中部ダートラ第3戦のRWDで栢康弘選手が15シーズン目で悲願の地区戦初優勝!

レポート ダートトライアル

2025年7月11日

2025年中部ダートトライアル選手権の第3戦が6月8日、三重県いなべ市の「いなべモータースポーツランド」で開催された。全5戦の折り返しとなる今回の一戦は、第1戦と第2戦を開催した池の平ワンダーランドから今季初となる、いなべに戦いの舞台を移した。

2025年JAF中部ダートトライアル選手権 第3戦
2025年JMRC中部ダートトライアル選手権 第3戦
いなべMSLダートトライアル

開催日:2025年6月8日
開催地:いなべモータースポーツランド(三重県いなべ市)
主催:FASC、T.T.G

 2024シーズンからダートトライアルコースのJAF公認を受けたいなべは、中部地区戦のみならずJAF近畿ダートトライアル選手権やJAF全日本ダートトライアル選手権の舞台にもなるなど、中部・近畿圏におけるダートラの主要コースを担っている。

 路面は一部コース幅が広げられたり、うねりが改修されたりと続々と進化を遂げており、参戦ドライバーからは「初期の頃に比べて、かなり走りやすくなっている」という声も聞かれて好評を得ている。

 第3戦で設定されたレイアウトは、スタートから一気に南エンデューロコースに向けて奥のストレートを下り、南エンデューロ島回りのテクニカル区間を経て、手前のストレートを一気に駆け上がる、“いなべのスタンダード”ともいえる構成だが、スタートから下り切ってフルターンまで気持ち良くとばしてしまうと、島回りに向けての立ち上がりで大幅にタイムロスしてしまう。ここでいかに気持ちを切り替えられるかが、攻略のカギとなったようだ。

 梅雨時の開催ということもあり、ウェット路面を想定していたドライバーも多かったようだが、予想に反して天候は晴れ。両Tryドライ路面での勝負となり、全クラス2Tryでのタイムが決勝タイムとなる、白熱したバトルが繰り広げられた。

2025年JAF中部ダートトライアル選手権 第3戦が争われたレイアウトは、舞台となったいなべモータースポーツランドではよく使われる設定だが、走りの組み立てを考えて臨まないとタイムを出せない、奥深い構成だ。
6月初旬に開催された今回の一戦の空模様は、梅雨時にもかかわらず好天に恵まれた。雨中の一戦を予想していたのか、完熟歩行を念入りに行うドライバーも見られた。

2Pクラス

 2Pクラスは第1戦を山根勤選手、第2戦は村瀬秋男選手と、昨季も活躍したドライバーが勝ち星を挙げている。1Tryでは連勝を狙う村瀬選手がクラス唯一の1分34秒台をマークし、トップで折り返した。

 しかし、2Tryでは村瀬選手とダブルエントリーでホンダ・フィットハイブリッドをシェアする正村文利選手が1分32秒台に突入し、トップに立つ。逆転を狙う村瀬選手もタイムアップを果たすが、1分33秒台止まり。そして、今季未だ勝ち星がないディフェンディングチャンピオンの川崎浩一選手も1分35秒台で4位に終わり、正村選手が逃げ切った。

 正村選手は今季、数十年ぶりにダートラ復帰を果たしたそうだ。「1本目はミスしたところがありましたが、2本目はイメージどおりに走れました。タイムも思ってた以上に良かったです。クルマを借りてる身なので、シリーズチャンピオンを目指すというより、このまま無事にいきたいですね(笑)」とのことで、「GA2(ホンダ・シティ)以来です」と、久しぶりの優勝を飾った。

2Pクラスの正村文利選手(DLアオイオートフィットHV)は、優勝でダブルエントリーした村瀬秋男選手(DL・ワコーズ・フィットHV)と1-2フィニッシュを果たした。
ホンダ・フィットハイブリッドを正村選手とシェアした村瀬選手が2位入賞(左)。3位はトヨタ・ヴィッツRSをドライブする永井和浩選手(AMフカミ☆コスモスヴィッツ)が獲得した(右)。
2Pはトップ3が表彰台に上がった。左から2位の村瀬選手と優勝した正村選手、3位の永井選手。

