豊島優凛選手が中国ダートラ第5戦で開幕5連勝を決めて初の地区戦王者を確定!

レポート ダートトライアル

2025年8月8日

2025年JAF中国ダートトライアル選手権の第5戦が7月13日、広島県安芸高田市に建つテクニックステージタカタで開催された。全7戦で争われる中国地区戦も4戦を終え、シリーズは後半戦に突入。今回の一戦を含めて残り3戦となり、各クラスで熾烈な王座争いが繰り広げられている。

2025年JAF中国ダートトライアル選手権 第5戦
2025年JMRC中国ダートトライアル チャンピオンシリーズ第4戦
2025年JMRC中国ダートトライアル チャレンジシリーズ第5戦
‘25スピリットダートトライアル

開催日:2025年7月13日
開催地:テクニックステージタカタ(広島県安芸高田市)
主催:SPIRIT

 王座争いをクラス別に見ていくと、ATクラスの豊島優凛選手とRWDクラスの畑窪琢巳選手が開幕4連勝で独走中。そしてPN1+クラスの山谷隆義選手、NS1クラスの西田ツカサ選手、SCD2クラスの河内渉選手が3勝を挙げて優位に立っている。一方、NPSAクラス、SA1クラス、SCD1クラスでは上位陣の差はひっ迫、展開によってはトップが入れ替わる様相を呈している。

 中国地区戦と、併設する2025年JMRC中国ダートトライアル チャレンジシリーズとオープンクラスを合わせて78選手、そして併催した2025年JAF九州ダートトライアル選手権 第5戦も合わせると126選手が挑み、今季一番の賑わいとなった今回の一戦。果たして天王山となるクラスはあるのか、いつにも増して高速レイアウトとなった設定も相まって、見どころ満載となった。

2025年JAF中国ダートトライアル選手権 第5戦は晴天となったテクニックステージタカタが舞台。チャンピオン確定もかかったクラスもあり、熱戦が繰り広げられた。
レイアウトは併催した2025年JAF九州ダートトライアル選手権の第5戦と共通で競われた。スタート直後のストレートはコース端まで設定されなかったものの、タイトなターンが少ない高速レイアウトが設定された。

2025年JAF中国ダートトライアル選手権 第5戦

ATクラス

 ATは、前述したランキングトップの豊島選手が1Heatから2分10秒台のトップタイムを刻む。2Heatに入ると、豊島選手とダブルエントリーした北村一貴選手が2分06秒台に突入。更に近畿地区から遠征の西岡章夫選手が2分05秒台までタイムを詰める。続々とトップタイムが更新されるが、やはり勝負を決めたのはラストゼッケン豊島選手。2分3秒9と、西岡選手を1秒29上回るタイムを叩き出し、優勝を決めた。

 豊島選手は「1本目はクルマの挙動に対応出来ないところがありましたが、2本目は大学OBでもある太田智喜選手のアドバイスを受けて走りを修正して、無事ベストタイムを出すことができて嬉しいです」と、笑顔で勝因を明かした。この勝利で豊島選手は今季負けなしの5連勝を達成、ATのチャンピオンも確定させた。

ATクラスは豊島優凛選手(DL山大SPMゆくJ+デミオY)がマツダ・デミオを操って開幕5連勝、初の地区戦チャンピオンを確定させた。
ZC33S型スズキ・スイフトスポーツを駆る西岡章夫選手(TAKUMIスイフト)がATで2位入賞(左)。豊島選手とダブルエントリーで挑んだ北村一貴選手(YUACゆく就活終了?デミオ)が3位を獲得した(右)。
ATはトップ3が表彰された。左から2位の西岡選手と優勝した豊島選手、3位の北村選手。

PN1+クラス

 PN1+は今季3勝を挙げて75ポイントを稼いだ山谷選手がランキングトップ。今回の一戦で優勝すれば、チャンピオンを確定ことができる。1Heatでクラス唯一、2分の壁を破った山谷選手はトップで折り返して王座確定に一歩近づく。

 この状況を打破したい、ランキング2番手以下の上位陣。第4戦終了時点で王座確定の可能性が残るのは、ランキング4番手までのドライバーたちだ。2Heatに入ると、ランキング4番手の岩田直也選手が1分55秒62を刻んでトップに立つ。ランキング3番手の藤原祐一郎選手は1分55秒83に終わる。ラスト前、ランキング2番手の井上翔太郎選手は1分55秒75で、岩田選手がトップを保持してラストゼッケン山谷選手がスタートした。

 関東地区から遠征してきた飯島千尋選手が4番手に上がったため、山谷選手は5番手まで順位が落ちていた。このままの順位だと、チャンピオン確定は次戦以降に持ち越しとなるが、山谷選手はそうはさせなかった。叩き出したタイムは1分55秒05と、岩田選手のタイムを更に更新してトップを奪回、優勝でチャンピオン確定を果たした。

