逆走設定のいなべでの近畿ダートラ第5戦、四つ巴のRWDは三浦陸86に王者確定!
2025年9月29日

2025年JAF近畿ダートトライアル選手権は第5戦が8月31日、三重県いなべ市のいなべモータースポーツランドを舞台に開催された。3月に四国地区の香川県に建つ香川スポーツランドで開幕した今季の近畿地区戦は第2戦以降、いなべに舞台を移して戦いが繰り広げられてきた。全5クラスのうち、チャンピオンが確定しているのはAE・PNクラスとS2クラスの2クラスで、RWDクラス、S1クラス、Dクラスの王座争いがこの最終戦まで持ち越された。
2025年JAF 近畿ダートトライアル選手権 第5戦
2025年JMRC 近畿ダートトライアル チャンピオンシリーズ第5戦
2025年JMRC 近畿ダートトライアル ジュニアシリーズ第5戦
FLEETダートトライアル2025inいなべ
開催日:2025年8月31日
開催地:いなべモータースポーツランド(三重県いなべ市)
主催:TEAM FLEET
最終決戦のレイアウトはスタートとフィニッシュの位置が、これまでいなべで開催されてきたダートラ競技会とは異なる逆走レイアウトを採用。スタート直後から急勾配を下り、そのままコースの奥まで一気に駆け抜ける、細心のスピードコントロールが要求される設定となった。
また、8月下旬になっても全国的に猛暑が続き、いなべが建つ中京圏では最高気温が40℃近くまで気温が上がる日も多く、前日は隣接する三重県桑名市で40℃を超え、当日も名古屋市で40℃を記録。ドライバー、車両ともに暑さとの戦いも強いられる厳しい環境となったが、灼熱の太陽の下、今季最後の熱戦が繰り広げられた。


2025年JAF近畿ダートトライアル選手権 第5戦
AE・PNクラス
今季3勝を挙げた近藤大介選手がチャンピオンを確定させているAE・PN。新王者が欠場となった最終戦、第1ヒートをトップで折り返したのは、スポット参戦した岩田直也選手。タイムは1分27秒893と、2番手につけた宮子祐輔選手に2秒近くの差をつける好タイムをマークする。
第2ヒートになると、岩田選手は1分25秒89までトップタイムを更新。宮子選手も約3秒のタイムアップで追い上げるも1分26秒台に留まり、岩田選手が両ヒートを制して優勝となった。
「いなべは練習で2回ほど走ったことがありますが、競技としては今回が初めてです」と岩田選手は明かすと続けて、「1本目は70点~80点くらいの出来だと思います。ただ、2本目はヘアピンでギヤが入らず大幅にタイムロスしてしまったので、優勝は嬉しいのですがミスの悔しさの方が大きいですね」と語った。
岩田選手の主戦場は中国地区。三週間前にテクニックステージタカタで行われた、2025年JAF九州ダートトライアル選手権の第6戦で地区戦初優勝。この優勝で開催地区こそ違えど、地区戦二連勝を達成した。しかし今回は、若干悔いが残る走りだったようだ。



