ホテル椿山荘東京を舞台に、盛大に開催された関東地方選手権表彰式!
2024年3月1日

さまざまなカテゴリーやクラスがひしめく関東管内の2023年モータースポーツを締めくくる、JAF関東地方選手権表彰式が東京都内のホテルで開催された。シリーズを戦い抜いた選手たちは誇らしげな表情で表彰式を迎え、大勢の招待者が見守る中、その栄誉が称えられた。
2023年JAF関東地方選手権表彰式
開催日:2024年2月11日
開催地:ホテル椿山荘東京 グランドホール椿(東京都文京区)
主催:JAF関東本部
各地で行われる地方モータースポーツ表彰式の中でも最大規模を誇るのが関東地方選手権表彰式。昨年に続き、東京都文京区にあるホテル椿山荘東京 バンケット棟5Fのグランドホール椿にて、2月11日にその式典が執り行われた。広大な日本庭園に囲まれた風光明媚な会場もさることながら、その格式の高さは輝かしい成績を収めた選手たちの栄誉を称えるに相応しい場でもあった。ホスピタリティの高さに驚嘆する招待者も見られたほどだ。
当日は13時より受付が開始され、14時に表彰式が開会、そして約40あるカテゴリー/クラスの招待者を次々と表彰していく流れだ。なお、今回も昨年同様に二部制を採用しており、表彰式を第一部とし、第二部では祝賀食事会が催される形となっている。表彰式開催が建国記念の日の祝日と重なったこともあり、翌日が振替休日になったことで、とくに地方からの出席者には慌ただしさがなかった。


「ただ今より2023年JAF関東地方選手権表彰式を始めて参ります」と司会進行の柿沼佐智子氏が定刻通り場内アナウンスし、第一部の表彰式がスタートする。冒頭では主催者を代表してJAF関東本部の佐藤康彦本部長が「各競技、各カテゴリーで入賞された225名の選手の皆さま方に対しまして、日々の努力、ご研鑽を積まれた結果の栄誉を称えて心よりお祝い申し上げたいと思います」と挨拶を行った。
挨拶もそこそこに、すぐに表彰式へと移行する。事前に表彰状の読み上げが割愛されることが告げられ、チャンピオンのみ賞状やトロフィーの授与が行われることに。まず先陣を切ったのはJAF地方レース選手権カテゴリーで、Formula Beat、フォーミュラリージョナル、ツーリングカー、もてぎ・菅生および筑波・富士のスーパーFJ、もてぎ・菅生ツーリングカーの順だ。
そして東日本ラリー選手権、関東ジムカーナ選手権、筑波サーキットトライアル選手権、関東ダートトライアル選手権と続いた。その後は地方カート選手権 新潟シリーズおよびもてぎシリーズ、ジュニアカート選手権 もてぎシリーズ、ジュニアカート選手権 ジュニアカデット部門およびジュニア部門の表彰。表彰対象者が登壇するたびに会場から拍手が贈られていた。
なおプレゼンターはレースがJAF関東本部の佐藤本部長。ラリーはJAF関東本部の渡辺敬一郎事務局長、ジムカーナとサーキットトライアルはJAF関東本部の中川清光事業部長、ダートトライアルはJAF東京支部の小川貴広事務所長、カートはJAF本部モータースポーツ部業務課の小林修課長がそれぞれ務めた。










































すべての表彰式が終了すると招待者は一旦会場を退出、改めて15時30分より別会場で祝賀食事会が行われた。冒頭、JMRC関東の小口貴久運営委員長より「JMRC関東は一都九県支部そして四部会がモータースポーツの発展と振興を柱に、全力で取り組むことをご報告申し上げます」と力強い挨拶で始まり、続けて「本年もよろしくお願いいたします。乾杯!」と宴がスタート。
これまでの厳かな雰囲気から打って変わって和んだ空気となり、各所で明るい声が聞こえる中、正餐形式の食事が始まる。シリーズをともに戦ってきたライバルたちと円卓を囲んで、会話を弾ませながら飲食を満喫していた。食事の合間には祝賀食事会の司会も務める柿沼氏によるチャンピオンインタビューもあり、約1時間半の楽しい時間はアッという間に過ぎていく。そして最後を締めたのはJMRC関東の関根基司副運営委員長で、三本締めにてお開きとなった。




