全日本ダートラ最終戦で残る7クラスすべてのチャンピオンが確定
2025年10月17日
 
  今シーズンの全日本ダートトライアル選手権の最終戦となる第8戦「ダートトライアル in タカタ」が、10月11~12日に広島県のテクニックステージタカタで開催された。4月5~6日に九州地区のオーガナイザーによって開催された第2戦に続き、同会場では今シーズン2回目の全日本戦となる。
2025年JAF全日本ダートトライアル選手権 第8戦「ダートトライアル ㏌ タカタ」
開催日:2025年10月11~12日
開催地:テクニックステージタカタ(広島県安芸高田市)
主催:CCN、TBR
全日本最終戦には、全クラス合わせて160台がエントリー。前戦でPN3クラス、SCクラス、D2クラスの3クラスはタイトルの行方が確定しているが、残るPNE1クラス、PN1クラス、PN2クラス、Nクラス、SA1クラス、SA2クラス、D1クラスの7クラスは、この最終戦が決戦の場となる。
ホコリ防止のため、各ヒートともPNE1クラスとSA1クラスの前に2回、両ヒート合わせて4回の撒水が行われたが、この日の西日本は上空に暖かい空気が流れ込んだために、最高気温が28度付近まで上昇。多くのドライバーは、路面の砂利が掃けた第2ヒートのタイムが決勝タイムとなった。だが、ドライ路面になったことで粒子の細かいダストが路面を覆い、特に後半ゼッケンのクラスでは第2ヒートでタイムダウンしてしまうドライバーも少なくないという、攻略が難しい路面となった。
 
     
     
    PNE1クラス
エントリーした6台中、4名のドライバーがチャンピオンの可能性がある状況となったPNE1クラスは、シリーズランキングトップにつける内藤聡選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、両ヒートでベストタイムをマーク。「第1ヒートは走りづらさがあったんですけど、路面コンディションがどんどん良くなったので、第2ヒートは思い切ってセッティングを変えたことが結果につながりました。ダートトライアルに復帰するまでにいろいろな道程があって、過去の結果はまったくなしと考えてもいい状態だったので、チャンピオンは本当にうれしいです」という内藤選手が、2014年以来11年ぶり4回目となる全日本チャンピオンを確定させた。
2位には、第1ヒートで内藤選手に0.055秒差まで迫ったハンター大谷ヒロシ選手(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞。3位には、トヨタ・プリウスを駆る太田智喜選手が入り、ホームコースで今季初表彰台を獲得した。
 
     
     
     
     
    PN1クラス
チャンピオン候補は、今シーズンのシリーズランキングトップにつける若手の南優希選手(スズキ・スイフトスポーツ)と、同2位につけるベテランの飯島千尋選手(スズキ・スイフトスポーツ)の2台に絞られたPN1クラス。飯島選手は優勝以外逆転チャンピオンのチャンスはないが、南選手は仮に飯島選手が優勝したとしても3位以内に入賞すればチャンピオンが確定するという状況の中、第1ヒートは22年チャンピオンの工藤清美選手(ホンダ・フィット)がベストタイムをマーク。飯島選手が0.274秒差の2番手、南選手が0.999秒差の3番手につけ、南選手が自身初となるタイトル獲得に王手をかける。
ベストタイム更新ラッシュとなった第2ヒートは、南選手がベストタイムを更新。第1ヒートトップの工藤選手が南選手に0.035秒届かず2番手に順位を落とした時点で南選手のチャンピオンが確定となった。しかし、クラス最終走者の飯島選手が「やるべきことはしっかりできたと思う」と南選手を逆転。意地の最終戦優勝を果たした。「今までに感じたことがないプレッシャーがありましたが、自分の走りをしっかり出し切れたら、(チャンピオン獲得の)チャンスはあると思いました」という南選手が2位に、工藤選手が3位にそれぞれ入賞した。
 
     
     
     
     
