小林茂則選手、貫録を見せる逆転劇で北海道ダートラ4WD-2チャンピオンを確定!

レポート ダートトライアル

2024年11月27日

2024年JAF北海道ダートトライアル選手権 第7戦が8月25日、北海道砂川市に建つオートスポーツランドスナガワのダートトライアルコースで開催された。全8戦で行われる北海道ダートラも今回の一戦を含めて残り2戦。全5クラス(Dクラスは不成立)のうち、前回までの第6戦でチャンピオンが確定しているのはFF-1クラスのみで、残る3クラスは王座争いが継続中、その動向が注目された。

2024年JAF北海道ダートトライアル選手権 第7戦
2024年JMRC北海道Moty’sダートトライアルシリーズ第7戦
EZO DIRT 2024

開催日:2024年8月25日
開催地:オートスポーツランドスナガワ ダートトライアルコース(北海道砂川市)
主催:EZO

JAF全日本ダートトライアル選手権も開催されるスナガワは、ハイスピードからテクニカルまで多彩なレイアウト設定ができる。しかし、河川敷を利用した立地ということもあり、雨が降った後はコース上のいたる所に大きな水たまりができてしまう。今回の一戦も数日前に降った雨により多数の水たまりが発生。レイアウトについては、それらの水たまりを避けて設定されて下段にいたっては排水作業まで施された。

 そのような経緯もあり、ドライの路面とぬかるんだ路面が交互に現れるミックス路面となった。その路面変化への対応と走行時間帯によって、ぬかるみがどの程度回復しているかの“読み”が重要な攻略要素になったようだ。

 当日は好天に恵まれ、8月下旬の北海道にもかかわらず、日中の気温は約30℃。シリーズも大詰めとなった第7戦は汗ばむ陽気の中、チャンピオンを巡る攻防戦が繰り広げられた。

雨のあとが残るオートスポーツランドスナガワ ダートトライアルコースで開催された2024年JAF北海道ダートトライアル選手権 第7戦。左写真のようなほぼ水がはけたドライと、右写真のようにまだまだ水が残るぬかるみと路面の変化が大きく、慣熟歩行でもドライバーたちを大いに悩ませていた。
数多くの“島”があり、レイアウトの自由度が高いスナガワ。今回の一戦のレイアウトはその特徴を活かして、水たまりを避けた設定にしたそうだ。

2024年JAF北海道ダートトライアル選手権 第7戦

RWDクラス

 古谷欣竹選手と田中光徳選手が同ポイントでランキングトップに並んでいるRWDクラス。王座争いは古谷、田中両選手に加え、ランキング3番手の吉川高利選手、そして4番手の和泉泰至選手まで権利を持っている。しかし、古谷選手が欠場となったため、3選手による争いとなった。

 ヒート1をトップで折り返したのは和泉選手。タイムは1分15秒台と、2番手の吉川選手以下に3秒以上の差をつけた。ヒート2になってもそのタイムは更新されることはなく、更に和泉選手は1分13秒台までタイムアップを果たす圧勝となった。

「全日本の成績が芳しくないので(笑)地区戦を獲りにきました。(全日本では)切谷内、エビスと硬質な路面が続いたので、久しぶりに純粋な砂利の路面に上手く合わせられませんでした。タイヤサイズも変えて試したのですが、それもイマイチでしたね」と、和泉選手。やや課題が残ったようだが、全日本ドライバーの速さを見せつけ、今季シリーズ2勝目を挙げた。

 王座争いは、今回の一戦で3位に入った田中選手が単独トップに立ち、4ポイント差で古谷選手と和泉選手が同ポイントで2番手、そして吉川選手が1ポイント差で4番手に後退し、チャンピオン確定は最終の第8戦に持ち越された。

王座を争う3選手のみ参戦ながら、少数精鋭故の熾烈な争いが期待されたRWDクラスだったが、2024年JAF全日本ダートトライアル選手権PN3クラスにも挑む和泉泰至選手(DL・クスコ・XP・GR86)が圧勝。全日本ドライバーの速さを見せた。

FF-1クラス

 FF-1は今季の北海道ダートラでは唯一、第5戦でチャンピオンが確定済。「ダートラを始めたのが3年前で、FF-1クラスはスイフトしかいない、という話を聞いて何かオモシロいクルマはないかと思い(トヨタ・)ヴィッツを選択しました。セッティングなど苦労した面は多いですが、ヴィッツで勝てた事は嬉しいですね(笑)」と語る、大場元貴選手が4勝を挙げて初チャンピオンを確定させている。

