逆襲の第5戦ダートラ・エビス、PN1南優希選手、N岸山信之選手、SA2浜孝佳選手、D2鎌田卓麻選手が今季2勝目!
2025年7月4日

今シーズンは全8戦が組まれている全日本ダートトライアル選手権は、早くもシリーズの後半戦へ突入となる第5戦「TEIN CUP ALL JAPAN SUPER DT in EBISU」が、6月21~22日に福島県二本松市のエビスサーキット新南コース(スライドパーク)で開催された。
2025年JAF全日本ダートトライアル選手権 第5戦「TEIN CUP ALL JAPAN SUPER DT in EBISU」
開催日:2025年6月21~6月22日
開催地:エビスサーキット新南 スライドパーク(福島県二本松市)
主催:Team-F、SiF
昨年の全日本初開催に続き、今年も全日本の一戦に組み込まれた同コースは、「ドリフトの聖地」として世界的に名を馳せたエビスサーキットの南コースを全面改修し、2023年に開設されたダートコース。元々は舗装部分だったアスファルトの一部を剥がし、細かく砕いたアスファルトの破片を再び敷き詰めたダート路面は、うねりやギャップがないフラットな路面が大きな特徴だ。
また、基本的には路面のミューが一般的なダートコースよりも低いものの、コースに敷き詰められた砂利状のアスファルトの破片が掃け、路面の土台となる舗装部分が顔を出すとタイヤのグリップ力が一気に上がるという、ドライバーにとっては攻略が難しいコースのひとつになっている。
今年の大会も、決勝日は朝から太陽が照りつけ、最高気温が35度近くまで上昇するという、6月としては異例のコンディションとなった。第1ヒート前に入念に行われた撒水もあっという間に乾き、各クラスとも路面を覆う細かく砕かれたアスファルトの破片が掃けた第2ヒートの勝負となった。
エントリー台数は全クラス合わせて150台だったが、PNE1クラスとPNE2クラスはクラス成立台数に満たなかったために不成立。PN1クラスからD2クラスまでの9クラスで競われることになった。




PN1クラス
PN1クラスは、今季2勝を挙げている飯島千尋選手(スズキ・スイフトスポーツ)が第1ヒートのベストタイムを奪うが、第2ヒートでは第3戦丸和で全日本初優勝を飾った南優希選手(スズキ・スイフトスポーツ)が「いつもは扁平率が60サイズのタイヤを装着しているんですけど、エビスは路面が特殊なので第2ヒートは縦トラクションが出ることを意識して65サイズのタイヤを装着しました。この作戦が功を奏したと思います」とベストタイムを更新。
クラス最終走者の飯島選手は、「第2ヒートもまとめたつもりだったんですけど、中間の8の字区間でクルマをうまく前に進めることができませんでした」と、南選手には0.261秒届かず。南選手が飯島選手に並ぶ今季2勝目を獲得した。
2位に飯島選手が入賞し、シリーズランキングトップの座を死守。3位には、「フラットなコースは得意なので、今回はポイントが獲れたらいいなというくらいの気持ちでプレッシャーを感じず走ったことが良かったと思います」という峯岸伸也選手(トヨタ・ヤリス)が、全日本初表彰台を獲得した。




PN2クラス
PN2クラスは、第1ヒートでクラス唯一となる1分36秒台のタイムをたたき出した奈良勇希選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、第2ヒートでもクラス唯一となる1分31秒台のタイムでライバル勢を圧倒。PN2クラスに移ってから初となる優勝を獲得した。
「開幕戦いなべで3位、第2戦タカタで2位に入賞することができて、このクラスでやっていけるという手応えを感じました。エビスはジムカーナのようにしっかり抑えてターンでタイムを稼ぐ走りを意識して走りました」と奈良選手。残り3戦で逆転チャンピオンを目指す。
2位には、「ターンでガス欠症状が出てしまいました。パーコレーションを起こしていたのか、パドックでは実際よりも多めの表示が出ていたので……。自分の管理の甘さが敗因ですね」という佐藤卓也選手(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞、3位には今季2勝を挙げている張間健太選手(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞した。




