関東ダートラ開幕の第2戦、N1&PN2の田村啓喬選手が念願の地区戦初優勝!!
2025年6月13日

2025年JAF関東ダートトライアル選手権 第2戦が5月18日、長野県野沢温泉村に建つモーターランド野沢で開催された。全7戰のスケジュールが組まれた今季の関東地区戦だが4月13日に予定されていた第1戦が、主催する東京都のJAF加盟クラブ、フォレストスポーツクラブ(FSC)の代表として長きにわたり地区戦、そしてJAF全日本ダートトライアル選手権の主催に尽力されてきた新名孝雄氏が1月に逝去されて中止となった。そのため2025シーズンは全6戦となり、今回の第2戦が今季開幕戦となった。
2025年JAF関東ダートトライアル選手権 第2戦
JMRC関東ダートトライアルシリーズ
ロードナイトダートトライアル
開催日:2025年5月18日
開催地:モーターランド野沢(長野県野沢温泉村)
主催:ROAD-NIGHT、RT MIZUBASYO
第2戦はラリーチーム.ロードナイト(ROAD-KNIGHT)とラリーチーム水芭蕉(RT MIZUBASYO)、長野県のJAF加盟クラブによる共催。競技長は坂田一也氏、コース委員長は宮入友秀氏といった全日本ドライバーをはじめ、散水車を駆るのは元JMRC関東ダートトライアル部会長の星野悟氏と豪華メンバーが運営に携わった。
クラス分けは今季もJAF地方選手権がかかる7クラスに加え、チャレンジクラスがふたつの計9クラスで競われる。「チャレンジクラスは昨年から初心者や若手を対象として設定したのですが、シリーズ戦として組んだことと、エントリーフィーを安くしたことが良かったのか盛り上がりをみせてきたので、今シーズンも継続することにしました」と語ったのは、関東ダートラ部会の古沢和夫部会長。
続けて「今年は関東地区でJAFカップが開催されるので参加する選手たちへの援助として、中止となった第1戦の代わりに部会で練習会を開催したのですが、その時の黒字分を還元していきたいと思ってます。金額的には、お昼代くらいかもしれませんが(笑)」と明かした。
その目的について「金銭的な援助というよりも、運営側と選手が近づいてダートトライアルを一緒に盛りあげていきたい、ということで提案しました」とのことだ。自身も現役ドライバー、“走る部会長”である古沢部会長は今後も競技役員や選手たちとともに協力して、関東ダートラを盛り上げる策を提案をしていきたい、と語った。
設定されたレイアウトは、かつて野沢で開催された全日本戦で採用されたものがベースとなっており、前半のハイスピード区間から後半のテクニカル区間まで、野沢の攻めどころが満載となった。
事前の天気予報では雨マークも出ていたが、朝から快晴となったモーターランド野沢に93選手がエントリー。午後からは曇り空となり表彰式の時間帯には小雨が降ったものの、競技中の天気は保ちこたえ、ほぼ全てのクラスで第2ヒートが決勝タイムとなる、白熱した戦いが繰り広げられた。


2025年JAF関東ダートトライアル選手権 第2戦
N1500&PN1クラス
排気量1500cc以下の2WDで平成12年規制以降の排ガス規制に適合するN車両、及び1600cc以下で2WDのAE車両を含むPN車両が対象のN1500&PN1クラス。第1ヒートで1分58秒136をマークしてトップに立ったのは、飯島千尋選手。今季もすでに全日本で開幕二連勝を挙げてランキングトップに立っている、現全日本PN1クラス王者だ。
第2ヒートになると、S2クラスから転向してきたSam Iijima選手が1分55秒666でトップタイムを更新すると、飯島選手はそのタイムを0.197秒上回りトップ奪回。そしてラストゼッケン、ディフェンディングチャンピオンの柿澤廣幸選手は1分56秒223で3位となった。
全日本チャンピオンの貫禄を見せ、勝利を収めた飯島選手は「とにかく、攻めて攻めて守らない、という意識で失敗しながら勝ちました。2カ所大きな失敗がありましたが絶対にあきらめず、冷静にタイムを削っていくという全日本の走りができたと思います」と走りを振り返った。



