東北ダートラ4WD-1に転向初年の菊池恒博選手が第6戦で初地区戦王者に確定!

レポート ダートトライアル

2025年10月2日

JAF全日本ダートトライアル選手権も開催される、福島県二本松市に建つ“スラパ”ことエビスサーキット新南コース(スライドパーク)。2025年JAF東北ダートトライアル選手権の第6戦は9月7日に当地で開催された。今季も残すところ2戦となった東北地区戦は5クラス中、チャンピオン確定済は2WD-1クラスのみで、残るクラスは王座争いの真っただ中。4クラスともに上位陣のポイント差は拮抗しており、第6戦は王座争いの行方を大きく左右する一戦となりそうだ。

2025年 JAF東北ダートトライアル選手権 第6戦
2025年 JMRC 東北ダートトライアル選手権 第6戦
Sifダートトライアル2025秋

開催日:2025年9月7日
開催地:エビスサーキット新南コース(スライドパーク)(福島県二本松市)
主催:SiF

 チャンピオンを賭けた大一番のレイアウトはジムカーナさながら、パイロンターンをふんだんに取り入れた設定。慣熟歩行では、進入や立ち上がりのラインを入念に確認するダートトライアラ―の姿が多く見られた。

 天候は朝から晴れ。午後からやや曇りがちとなったが、全国的な猛暑は9月に入った東北も例外ではなく30℃を超える時間帯もあり、厳しい残暑の中での戦いとなった。

5クラス中4クラスのチャンピオンがまだ確定していない、2025年JAF東北ダートトライアル選手権は第6戦が福島県二本松市のエビスサーキット新南コース(スライドパーク)で9月初旬の残暑が厳しい中、開催された。いくつものパイロンターンが待ち受けるダートラでは珍しいレイアウトを前に、ダートトライアラ―たちは念入りに慣熟歩行を行っていた。

FRクラス

 FRクラスの王座争いはポイントリーダー加藤琢選手を、ランキング2番手の坂井義浩選手が追う展開となっている。ポイントは加藤選手がリードしているものの、今季の優勝回数は加藤選手1勝に対して坂井選手は2勝。坂井選手は優勝でチャンピオンを確定することができるため、加藤選手は絶対に落とせない一戦だ。

 1st Heatで2分0秒899をマークしてトップに立ったのは坂井選手。続く2番手には2024シーズン、豪雨のスラパでの最終二連戦完全制覇し、今季の開幕第1戦でも優勝を果たしている女性トライアラ―のみっちー選手がつける。そして、加藤選手はミスコースを犯してタイムを残すことが出来ずに折り返すこととなった。

 2nd Heatになると、みっちー選手も2分0秒台までタイムアップを果たすが、坂井選手には0.02秒届かず2番手は変わらず。僅差でトップをキープした坂井選手もタイムアップを果たすものの、その伸び代は0.017秒と、1stとほぼ変わらないタイムでフィニッシュした。

 勝利には2分0秒台のタイムが必須となったところで、加藤選手がスタート。2nd一発勝負となった加藤選手は、中間計測地点を坂井選手よりも約0.8秒速いタイムで通過。しかし、後半のテクニカルセクションで盛り土にのりあげてしまい、大きく失速してしまう。これで万事休すかと思われたが、前半区間のアドバンテージが効いたか、坂井選手を0.258秒上回るタイムで逆転優勝を決めた。

 加藤選手は「今回のようなテクニカルコースは得意なのですが、最近物忘れが多くてコースも忘れちゃうんですよね(苦笑)。ただ、1本目のミスコースはインプレッサの時からちょくちょくやってたので気にしてなかったのですが、2本目の失敗は危なかったですね。ラッキーでした」と、僅差で制した走りを振り返った。

 続けて「自分の実力を疑い始めていたので(笑)、久しぶりに勝てて安心しました。次に繋げることができて、精神的に楽になりましたね」と、加藤選手は第2戦以来の優勝で安堵の表情を見せた。有効5戦のランキングで3ポイント差のトップに立った、坂井選手との一騎討ちは最終第7戦までもち越された。

