北海道ダートラ第5戦4WD-2は若手の笠原陸玖選手が攻めのタイヤ選択で圧勝!!

レポート ダートトライアル

2025年8月1日

2025年JAF北海道ダートトライアル選手権 第5戦が6月29日、北海道砂川市に建つオートスポーツランドスナガワのダートトライアルコースで開催された。全8戦のスケジュールが組まれた今季の北海道地区戦だが、開幕第1戦「糠平湖氷上タイムトライアル」が中止になってしまったことで、7戦での戦いとなる。

2025年JAF北海道ダートトライアル選手権 第5戦
2025年JMRC北海道Moty’sダートトライアルシリーズ第5戦
AG.MSC北海道ダートトライアル

開催日:2025年6月29日
開催地:オートスポーツランドスナガワ ダートトライアルコース(北海道砂川市)
主催:AG.MSC北海道

 シリーズの折り返しとなる第5戦は、第4戦が行われたイーストジャパンオフロードスタジアムから、地区戦のメインコースでもあるスナガワに舞台を戻して開催され、今回の一戦から最終第8戦まで全てスナガワでの戦いとなる。前半3戦を消化して早くも熾烈な王座争いが展開されているが、今季は一人のドライバーが独走しているクラスがなく、各クラスともに拮抗した争いとなっている。

 故に、折り返し地点となる第5戦はシリーズの行方を担う重要な一戦となるが、ここでドライバーたちの前に立ちはだかったのが、設定されたレイアウトだ。全国屈指のハイスピードコースとして知られているスナガワだが、今回の一戦ではそれを封印。スタート直後こそ、スナガワらしいロングストレートを駆け抜けていくが、そこから先は鋭角に回り込むテクニカル設定。いつもより低いギヤを多用するレイアウトに戸惑うドライバーが多く見られた。

 また、当日は気温が30℃を超えて6月末の北海道とは思えない灼熱の環境下で異例づくしとなった第5戦は、豪快な土煙を上げながらチャンピオン確定に向けての激しい攻防戦が繰り広げられた。

爽やかな青空が広がるオートスポーツランドスナガワのダートトライアルコースで開催された2025年JAF北海道ダートトライアル選手権 第5戦。しかし気温はグングン上昇、真夏を思わせる暑さの中でドライバーたちは奮闘した。
今回の一戦のレイアウトは、スタート直後のストレート以降はスナガワではあまり見られない設定が採用された。前例が少ないレイアウトの攻略に悩むドライバーも多かったようだ。
珍しいレイアウトに加えて足早にやってきた暑さ、ドライバーたちは慣熟歩行から厳しい戦いとなったようだ。

2025年JAF北海道ダートトライアル選手権 第5戦

FF-1クラス

 FF-1クラスは排気量1,600cc以下で2WD、2000年10月以降に初年度登録されたP・PN・N・B・SA・SAX・SC車両及び排気量区分なしで2WDのAE車両で競う。今季2勝を挙げている岡村巧選手がランキングトップに立ち、2番手には5ポイント差でディフェンディングチャンピオン大場元貴選手がつけている。

 Heat-1でトップタイムをマークしたのは、クラス唯一の1分22秒台を刻んだ大場選手。2番手には1分23秒台で竹花豪紀選手、3番手には竹花選手から0.025秒差で棚瀬昌樹選手が続いた。岡村選手は1分25秒台で4番手とやや出遅れ気味で、大場選手が今季2勝目に向けて好位置で折り返す。

 しかしHeat-2になると、棚瀬選手が1分20秒台に突入。更に竹花選手が棚瀬選手のタイムを1.062秒上回る1分19秒671でトップに躍り出る。トップタイムが1分19秒台に変わり、ラスト前の大場選手がスタート。先にスナガワで行われた2025年JAF全日本ダートトライアル選手権 第4戦では全日本初優勝を収めた大場選手、タイムアップは果たすものの、0.736秒届かず2番手タイム。そして、ラストゼッケン岡村選手は精彩を欠いて1分22秒台までしかタイムを詰めることができず4番手止まり。この結果、竹花選手が逆転での優勝となった。

(全日本第2戦の)タカタが終ってから元気が無かったのですが(笑)、今回は初心に返って吹っ切れたのが良かったと思います。1本目は元気良すぎて失敗しましたが、2本目も敢えて同じように走りました」と、竹花選手は振り返った。