「今回はスムーズにミス無く走れたので良かったと思います。今年は(タカタでの)全日本から調子が良く、そのままの勢いでここまで来れて良いシーズンでした」と、PN1+二連覇を確定させた山谷選手は笑顔で今季の道のりを振り返った。

PN1+クラスはホンダ・フィットRSを駆る山谷隆義選手(DLベックワークスフィット)が優勝で二連覇を確定させた。
PN1+の岩田直也選手(阪大☆FUAC☆DLスイフト)はZC32S型スイフトを操って2位獲得(左)。トヨタ・ヤリスをドライブする井上翔太郎選手(DL鴎FUAC505ヤリス)が3位を奪取した(右)。
PN1+は左から、4位の藤原祐一郎選手(田中自動車DL岡歯科29FIT)、2位の岩田選手、優勝した山谷選手、3位の井上選手、5位の飯島千尋選手(Moty’s☆DLスイフト引率)、6位の松栄吉彦選手(M’s木輪舎YHヤリス神速)が表彰された。

NPSAクラス

 NPSAの王座争いは、今季まだ未勝利ながら重松良輔選手がポイントリーダーに立っている。重松選手を2ポイント差で追うのが、第3戦優勝のハンター大谷ヒロシ選手。そしてランキング3番手には10ポイント差で第4戦の勝者、岩坂有洋選手がつけて混戦となっている。

 1Heatでトップタイムをマークしたのは、岩坂選手でタイムは1分59秒05。0.39秒差の2番手にはハンター大谷選手、3番手には今季からトヨタ・プリウスを投入した太田選手が続いた。

 2Heatになると太田選手はタイムダウンを喫してしまうが、岩坂選手はトップタイムを1分55秒22まで更新。しかし次ゼッケンのハンター大谷選手はそのタイムを上回る、1分53秒7をマークしてトップに立つ。そして、1Heatは4番手につけていたラストゼッケン重松選手がスタート。今季初勝利が欲しいところだが、タイムは1分55秒52と、トップタイムには届かず3位でフィニッシュ。この結果、ハンター大谷選手が逆転で勝利を収めた。

「2本目は、ほぼミスなく走れました。今年は足回りを何回か変更して、今回はそれがうまくハマりましたね。走行中も手応えを感じてました」と、今季2勝目を挙げたハンター大谷選手はポイントリーダーの座を奪取して、終盤2戦に挑む。

ハンター大谷ヒロシ選手(DLワコーズWMスイフト三洋D)はZC33S型スイフトを駆ってNPSAクラスで今季2勝目を獲得した。
NPSAの2位はホンダ・インテグラをドライブする岩坂有洋選手(スピリットエクセスインテグラ)が獲得(左)。マツダ2を操る重松良輔選手(DLBSTよしだやMAZDA2)が3位を得た(右)。
NPSAは上位5選手が表彰を受けた。左から4位の楠弘隆選手(INDY★BSTデミオ15MB)、2位の岩坂選手、優勝したハンター大谷選手、3位の重松選手、5位の谷口成治郎選手(谷口左官工業所スターレット)。

SA1クラス

 SA1は今季2勝を挙げている松岡修司選手がランキングトップ。2番手には13ポイント差で丸本淳二選手が追う展開となっている。1Heatは1分55秒65をマークした松岡選手がトップで折り返し、2番手に高橋義晴選手、そして丸本選手は3番手につけた。

 2Heatになると、クラス2番目出走の坂井秀年選手が1分53秒4を刻んで2本目勝負となるが、トップタイムはなかなか更新されなかった。松岡選手とのポイント差を詰めたい丸本選手、ランキング3番手の一宮悠人選手も共に1分57秒台に留まる。その中で勝負を決めたのは、ラストゼッケン松岡選手。1分52秒44と、坂井選手を1秒近く引き離すタイムで再逆転を果たした。

「2本目はタイヤ選択を迷ってドライタイヤにしたのですが、これは結果オーライといった感じです。まだブレーキのセッティングに課題がありますが、勝てて良かったです」と、松岡選手はチャンピオン確定に大きく近づく今季3勝目を挙げた。

SA1クラスはZC33S型スイフトを操る松岡修司選手(S+クスコDLWMOLスイフト)が二連勝を果たした。
ZC33S型スイフトをドライブする坂井秀年選手(SPY藤井レーシング スイフト)がSA1の2位を奪取(左)。3位にはインテグラを駆る中畑有貴選手(ライズワークスYHインテグラ)が入った(右)。
SA1は上位4選手が表彰された。左から2位の坂井選手、優勝した松岡選手、3位の中畑選手、4位の一宮悠人選手(502YHFAスイフト)。