N1&PN2クラス
N1&PN2クラスは2WD及び1600cc以下で4WDのN車両、あるいは1600ccを超える前輪駆動のPN車両で争う。クラス唯一のダイハツ・ストーリアX4乗りの高木凜吾選手が1分56秒335で第1ヒートのトップに立つ。
第2ヒートではクラスファーストゼッケンの遠藤美子選手が1分55秒台を刻み、完全に2本目勝負となった。その後は1分55秒台を上回るドライバーが現れることなく進行していくが、シードゼッケン勢に入り1分53秒638までタイムを詰めたのが、昨季ランキング5位の田村啓喬選手。第1ヒートでの4番手からトップに躍り出て、後続のタイムを待つことに。
続く松坂元樹選手は1分55秒台、八木信昭選手は1分54秒台、三島真太郎選手は1分55秒台と、田村選手がトップをキープしたまま、残るはラストゼッケンでディフェンディングチャンピオンの小山健一選手がスタート。注目のタイムは、1分53秒888で0.25秒届かず2位となり、田村選手が地区戦初優勝を飾った。
「ダートトライアル歴は今年、11年目で地区戦は5~6年です。一昨年までミラージュでS1クラスに参戦していたのですが、箸にも棒にもって感じでした(笑)。昨年から心機一転、スイフトに乗り換えてN1&PN2クラスに移りました」と、田村選手はダートラキャリアを語った。
念願の優勝を決めた走りについて「2本目は、1本目で良くなかった後半区間をうまく修正できたのと、前半区間でも踏めるところはきっちり踏めたので手応えはありましたが、想定タイムとかは意識せず、とにかく無我夢中で走りました(笑)」と振り返った。表彰式での田村選手は、勝因のひとつにもなった小山選手からのアドバイスに感謝を述べると、約2分間の独演会で喜びを爆発させた。



PN3クラス
1600ccを超える後輪駆動のPN車両で争われるPN3クラスは第1ヒート、2分00秒台で暫定トップに立ったのが、昨季ランキング4位の飯田太郎選手。2番手はディフェンディングチャンピオン鈴木義則選手が約0.6秒差で続いた。
第2ヒートに入ると、昨季途中からこのクラスに転向してきた2023シーズンのN1500&PN1王者、佐藤羽琉妃選手が1分59秒台に突入。ターゲットタイムが更新されて、後半のシードゼッケンに入ると1分57秒467で飯田選手が再逆転。続く平井泰選手は佐藤選手のタイムは上回ったものの、1分59秒台に留まった。
ラスト2、昨季ランキング2位の湯本敬選手が1分57秒218を叩き出しトップに立つ。ラストゼッケン鈴木選手も同じく1分57秒台までベストタイムを更新して飯田選手を上回った。しかし、トップタイムには0.197秒及ばず、湯本選手に軍配が上がった。
「先週の長野県戦はビリだったんですよ(笑)。今回も上手く走れなかったんだけど、勝てました。足回りを変更したのですが、好みのセッティングじゃなくて何回も失敗しました。これに慣れるか、元に戻すかっていう感じですね」と、湯本選手は納得がいく走りではなかった様子。それでも勝利を引き寄せた“鬼の湯本”は、ベテランらしく経験値の高さを開幕戦から見せつけた。



N2クラス
1600ccを超える4WDのN車両で争われるN2クラスは、第1ヒートで1分47秒508をマークしたディフェンディングチャンピオン、影山浩一郎選手が昨季ランキング2位の中島明彦選手を約2.1秒差で従えてトップに立った。3番手には同3位の安藤輝明選手が中島選手から約0.13秒差でつけ、昨季のトップ3がそのままの順位で第1ヒートを折り返した。
第2ヒートでは後半のシードゼッケン勢に入ると、同6位の神保俊宏選手が1分48秒737で2番手に割って入り、上位陣に動きが出る。次ゼッケンで同4位の増田徹選手はベストを更新するが、神保選手に0.008秒届かず3番手。続く安藤選手はタイムダウンで5番手から順位を上げられず。
依然トップは影山選手がキープしていたが、一気に1分45秒74を叩き出したのが、ラストゼッケン前の中島選手。ベストを4秒近く更新してトップに躍り出た。このタイムを聞けずにスタートした影山選手はトップ奪回に1.8秒近いタイムアップが必須だったが、ベストを1.1秒更新するに留まった。
逆転で勝利を収めた中島選手は、「野沢はこれまで3回しか走ったことがないので、1本目はコースを覚えるのに一生懸命でした。2本目は慣熟歩行で路面が掃けているラインを確認し、回転数を落とさないよう踏み抜けたのが良かったと思います。1カ所シフトミスはありましたが、手応えは感じてました」とチャンピオン確定に向けて好スタートを切った。