FRクラスはディフェンディングチャンピオンの加藤琢選手(GネモトFINEクラフトBRZ)が背水の陣からZC6型スバルBRZを駆って逆転優勝を果たした。
FRの2位はZD8型BRZを操る坂井義浩選手(メープルFORT・DL・BRZ)が獲得し、新旧BRZ勢がトップ2を占めた(左)。ホームコースでの一戦となった女性ダートトライアラ―のみっちー選手(YH・KYB・オレンジGR86)がGR86をドライブして3位に入った(右)。
FRは4位までのトライアラ―が表彰された。左から4位の市川公司選手(Gメカ86大福号)、2位の坂井選手、優勝した加藤選手、3位のみっちー選手。

2WD-1クラス

 開幕から破竹の4連勝を決め、すでに2WD-1のチャンピオンを確定している工藤清美選手。今回の一戦を制すれば満点チャンピオンも確定するとあって、1st Heatから2番手に2秒以上の差をつける1分54秒462のトップタイムを叩き出す。そのタイムは2nd Heatになっても更新されることはなく、更にウィニングランで工藤選手はトップタイムを0.97秒更新して完全勝利を果たした。

 横綱相撲で制した工藤選手は「路面は(ヒート間で)砂利を戻していたのでどちらも良い状況ではなかったのですが、2本目は細かいターンでピッタリ寄せることができたので、完璧でした」と2ndでの走りを笑顔で振り返った。

前戦で2WD-1クラス二連覇を確定させた工藤清美選手(工藤ホンダDLワコーズフィット)はホンダ・フィットRSを操って両Heatを制し、満点チャンピオンも確定した。
2WD-1の2位は高田正栄選手(工藤ホンダDL八幡平フィット)が獲得し、今季3度目のフィットRS勢による1-2フィニッシュを飾った(左)。3位にはトヨタ・ヴィッツをドライブして関東地区から遠征を続ける石井亮丞選手(TRS・MFF・DLヴィッツ)が入賞した(右)。
2WD-1も上位4選手が表彰を受けた。左から4位の柳本弘信選手(PS24SマジックDLμnagiヤリス)、2位の高田選手、優勝した工藤選手、3位の石井選手。

2WD-2クラス

 毎戦ウィナーが変わり混戦模様の2WD-2クラスは、第5戦終了時点では王座争いの行方が全く掴めない状況だ。今回の一戦で最終戦を前に誰が一歩抜け出すのか、それとも更なる混戦となるのか注目となった。

 1st Heatでトップタイムを刻んだのは、スポット参戦してきた全日本トライアラ―、佐藤卓也選手だった。2番手には0.037秒遅れで、ランキング4番手の武蔵真生人選手がつけた。同2番手の越川善正選手が0.297秒遅れの3番手で続き、1stから接戦が展開される。

 そして、2nd Heatで武蔵選手が1分53秒607をマークしてトップタイムを更新。更に、越川選手が0.404秒上回ってトップが入れ替わる。タイムアップ合戦となる中、一気に1分51秒276までトップタイムを引き上げたのはポイントリーダーの古川雄貴選手で、1stでの5番手からトップに躍り出る。

 再逆転を狙った佐藤卓也選手は中間計測で古川選手を約0.4秒上回るものの、後半区間で遅れて1分52秒351。古川選手が2ndでの逆転で接戦を制し、今季2勝目を挙げた。「1本目は何をやってもダメで、今日は勝てないだろうなと思ってたところ、更に(ヒート間で)砂利を敷き直して散水もかなり撒いて、ドライタイヤしか持ってこなかったので2本目もあきらめてました」と、古川選手は明かした。

 勝利を掴み取った2ndの走りについて、「ドライタイヤが思いのほか機能してくれたらしく、自分では全く手応えなかったのですが、周りの人たちがそう言ってたので、そうなのかな? と(笑)。こういったところがエビスの路面の難しさと感じました」と、釈然としない様子の古川選手だが、ポイントリーダーは堅守。混沌としていた王座争いは古川選手と越川選手に絞られ、最終戦で決着となった。

