開幕の中部ダートラ、村松俊和ランサーがオーバーオールウィン!

レポート ダートトライアル

2024年5月13日

中部ダートトライアル選手権 第2戦が4月28日、愛知県豊田市の池の平ワンダーランドで開催された。今季、全7戦の開催スケジュールが組まれていた中部ダートトライアル選手権だが、1月1日に発生した令和6年能登半島地震の影響で、第1戦、第3戦、第6戦の開催地として予定されていた、石川県輪島市の門前モータースポーツ公園が使用できなくなってしまったため、今回の第2戦が2024シーズンの事実上の開幕戦となった。

2024年JAF中部ダートトライアル選手権 第2戦
2024年JMRC中部ダートトライアル選手権 第2戦

2024 CCST ダートトライアル No1
開催日:2024年4月28日
開催地:池の平ワンダーランド(愛知県豊田市)
主催:CCST

「門前モータースポーツ公園は、地震による大きなダメージはないのですが、瓦礫置き場になっていて現時点では競技を行える状態ではありません。ですが『今後の状況が変われば』という希望を残しつつ第1戦は延期という形になりました。また、今年は西日本フェスティバルの開催地としても予定していたのですが、代替地等の案も含めて、開催するか否かについては正式に決定していません」と現状を語ったのは、中部ダートトライアル部会長の齊藤道夫氏。5月12日に予定されていた第3戦は中止が決定したが、それ以外の門前モータースポーツ公園での競技開催については、今後の状況次第ということになりそうだ。

 そして、今シーズンの中部地区ダートトライアルについては、「車両規則やクラス区分は昨年から変更はありませんが、若手ドライバーを呼び込みたいということで、U25割引制度を導入しました。これは、参加する競技会当日に25歳以下の選手に対して参加費を割引する制度で、各主催者さんに協力をお願いしています。また、情報発信においても、5年後、10年後に中心となっているのは現在参加している若手ドライバーですので、何名か部会に入ってもらい、今後につなげていけるよう考えています」と齊藤氏。若手の活躍に期待を寄せる。

 今回のコースは、スタートラインとゴールラインが、通常の池の平とは逆になるレイアウトとなった。スタート後の島回りから奥の林道コースを経て再び島回り、そしてゴールとなるが、鬼門となったのがゴール直前に置かれた1本のパイロン。最終区間のストレートから勢いよくアプローチすると「確実に」曲がり切れないのは分かっているはずだが、ダートトライアルドライバーの性か、その先の土手に行く手を阻まれる選手も多く、勝負の分かれ目となるポイントとなった。

 大会当日はゴールデンウィーク2日目。地域によっては真夏日を記録する晴天となり、標高1100mを超える池の平も雲ひとつなく、日中は汗ばむほどの気温で両ヒートともにドライ路面で競技が進行。全6クラスが成立して今シーズンの火蓋が切られた。

快晴で汗ばむような気温の中、ドライ路面での競技進行となった。
通常とは逆のコースレイアウトのため、慣熟歩行を入念に行うエントラントも見られた。
会場には、令和6年能登半島地震によって被害を受けた輪島市門前町へJMRC中部を通じて渡される予定の義援金箱が設置され、多くの大会関係者が募金していた。
通常とは逆になるレイアウトが採用され、ゴール手前にある1本のパイロンが鬼門となった。

Nクラス

 Nクラスは、第1ヒートから頭ひとつ抜きん出る1分24秒台でトップに立ったのが、昨年度シリーズ2位の村松俊和選手。第2ヒートになっても各選手自己タイムは更新するものの、村松選手のタイムは更新されることなく競技が進行。そして、村松選手は自己タイムを更新して1分23秒台をマーク。貫禄の勝利を決めた。

「昨年は仕事の関係で、池の平はなかなか出場する機会がありませんでしたが、今年は門前も使用できない状況なので、今回の開幕から参戦しました。第2ヒートは轍がかなり深くなるという情報だったので、躊躇したら(轍に)捕まるなと思い、とにかく右足はアクセル固定で走りました(笑)。タイムアップも第1ヒートのミスを補った分、想定通りでしたね」という村松選手。今大会のオーバーオールタイムでの優勝となった。