PN3クラス
PN3クラスは、前日の公開練習で2位に約2秒差のトップタイムをマークした竹本幸広選手(トヨタ・GR86)が、決勝第1ヒートでも2位に2秒以上の差をつけるベストタイムをマークする。
第2ヒートに入ると、「昨年の結果を踏まえて、エビスの第2ヒートは雨が降っても超硬質路面用タイヤを履こうと決めていました」という和泉泰至選手(トヨタ・GR86)がベストタイムを1分32秒台に引き上げると、「両ヒートとも冷静に走ることができたと思います。第2ヒートは、超硬質路面用タイヤの性能が発揮できる路面になっていると考え、自信を持って走りました」という小関高幸選手(スバル・BRZ)が、1分31秒台のベストタイムをマーク。
一方、第1ヒートで2位以下を大きくリードしていた竹本選手は、第1ヒートと同じ硬質路面用タイヤで攻め、和泉選手のタイムを0.084秒上回るものの、小関選手には1.416秒届かず。「走りは第1ヒートと同様に攻めてたつもりなんですけど、タイヤ選択で気持ちが守りに入っていました……。やっぱり、タイヤ選択も攻めなくてはだめですね」という竹本選手を抑えた小関選手が、PN3クラスでは初となる優勝をつかみ獲った。2位に小関選手、3位に和泉選手がそれぞれ入った。




Nクラス
Nクラスは、今季未勝利の細木智矢選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)が第1ヒートを制するが、第2ヒートに入ると「エビスはけっこう走り込んでるので、クルマを暴れさせないようしっかり抑え込んで走りました」という関東の宮地雅弘選手(三菱・ランサーエボリューションⅨ)がベストタイムを更新。
このまま宮地選手が逃げ切るかと思われたが、「公開練習の時にフィーリングが良かったので、決勝は第1ヒートから超硬質路面用タイヤで走るのを決めていました。迷いはなかったです」という岸山信之選手(トヨタ・GRヤリス)がベストタイムを更新。第1ヒートトップの細木選手はタイムアップしたものの、順位は4番手にポジションダウン。第2ヒートの逆転で、岸山選手が細木選手に並ぶ今季2勝目を獲得した。
2位に宮地選手、3位に「2カ所で大きなミスをしてしまったことが悔やまれます」という山崎利博選手(トヨタ・GRヤリスGRMN)が入賞した。




SA1クラス
SA1クラスは、第2ヒートでクラストップバッターの宮西怜選手(ホンダ・シビック・タイプR)がたたき出したタイムが更新されない状況が続くかに思われたが、AT仕様のスズキ・スイフトスポーツでSA1クラスに参戦する葛西キャサリン伸彦選手がベストタイムを更新。第1ヒート3番手の渡邉知成選手(ホンダ・シビック・タイプR)が葛西キャサリン伸彦選手のタイムに迫るものの、0.086秒届かず。
「このコースとは相性が良く、2023年にJAFカップが開催されて以来、一度も負けたことがないんです」という葛西キャサリン伸彦選手が、今季初優勝を飾るとともに、このクラスでは初となるAT車両での優勝を獲得した。
2位には「エビスを走るのは今回で2回目なのですが、タイトターンの処理がキャサリン選手の方が一枚上手だったと思います」という渡邉選手が入賞、トップと0.256秒差の3位には「第1ヒートと同じようなターンができなかったのが敗因だったと思います」という古沢和夫選手(三菱・ミラージュ)が入賞した。