RWDクラス

 ディフェンディングチャンピオン上角好孝選手と、上角選手と王座を争った名倉陽太選手が1勝ずつ分け合っているRWDクラス。迎えた3戦目の1Tryで1分29秒18のトップタイムをマークしたのが開幕第1戦の勝者、名倉選手。0.77秒差の2番手には横内由充選手、3番手に福西貴志選手、そして4番手に第2戦優勝の上角選手がつけた。

 2Tryに入ると、福西選手が1分28秒8で名倉選手のトップタイムを塗り替え、ここから後半ゼッケン勢の攻防戦が始まる。まず福西選手のタイムを0.53秒更新したのが横内選手。さらに、1Tryで5番手につけていた栢康弘選手が、横内選手のタイムを0.16秒更新する1分28秒11でトップに立った。

 そして、ラスト前の名倉選手がスタート。ベストタイムを1.08秒以上更新することができれば、再びトップに返り咲くことができるが、栢選手には0.81秒届かず4番手。そしてラストゼッケン上角選手。トップタイムを塗り替えるには3秒以上のタイムアップが必須だが、1分29秒2と伸び悩み5番手タイム。この結果、栢選手が2Tryで逆転して勝利を挙げた。

「今年は、全日本の開幕戦で転倒というスタートで(笑)、ZN6(トヨタ86)からZN8(GR86)に乗り換えました。やはり排気量が400cc大きいと楽ですね」と、新たな相棒の利点を語った栢選手は、地区戦参戦15年目で悲願の初優勝を達成した。走りについて、「2本目は名倉選手がドライタイヤを選択してたのですが、自分は持ってきてなかったので、ドライ並みの走りをしながら、砂利が掃けた路面を逃さず丁寧に走ったのが良かったと思います」と振り返った。

 ランキングトップを死守した上角選手を名倉選手が追い、そして上角選手とは大学時代からの友人である栢選手がこの優勝で一気に上角選手に詰め寄り、RWDは混戦状態で後半戦に突入する。

RWDクラスは地区戦に挑んで15年のベテラン、ZN8型GR86を駆る栢康弘選手(オートリンクスDLGR86)がシリーズ初優勝を達成した。
RWDの横内由充選手(e’Tune☆YH久與MR2)はトヨタMR2を操って2位を獲得(左)。GR86をドライブする福西貴志選手(BレプソルATSテインWM86)は3位に入った(右)。
RWDはトップ5が表彰された。左から4位の名倉陽太選手(クスコWMDL・Motys86)、2位の横内選手、優勝した栢選手、3位の福西選手、5位の上角好孝選手(アンテロープALDLGR86)。

PN1・S1500クラス

 PN1・S1500クラスは、開幕戦優勝の深見延良選手と、2戦連続2位のディフェンディングチャンピオン岸貴洋選手が競り合い、第2戦を制した西畑蒼選手も追う状況だ。岸選手が欠場となった今回の一戦、1Tryでトップタイムをマークしたのは、連勝を狙う西畑選手。クラス唯一の1分28秒台を叩き出し、2番手につけた那須照英選手に2秒以上の差をつけた。

 2Tryになると、那須選手が西畑選手のタイムを0.53秒更新する1分28秒01でトップに立つ。続く深見選手は、1分28秒台に突入するも3番手に留まるが、1Tryで3番手につけていた樋口哲也選手が那須選手に0.15秒迫る2番手タイムを刻む。

 上位陣は1分28秒台前半の戦いとなるが、ラストゼッケン西畑選手は1分27秒52と1Try同様、頭一つ抜け出すタイムでトップに返り咲き、逆転優勝を決めた。「今年はシリーズチャンピオンを狙っているので、連勝は嬉しいです。これまで連勝はなかったので、昨年の自分と比べて成長できたのではないかと思います(笑)」と、西畑選手は笑顔で優勝のコメントを述べた。

 しかし「第2ヒートはもっとタイムアップできたと思います。突っ込み過ぎてインを外してしまった所が2カ所あり、路面が良かった分その点が悔しいですね。今回、岸選手が出ていたら負けてたかもしれません」と、反省も忘れなかった西畑選手。タイム的には課題が残ったようだが、自身初のチャンピオン確定に向けて、貴重な今季2勝目を挙げた。