Nクラス優勝は松村俊和選手(テイクスBMSCランサー)。
2位は鈴木悦司選手(カムG☆DLランサー)、3位は小倉正也選手(カムガレージDLランサー)。
Nクラスの表彰式。左から2位の鈴木選手、1位の村松選手、3位の小倉選手、4位の山内友和選手。

PN1/S1500クラス

 参加13台のPN1/S1500クラスは、主力車種のスズキ・スイフトを始め、ホンダ・フィット、マツダ・デミオ、トヨタ・ヤリス、三菱・コルト、そしてホンダ・CR-Zといったバラエティに富んだ車種で争われた。その第1ヒートで1分31秒台のトップタイムを刻んだのはスイフトの岸貴洋選手。2番手には同じくスイフトの水野司選手、3番手にはフィットの鈴木正人選手が続く。

 第2ヒートになると、デミオの天野佳則選手が岸選手のタイムを更新し、1分30秒台で暫定トップに立つが、続く岸選手はすかさず1分28秒台を叩き出してトップ奪回。ラストゼッケンとなるヤリスの樋口哲也選手のタイムに注目されたが、1分30秒の壁は崩せず、岸選手が攻防戦を制した。

「今シーズンは池の平がメイン会場となるため、コースに合わせてデフのロック率を高めました。走らせ方はまだまだですが、今回はその効果が良い方向に出たと思います。第2ヒートは轍にのせて車速を上げることを心掛け、タイムも想定通り上がったので良かったと思います」という岸選手は、昨年度はシリーズ2位。前チャンピオンの天野選手に勝利し、好スタートを切った。

PN1/S1500クラス優勝は岸貴洋選手(ベルテックス黒スイフト@Tガレ)。
2位は天野佳則選手(オートリンクス・タクミ・デミオ)、3位は樋口哲也選手(ベルテックスDLTガレヤリス)。
PN1/S1500クラスの表彰式。左から2位の天野選手、1位の岸選手、3位の樋口選手、4位の水野司選手、5位の鈴木正人選手。

S1クラス

 PN1/S1500クラス同様、S1クラスも多彩な車種で争われるが、第1ヒートは1分28秒台をマークした片田龍靖選手を筆頭に、2番手に松原功治選手、そして3番手には片田選手とWエントリーの水野匠選手と、スイフト勢が上位を占める。

 第2ヒートになると、前走の水野選手が片田選手のタイムを100分の6秒更新して暫定トップに立つ。その後片田選手は1分27秒台までタイムを詰めるも、パイロンペナルティを喫してしまい惜しくもトップ奪回ならず。しかし、まだこの時点ではM2ファクトリーの水野選手、片田選手の1-2体制だが、勝負を決めたのはラストゼッケン松原選手。片田選手の幻となったタイムには及ばなかったが、同じく1分27秒台を叩き出して逆転勝利を決めた。

「昨年の後半からリアのバネレートを変更して、イメージ通りの動きになりました。ただ、第1ヒートは走り方を間違えていたので、第2ヒートはタイヤサイズを変更し、それに合わせたギヤを選択することで踏んでいけるようになりました。タイム的には、PN1/S1500クラスの決勝タイムが1分28秒台だったので、絶対にそれを上回りたかったんです。目標の1分27秒台ということで安心しました(笑)」と松原選手。S1クラスの面目を保ち、開幕戦を制した。

S1クラス優勝は松原功治選手(DLたまご足VTスイフト)。
2位は水野匠選手(m2factoryスイフト)、3位は片田龍靖選手(M2スイフトスポーツ1号借り物)。
S1クラスの表彰式。左から2位の水野選手、1位の松原選手、3位の片田選手、4位の安藤亨選手。