■2023年JAF関東地方選手権「初」チャンピオンインタビュー

F1が地上波で放送されていた時期にモータースポーツに興味を持ち、カートから始めてフォーミュラへステップアップ、現在もレース活動が中心の生活を送る小川颯太選手。「父親がF1好きという影響もあり、当時はフェルナンド・アロンソ選手に刺激を受けましたね。ちょうどアロンソ選手がチャンピオンを獲った年で、そんなドライバーになりたいなと思いました」と憧憬の念を抱いて言う。「2023年は総合的な速さという部分では自信もついて良かったんですが、ポールポジションを獲ったレースで勝ちが少なかったなど、レースの強さが足りなかった1年でした」と自己評価。「今日この場に来たことでリージョナルのチャンピオンを獲ったんだなって実感が湧いて光栄に思いました。2024年については乗る予定のレースはあるものの、今は発表できる状況ではありません。フォーミュラが好きなので、将来的にはスーパーフォーミュラのドライバーになりたいですね」

ロードスター・パーティレースIIIに参戦すること3年目の箕輪卓也選手、2022年はジャパンツアーシリーズの初代チャンピオンを獲得、そしてJAFツーリングカー選手権がかかる2023年には連覇を達成した。「メインスポンサーとなったカバナレーシングさんの看板を背負うことで、絶対に負けられないっていう気持ちで昨年は戦いました。最終戦前にタイトルは確定しましたが、実は毎戦プレッシャーを感じてヒヤヒヤだったんです」とディフェンディングチャンピオンは余裕あるシーズンではなかったと振り返る。「椿山荘というテレビでしか見たことのないようなホテルで表彰を受けられるのも、これまでさまざまな方たちが築き上げてくださった賜物だと思います」と感謝の意を示した。「言うほど若くはありませんがまだ22歳なので、今はがむしゃらに上へ上へと頑張っていくだけです」と言い、スーパーGTのドライバーになることを夢見ているようだ。

スーパーFJのカテゴリー2年目の挑戦となる内田涼風選手は2023年を並々ならぬ思いで迎えた。「2022年でタイトルを獲り損ねてしまったので……、まずはタイトルを獲ること、そして全勝することが目標でした」と、シリーズランキング2位だった悔しさをバネに心機一転で臨んだ。だが序盤からいい成績を残すことができず、苦しい戦いを強いられる。「トップ争いする中でヒートアップしてスピンやクラッシュをするなど、前半戦はなかなか噛み合いませんでした。後半戦では『後悔しないように行こう』と開き直ったことが奏功したのか、自然と走りがイケイケになって立ち直り、何とかチャンピオンになることができました」と語る。「2023年はレースをしていく中で成長を実感できた、充実した1年になりました。2024年の活動予定はまだ未定ですが、小さいころに見た塚越広大選手や谷口信輝選手のようなGTドライバーになりたいですね」と将来的な目標を挙げた。

「ラリーはいろんな道路を走れることが魅力のひとつだと思うので、違う土地やフィールドを走ってみたかったんです」と、普段はJMRC東北シリーズを追いつつ、2023年は関東に初遠征してチャンピオンを獲得した沼尾秀公選手。東北初戦のウィンターラリーから第2戦までの空いた期間で、1戦くらい出てみたいという気持ちがあったようだ。「実は東日本シリーズでは最上位が2位で、1勝もしていないんですよ(笑)。ちょっと恥ずかしいです」と照れ笑いを見せる。「オールスターを除いて遠征自体をやっていなくて、ずっと東北の中だけだったので、非常に刺激を受けた1年でした。グラベル中心のラリーが多い東北とは違い、ターマックラリーは初めてだったんです。元々、舗装は苦手でしたが(笑)、やってみたら結構いいなと思って。参戦していくにつれて仲間も増えていきましたし、うれしいです。いずれは北海道とかも走ってみたいですね」と遠征の魅力を語ってくれた。