ホンダ・インテグラをドライブする古川雄貴選手(元TUMC☆インテグラ)が2WD-2クラスの今季2勝目一番乗りを果たした。
スズキ・スイフトスポーツを駆り、前戦に続き2WD-2にスポット参戦した全日本PN2クラス王者の佐藤卓也選手(DLΩKYBオクヤマ・スイフト)は2位で二連勝ならず(左)。越川善正選手(BMKスポーツFスタミラージュ)は3位となったが王座争いに留まった(右)。
2WD-2は左から、4位の武蔵真生人選手(夢藏屋連邦仮鮫ミラージュ)、2位の佐藤卓也選手、優勝した古川選手、3位の越川選手、5位の中山祐太郎選手(ナカヤ・マミラージュ)、6位の菅谷雅人選手(Bダッシュインテグラ)が表彰された。

4WD-1クラス

 4WD-1クラスは、ポイントリーダーの菊池恒博選手を筆頭に、林健一選手とディフェンディングチャンピオン伊藤久選手、そして川崎修也選手の4人がチャンピオン確定の権利を持っている。今回の一戦でチャンピオンを確定させることができる菊池選手が、1st Heatから2番手以下を2秒以上引き離す、1分44秒47をマークしてチャンピオンに王手をかける。

 2nd Heatでもトップタイムは誰にも破られず、菊池選手はウィニングランとなった。そこで、ダメ押しの1分43秒943までタイムを更新。第1戦と第2戦に続き、今季はスラパでの地区戦を全て制覇した。

「今シーズンからGRヤリスに乗り換えたのですが、これまでのインプレッサとは動きが全然違うので最初は苦労しました。セッティングに関しては(メンテナンスガレージの)綾部さんに全てお任せで、『これで走れ!』と言われて、それに従ってます(笑)」と、語る菊池選手だが、車両を乗り換えてのクラス転向初年から好成績を収めている。

 今回の一戦の走りについて、菊池選手は「2本目は主にライン取りを修正して、タイムアップにつなげることができました。タイム的にはもう少し詰められる気もしましたが、全体的に良かったと思います」と、振り返った。2023シーズンから設定された4WD-1で二連覇中の伊藤選手を下した菊池選手は、初の地区戦チャンピオンを確定させた。

GRヤリスワンメイクとなった4WD-1クラスは、ただ一人1分43秒台のタイムをマークした菊池恒博選手(アヤベMOTUL遠藤板金DLヤリス)が今季3勝目を挙げて、初の地区戦チャンピオンを確定させた。
1st Heatで4WD-1の2番手につけた川崎修也選手(DLブレインズΩファインヤリス)は逆転を期した2nd Heatで1.5秒以上タイムアップするも2位は変わらず(左)。1stは5番手に沈んだ伊藤久選手(RZ☆DLフォルテRCAヤリス)だったが逆転で3位をゲットした(右)。
4WD-1はトップ4が表彰された。左から4位の飯島充選手(HKサービス児玉興産ヤリス)、2位の川崎選手、優勝した菊池選手、3位の伊藤選手。

4WD-2クラス

 第5戦終了時点で4WD-2クラスは、ランキング5番手のトライアラ―までチャンピオン確定の権利を有する混戦状態だ。ポイントリーダーの大西康弘選手と、ランキング5番手の遠藤誠選手が不参戦となった今回の一戦で上位陣の変動に注目だ。

 1st Heatでトップタイムをマークしたのは、ランキング4番手につけている砂小澤明選手で、タイムは1分42秒722。約1秒遅れの2番手にはランキング3番手の須藤正人選手が続き、同2番手の金田一聡選手は1分45秒台の5番手と、やや出遅れて折り返した。

 2nd Heatに入ってもトップタイムは更新されず、後半ゼッケン勢に突入。ついにトップタイムを塗りかえたのが、1stで3番手につけていた四戸岳也選手。ベストタイムを4秒以上更新する、1分39秒83を叩き出して後続のタイムを待つ。