    PN2クラス
20代のドライバー同士が両者とも自身初となるチャンピオンを争う形となったPN2クラス。シリーズランキングトップの張間健太選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、第1ヒートでトップタイムをマークした。第2ヒートは、優勝する以外逆転チャンピオンの道がない奈良勇希選手(スズキ・スイフトスポーツ)がベストタイムを更新して逆転チャンピオンに王手をかけるが、「今回も前戦のいなべ同様、公開練習も第1ヒートと第2ヒートも全部勝つつもりで挑みました」という張間選手が、奈良選手のタイムを0.147秒更新。結果的には両ヒートを制する速さと強さで、今季4勝目を挙げるとともに自身初となるシリーズチャンピオンを確定させた。
「第2ヒートは少しオーバーランしてしまいましたが、それでもやり切った感はあります」という奈良選手が2位。3位にはディフェンディングチャンピオンの佐藤卓也選手(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞した。
 
     
     
     
     
    Nクラス
Nクラスは、今回3位以内に入賞すれば、ライバルの結果に関係なく自力チャンピオンが確定する岸山信之選手(トヨタ・GR86)が第1ヒートでトップタイムを奪う。
第2ヒートもベストタイムを更新した岸山選手は、この時点で自身初となる全日本チャンピオンを確定、クラス最終走者の細木智矢選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)のゴールを待つ。その細木選手は、中間セクションまでは岸山選手に0.22秒遅れるものの、後半セクションで一気に逆転。岸山選手の2位が確定したためにチャンピオンの可能性はなくなっていたが、ゴール後に「ラクショーです(笑)」と今季2勝目を挙げ、一矢報いる結果を残した。
2位入賞でチャンピオンを確定させた岸山選手は、「第2ヒートは軟質路面用のタイヤを選択しましたが、GRヤリスにとっては決して間違いではなかったと思います。今まで2位が多くて悔しい思いもしましたが、今回の2位は自分らしいと思うし、うれしい2位ですね」と笑顔を見せた。
3位には、「第2ヒートは、自分がスタートする前にパルクフェルメに誰もいなくて、その時点でチャンピオンの可能性がないことを知りました(笑)。シリーズを考えると、前戦のパイロンペナルティがすべてでしたね」という宝田ケンシロー選手(トヨタ・GRヤリス)が入賞した。
 
     
     
     
     
    SA1クラス
「今シーズンは仕事の都合でクルマに乗る機会が少なく、シーズン終盤までなかなか調子が上がりませんでした」と不振に喘いだ内藤修一選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、第1ヒートでベストタイムを奪ったSA1クラス。
第2ヒートは、シリーズランキングトップの渡辺知成選手(ホンダ・シビック・タイプR)がベストタイムを更新し、自身初となるシリーズチャンピオン獲得に王手をかける。第7戦を制し、逆転チャンピオンに望みをつなぐ葛西キャサリン伸彦選手(スズキ・スイフトスポーツAT)は、「肝心なところでいろいろと制御が入ってしまって……」と、タイムが伸びず12位に低迷。結果次第では逆転チャンピオンの可能性があった河石潤選手(スズキ・スイフトスポーツ)も9位に終わり、「めちゃくちゃ緊張したりプレッシャーもあったんですけど、自分を信じて最後までしっかりと走り切ることができました」という23歳の渡辺選手が、全日本フル参戦1年目でシリーズチャンピオンを確定させた。
2位に第1ヒートトップの内藤選手が入賞。第1ヒート16番手の荒牧健太選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、「九州のドライバーなんですが、タカタは地区戦でも走っているので、ホームコースのようなもんです(笑)」と一気に順位を上げて3位に入り、初表彰台を獲得した。
 
     
     
     
     