 来シーズンはホンダ・フィットに乗り換える予定という事で、現在は車両製作中。第7戦はホンダ・シビックをレンタルしてFF-2/4WD-1クラスに参戦となった。

 チャンピオン不在となったこのクラスだが、ヒート1でトップタイムを刻んだのがランキング2番手の竹花豪紀選手。ヒート2で更に3秒上のタイムアップを果たし、このクラス唯一の1分11秒台をマーク、2位以下に2秒近い差をつけて優勝を飾った。

「2回くらい死にかけたので(笑)無事で良かったです。特に1コーナーは結構ヤバかったんですが、全日本レベルはそれが普通だと思うので、むしろ正解だったのかな。特に今回は若干コースも短く取り返す所がないので、1コーナーの勢いを最後まで繋げられたのが良かったと思います」と激走を振り返った竹花選手。前戦に続く今季2勝目を挙げた。

すでにチャンピオンが確定しているFF-1クラスだが、新チャンピオンという“鬼”が居ぬ間の勝利を掴み取ったのは、2023シーズン王者の竹花豪起選手(PガレYH Moty’sスイフト)。ヒート1から2番手以下を突き放し、ヒート2はタイムアップでその差を更に広げて完勝した。
ヒート1はFF-1の3番手だった三橋清哉選手(プロジェクトガレージストーリア)だったが、ヒート2で2秒以上タイムアップし逆転、今季最上位の2位を獲得した(左)。3位の岡本巧選手(YHダイシンKCタクミスイフト)も、ヒート1での7番手から逆転劇を演じ、勝利を挙げた第1戦以来のトップ3に入った(右)。
FF-1は上位4選手が表彰を受けた。左から2位の三橋選手、優勝した竹花選手、3位の岡本選手、4位の棚瀬昌樹選手(Z-改ADVANスイフト)。

FF-2/4WD-1クラス

 第6戦終了時点で、多くのドライバーが戴冠の権利を有しているFF-2/4WD-1クラス。混戦を極める中、ヒート1でトップに立ったのはランキング3番手の川口昭一選手。ポイントリーダーの内藤修一選手は0.51秒遅れの2番手につける。

 ヒート2になるとクラスファーストゼッケンで、今季はFF-1のチャンピオンを確定させた大場元貴選手が川口選手のタイムを約0.3秒更新して仕切り直しとなった。その後、ランキング8番手の星野幹男選手がトップタイムを更新し、暫定トップという状況で後半ゼッケンに突入した。

 川口選手の走りが注目されたが、手痛いタイムダウンでトップ奪還ならず。そして、第1ヒートは6番手と出遅れていた柴田純選手が、星野選手を約0.9秒上回る1分10秒台を叩き出してトップに躍り出た。ラストゼッケン内藤選手のタイムは、柴田選手には約0.4秒及ばず2位に。柴田選手が貴重な今季2勝目を挙げた。

「第1ヒートは3速主体で走ったのですが車速を確認したところ、2速で回す速度域だったので、第2ヒートのストレート以降は2速ホールドで、ステアリング操作に集中して走ったのが良かったと思います」と、走りを振り返った柴田選手。

 続けて「今シーズンからGPSを取り入れて、データをPCで確認できるようになりました。今回はそれを上手く活用できましたね(笑)」と、勝因も明かしてくれた柴田選手はこの優勝でランキングトップを奪取。しかし王座争いは混戦のまま、チャンピオン確定は最終第8戦に持ち越された。

FF-2/4WD-1クラスで第7戦の勝利を掴んだのは第2戦での勝利以来、ポイントを積み上げてランキング2番手につける柴田純選手(ADVAN・サポートスイフト)。ヒート2ではクラスでただひとり1分10秒台に突入する走りで、今季2勝目を挙げてランキングトップの座も奪い、最終第8戦を迎える。
ディフェンディングチャンピオンの内藤修一選手(DL☆XP☆SCENEスイフト)は2ヒートとも2番手タイムで手堅くFF-2/4WD-1の2位を獲得するも、ランキングでは柴田選手が逆転。最終戦での再逆転に賭ける展開となった(左)。ランキング8番手で今回の一戦を迎えた星野幹男選手(YH.SCENEマルヰスイフト)はヒート2で2.5秒以上タイムアップ、第2戦の2位以来となるトップ3の3位に入った(右)。
FF-2/4WD-1で表彰を受けた上位4選手。左から2位の内藤選手、優勝した柴田選手、3位の星野選手。そして、FF-1チャンピオン確定済の大場元貴選手(ルート6・レンタル・シビック)がこのクラスに参戦し、4位に入った。

4WD-2クラス

 4WD-2クラスはランキングトップの小林茂則選手を筆頭に、ランキング2番手の村上周選手、村上選手と同ポイントの島部亨選手、そしてランキング4番手の江藤貴文選手までがチャンピオンの権利を持って第7戦を迎えた。島部選手が今回の一戦を欠場し、王座争いは3選手に絞られた。