BC-2クラスドライバーチャンピオンの沼尾秀公選手と夫婦で参戦、同じく初チャンピオンに輝いた沼尾千恵美選手。「最初は夫が1人でダートトライアルをやっていたんですが、それを見て興味を持ち、モータースポーツに関わりたいなと思ったのがきっかけです」と、2人一緒にできるラリーを薦められたそうだ。「ガッデム(新谷かおる/著)というマンガを読まされ、よくわからなかったんですけど(笑)、ドライバーに方向を指示する仕事なんだなというのは理解できました」とコ・ドライバーに挑戦する。「集中して運転したいであろうところを、全部聞きながら覚え、ミスコースもあり、ラリー打ち切りなど、これまで失敗はたくさんありました。ですが、今日この日(表彰式)を迎えられてドライバーに感謝です」と喜びをあらわにした。「遠征については、東北とは違うラリーの主催や運営が感じられて面白かったですね」と新たな発見もあり、刺激をもらえたようだ。

開口一番「いやぁ~長かったですね」としみじみと語る大澤勝紀選手。途中BRZを挟むもランサーで参戦すること苦節13年での悲願の戴冠。ちなみに2002~2004年に全日本ジムカーナ選手権Dクラスのチャンピオンである大澤勉氏が父親だ。「乳母車に乗っていたころからジムカーナコースに行っていたので、自分の中でのモータースポーツの中心はジムカーナでした」と笑う。「第1戦から参戦するつもりでしたが車両が間に合わず……第2戦が初戦となりましたが、クルマができあがったのが大会数日前だったこともあり、当初はクルマを知る1年にしようと考えていました。ですが思ったより早くクルマが身体に馴染んできて、途中からチャンピオン狙いになりました」と貪欲に取り組んできたようだ。「自分の走りで興味を持ってモータースポーツを始めてくれたらいいなと思いながら走っています」と、ジムカーナのさらなる発展を願ってやまない様子だった。

「サーキットで腕試しがしてみたかったんです」と言う中嶋貴秀選手は、各種走行会で磨いたドライビングテクニックを引っ提げて愛機GT-Rで筑波のサーキットトライアルに初出場、その開幕戦でレコードを更新してデビューウィンを果たした。「車両の性能的にはアドバンテージがありましたね。でもシリーズでは天候に左右されたラウンドもあったため、安定して勝利することが難しかったです。サーキットトライアルという競技は車両性能だけでは勝てない、一筋縄ではいかない奥深さがあると思います」とコメント。一方で「モータースポーツの中でも敷居の低いカテゴリーであり、マイカーで気軽に参戦できるところは魅力です」と評する。「ベストタイムを出すために、クリアラップや間合いの取り方を学べ、いろいろと成長できました。車両を仕上げてベストの状態でトライアルに臨むことが大事だなと感じます。今年はロードスターで新たな挑戦をしていく予定です」

マツダファン・サーキットトライアルでサーキットトライアルにハマり、腕を磨き続けてきたという安本悠人選手。参戦機会を増やすために筑波のシリーズに参戦をしたようだ。「サーキットトライアルはほかの参加者のタイムと競い合って順位がつけられるんですけど、それ以上に過去の自分のタイムを超えたいってところが大事なんです。以前に自らが記録したクラスレコードを超えることを目標に戦ってきました」と、常に自分自身との戦いだったと言う。「2023年は第1戦に参戦することができず、第2戦が自身の開幕戦となったわけですが、雨が降るレインコンディションの中で1位を獲れたことが、とくに印象に残ったシーズンですね。NDロードスターの電子制御がうまく作動してくれるので、それを使いこなすことがキモでした」と振り返った。最終戦ではクラスレコードを更新して有終の美を飾った安本選手、2024年も引き続きCT6クラスへの参戦を表明した。

