タカタでの九州ダートラ第6戦PN1+は若手の岩田直也選手が地区戦初優勝!

レポート ダートトライアル

2025年9月11日

中国地区のダートトライアルコース、テクニックステージタカタとくすのきハイランドパークを舞台に全7戦で争われている、2025年JAF九州ダートトライアル選手権。2024年JAF四国ダートトライアル選手権 第5戦と併催となった第6戦が8月10日に広島県安芸高田市に建つタカタで開催された。九州地区戦は今回の一戦を含めて残り2戦、王座争いも佳境に入っている。前回の第5戦終了時点では全てのクラスでチャンピオンは確定しておらず、ほとんどのクラスで上位陣のポイントは僅差、この第6戦が今季最大の山場となりそうだ。

2025年JAF九州ダートトライアル選手権 第6戦
2025年JMRC九州ダートトライアル チャンピオンシリーズ第6戦
MSHサマートライアル2025

開催日:2025年8月10日
開催地:テクニックステージタカタ(広島県安芸高田市)
主催:MSH

 今回の一戦はタカタの地元、中国勢や10月に控えた2025年JAF全日本ダートトライアル選手権 第8戦に向けて練習も兼ねた全日本ドライバーも多数エントリー。王座争いにどう絡んでくるかも注目だ。

 レイアウトはコーナリングを重視した設定となっており、タカタ名物ともいえるロングストレートは途中までしか使われず、コーナーを攻め込むレイアウトは僅差のバトルが予想される。

 その重要な一戦だが、当日の天候は朝から雨模様。九州北部や山口県では線状降水帯による警報級の大雨となり、交通事情により欠場を余儀なくされたドライバーもいたほど。その影響が及んだタカタの路面はヘビーウェットとなった。幸い、無事に両Heatとも行われたが、時間とともに悪化する路面では2Heatでの逆転劇は見られず、1Heatが勝負の分かれ目となった。

2025年JAF九州ダートトライアル選手権はチャンピオン争いが大詰めとなった第6戦を迎えたが、舞台となったテクニックステージタカタは雨模様で路面はヘビーウェット。ドライバーたちは傘をさしての完熟歩行となった。
併催された2025年JAF四国ダートトライアル選手権 第5戦と共通のレイアウトが採用された。ストレートを活かした設定が採用されることが多いタカタだが、今回はストレートを封印。大小多彩なコーナーを攻めるレイアウトで競われた。

PN1+クラス

 PN1+クラスは、今季2勝を挙げている藤口裕介選手が67ポイントでランキングトップを走る。同じく2勝している宗正勝吉選手が2ポイント差の2番手で追う、僅差の王座争いとなっている。

 1Heatでトップタイムを刻んだのは中国勢の若手ドライバー、岩田直也選手でタイムは2分4秒61。2番手にも中国勢の井上翔太郎選手が0.84秒差でつけた。

 2Heatでの岩田選手は4秒以上もタイムダウンを喫してしまい、1Heatのタイムで後続待ちとなる。早いゼッケンの岩田選手は、後に控える強豪たちのタイムが気になるところだが、ベストタイムを更新するドライバーこそ現れるものの、岩田選手には届かない。クラスラストゼッケンの井上選手もタイムダウンに終わり、岩田選手が逃げ切り優勝となった。

「来年は就職で関東に行くことになり、タカタに来る機会が少なくなってしまうので、今回九州地区戦にもエントリーしました」と、参戦の経緯を明かした岩田選手は、学生ドライバー。「第1ヒートは細かいミスがありましたが、ある程度まとめられたと思います。ただ、地区戦ではこれまでトップタイムということがなかったので、第2ヒートはメンタル的に舞いあがってしまい、上手く走れませんでした(笑)」と語ったとおり、嬉しい地区戦初優勝を遂げた。

 一方、王座争いでは藤口選手が7位、宗正選手が5位となったため、宗正選手が逆転でランキングトップに立ち、勝負の行方は最終第7戦に持ち越された。

PN1+クラスはZC32S型スズキ・スイフトスポーツを駆る岩田直也選手(阪大☆FCAC☆DLスイフト)が地区戦初優勝を達成した。
PN1+の2位には飯島千尋選手(オート東長崎☆DLスイフト神速)が入り、ZC32S型スイフト勢が1-2を飾った(左)。3位を獲得した井上翔太郎選手(FUAC鴎505ヤリス)はトヨタ・ヤリス勢のトップタイムをマークした(右)。
PN1+は左から、4位の水野喜文選手(OT☆DL☆SPM堀部スイフト)、2位の飯島選手、優勝した岩田選手、3位の井上選手、5位の宗政勝吉選手(DLタクミ上殿マークススイフト)、6位の石井拓選手(鴎いのずーむヤリスいのずーむ藤)が表彰された。

RWDクラス

 RWDクラスには2024シーズンのCクラスチャンピオン、濵田隆行選手が転向してきた。濵田選手は第2戦、第4戦、第5戦と、今季成立した3戦全てで優勝してランキングトップに立つ。そして、今回の一戦でも1Heatからトップタイムをマークした濵田選手はそのタイムを守り切り、怒濤の4連勝でチャンピオンを確定させた。