RWDクラス

 RWDは畑窪選手が三連覇に向けて独走、今回の一戦で勝てば満点チャンピオン確定となる。しかし、畑窪選手の前に立ちはだかったのが、スバルのEJ25型エンジンをミッドシップに搭載、センターコックピットの改造車「MR86」を駆る大谷皇就選手だった。

 大谷選手は1Heatから1分58秒2を記録してトップで折り返すと、2Heatは更に7秒以上も更新する1分50秒77をマークした。畑窪選手も食らいつくが、1秒63届かず2位止まり。大谷選手が改造車の本領を発揮して、MR86に初勝利を贈った。

「今年の6月にクルマは出来あがったのですがトラブルが出て今回、実戦3戦目で初めてちゃんと走りました(笑)。ここからがスタートですね。これから更にセッティングを詰めて進化させます」と、全日本参戦も目指す大谷選手は語った。

 一方、優勝は逃したものの2位入賞でチャンピオンを確定させた畑窪選手は、「今回はしょうがないですね。ただ、今年は上を目指す年だったので常に速さを追求し、シリーズ三連覇を達成できたことは嬉しいです。まだ残り2戦あるので、満点チャンピオンを狙います」と、これまでを振り返って残る2戦に対しての意欲も語った。

ZN8型GR86の外観をまとうがエンジンを換装してミッドシップに積み、運転席を中央に備える「MR86」(渡洋自動車WAKOS MR86)が大谷皇就選手の手によって3戦目にして実力を見せ、RWDクラスで初優勝を挙げた。
RWDでZN6型トヨタ86を駆る畑窪琢巳選手(GRタカタMotysDL86)は好調な大谷選手がドライブするMR86には敵わなかったものの、2位を獲得して三連覇を確定した(左)。トヨタ・アルテッツアを操る望月浩孝選手(DLタカタSPRTアルテッツア)が3位入賞を果たした(右)。
RWDも上位4選手が表彰された。左から2位の畑窪選手、優勝した大谷選手、3位の望月選手、4位の大竹公二選手(ナオ86)。

NS1クラス

 ランキングトップに立つ西田選手を川戸惟寛選手が追い、今季も二人が一騎討ちを展開しているNS1。今季未勝利の川戸選手にとっては、これ以上西田選手に勝ちを譲ることは出来ない状況だ。

 しかし、1Heatは西田選手が1分44秒94のトップタイムをマーク、川戸選手は2秒48遅れの3番手で折り返す。2Heatでは西田選手によるトップタイムが更新されることなく、ラス前の川戸選手がスタートを切り、1分43秒07を刻んでトップに立った。

 ラストゼッケンの西田選手はこのタイムを聞かずにスタート。注目のタイムは、川戸選手を0.36秒上回ってトップを奪還、第5戦も西田選手に軍配が上がった。「2本目はウェットタイヤを選択したのですが散水の量もちょうど良く(笑)、路面とマッチしました。タイム的には、できれば1分41秒台を出したかったのですが1分42秒台は出せたので、内容も悪くなかったと思います」と、西田選手は二連覇確定に向けて大きな一勝を挙げた。

5位までを三菱・ランサーエボリューション勢が占めたNS1クラスは、ランエボIXを駆る西田ツカサ選手(上殿DLカジオカACAランサー)が三連勝を達成した。
NS1は2位を川戸惟寛選手(YHチェリッシュカーズランサー)が獲得し(左)、3位に青戸浩喜選手(カジオカスノコDLランサー)が入賞(右)と、ランエボIX使いがトップ3に入った。
NS1は左から、4位の片岡学選手(渡辺自動車・タカタ・ランサー)、2位の川戸選手、優勝した西田選手、3位の青戸選手、5位の坂本達哉選手(チェリッシュYH定ランサー)、6位の上土井康朗選手(YHヤリスptt)が表彰を受けた。

SCD1クラス

 SCD1は、今季2勝を挙げている一柳豊選手がポイントリーダーで、2番手の鈴鹿浩昭選手が8ポイント差で追う展開となっている。第2戦が不成立となったために最終第7戦まで成立したとしても有効ポイントは4戦となり、第5戦は双方にとって正念場となる一戦だ。

 1Heatで1分52秒88のトップタイムをマークしたのは鈴鹿選手。一柳選手は1秒14遅れの4番手で折り返す。2Heatは鈴鹿選手とダブルエントリー、クラストップでスタートした小川英二選手が1分50秒07でトップタイムを塗り替え、二本目勝負に。一柳選手もタイムアップを果たすが、鈴鹿選手のタイムを0.4秒上回るに留まり、この時点で3番手となった。

 そして、一柳選手のタイムが伸び悩んだ中、ラストゼッケンの鈴鹿選手が勝負を決めた。これまでのタイムを大きく上回る、1分48秒2を叩き出してトップを奪回、両Heatを制して優勝を果たした。

