もQ1を突破した。
続くB組では、ランキングトップの坪井選手がトップタイム通過で牧野選手にプレッシャーをかける。第8戦予選ではまさかのQ1敗退を喫した野尻智紀選手(TEAM MUGEN)も、今回のアタックでは坪井選手と太田選手に続く3番手タイムでQ2進出を決めた。
「最速の称号は譲れないという思いで走った」と、予選後に語ったランキング3番手の野尻選手。前戦での予選敗退の悔しさも相まって、この予選にかける思いは人一倍だった。Q1は3番手に甘んじたが、そこからQ2に向けてのアジャストが功を奏し、セクター1、セクター2と全体の最速タイムを更新していき、コントロールラインに戻りアタックタイムが表示されると、タイミングモニターのトップに躍り出た。
Q2でPP争いとともに注目されたのは、坪井選手と牧野選手の順位だった。坪井選手はすでに牧野選手に18.5ポイント差をつけている。ここで牧野選手に2ポイント差をつければ決勝で逆転不可能な20ポイント差以上に点差を広げられることになるのだ。
坪井選手は野尻選手に続いてアタックに入り、セクター3では野尻選手のタイムを塗り替えてセクターベストを表示。最終的に2番手でアタックを終える。このままの位置で終えれば、決勝を前に坪井選手の戴冠が決定するとあって、続く牧野選手のタイムに注目が集まった。しかし野尻選手とは反対に「Q2に向けてのアジャストがうまくいかなかった」と振り返る通り、Q1からのタイムの削り幅がやや小さく10番手に。これでタイトル争いにも決着がついたかに思われたが、前日PPを獲得した太田選手が坪井選手のタイムを上回り2番手に浮上。牧野選手はチームメイトに助けられる形で決勝までタイトルの望みをつなぐことに。最終的にPPは野尻選手。2番手に太田選手、3番手に坪井選手というトップ3になった。
決勝
インターバルの間にサポートレースも終え、いよいよ決勝がスタート。抜群の蹴り出しを見せたのは2番グリッドの太田選手で、1コーナーまでに野尻選手をかわしてトップに立つ。後方では5番手スタートの福住選手が4番手の佐藤蓮選手(PONOS NAKAJIMA RACING)をかわして1ポジションアップし、この2台に阪口選手が続くというトップ6となった。
野尻選手は2周目に入った1コーナーで坪井選手にかわされ3番手に後退すると、福住選手、佐藤選手にもオーバーテイクを許し序盤にポジションを下げてしまった。トップに立った太田選手は前日同様の快走で後続とのギャップを築いていく。牧野選手は10番グリッドからのスタートで、オープニングラップで9番手には上がったものの、ペースが上がらずに苦しい展開が続いていた。
10周を経過すると、まずはトップ2台を追いかける福住選手や、ポジションダウンしてしまった野尻選手を含め8台がピットイン。翌周には坪井選手、牧野選手ら7台がピットに向かいタイヤ交換を行った。トップの太田選手はその後、12周を終えるところでピットイン。太田選手は、タイヤ交換を済ませたグループの中でトップに立っていた坪井選手に対しホームストレート1本分のギャップを守ってコースに復帰した。ただ、すでにタイヤに熱の入った坪井選手はアウトラップの太田選手に急接近。NISSINブレーキヘアピンで背後に迫ると、スプーンカーブではオーバーテイクシステム(OTS)も使ってアウトから太田選手に並びかけてきた。対する太田選手もOTSを使って坪井選手に対抗。130Rを抜けて日立Astemoシケインまでポジションを守り切ると、ここからはタイヤのウォームアップも完了し徐々に坪井選手を引き離していった。
最後までタイヤ交換を引き延ばしていたのは岩佐歩夢選手(TEAM MUGEN)。11番手スタートから大きく順位を上げるために、前半スティントを引き延ばして後半スティントを短くし、フレッシュタイヤで追い上げる作戦だった。21周を終えてピットに向かうと、実質8番手でコース復帰。残り10周で追い上げのレースを見せ、終盤は前方の牧野選手、さらに前方にいる山本選手と3台での6番手争いを展開した。この頃には、トップ3の太田選手、坪井選手、福住選手もそれぞれ差が広がり単独走行の状態に。
最後までペースが落ちなかった太田選手は最終的に坪井選手に対し約5.4秒という大差をつけて2戦連続のトップチェッカーを受けた。2位の坪井選手は、このチェッカーを受けた時点でチャンピオンが確定。2019年にスーパーフォーミュラ参戦を開始してから6年目でうれしい初戴冠となった。
3位の福住選手に続き、4位でチェッカーを受けたのは野尻選手。最終ラップで岩佐選手にかわされた牧野選手が8位フィニッシュとなったため、この最終戦でシリーズランキング2位に浮上した。牧野選手はファイナルラップのポジションダウンでドライバーズランキングは3位に後退。スーパーフォーミュラ6年目でベストリザルトではあるものの、悔しいシーズン締めくくりとなった。
ただ、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGは太田選手の2連勝もあって逆転でチームタイトルが確定している。最後に牧野選手をかわして7位でフィニッシュした岩佐選手は、今季予選で4度トップ3に入ったほか、全戦でポイントを獲得する活躍でルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得。そしてこれがラストレースとなった山本選手は、牧野選手や岩佐選手といった後輩ドライバーたちとの6位争いを制してフィニッシュした。
第8戦はタイヤが外れるアクシデントや接触などもあり6台がリタイアするレースとなったが、最終戦は20台がチェッカーを受けて今季を締めくくった。
フォト/石原康、遠藤樹弥、吉見幸夫、JAFスポーツ編集部 レポート/浅見理美、JAFスポーツ編集部