PN1・S1500クラスはZC32S型スズキ・スイフトスポーツを駆る西畑蒼選手(IBS藤大DLスイフト)が二連勝を果たした。
PN1・S1500はZC32S型スイフトが1-2フィニッシュ。那須照英選手(TTG505スイフト)が2位を得た(左)。3位はトヨタ・ヤリスを操る樋口哲也選手(ベルテックスDLTガレヤリス)が獲得した(右)。
PN1・S1500もトップ5が表彰を受けた。左から4位の深見延良選手(AMフカミ・コスモス・VITZ)、2位の那須選手、優勝した西畑選手、3位の樋口選手、5位の川原信是選手(AMフカミ白パールCR-Z)。

Nクラス

 開幕二連勝の松井啓史選手が独走しているNクラス。昨季のランキング上位陣は第2戦までは苦戦を強いられているが、1Tryでトップタイムをマークしたのが、ディフェンディングチャンピオン村松俊和選手。二連覇を狙うには、今回の一戦で優勝しておきたいところだ。

 しかし2Tryで村松選手を1.89秒上回るタイムで暫定トップに立ったのが、1Tryで3番手につけていた松井選手。その後、シードゼッケン勢が登場するがトップタイムは更新されないまま、ラストゼッケン村松選手を迎えた。何としても松井選手の独走を止めたいところだったが、タイムは0.61秒届かず2位止まりとなり、松井選手が逆転で第3戦も制した。

「開幕、第2戦と池の平で勝ってきて、今回のいなべで勝たないと“池の平だけの人”と思われるのも寂しいので(笑)頑張りました」と、松井選手は優勝で一安心の様子を見せた。

 更に、走りについて「1本目はあまり踏み込めずタイムもソコソコだったのですが、2本目は1.5秒上げると宣言し、それ以上にタイムアップしたので内容は良かったです。タイヤはドライも考えたのですが、迷った結果2本目もレインでいきました。コントロールもしやすかったので、結果的に正解だったと思います」と、語った松井選手は1分21秒72を叩き出した。今回の一戦の総合トップタイムで、チャンピオン確定に大きく近づく三連勝を決めた。

GRヤリスをドライブする松井啓史選手(DL・EB-ARX・GRヤリス)はNクラスで開幕三連勝を達成した。
Nの2位と3位は三菱・ランサーエボリューション勢が占めた。2位はランエボⅧを駆る村松俊和選手(テイクスDLエスコートランサー、左)が獲得し、山内友和選手(MRSシロキヤDLランサー#3、右)はランエボⅨを操って3位に入った。
Nは左から、4位の久保川裕行選手(K&STDYHランサー)、2位の村松選手、優勝した松井選手、3位の山内選手、5位の小倉正也選手(カムガレージDLランサー10)が表彰を受けた。

S1クラス

 ディフェンディングチャンピオン松原功治選手が開幕戦優勝、第2戦は関東地区から遠征してきた伊東拓海選手が制したS1クラス。迎えた第3戦の1Tryで1分26秒54のトップタイムを刻んだのは、第2戦で2位を獲得している片田龍靖選手。そして2番手には0.04秒という僅差で松原選手が続き、シードゼッケン勢がトップ2を占めた。

 しかし2Tryでは伊東選手とWエントリーしている、クラスファーストゼッケンの多門寛晃選手がいきなり1分25秒17でトップタイムを塗り替え、完全に仕切り直しとなった。更に伊東選手が1分23秒68と多門選手のタイムを大きく更新し、関東勢の1-2体制となる。逆転を狙う後半のシードゼッケン勢だがしかし、片田選手は痛恨のタイムダウン、松原選手は1分25秒台までタイムを詰めるも多門選手に0.5秒届かず3位止まりとなり、伊東選手と多門選手が1-2フィニッシュを決めた。

 今季2勝目を得た伊東選手は「1本目はミスも多かったのですが、なんとか3番手タイムが出せたという感じです。思ってたよりタイム差があったので、2本目は無理をしました(笑)。でも、かなり乗れていると感じながら攻めることができたので、全体的に内容は悪くなかったと思います」と振り返った。