「今回は、1本目も2本目もそれなりにしっかり走れましたが、2本目は橋本(英樹)選手のタイムに負けてしまったので、良い刺激になりました」と振り返った濵田選手は続けて、「GR86は約半年乗って、ようやくクルマの動きが分かってきたという感じです。セッティングに関してはまだ模索中で、タイムもバラツキがありますので、これからの課題ですね」と、今後の展望を語った。

 また、今季はここまで全て2位と濵田選手に押さえ込まれてしまった橋本英樹選手は、「これまでは3秒くらい濵田選手に離されてしまっていたのですが(笑)、シーズン後半でようやく追いついてきたので、これからも精進します」と、意欲を語った。

RWDクラスでGR86をドライブする濵田隆行選手(DLクスコWM浜自GR86)は0.01秒差で今季4連勝を果たし、クラス転向初年でチャンピオンを確定させた。
RWDはトップ3が表彰台に登壇した。左から2位の橋本英樹選手(DLザウルスS2000)と優勝した濵田選手、3位の今井健文選手(DL杉尾GSTACS86HMC)。

S1クラス

 S1クラスは、今季3勝を挙げている荒牧健太選手がランキングトップ、ランキング2番手には5ポイント差で永田誠選手が追う王座争いになっている。永田選手が欠場した今回の一戦で、荒牧選手は一気にチャンピオンを確定させたいところだ。

 しかし、1Heatでトップタイムをマークしたのはスポット参戦した全日本ドライバー、奈良勇希選手だった。2番手と3番手には中国勢の小川英二選手と高橋義晴選手が続き、荒牧選手は4番手で折り返す。

 2Heatでは奈良選手がアクシデントでリタイアとなってしまい、タイムを更新することが出来なかった。逆転のチャンスが到来したが、S1は全ドライバーがベストタイムを更新することが出来ず、奈良選手が逃げ切った。

「今回は全日本戦に向けての練習ということで参戦しました。今年は雨の調子が良くなかったのとタカタも得意ではないので、今日の条件は練習としては丁度良かったのですが、2本目はクルマをぶつけてしまったので、雨で攻め込んだ時の精度はまだまだと痛感しました」と、反省とともに自己分析した奈良選手は、全日本ドライバーの速さも見せて勝利した。

 一方、王座争いでは今回の一戦で4位と表彰台を逃してしまった荒牧選手だが、獲得した10ポイントが効いて二連覇を確定させた。

ZC33S型スイフトを駆る奈良勇希選手(ブリッドDLレプソルスイフト)は2Heatを走り切ることができなかったが、1Heatに残したタイムでS1クラスを制した。
S1表彰台の両脇は、ホンダ・インテグラ使いが占めた。2位に小川英二選手(DLビルドK☆Sprインテグラ)が入り(左)、高橋義晴選手(SPIRITインテグラ)が3位を獲得した(右)。
ZC33S型スイフトをドライブし、S1ランキングトップで今回の一戦を迎えた荒巻健太選手(マオ神世DLブレインズスイフト)は4位に終わったが、チャンピオンを確定させた。
S1は上位4選手、左から2位の小川選手、優勝した奈良選手、3位の高橋義晴選手、4位でチャンピオン確定の荒巻選手が表彰を受けた。

S2クラス

 S2クラスで今季4勝を挙げている岡本泰成選手は、4位を獲得すればチャンピオンが確定する状況で今回の一戦を迎えた。やはり1Heatからトップタイムをマークした岡本選手は、2Heatでタイムダウンを喫するも、変わらぬ強さを見せつけて今季5勝目を挙げて満点チャンピオンが確定した。

「地区戦は(全日本用の)本番車を使わずに練習車で参戦していたので、他の選手よりもトラブルなどに気を使わず走れたのが良かったのではないかと思います」と、勝因を明かした岡本選手は続けて「今日は、1本目は思ったラインにのせて走らせることができましたが、2本目は深くなったワダチに合わせられなかったですね」と反省も忘れない。1Heatで叩き出したタイムは今回の一戦での総合トップタイムとなった。

三菱・ランサーエボリューションⅨを駆る岡本泰成選手(DLアルテックおかつねランサー)は1HeatのタイムでS2クラス優勝を果たし、2023シーズン以来のチャンピオンも確定させた。
S2でランエボⅩをドライブする清岡毅選手(河野M★ADVAN★ランサー)は1Heatでしかタイムを残せなかったが、2位を獲得した(左)。小山茂樹選手(DLアルテックランサー8)はランエボⅧを操って3位入賞を果たした(右)。
S2は上位5選手が表彰された。左から4位の青戸浩喜選手(カジオカスノコDLランサー)、2位の清岡選手、優勝した岡本選手、3位の小山選手、5位の岸山信之選手(BRIDE☆DL☆GRFヤリス)。

