ミハエル・サウター選手に王者確定済のFRJ最終二連戦はTGR-DC RS勢が席巻!!
2024年11月22日
2024年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権第6・7戦と併せ、2024年JAFフォーミュラリージョナル地方選手権(FRJ)の最終二連戦、第13戦と第14戦が富士スピードウェイで10月11~13日に開催された。すでにチャンピオンはミハエル・サウター選手で確定しているものの、第11戦は6位、第12戦はリタイアと不本意な結果だっただけに、ここはなんとしても有終の美を飾りたいはず。一方で、その二連戦では佐野雄城選手が連勝。普段はJAF FIA-F4地方選手権を戦うドライバーが、FRJデビュー戦でいきなり結果を残してみせた。佐野選手が連勝を伸ばすか、サウター選手が新王者の意地を見せるのか、注目された。
2024年JAFフォーミュラリージョナル地方選手権 第13・14戦
(2024年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 第6・7戦 内)
開催日:2024年10月11~13日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県小山町)
主催:富士スピードウェイ(株)、FISCO-C
予選
11日の金曜日に専有走行が2回行われ、初回は佐野選手と同じく、TOYOTA GAZOO Racingドライバー・チャレンジ・プログラムRacing School(TGR-DC RS)から第11戦より参戦する、卜部和久選手が1分39秒506でトップ。これに佐野選手がわずか0.049秒差で続き、サウター選手は1分40秒台にとどまり6番手だった。
しかし、2回目では終了間際にサウター選手が1分38秒318でトップを奪取し、佐野選手は0.286秒差で2番手。そしてFRJには約1年ぶりの参戦となる岩澤優吾選手、卜部選手の4選手が1分38秒台にひしめき、翌日からも実力伯仲の戦いとなることが予想された。
12日、土曜日の富士は秋晴れの好天となり、もちろん予選はドライコンディションとなった。なお、今回の二連戦の予選はQ1が第13戦、Q2が第14戦のスターティンググリッド決定要素となる。
路面温度が低めだったせいか、Q1では1分39秒台への突入も計測3周目。この時点でトップだったサウター選手は、次の周に1分38秒917にまで縮めるが、その後の伸びを欠いてしまう。逆に、それまでは1分40秒台に留まっていた佐野選手が、計測5周目に1分38秒661を叩き出して一躍トップに躍り出た。
佐野選手は更に1分38秒571にまで縮め、トドメを刺したかと思われたものの、終了間際に1分38秒414を絞り出して第13戦のポールポジション(PP)を決めたのは、卜部選手だった。1分38秒472まで詰めた佐野選手に続いたのは、1分38秒545の岩澤選手。サウター選手は6番手まで落ちてしまった。
続くQ2でも、1分38秒台突入は計測5周目。サウター選手が1分38秒235で、卜部選手が1分38秒326で続くも、限界は更に先にあった。翌周に佐野選手が1分37秒709でトップを奪取! 最後の一発こそ伸ばせなかった佐野選手だったが、トップは譲らず。卜部選手が0.19秒差で、順位こそ入れ替わったものの、TGR-DC RS勢が2戦ともフロントローを独占することになった。一方、Q1は中位に沈んだサウター選手が1分37秒台には届かなかったものの、3番グリッドにつけた。
第13戦ポールシッターの卜部選手は、「Q1はそれなりにまとめることもできて、練習中の反省点も改善できました。Q2 では運転自体はまとまったんですけど、位置取りをミスしたのと、セットアップの変更で美味しいところ、美味しくないところもあったし、難しいところでしたね」と、予選を振り返った。
更に「触ったのはフロントウィングだけで、そんなに大きな変更ではないんですけどF4よりもちょっとの変更で大きく変わって、セクター2は良くなったんですが、セクター3がちょっとナーバスになったというか。でも、アタック自体はやりきれたと思っています」と、車両についても語ってくれた。
「スタートをしっかり決めることが大事だと思っていて、バトルはあると思いますけどペースが悪くない限り抜かれないと思うので、スタートでキープして優勝したいと思います」と、勝利への意気込みで締めた。
「Q1ではチームメイトの卜部君に負けてしまったので、『どうしてもQ2獲りにいくぞ!』って気持ちで臨みました。セットアップも変更して、それもうまくいったし、自分のドライビングも納得がいくQ2ができたので、それは良かったと思います」とは、第14戦でPPの佐野選手。
続けて「Q1でミスがあったわけではないんですが、Q2の方が完璧に近かったと思います。徐々に良くなっているので、決勝も上げていけるように頑張ります!」と、力強いコメントを残してくれた。チームメイト同士の一騎討ちになるのは必至ながら、新王者のサウター選手が割って入れるかも注目となった。