 多門選手は、大学時代の伊東選手の先輩にあたるとのことだ。「1本目も2本目も同じミスをしてしまって、特に2本目のミスは大きく、拓海(伊東選手)と1.5秒差があったので、表彰台は危ういかなと思ってたのですが、クルマのパワーと軽さで逃げ切れました(笑)」とコメント。

 二人が駆るトヨタ・スターレットは、5ドアのボディに1500ccの5E型エンジンを搭載し、さらにターボで武装したD1車両だ。「僕と多門先輩は、昨年の千葉県のダートトライアルシリーズで、それぞれのクラスで同時にチャンピオンを獲り、今年はこのクルマで全日本に出場する予定でした。走る場所を探していたところ、中部地区戦S1クラスは二駆の改造車も走れるということで、参加させていただいてます」と、伊東選手は遠征の経緯を明かした。続けて「地区戦で実績を作って、全日本の後半戦やJAFカップの出場を目指して頑張ります」と今後の豊富を語った。

S1クラスはトヨタ・スターレットのD1車両を駆る伊東拓海選手(TRSクルーズYHスターレット)が二連勝を果たした。
伊東選手とWエントリーで参戦する多門寛晃選手(TRSクルーズAZスターレット)が2位を奪取した(左)。ZC33S型スイフトで挑む松原功治選手(DLたまご足VTスイフト)が3位に入った(右)。
S1は上位4選手が表彰を受けた。左から4位の広上徹選手(クアトロデウエYHインテグラ)、2位の多門選手と優勝した伊東選手、3位の松原選手。

S2クラス

 S2クラスの開幕戦は伊藤祥充選手が、第2戦はディフェンディングチャンピオン服部雅士選手と、昨季王座を争った二人が勝利を挙げた。第3戦では、どちらが先に2勝目を挙げるか、あるいは3人目の勝者が現れるのかが注目された。

 1Tryで伊藤祥充選手はWエントリーの前走者、伊藤康貴選手がリタイアを喫してしまい、走ることなく競技終了となってしまった。一方、服部選手は1分23秒87をマークしてトップに立ち、1分25秒台の2番手以降に大きく差をつけて今季2勝目に向けて順調に折り返す。

 しかし2Tryに入ると、竹内元哉選手が1分22秒4までトップタイムを更新。第1ヒートはミスコースでタイムを残せなかった竹内選手だが、ここでトップに立つ。その竹内選手を追う後半ゼッケン勢だが、小宮僚選手が1分22秒台に入れるも0.11秒届かず2番手タイム。続く三枝重光選手も同じく1分22秒台を刻むが3番手に終わり、ラストゼッケン服部選手がスタート。ベストタイムを1.5秒更新すれば再びトップに返り咲くことができるが、タイムは1分23秒09と4位止まり。竹内選手が逆転で優勝となった。

 今季から地区戦に挑戦しているニューフェイスの竹内選手は「毎戦緊張しながらですが、2本目はミスコースからの一発勝負だったので特に緊張しました(笑)」と振り返った。開幕戦は6位に終わったものの、第2戦ではすでに2位を獲得している。

 続けて「いなべは今日がぶっつけ本番だったので、めっちゃ怖かったです(笑)。ただ、抑えるべきところがよく分からなかったので、その分踏めたのかもしれません。自分のペースが速いのか遅いのかも分からないので、とにかくやれるだけやろうという感じでしたので、その結果優勝は嬉しいです(笑)」と、クラス唯一のGC8型スバル・インプレッサを駆る竹内選手は地区戦3戦目で早くもシリーズ初優勝を得てランキングトップを奪取。チャンピオン確定も視野に入れて後半戦へと挑む。

S1クラスは竹内元哉選手(カム・ガレージDLインプレッサ)がスバル・インプレッサを駆って逆転で地区戦初優勝を果たした。
S2の2位はランエボⅨを操る小宮僚選手(辰SP☆TガレDL洞海ランサー)が獲得(左)。三枝重光選手(TOP1.M2BRIGランサー)はランエボⅧをドライブして3位を獲った(右)。
S2は左から、4位の服部雅士選手(MRS DLランサー)、2位の小宮選手、優勝した竹内選手、3位の三枝選手、5位の前田利幸選手(オートリンクス ランサー)が表彰された。

 フォト/友田宏之 [Hiroyuki TOMODA] レポート/友田宏之[Hiroyuki TOMODA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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