Cクラス

 Cクラスは、今季2勝を挙げている東竜弥選手が67ポイントでシリーズ首位に立ち、2ポイント差で上原吉就選手が追う展開となっている。王座争いはこの2人に絞られているが、Heat1で1分57秒88のトップタイムを刻んだのは、ランキング5番手につけている佐伯義輝選手。2番手には0.41秒差で東選手、更に1.06秒差で上原選手が続き折り返した。

 著しくタイムダウン傾向となってしまった2Heatの路面ではトップ3中で唯一、上原選手が0.66秒のタイムアップを果たす。しかし順位の変動はなく、1Heatのタイムで佐伯選手が優勝となった。

「すでにチャンピオンの可能性はないので、気楽に走れたのが一番の勝因かな。ただ、タイム的には、S2クラスの岡本選手と比較するとちょっと……。踏めてないのが明らかですね」と佐伯選手は苦笑いを交えながら、厳しく走りを振り返った。

 一方、王座争いでは2位を獲得した東選手が、3位に入った上原選手とのポイント差を広げてランキングトップを死守。「ダートトライアルは2年目で今年が初のシリーズフル参戦ですが、チャンピオン争いというところまでくることが出来たのは、サポートをしてくださる回りの方々のおかげです」と感謝を述べたが、「今回は1本目に大きなミスをしてしまい、2本目は路面の影響もあったのですがタイムダウンと走りに関してはまだまだなので、練習も増やしていこうと思います」と、佐伯選手と同様に厳しく自身の走りを評価した。

Cクラスは佐伯義輝選手(MSHブレインズDLランサーⅩ)がランエボⅩをドライブして二連勝を果たした。
S2表彰台の両脇は、王座を争う2選手が分け合った。ランキングトップの東竜弥選手(MSHリボルト熊本DLランサー)はランエボⅧをドライブして2位に入り(左)、ランエボⅩを操りランキング2番手につける上原吉就選手(アルテックDLレイデルランサー)が3位を獲得した(右)。
Cは4位までのドライバーが表彰を受けた。左から4位の高橋亮一選手(アルテックDL・KYBランサー)、2位の東選手、優勝した佐伯選手、3位の上原選手。

Dクラス

 Dクラスの王座争いは、今季2勝を挙げている五味直樹選手が67ポイントでランキングトップに立っている。しかし、5ポイント差で橋本和信選手が追い、更に3ポイント差で江川博選手が続く混戦。3選手ともにチャンピオン獲得の権利を持ち合わせて第6戦を迎えた。

 1分56秒4で1Heatのトップに立ったのは、ランキングトップの五味選手。0.18秒差の2番手に江川選手が、3.05秒遅れで橋本選手が3番手につけた。このままの順位で終わると、最終戦を待たずに五味選手のチャンピオンが確定。橋本選手と江川選手は2Heatの走りで望みを繋げたいところだ。

 しかし、悪化した路面状況では如何ともしがたく、2Heatでは3選手ともにタイムダウン。五味選手が逃げ切って優勝を果たした。「去年転倒してしまったので、今年は無理せず、それなりにという感じで走ったのですが成績も出せて、何とかなりました。今日の2本目は、久しぶりに壁が迫ってきましたが(笑)、チャンピオンを獲れて良かったです」と、笑顔で語った五味選手は2023シーズン以来3度目のチャンピオン確定となった。

 また、連覇を逃してしまった橋本選手は「お互いいろんな事情がありますから(笑)、今年は万全ではなかったということで。来年リベンジします」と誓った。江川選手は「開幕戦で転倒して、全ての計算が狂ってしまいました(苦笑)。幸いスペアカーが2台あったのですが、これに慣れるのに大変でした」と、それぞれの想いを語った。

DクラスはランエボⅩを駆る五味直樹選手(MSH☆SUNOCOランサーⅩ)が優勝でチャンピオンを確定させた。
Dはトップ3が表彰された。左から2位の江川博選手(DLアルテックGR福岡ランサー)、優勝した五味選手、3位の橋本和信選手(MSHブレインズDLランサー)。

オープン2クラス、オープン4クラス

 排気量区分なしの2WDと、1600ccまでの4WDが集ったオープン2クラスには、今季の全日本D1クラスで勝利も挙げている山下貴史選手が参戦。1Heatで2番手以下を大きく突き放すトップタイムをマークし、2Heatではトップタイム更新はならなかったが逃げ切った。

 排気量区分なしの4WDが対象のオープン4クラスには河野想一郎選手がS2の岡本選手とダブルエントリー、両Heatともに走り切ってタイムを記録した。

オープン2クラスは三菱FTOを操る山下貴史選手(YHセラメタMnagi FTO)が1Heatで記録した圧倒的なタイムで制した。
オープン4クラスには河野想一郎選手(DLアルテックおかつねランサー)がランエボⅨを駆って挑み、1Heatのタイムがベストタイムとなった。

フォト/友田宏之 [Hiroyuki TOMODA]、中島正義[Masayoshi NAKAJIMA] レポート/友田宏之[Hiroyuki TOMODA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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