RWDクラス
RWDの王座争いは、54ポイントでランキング首位に立っている宇野研三選手を、7ポイント差で仲村柊太選手が、そして40ポイントの同点で三浦陸選手とイデブロック選手が追う展開となっている。4選手とも優勝すれば、ライバルたちの成績に関係なくチャンピオンを確定させることができる。
しかし、第1ヒートでトップタイムをマークしたのは第4戦の覇者、ランキング5番手につける光橋亮治選手だった。光橋選手はチャンピオン確定の権利は失っているが、今季2勝目を狙いたいところだ。そして2番手に三浦選手、3番手にイデブロック選手と続き、仲村選手は5番手、宇野選手は10番手で折り返す。
三浦選手とイデブロック選手は今回の一戦で得たポイントが全て加算される。対して、宇野選手がポイントを加算できるのは2位以上、仲村選手は優勝以外ではチャンピオン確定ができないため、二人にとっては厳しい状況となった。
第2ヒートでまずはイデブロック選手が光橋選手のタイムを約1秒上回る、1分25秒343でトップタイムを刻む。しかし、光橋選手はさらに1秒以上更新する1分24秒201をマークしてトップを奪回。続く三浦選手は光橋選手のタイムには及ばなかったものの、イデブロック選手を0.197秒かわして2番手に割って入った。
そして、チャンピオン確定には1分24秒台前半が必須となった仲村選手は、5秒近くタイムアップを果たすも1分26秒台に終わり、王座争いから離脱。クラスラストゼッケンの宇野選手も大幅なタイムアップで追い上げるが、やはり1分26秒台で4位となり、光橋選手が今季二勝目を挙げた。そしてチャンピオンは2位を得てポイントを積み上げ、宇野選手を僅か1ポイント逆転した三浦選手が確定させた。
優勝した光橋選手は、クラス唯一のトヨタMR-S使い。「昨年の夏以降から競技車を制作して、地区戦は今年から参戦してます」と語った。大学の自動車部時代にダートトライアルに目覚めたそうで、所有していたMR-Sをダートラ車両に仕立てて参戦している。
「すでにMR-Sでダートトライアルをやっている方もいましたので、その先駆者の方や、ショックのメーカーさんと相談しながらセッティングを詰めてきました。今回は、1本目に多少のミスはありましたが2本目に繋がるような走りができ、全体的に上手くまとめられたと思います」と、走りを振り返った光橋選手は、新たな後輪駆動車両への乗り換えも視野に入れて参戦予定、だそうだ。
そして、チャンピオンが確定した三浦選手は「今シーズンは、ランサーを乗りこなす為の練習という意味合いで86に乗ってきましたが、一年間をとおしてかなり繊細なコントロールが身についてきたと思います」と今季を振り返った。
最終決戦での走りについては「今回は、ここまでガチガチなドライ路面のいなべを走った経験がなかったので、ぶっつけ本番のセッティングが合わず、三回くらい死にかけました(笑)」と、不満が残る内容だった様子の三浦選手。それでも全日本トライアラ―の勝負強さを見せ、僅差の逆転劇でチャンピオン確定を引き寄せた。




S1クラス
S1の王座争いはランキング首位の眞砂徳亮選手と、ランキング2番手の清水孝憲選手の一騎討ちとなった。眞砂選手は3位以上に入ればチャンピオンが確定する一方、清水選手は眞砂選手がノーポイントでも3位、12ポイント以上獲得が必須という状況だ。
第1ヒートでトップタイムを刻んだのはスポット参戦した全日本トライアラ―、山崎迅人選手でタイムは1分24秒125。清水選手は1分28秒台の5番手、眞砂選手は1分33秒台で入賞圏外の15番手と大きく出遅れてしまう。だが清水選手は、この順位でも眞砂選手にポイントが届かない。
第2ヒート、今回の一戦にスポット参戦した2024シーズン王者、倉持陣之介選手が1分21秒588をマークして一気にトップタイムを引き上げる。更に山崎選手が1分21秒439を叩き出してトップを奪回した。上位陣が1分21秒台の戦いとなったところで、清水選手がスタートを切った。
自力でチャンピオンを確定できない清水選手は、ここでトップタイムを刻んでおきたいところだが、タイムは1分25秒台で8番手。この時点で眞砂選手の結果を待たずにチャンピオン確定の権利を失ってしまう。そして、チャンピオンは確定したものの、眞砂選手はこのままで終わるわけにはいかない。トップ2の牙城は崩せなかったが、1分23秒台までタイムを詰めて4位でフィニッシュ。この結果、山崎選手が優勝を果たし、チャンピオンは眞砂選手が確定させた。
優勝した山崎選手は「路面も荒れてたのでタイム的には今ひとつでしたが、全体的には悪くかったと思います。全日本で採用するかは分かりませんが(笑)、逆回りのコースを走れたのが良い練習になりました」と、3週間後に控えたいなべでの全日本第7戦に向けての手応えを掴んだようだ。
そして、チャンピオンを確定させた眞砂選手は「今シーズンからS1クラスに移籍して、コンピューターも変えてパワーも上がってタイムも出しやすくなったのですが、その反面、原因不明のトラブルも発生して上手く走れなかったこともありました。決して順調ではなかったのですが、終わってみれば(チャンピオンを確定できて)良かったという感じです」と、今季を振り返えった。その後、「優勝で締めくくれなかったのが心残りです(笑)」と、無念そうに締めくくった。