 貴重な一勝を挙げた鈴鹿選手は、「今回は主催側なのですが、走らせてもらったので頑張らなければ、という気持ちでした。今日優勝できなかったらシリーズチャンピオンの可能性がほぼなくなってしまうので、何とか繋がりました」と、安堵した表情も見せた。この優勝で2ポイント逆転した鈴鹿選手は、ポイントリーダーに立って残り2戦を迎える。

SCD1クラスの鈴鹿浩昭選手(DL-SPIRITインテグラ)はインテグラを操って今季2勝目を挙げた。
SCD1で鈴鹿選手とダブルエントリーした小川英二選手(DLビルドK☆Sprインテグラ)が2位を掴み、1-2フィニッシュを達成(左)。ホンダ・シビックをドライブする夏明成己選手(OHLINSシビック511)が3位入賞した(右)。
SCD1の表彰は上位4選手が受けた。左から2位の小川選手、優勝した鈴鹿選手、3位の夏明選手、4位の一柳豊選手(DLテクノBSTシビック505)。

SCD2クラス

 SCD2は今季から地区戦再デビュー(?)を果たした全日本ドライバー、ランキングトップに立つ河内渉選手が第5戦は欠場。鬼(?)の居ぬ間に1Heatでトップタイムをマークしたのは、クラス唯一の1分46秒台を刻んだ西元直行選手。2番手には古屋慶己選手、3番手に小田文之選手がともに1分47秒台で続く。

 第2ヒートになると、古屋選手が1分45秒06をマークしてトップタイムを塗り替える。続く小田選手はタイムアップを果たすも1分46秒1で2番手止まりとなるが、続く西元選手がベストタイムを更新、1分44秒21と古屋選手を上回りトップに返り咲く。そして第1ヒート5番手だった、ラストゼッケンの上田強選手が不出走となったため、西元選手が両Heatを制して優勝となった。

「1本目トップで、2本目タイムダウンっていうのが、いつものパターンなんだけど(笑)、今回は車載映像見ながら、師匠の梶岡(悟)さんのアドバイスどおりに走ったら2本目タイムアップしました」と、喜ぶ西元選手は今季初優勝。王座争いでは上田選手を抜いて2番手にポジションアップした。

ランエボ勢が大勢を占めたSCD2クラスは、西元直行選手(DL建将BSTA梶B川ランサー)がランエボIXを駆って今季初優勝を果たした。
SCD2でランエボIXを操る古屋慶己選手(DL速心TEIN藤井Rランサー)が2位入賞(左)。3位はランエボXをドライブする小田文之選手(オダオートサービスランサー10)が獲得した(右)。
SCD2も上位4選手が表彰された。左から2位の古屋選手、優勝した西元選手、3位の小田選手、4位のアキマただゆき選手(㊆BSTWケノルランサーDL)。

2025年JMRC中国ダートトライアル チャレンジシリーズ第5戦

チャレンジクラス、オープンクラス

 学生や若手ドライバーを中心に、8選手がエントリーしたチャレンジクラスは、加藤輝選手が1Heatから2番手以下を3秒以上引き離す2分4秒22をマークし、トップで折り返す。2Heatでは加藤選手が更にタイム更新し、2分0秒68まで伸ばした。1Heatで4番手だった河内英選手が8秒以上もタイムアップして追い上げるがトップには1秒84及ばず、加藤選手が優勝を飾った。

 加藤選手は「8月にここ(タカタ)で学生の全日本ダートトライアルがあるので、それに向けて今回参加しました」と、参戦した経緯を語った。続けて「全日本選手権で活躍されている方々と同じコースを走ってタイムを比較することで、まだまだ上達できるということが実感でき、とても勉強になりましたね。これまで出た競技の中で一番記憶残る大会になりました」と、成績以上の収穫を得たようで、笑顔を見せた。

 6選手が挑んだオープンクラスは近畿の全日本ドライバー、藤本隆選手が2Heatで1分43秒67のトップタイムを刻んだ。

チャレンジクラスはZC32S型スイフトを操る学生ドライバー、加藤輝選手(杉尾ガレージ・加藤スイフト)が優勝した。
チャレンジクラスでZC31S型スイフトをドライブする河内英選手(DXL508THAスイフト)が2位を奪取(左)。マツダ2を駆る長谷川誠選手(スーパーG木輪車神速マツダ2)が3位に入った(右)。
チャレンジの表彰はトップ3が受けた。左から2位の河内英選手と優勝した加藤選手、3位の長谷川選手。
オープンクラスはランエボVIIIを駆る藤本隆選手(YHモティーズS+AYランサー)が2番手以下を5秒以上突き放すトップタイムをマークした。

フォト/友田宏之 [Hiroyuki TOMODA]  レポート/友田宏之[Hiroyuki TOMODA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

ページ
トップへ