    SA2クラス
第7戦で転倒を喫した浜孝佳選手(三菱・ランサーエボリューションⅨ)が不出走となった時点で岡本泰成選手(三菱・ランサーエボリューションⅨ)の2年連続チャンピオンが確定したSA2クラスは、その岡本選手が両ヒートで後続を1秒以上引き離す速さで今季3勝目を獲得。「タイトル争いは思いがけない結果で終わりましたが、最後まで集中を切らさずにしっかり走り切れたと思います」と有終の美を飾った。
2位には、「クルマがかなり良くなってきた。一生懸命いろいろとやってきた成果がやっと出たけど、それでも(岡本)泰成選手に届かないのはどうなの(笑)!?でも、自分の走らせ方はこれからも崩さないよ」というベテランの北村和浩選手が入り、今季初表彰台を獲得。3位には、「第2ヒートの走りが第1ヒートでできていればね」という荒井信介選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)が入賞した。
 
     
     
     
     
    D1クラス
パッション崎山選手(トヨタ・MR-S)がシリーズチャンピオンに王手をかけているD1クラスは、第1ヒートで地元スペシャリストの鈴鹿浩昭選手(ホンダ・インテグラ・タイプR)がベストタイムをマーク。第2ヒートもベストタイムを更新した鈴鹿選手は「全日本はスポット参戦なんですが、地元コースはいつも負けたくないと挑んでいます。春(第2戦)の大会で同じ地元の一柳豊選手が勝っていたので、僕にもチャンスはあると思っていました」と、2017年のタカタラウンド以来となる全日本2勝目を獲得した。
2位には、「第2ヒートはスタートする前からオーバーヒート気味になってしまい、途中からエンジンが吹けなくなってしまいました。それでも最後まで走り切ることができてホッとしています」というパッション崎山選手が入賞。自身初となる全日本チャンピオンを確定させた。「タカタはホームコースなんですけど、なぜか全日本ではいつも僅差で負ける。タカタの全日本はタイヤ選択が難しいですね」という山下貴史選手(三菱・FTO)が3位となった。
 
     
     
     
     
    PN3クラス
前戦で竹本幸広選手(トヨタ・GR86)が3年連続となるシリーズチャンピオンを確定させたPN3クラスは、その竹本選手が両ヒートでベストタイムを叩き出し、有終の美を飾る今季4勝目を獲得した。2位には、後半セクションで追い上げ竹本選手に0.463秒差まで迫った徳山優斗選手(トヨタ・GR86)が入賞。「タカタで初めて超硬質路面用タイヤを装着してみました。結果的には悪くはなかったと思います」という和泉泰至選手(トヨタ・GR86)が3位だった。
 
     
     
     
    SCクラス
SCクラスは、前戦でシリーズチャンピオンを確定させた目黒亮選手(トヨタ・GRヤリス)が両ヒートを制し、今季6勝目を獲得。有効得点ベスト6戦すべてが優勝となり、“満点チャンピオン”を獲得した。2位には「タイヤ選択が難しい路面でしたね」という上村智也選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)が入賞。3位には、「今年は肝心なところでミスが出て、焦っているつもりはないんですけど、うまく噛み合わなかったシーズンでしたね」という坂田一也選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)が入賞した。
 
     
     
     
    D2クラス
D2クラスは、第6戦で3年連続チャンピオンを確定させた田口勝彦選手(三菱・ランサーエボリューションⅩ)が、両ヒートでライバル勢を1秒以上引き離すタイムを叩き出し、今季6勝目を獲得。有効得点で満点チャンピオンを確定させた。2位には、「いろいろと仕様変更してきたことが少しずつ結果に結び付いてくるようになったけど、まだまだ(田口)勝彦が速いね。来シーズンも頑張ります」という谷田川敏幸選手(スバル・BRZ)が入賞。「ラインに乗せるのが精一杯。タイヤ選択を失敗しました」という炭山裕矢選手(三菱・ミラージュ)が3位だった。
 
     
     
     
    PHOTO/CINQ、遠藤樹弥[Tatsuya ENDOU]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/CINQ、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]