 続く砂小澤選手はタイムアップを果たすも伸び代は0.148秒でトップは奪えず。クラスラスト前ゼッケンの須藤選手は中間計測で四戸選手を1秒近く上回るものの、後半区間が伸び悩んで3番手止まり。クラスラストゼッケンの金田一選手は中間計測ですでに2秒以上遅れ、更にテクニカル区間でのミスも響いて大きくタイムダウンして8位となり、四戸選手が逆転優勝となった。

「今日は1本目失敗したので“1本目番長”ではなかったけど(笑)、きっちり走れば速いタイムが出せる、という確信もあったので2本目は慎重にいきました」と、四戸選手は語った。更に「(ヒート間で)砂利を戻すということだったので、それを想定したタイヤ選択が当たりました。タイム的にも1分39秒台ということで、良かったと思います」と、勝因を分析した。四戸選手はサーキットパーク切谷内での前戦で転倒、修復して挑んだ第6戦。すでにチャンピオンにはに届かないが、一矢報いる今季初優勝を飾った。

 一方、王座争いでは大西選手と金田一選手のトップ2は変わらず。不参戦だった遠藤選手が脱落して、須藤選手が砂小澤選手を抜いて3番手に順位を上げたものの、ポイント差は拮抗。4選手による最終決戦となった。

今回の一戦で最多エントリーを集めた4WD-2クラスでは、三菱・ランサーエボリューションⅦを駆る四戸岳也選手(YH紅MOTULランサー)が逆転で今季初優勝を飾った。
砂子澤明選手(GネモトFINEクラフトGC8)はスバル・インプレッサWRX STIを操って4WD-2の2位を得た(左)。3位はランエボⅨをドライブする須藤正人選手(すとうmriクリニックランサー)が獲得した(右)。
4WD-2の表彰は左から4位の柿本拓自選手(DLトヨカワ五戸福拓ランサー)、2位の砂子澤選手、優勝した四戸選手、3位の須藤選手、5位のアキマただゆき選手(栗林W横町ケノールランサー)、6位の大泉剛選手(DLワコーズクラフトGRB)が受けた。

クローズド1クラス、2クラス

 地区戦と併催したクローズド1クラスは、ジムカーナが主戦場の成澤裕太選手が1st Heatで2分3秒971をマークしてトップに立つ。2nd Heatでは各選手が続々とベストタイムを更新したが、トップタイムは塗り替えられることなく、ラストの成澤選手はウィニングランとなった。

「ダートトライアルは練習会で1回走ったことがありますが、競技会は初めてです。1本目はタイムを残すため思い切り走って、2本目はダート路面で試したいことがあったのでブレーキングなどの質を変えて走ってみました」と、2ndでのタイムダウンの理由を明かした。それでも1stのタイムを守り切り、ダートラデビューでトップタイムを奪った。

 佐藤幸公選手と金谷優斗選手による一騎討ちとなったクローズド2クラスは、佐藤幸公選手が1stでトップタイムをマーク。2ndでの勝負になるかと思われたが、金谷選手が車両トラブルで出走できず。佐藤幸公選手だけとなっても更にトップタイムを3秒以上更新したが、「トラクションがかからず苦戦しました。次は思いどおりの走りをしたいと思います」と、次戦に向けた抱負を語った。

クローズド1クラスはマツダ・デミオを操るスラローマーの成澤裕太選手(なりさわすいか・DL・守屋デミオ)が路面を選ばぬ速さでトップタイムをマークした。
1クラスは左から、2位の佐伯虎太郎選手(UTACギャラン)とトップの成澤選手、3位の佐藤洋一郎選手(Sマジック・エクスペリエンス・マーチ)のトップ3が表彰された。
一人だけの2nd Heatとなってしまった2クラスの佐藤幸公選手(GR YARIS)だったが、GRヤリスを駆って大きくベストタイムを更新した。

フォト/友田宏之 [Hiroyuki TOMODA] レポート/友田宏之[Hiroyuki TOMODA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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