S2クラス

 唯一1分24秒台をマークした服部雅士選手が第1ヒートでトップに立ったS2クラス。2番手に伊藤祥充選手、3番手に佐野龍弥選手が共に1分25秒台で続いた。そして第2ヒート、更なるタイムアップ合戦になるかと思われたが、なんと上位陣は軒並みタイムダウン傾向に。それも1.5秒から3秒以上ダウンと、全くタイムが上がらない。そして、第1ヒートは4番手につけていた前田利幸選手も、このチャンスを活かすことができずにタイムダウンとなってしまい、第1ヒート順位がそのまま決勝順位となった。

 優勝の服部選手は「第2ヒートは路面状況も影響したのかもしれませんが、Nクラスの村松選手が1秒以上タイムアップしたのを見て、みんなかなり熱くなっていました。2位の伊藤選手も2秒は上げられると言っていましたし、当然ワタシもですが(笑)。走行中はかなり姿勢が乱れていましたが、想像以上にタイムが落ちました。もう少し大人の走りをしないといけませんね」と、反省を交えて戦いを振り返った。一方で「池の平は過去3戦連続2位だったので、ようやく勝てました」と久しぶりの池の平での勝利に安堵の表情の服部選手。開幕戦優勝でシリーズスタートとなった。

S2クラス優勝は服部雅士選手(MRS DL ランサー エボⅨ)。
2位は伊藤祥充選手(CMSC☆ZEAL☆ランサー)、3位は佐野龍弥選手(今年もがんばりますランサー)。
S2クラスの表彰式。左から2位の伊藤選手、1位の服部選手、3位の佐野選手、4位の前田利幸選手。

RWDクラス

 後輪駆動車両によるRWDクラスは、前半ゼッケンの名倉陽太選手が唯一1分31秒台の好タイムをマークして、第1ヒートをトップで折り返す。名倉選手は第2ヒートでタイムダウンに終わるも、そのタイムは更新されないまま競技が進行。そのまま逃げ切りかと思われたが、最後に勝負を決めたのは、第1ヒートは3番手につけていたラストゼッケンの上角好孝選手。自己タイムを3.4秒上回る1分30秒台を叩き出して、逆転優勝となった。

「今年は、昨年までの86からGR86に乗り換えました。やはりエンジンパワーがあって、足回りのセッティングも調子良く、乗りやすいですね。第2ヒートでは失敗箇所もありましたが、名倉選手のタイムを抜こうと必死で走りました。結果的に1秒以上の差を付けて勝つことができて満足です」と笑顔でコメントした上角選手は、今回の2週間前に行われた池の平ダートトライアルシリーズ第1戦でも優勝しており、幸先の良いスタートとなった。

RWDクラス優勝は上角好孝選手(アンテロープGR86)。
2位は名倉陽太選手(FASC伊藤木型YHプロμ86)、3位は齊藤道夫選手(DLカムGワコーズITO☆86)。
RWDクラスの表彰式。左から2位の名倉選手、1位の上角選手、3位の齊藤選手、4位の小池俊介選手。

2Pクラス

 3台の2ペダル車両で争われた2Pクラスは、昨年度シリーズ3位の川崎浩一選手が、1分37秒台で第1ヒートをトップで折り返す。しかし第2ヒート、川崎選手は自己タイムを更新することができず。一方、昨年度シリーズ2位の山根勤選手は、第1ヒートから大幅なタイムアップを果たすも1分39秒台に止まり、川崎選手が逃げ切る形で優勝となった。

「ダートトライアルは昨年から始めたばかりで、刻々と変わる路面変化に戸惑っています(笑)。第2ヒートは、轍にとられてしまってアクセルを踏めなかったのがタイムダウンの要因です。まだまだですね」と、課題は山積みという川崎選手だが、開幕戦を勝利で飾った。

2Pクラス優勝は川崎浩一選手(RINKEIアクア)。
2位は山根勤選手(IBS-2P-スイフト)、3位は平田和哉選手(IBS-2P-スイフト)。
2Pクラス表彰の各選手。

フォト/友田宏之 レポート/友田宏之、JAFスポーツ編集部

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