SA2クラス
SA2クラスは、第1ヒートをミスコースで終えた荒井信介選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)が「何カ所かインに巻き込みすぎてクルマが前に出なかった」と言いながらもベストタイムを更新。だが、すぐさま第1ヒート2番手の浜孝佳選手(三菱・ランサーエボリューションⅨ)が、「昨年の大会や昨日の公開練習、今日の第1ヒートではゴール手前の270度ターンをうまく回しきれなかったのですが、今日の第2ヒートは回しきることができました!」とベストタイムを更新。
第1ヒートトップの岡本泰成選手(三菱・ランサーエボリューションⅨ)は、「ドライバー的にはミスがなかったと思うけど、結果的にはジムカーナに寄せた走りが浜選手に届かなかったことが原因だと思います」と、浜選手に0.304秒届かずゴール。浜選手が、岡本選手に並ぶ今季2勝目を獲得、2位に岡本選手、3位に荒井選手がそれぞれ入賞した。




SCクラス
第1ヒートは、亀田幸弘選手(スバル・インプレッサ)、目黒亮選手(トヨタ・GRヤリス)、上村智也選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)らが1分21秒台に並んだSCクラス。
第2ヒートは、國政九磨選手(スバル・WRX)がマークしたベストタイムを塗り替えた上村選手がトップに立つが、「ここ数戦はクルマもすごく乗りやすくなってきて、土曜日の公開練習で悪かったところを、決勝の第2ヒートでしっかり修正できました」という目黒選手がベストタイムを更新。
第1ヒートトップの亀田選手は、「いつもであれば後半セクションでタイムを稼いでいたのですが、今回は後半セクションをまとめきることができませんでした」と目黒選手に0.368秒届かず。目黒選手が第3戦丸和からの3連勝を獲得、2位に亀田選手、3位は上村選手となった。




D1クラス
D1クラスは、第1ヒートで鶴岡義広選手(スズキ・スイフトスポーツ)がトップに立つが、第2ヒートは第1ヒートで2番手タイムをマークしながらもパイロンペナルティで大きく順位を下げていた志村雅紀選手(スズキ・スイフトスポーツ)がベストタイムを更新。
第1ヒート2番手のパッション崎山選手(トヨタ・MR-S)は「マシン的にはエビスが一番鬼門だと考えていたので、その中ではまずまずの結果だとは思うのですが、それでもやっぱり悔しいですね」と志村選手に0.367秒届かず。「今回はエンジンのECUをしっかり現車合わせしてきました」という志村選手が今季2勝目を獲得、パッション崎山選手が2位、「デフのセッティングを変えてきたんですけど、まだまだ煮詰めていかなければなりませんね」という山下貴史選手(三菱・FTO)が3位となった。




D2クラス
D2クラスは、第1ヒートでクラス唯一となる1分17秒台のタイムをたたき出しトップに立った鎌田卓麻選手(スバル・BRZ)に、第2ヒートは強豪たちが次々と迫る。
まずは、第1ヒート3番手の谷田川敏幸選手(スバル・BRZ)がベストタイムを0.631秒更新。すぐさま、第1ヒート4番手の炭山裕矢選手(三菱・ミラージュ)が、谷田川選手のタイムを0.057秒上回ってくる。だが炭山選手は「クルマのセッティングは最後の最後に良くなったけど、第2ヒートはストレートエンドのコーナーでドライバーがミスしてしまった」と不安な顔をみせる。その不安は的中し、「エビスに合わせてクルマがすごく進化してきて、公開練習、決勝ヒートを通してすごく走りやすかった」という鎌田選手が、ベストタイムを1分16秒台に引き上げてくる。
クラス最終走者の田口勝彦選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)は、「エンジンがストール気味になる症状が最後まで解決しなかった。でも、今回は(鎌田)卓麻が速かった」と、タイムを1分16秒台に乗せたものの、鎌田選手には0.623秒届かず。鎌田選手が貴重な今季2勝目、田口選手が2位、炭山選手が3位となった。




PHOTO/CINQ、大野洋介[Yousuke OHNO] REPORT/CINQ、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
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