S1クラス
2WDのSA・SAX・B・SC車両で争われるS1の第1ヒートは、野沢スペシャリストの飯田清明選手が2番手の山田一雄選手に約2.5秒の差をつけるトップタイム、1分53秒679をマークする。
第2ヒートになると、山田選手はトップタイムを0.436秒更新して逆転するも、飯田選手は更に1分52秒818まで詰めて再逆転。その後はトップタイム更新のアナウンスが聞こえないまま進み、ラストゼッケンで昨季ランキング2位の和田悟選手が第1ヒートのミスコースから一発勝負で飯田選手に迫るタイムを出すも、0.096秒及ばず2位止まり。飯田選手が守り切って優勝となった。
かつてはトヨタ・スターレットGTを駆り、野沢で数多くの勝利を上げてきた飯田選手は「改造車のEKに乗り換えてから5シーズン目になりますが、最近ようやく高回転域を使えるようになってきた感じです」と今の愛車、ホンダ・シビックについて語った。
走りについて「1本目は路面の好きなところを気持ちよく走ったのですが、2本目は砂利が掃けてラインができたので、そのラインに合わせなきゃということと、気持ちよくいっちゃえ(笑)というのが混ざって中途半端な走りになってしまいました。失敗もあったのでギリギリ勝ててラッキーでした」とのことだった飯田選手は昨季、野沢での第4戦で優勝して以来のスポット参戦。これで野沢二連勝となった。



S2クラス
4WDのSA・SAX・B・SC車両で争われるS2は、昨季ランキング2位の宮地雅弘選手がクラス唯一の1分47秒台をマークし、第1ヒートをトップで折り返す。そして第2ヒート、岩崎直也選手が1分46秒463でトップタイムを更新するとラス前、SUMITO選手が1分45秒909で更に更新。そしてラストゼッケンの宮地選手は、それを上回る1分44秒682を叩き出してタイムアップ合戦を制した。
「今年はクルマが無いので(N2の)中島選手とダブルエントリーです。本当はオレのクルマなんだけどね(笑)。その中島選手が2本目に良いタイムを出して“このタイム抜きますよね”って発破かけてきたから、優勝っていうよりも中島選手を抜くことだけ考えて走りました。とりあえず先輩ヅラはできましたね(笑)」と、なんとN車両での勝利だったことを明かした宮地選手。2023シーズン以来のチャンピオン奪回に向けて、優勝で好発進した。



Dクラス
排気量及び駆動方式の区分ないD車両で争われるDクラスでは、全勝で昨季のチャンピオンを獲った森正選手が第1ヒートから1分44秒569の快走を見せてトップタイムをマーク。しかし、第2ヒートで昨季ランキング6位の熊川嘉則選手がトップタイムを0.02秒更新。熊川選手のトップタイムは破られず、ラストゼッケンの森選手がスタートを迎えた。しかし、森選手はスタートラインを切るもののスローダウンしてしまいリタイア、あっけない幕切れとなった。
勝利を収めた熊川選手は、「クルマをエボXにしてから初めて勝ったので、優勝は4年ぶりくらいかな。昨年から今年にかけて、足回りを色々と変更して良い感じになってきて、走りの方も1カ所ミスしましたが、ほぼ想定していた分タイムアップしました。ただ2本目、森選手が走ってたらどうだったかな、という感じではありますが......(苦笑)」と、やや釈然としない表情だったが、久しぶりの優勝でシーズンスタートを切った。



JMRC関東ダートトライアルシリーズ
CHA1クラス、CHA2クラス
昨季からJMRC関東ダートトライアルシリーズに新設されたチャレンジクラスは、2WDが対象のCHA1クラスと、4WDが競うCHA2クラスに分かれている。両クラスとも排気量と車両の区分はなく、特にCHA1は多くの車種が対象となる。
CHA1は、白いZC32S型スズキ・スイフトスポーツによる一騎討ちとなり、大野俊介選手が第1ヒートのタイムで逃げ切った。三つ巴となったCHA2クラスは、三菱・ランサーエボリューションIXを駆る池田啓一選手がスバル・インプレッサWRX STI勢を抑え、やはり第1ヒートのタイムでトップに立った。




フォト/友田宏之 [Hiroyuki TOMODA] レポート/友田宏之[Hiroyuki TOMODA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]