S2クラス
前回の第4戦で、藤本隆選手がチャンピオンを確定させているS2。第1ヒートで1分16秒948をマークしたのは、スポット参戦組でJAF全日本ラリー選手権JN1クラスが主戦場の福永修選手。本番車両のシュコダ・ファビアRSラリー2を持ち込み、豪快な土煙を上げながら圧倒的なタイムでトップを奪った。
2番手には同じくスポット参戦してきた、今季の全日本ダートラSCクラスでランキング2番手につけている上村智也選手が1分18秒052で追う展開。“全日本ラリードライバーVS全日本トライアラー”の様相を呈する戦いとなる。
そして第2ヒートでは、福永選手が更にベストタイムを2.506秒更新してトップをキープ。上村選手も2.892秒のタイムアップを果たすも逆転は成らず、福永選手が優勝となった。「今回は同郷の上村選手と結託して、“京田辺市1位を決める”という独自のイベントを勝手に創って参戦しました(笑)」と明かした福永選手、実はいなべ初走行だった。
「セッティングはラリー仕様のままですが、タイヤだけダートトライアル用に変えました。走り的には行き過ぎてしまったところが結構ありましたが、そういった時でも失敗を最小限に留めて立て直すのがドライバーのウデだと思いますので、頑張ってタイムを出しました」と笑顔で振り返った福永選手は、勝利とともに“京田辺市1位”の座も勝ち取った。
また、三連覇を確定させている藤本選手は第1ヒートで入賞圏外に沈みながらも、第2ヒートは4位まで挽回する走りを見せた。愛機のランエボⅧについて「いなべの路面に合わせたサスペンションセッティングを試行錯誤しながら煮詰めて、良い感じになってきてると思います」とのことだ。
更に「シーズン前半はウェットからドライに変わる事が多く、そういった時は凄く上手く走れるのですが、今回も含めた後半戦はフルドライ路面で、両方とも(ランキング2番手で今回の一戦は3位の)松原(実)選手に負けてしまったので、今後はドライ路面でも勝てるように頑張ります」と、苦笑いを交えながらシーズンを振り返った。




Dクラス
Dはランキング首位の小川浩幸選手と、同3番手の金井宏文選手による王座争い。小川選手が65ポイント、金井選手は50ポイントで最終決戦を迎えた。優勝が絶対条件の金井選手に対し、小川選手は2位以上で金井選手の成績問わずチャンピオン確定と、小川選手が有利な状況だ。
第1ヒートを1分22秒316でトップに立ったのは金井選手。小川選手は1分33秒台で7番手と大きく出遅れ、金井選手が王手をかけて折り返す。しかし、第2ヒートで戦況を大きく変えたのがクラスファーストゼッケン飯田駆選手だった。
前戦で2025年JMRC近畿ダートトライアル ジュニアシリーズのJ2クラスチャンピオンを決め、今回の一戦はDクラスに挑んだ飯田選手が1分19秒597を叩き出し、完全に仕切り直しとなる。
飯田選手のタイムは更新されずに進行し、金井選手がスタートを迎えた。再びトップに返り咲き、小川選手の結果を待ちたいところだったが、タイムは1分20秒323。2番手タイムに終わり、この時点で逆転チャンピオン確定が潰えた。ラストの小川選手は金井選手から0.957秒遅れの3位でフィニッシュ、優勝は飯田選手が獲得し、チャンピオンは小川選手に確定した。
優勝の飯田選手は、「J2クラスには2年くらい参戦してますが、最初の頃はクルマの調子も悪く全く勝てませんでしたが、整備も練習もしっかりやって、最近になって結果が出せました」と、2026シーズンから近畿地区戦へのステップアップを見据えて、Dクラスに参戦したそうだ。
「地区戦ではDクラスかS2クラスにするかは未定ですが、近い路面状況で走りたくて今回はとりあえずDクラスにしました。タイム差はまだありますが、来年までに埋められるよう練習します」と意気込んだ飯田選手の近畿地区戦での活躍に期待したい。
そして、チャンピオンを確定させた小川選手は「今シーズンもクルマがよく壊れました(笑)。今回も、前回壊れたミッションをお盆に直す予定だったのですが、部品が間に合わずノーマルミッションに載せ換えて、そのノーマルもケーブルのクランプが割れて2速に入らず、無理矢理入れました。色々と大変なシーズンでしたが、何とかチャンピオンを獲れました」と、笑顔で今季を振り返った。