 第6戦終了時点で、小林選手は92ポイント、村上選手が63ポイント、江藤選手は57ポイント獲得と、ポイント的には小林選手が一歩抜きん出ているが、有効得点では3位以上のポイントを獲らないと加算できないうえに、村上、江藤両選手は残り2戦全てのポイントを加算できるため、小林選手にとっても油断出来ない状況だ。

 ヒート1で1分7秒75のトップタイムをマークしたのは小林選手。江藤選手は1.083秒遅れの3番手。村上選手は江藤選手から0.034秒遅れて4番手につけ、ヒート2を迎えた。

 前半クラスに比べて、ヒート2でタイムアップの伸び代が少なかったこのクラスでは、3番手以下の順位は入れ替わりがあったものの、小林選手のトップタイムが更新される事なく進行した。その均衡を破ったのがラスト3の江藤選手。1分07秒553と、小林選手のタイムを0.197秒更新してトップに立つ。そして続くゼッケン、ラス前の村上選手のタイムが注目されたが、ここで村上選手は痛恨のタイムダウンを喫してしまい5番手に終わる。

 この時点で小林選手は2位以上が確定してチャンピオンも確定となったが、その手を緩めることはなく叩き出したタイムは1分5秒958と、ダメ押しと言わんばかりの圧倒的なタイムで優勝。最終戦を待たずして確定させたチャンピオンに華を添えた。

「今シーズンは、チャンピオンを獲るために全戦出場と決めて、全て表彰台圏内を目標に掲げてましたが、前回は自分のミスで4位となってしまいました。なので、今回は“絶対に勝つ”ということで体制を整えてきました」と、小林選手は今回の一戦への意気込みを明かした。

 続けて「これまで1本目はトップでも、2本目にミスをして順位を落とす事も多かったので、そういった面でも勝ってチャンピオンを決める事ができたのは安心しました(笑)」と笑顔で語った。更に「前回、初めてのチャンピオンを獲ったのが2018年で、それからチャンピオンに絡むことは多かったけど、随分時間がかかっちゃいましたね」と、安堵の表情を浮かべながら、2回目のチャンピオン確定までを振り返った。

4WD-2クラスの小林茂則選手(TRSシーンDLランサー)はランキング2番手以下に30ポイント近い差をつけ、チャンピオン確定に有利な状況で第7戦を迎えた。ヒート1をトップで折り返すと、ヒート2で自身のスタート前にチャンピオンが確定。それでも必勝の思いをこめた走りで今回の一戦の全体トップタイムを叩き出し、2回目のチャンピオン確定を飾る今季3勝目を挙げて笑顔を見せた。
勝って4WD-2逆転チャンピオンの芽を残したい江藤貴文選手(DL北條塾SCENEランサー)のヒート1は3番手タイム。ヒート2では一時トップに立つも、小林選手の全体トップタイムで2位に下がった(左)。3位を掴んだのは五十嵐貴右選手(YHワコーズAKTランサーX)。ヒート1では5番手に甘んじていたが、ヒート2はタイムアップ。江藤選手に逆転されるも、今季初の表彰台に上がった(右)。
4WD-2の表彰は、左から2位の江藤選手、優勝でチャンピオンを確定させた小林選手、3位の五十嵐選手が受けた。

2024年JMRC北海道Moty’sダートトライアルシリーズ第7戦

ジュニアJ-1クラス

 川原優登選手がチャンピオンを確定させている、2024年JMRC北海道Moty’sダートトライアルシリーズのジュニアJ-1クラス。「今シーズンは大きくクルマを壊す事がなかったので(笑)、その分走練習会や競技会に参加できて走る量が増えて、自分自身のスキルアップを感じてます」と、チャンピオン確定のカギを川原選手は語る。

 その川原選手がヒート1でトップタイムを刻むが、ヒート2で加藤貴宗選手がそのタイムを更新し、7秒以上のタイムアップで4番手からトップに躍り出た。川原選手もタイムアップで応戦するが、加藤選手には約0.3秒及ばず2番手に終わり、加藤選手が逆転で優勝を決めた。

「今回は、今朝まで修理していた自分のクルマが間に合わず借り物だったので、1本目は探りながらの走行でした。2本目も正直微妙な感じで、自分のスイフトで走れなかった悔しさをぶつけて、横転しても構わないくらいの操作になってしまいました(笑)」とは、優勝した加藤選手。

 一方、逆転を許してしまった川原選手は、「2本目の路面変化に対応出来なかったのが敗因ですね」とのこと。川原選手は大学院生、そして加藤選手は大学3年生と、ともに20代の学生ドライバー。今後もモータースポーツを続けていきたいとも、力強く語ってくれた。