若手注目株として2022年から脚光を浴びている佐藤羽琉妃選手が、関東ダートトライアル選手権で初戴冠を果たした。ダートトライアラーだった父親の影響を受け、19歳になる前にモータースポーツを始めたそうだ。「やってみたいなという想いもあって、家の近くにあるオートランド千葉でダートラデビューをしました。よくダートラは敷居が高いと言われますが、実家が鈑金屋であることを含め、競技が始めやすい環境だったと思います」と実際に走ってみてその楽しさに触れたと語る。地区戦に本格参戦した2022年はランキング6位で、その結果を踏まえて2023年はチャンピオン獲得という大きな目標に臨んだ。「2022年の最終2戦で勝てたことで、地区戦に対する戦略が練れました。常に100%の走りというより、8~9割の走りを維持しながらポイント獲得を意識しましたね。最終的にチャンピオンが獲れましたので……点数をつけるとしたら100点っていうところでしょうか」

レーシングカートをやっていた時期を含めて10数年、初タイトル獲得の競技はダートトライアルとなった森戸亮生選手。ダートトライアル歴は8年、トヨタ・86に乗り換えて3年目の快挙だ。「クルマの乗り方についてはほぼ独学なんですけど、ベストモータースポーツの亀山晃さんにセッティングを教えてもらったりして、ここまでやって来れたって感じです」と、父親を含めて長きに渡り付き合いがある亀山氏からのさまざまな助言があったことを明かした。「初めてこういった形でチャンピオンとして表彰式に招待され、本当にうれしく思います」と照れ笑いをしつつ、「もともと関東の地区戦には後輪駆動のPN3クラスがなく、PN2のスイフトスポーツなどと混走のクラスでしたが、2023年にようやくクラスが分かれることとなり、初年度のタイトルは自分がいただこうという意気込みで臨みました」と、期待とやる気がみなぎっていたシーズンだったようだ。

「チャンピオンが確定したことはレース後に急に知らされたので、とにかく驚きました」とは、わずか4戦という新シリーズで頂点に立った小林留魁選手。「自分自身としては頑張ったし、また運も味方してくれたと思うので、振り返ると良かったです」と付け加える。新潟県胎内市の開志国際高等学校に在籍する傍ら、アルビレックスレーシングチームの一員として、ホームコースのスピードパーク新潟のシリーズに参戦した。「最低限の目標は表彰台を獲得することでしたが、優勝してチャンピオンになることを最大限の目標として臨みました。シリーズを振り返ると……80点くらいの成績ですかね。残り20点はバトルで強さが発揮できなかった部分と、もう少し速く走ることができたんじゃないかという部分でマイナス」と自己分析。「まだ学生ですが、今後もモータースポーツに関わっていきたいです。まずはスーパーFJへの参戦機会を得て、そこで成績を残していきたいですね」
■2023年JAFジュニアカート選手権「初」チャンピオンインタビュー

「最初はお父さんとお母さんに勧められて、井頭モーターパークのキッズカートから始めました。そこから怖がらずに乗り続けたら、だんだん速く走れるようになって、カートが楽しくなりました」とハマったきっかけを教えてくれた松尾柊磨選手。「brioly racingからジュニアカデット部門に参戦し、チーム監督からいろいろと指導を受けてここまで来ました」と、2023年はFS-125/X30クラスと同じエンジンながら排気リストリクターありのジュニア部門に挑戦。「もてぎシリーズでは全勝する目標を立てていたんですが、全勝を達成することができなかったのが残念でした。でも、終わってみればもてぎシリーズのチャンピオンが獲れたので良かったです」と笑顔を見せる。「憧れのドライバーは関口雄飛選手とか小高一斗選手。将来的にはスーパーフォーミュラまで登り詰めて、国内で一番速いドライバーになるのが夢です」と松尾選手は大志を抱いていた。
フォト/関根健司、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部