第13戦決勝
決勝は、2戦とも15周もしくは30分の争い。第13戦の決勝もまた、穏やかなコンディションに恵まれた。「スタートはそんなに悪くなかったです」と語った、PPの卜部選手以上に鋭いダッシュを佐野選手が見せた。TGRコーナーにインから飛び込み、卜部選手を立ち上がりでかわす。このふたりに続いたのは岩澤選手、そしてスタートで2台をかわしていたサウター選手がその後に続いた。
スタート直後こそ一列で続いていたトップ4ながら、1周目を終えると佐野選手が早くも卜部選手にさえ1秒差をつけ、逃げの構えに出た。卜部選手も後続を早い段階から引き離していたが、佐野選手が1分39秒前半で正確にタイムを刻んでいき、なす術はなかった。一方、中盤までは岩澤選手にサウター選手も迫っていたが、やがてそれぞれ単独走行となる。
そんなサウター選手には中村賢明選手が急接近。11周目のTGRコーナーで一度は逆転を許すも、翌周の同コーナーでサウター選手は抜き返す。最後まで4番手争いは激しく繰り広げられたものの、サウター選手は中村選手の再逆転を阻みフィニッシュした。
逃げ切りで三連勝を果たした佐野選手は、「前回のレースは2回ともうまくいかなかったんですが、今日のスタートは練習から良い感触があって、そのイメージどおりにいけていいスタートだったと思います」と、好スタートを振り返った。
その後の展開についても「後半タレないようにドライビングを意識しつつ、やっぱり後ろとの差は広げたかったので攻めつつ、いいところで走れていたと思います」と、好感触だったようだ。更に、勝ち方を覚えたのか? という問いに対しては「そういうわけではないですけど、いい流れでこられて、結構レースペースは前回からいいので、そこはレース前から自信があったんです」とのこと。
「でも、やっぱりスタートが心配だったので、そこがうまくできたのが今回勝てた要因かなと思います。いい流れで来ているので、明日のレース2もこの調子でいきたいと思います」と答えてくれた。
マスタークラスの第13戦は、辻子依旦選手がクラストップグリッドだったものの、スタート直後のTGRコーナーで植田正幸選手が逆転。一時はYUKI選手にも先行を許したことで、植田選手に大差をつけられていたが、8周目に2番手を取り戻してからは徐々に開いた間隔を詰めていく。
最後は1秒を切るまでとなったが、辛くも逃げ切りなった植田選手は今季マスタークラス初優勝。「辻子さんの位置取りが悪くて、僕はラッキーで外から行けたんです。最後、内圧だったのか、タイヤはきつくて。辻子さんがすごく速くなっているので、ビックリしてます。頑張って練習しないと抜かれますよ」と苦笑いしつつ、レースを振り返った。
第14戦決勝
やや肌寒くもあった12日に対し、第14戦決勝が行われた13日の日曜日は再び夏日となって、コンディションが変化していた。またしても佐野選手がスタートを決め、卜部選手を従えてTGRコーナーに飛び込んでいく。
そして、その後方では中村選手がサウター選手を抜いて3番手に上げた。しかし、サウター選手も負けてはいない。2周目のTGRコーナーで抜き返して3番手を奪還。更に中村選手には岩澤選手が迫り、4周目には先行を許していた。
第13戦と同様に佐野選手、卜部選手とも単独で周回を重ねていく中、サウター選手に一時は2秒以上も水を開けられていた岩澤選手が、中盤から迫ってきた。ラスト4周は完全にテール・トゥ・ノーズとなり、岩澤選手がプレッシャーをかけ続けるも、サウター選手は少しも動じなかった。約0.4秒差ながらも逃げ切って、今季最後のレースを表彰台に立って終えたサウター選手は、「WECの時の富士(第11・12戦)では残念だったので、今日はポティウムに立てて良かったです」と、安堵した様子だった。
またしても逃げ切った佐野選手は、参戦したFRJのレースは全て制して4連勝を飾った。「昨日より暑かったのでタイヤのことを気にしつつ、うまくコントロールできて良かったです。いいかたちで締めくくれました」とレース後に語り、ランキングも5位につけた。それだけに、「もっと早くから出たかったね」と問いかけると、にっこり笑顔でうなずいた。
一方、2位の卜部選手は「昨日の課題はクリアできて、クルマも良くなっていました。新しいことを見つけられたので、内容はいいレースだったと思います。順位には全然満足いかないですけど……」と、悔しそうな表情を見せた。ふたりにとってはFRJで培った経験を、まだ残されているFIA-F4でどう活かすのか、注目したいところだ。
マスタークラスでは、今度こそ辻子選手がトップを最後まで譲らず。楽勝だったかと思いきや、「昨日は前半しんどくて、後半はいけたんですが、今日はリヤがなくなって、最後は辛かったですね」と、実は辛勝だったことを明らかにした。
フォト/遠藤樹弥、髙橋学 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部