2025年JMRC近畿ダートトライアル ジュニアシリーズ第5戦
JPN+クラス
近畿地区戦の第4戦までと同じく、JMRC近畿ダートラのジュニアシリーズも併催され、やはり最終第5戦となった。JPN+クラスは、今季2勝を挙げてポイントリーダーに立っている加藤輝選手がクラス唯一、1分30秒を切る1分29秒225で第1ヒートをトップで折り返す。
しかし第2ヒートでファーストゼッケンの猪上拓朗選手が1分25秒681をマークし、仕切り直しとなる。その後も猪上選手のタイムは更新されず、ラスト加藤選手がスタート。しかし、加藤選手も2秒以上のタイムアップは果たすものの、1分27秒212に留まり2位に終わった。
大幅にタイムを詰めて優勝を果たした猪上選手は、「前回の第4戦からダートトライアルに参戦してます。今回はきっちりアクセルを踏んで走ることができたので、すごく楽しい一日でした(笑)」と、ダートラ参戦二戦目の快挙を笑顔で振り返った。そして、優勝は逃してしまってものの、2位の加藤選手がチャンピオンを獲得した。




J1クラス
第4戦は表彰台を逃して5位だったものの、開幕三連勝を決めた香林祥隆選手がチャンピオンを決めているJ1クラスは、その香林選手が1分31秒968で、第1ヒートのトップタイムをマークする。
しかし第2ヒート、クラスで4番目にスタートした峠陽樹選手が1分29秒669でトップタイムを塗り替える。ラス前、第1ヒートでタイムを残せなかった豊福克久選手は1分27秒48を叩き出し、トップに躍り出る。ラストの香林選手は峠選手のタイムは上まわるものの、豊福選手には1.521秒届かず2位となり、豊福選手が第2ヒート一発勝負で逆転優勝を果たした。
「1本目は土手にヒットしてタイヤがリム落ちしてしまったのですが、S1クラスの倉持選手が全日本で使う本番タイヤを借してくださり、そのおかげで勝つことができました」と、豊福選手は感謝しきり。シリーズは惜しくも2位となったが、最終戦を優勝で締めくくった。




J2クラス
飯田選手がチャンピオンを獲得しているJ2クラス。新王者はDに参戦となった最終戦、第1ヒートをトップで折り返したのは達富公平選手で、タイムは1分26秒68。続く2番手には前川徹選手が2.03秒差で続く。第2ヒートでも達富選手は1分24秒859までベストを更新してトップをキープする。しかし、ラストの前川選手が達富選手を0.062秒更新するタイムをマーク、僅差の逆転で前川選手が優勝を飾った。
「今回はまずまず走れました。ただ、目標にしていた飯田君がいつの間にか、影も踏めない遠いところへ行ってしまって寂しいです(笑)」と、前川選手は勝利の喜びよりも、ライバルがJ2を卒業した寂しさの方が大きい様子だった。


フォト/友田宏之 [Hiroyuki TOMODA] レポート/友田宏之[Hiroyuki TOMODA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]