2024年JMRC北海道Moty’sダートトライアルシリーズ第7戦のジュニアJ-1クラスは、室蘭工業大学自動車部からトリプルエントリーした三菱・ミラージュの一角、加藤貴宗選手(室工大レスポYHスイフト)が優勝。車名のとおりZC31型スズキ・スイフトスポーツが相棒だが修理が間に合わず、急遽乗り換えたミラージュでシリーズ初優勝を挙げた。
J-1のチャンピオンを確定させている川原優登選手(北大Ahresty白ミラージュ)は2位を獲得。ヒート1では2番手以下を1秒以上離すトップに立ったが、ヒート2では加藤選手のタイムの伸びには敵わず、逆転を喫した(左)。加藤選手と車両をシェアした野島瑠空選手(室工大レスポNKLミラー呪)はヒート2で6秒以上タイムアップ。ヒート1の6番手からジャンプアップしで3位に入った(右)。
J-1は左から、2位の河原選手、優勝した加藤選手、3位の野島選手が表彰された。3選手ともミラージュを駆る学生ドライバーと、フレッシュな表彰台となった。

ジュニアJ-2クラス

 ジュニアJ-2クラスは、山口達也選手がチャンピオンを確定させているが、今回の一戦は欠場した。

 ヒート1でトップタイムを刻んだのが、二連勝を狙う中澤昌彦選手。しかしヒート2で三輪晴也選手がトップタイムを約1.2秒更新。逆転を狙った中澤選手だが0.27秒届かず2位に終わり、三輪選手が逆転優勝を決めた。

「今年は帯広(イーストジャパンオフロードスタジアムでの第4戦)にも参加しましたが、これまで糠平の氷上しか走ったことがありませんでした」と、明かした三輪選手。スナガワは初走行だったそうで、「1本目は様子見で何となくという感じで、2本目はグリップ感もわかってきたのでそれなりに踏めましたがやはり、ぬかるみや乾いている路面に対応しきれなかった箇所もありましたね」と、三輪選手は反省しきりだった。しかし初走行のコースでも、僅差の勝負を制する強さを見せた。

ジュニアJ-2クラスを制した三輪晴也選手(ランサー10)は、北海道ダートラの開幕戦も担う糠平湖氷上タイムトライアルのスペシャリスト。勝負を決めたヒート2では4秒以上もタイムアップするなど、グラベルでの走りも速さを発揮し始めている。
第6戦からJ-2に参戦すると、いきなり優勝を果たした中澤昌彦選手(びらとり和牛インプレッサ)はヒート1をトップで折り返すが、ヒート2では三輪選手に僅差で及ばず2位。二連勝はならなかった(左)。第3戦で3位、第5戦で2位と、二戦続けて順位を上げていた中島歩選手(ルート6 GRヤリス)だったが第7戦では勝利に0.1秒及ばず3位。それでも三戦連続で表彰台に上がった(右)。
0.1秒の中にトップ3がひしめいたJ-2は、左から2位の中澤選手、優勝した三輪選手、3位の中島選手が表彰を受けた。

ジュニアAT-1クラス、ビギナークラス

 ジュニアAT-1クラスは、ひとり参戦した宇野祐哉選手が無事完走。表彰式では「相変わらずの1台中の1位なので、だれかこのクラスに遊びにきて下さい!」と、ライバルの参戦を切実に呼びかけていた。

 クロースドクラスに該当するビギナークラスは、吉川直克選手がヒート1でトップタイムをマーク。ヒート2はタイムダウンに終わるも、トップを守り切った。

ジュニアAT-1クラスは前戦から参戦する宇野祐哉選手(DL・TRSアクア)ひとりがエントリーして無事完走、クラス成立となった。最終第8戦が成立すれば、宇野選手のチャンピオンが確定するが、ライバルの参戦にもおおいに期待したいところだ。
JAFモータースポーツライセンスを持たないドライバーでも参戦できるビギナークラスでは、ヒート1のタイムで2位以下を2秒近く離した吉川直克選手(サポートインプレッサ)がトップに立った。
ビギナーの2位はヒート2で2秒近くタイムアップした坂崎純選手(ルート6黒インプレッサ)が獲得した(左)。このクラスに5台参戦したトヨタ・ヴィッツ勢のトップは、131型を駆った鎌田幹宏選手(ルート6終活ヴィッツR60)で、3位に入った(右)。
ビギナーは左から、2位の坂崎選手、1位の吉川選手、3位の鎌田選手が表彰を受けた。

フォト/友田宏之 レポート/友田宏之、JAFスポーツ編集部

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