 続けて「走りの手応えとしては、『良し!』と思ったら負けるタイプなので(笑)チャンスかな、と思ってました。楽しく走って結果も出たので、良かったです」と、竹花選手は今季初優勝でランキングも3番手にアップ。そして大場選手はランキングで岡村選手とポイントで並んだ。

FF-1クラスはZC32S型スズキ・スイフトスポーツを駆る竹花豪起選手(PガレDLMoty’sスイフト)が優勝した。
FF-1の2位はホンダ・フィットRSをドライブする大場元貴選手(ルート6・Pガレ・フィット)が獲得(左)。棚瀬昌樹選手(Z-改ADVANスイフト)はZC31S型スイフトを操って3位に入った(右)。
FF-1は上位5選手が表彰された。左から4位の岡村巧選手(YHダイシンSCタクミスイフト)、2位の大場選手、優勝した竹花選手、3位の棚瀬選手、5位の城越明日香選手(ルート6PガレENPフィット)。

RWDクラス

 排気量区分なし、後輪駆動のP・PN・N・B・SA・SAX・SC車両が争うRWDクラスは開幕から3戦、全てウィナーが異なる激戦クラスだ。ランキングトップは、イーストジャパンでの前戦を制した安藤純一選手。2番手で追うのは、未勝利ながらポイントを積み重ねてきた田中光徳選手。そして、第2戦優勝の吉川高利選手と第3戦を制した和泉泰至選手が同ポイントで3番手と4番手につける。

 いち早く今季2勝目を挙げるのは誰か、または新たなウィナーが現れるのかが注目だが、Heat-1で1分21秒台のトップタイムを刻んだのは和泉選手。2番手の吉川選手は1分24秒台と、その差を大きく引き離す。

 そしてHeat-2、クラスファーストゼッケンの古谷欣竹選手が1分20秒台を刻みベストタイムを更新して第2ヒート勝負となる。更にHeat-1ではパイロンペナルティで下位に沈んだ安藤選手が、1分19秒台に突入してトップに立つ。しかし、勝負を決めたのはラストゼッケン和泉選手。安藤選手のタイムを0.684秒上回る1分18秒855でトップ奪回。両Heatを制して今季2勝目一番乗りを果たした。

「今回はコース的にテクニカルということと、土が多い割には乾き切ってたので、クルマの流れを止めてくれず苦戦しました。かなり抑え気味の走りになってしまいましたが、(FF-2/4WD-1クラスの)内藤選手と同秒台まで出せたので、その点はまぁまぁかな、といった感じです(笑)」と、和泉選手は走りを分析した。

 和泉選手はこの勝利でランキング単独2番手を奪取。トップの安藤選手との差を6ポイントまで縮める、連覇に向けた貴重な一勝を挙げた。

RWDクラスは和泉泰至選手(DLクスコTEIN・GR86)がZN8型GR86を駆って優勝を遂げた。
少数精鋭による戦いとなったRWDはトップ2が表彰台に登壇した。左から2位の安藤純一選手(DL☆GRG札幌西☆GR86)と優勝した和泉選手。

FF-2/4WD-1クラス

 FF-1に該当しない2WD及び1600cc以下で4WDのP・PN・N・B・SA・SAX・SC車両、あるいは4WDのAE車両が対象のFF-2/4WD-1は1分18秒台の攻防となった。

 Heat-1でトップタイムをマークしたのは、ディフェンディングチャンピオンの内藤修一選手でタイムは1分18秒712。2番手につけた川口昭一選手は1分18秒751と、0.039秒の僅差で折り返した。

 Heat-2で内藤選手は1分18秒125と、0.587秒のタイムアップに留まったがトップを保持。追う川口選手もタイムアップを果たすが1分18秒15と、ここでも僅か0.025秒及ばず。両ヒートともに僅差で逃げ切った内藤選手が優勝となった。

「今年、地区戦は1回しか出てないのですが、それも不甲斐ない成績で、全日本もダラダラと......(笑)」と、今季の内藤選手は調子が上がってなかったそうだ。「今回、スナガワにしては珍しいレイアウトでとても走り辛く(笑)、良い練習になりました。2本目は気合が空回りして思ったほどタイムは上がらなかったのですが、とりあえず勝ててホッとしてます」と、内藤選手は今季初優勝に安堵の笑顔を見せた。

ZC33S型スイフトを駆る内藤修一選手(DL☆XP☆SCENEスイフト)はFF-2/4WD-1クラスを制した。
川口昭一選手(TRS DLインテグラ)はFF-2/4WD-1でただ一人、ホンダ・インテグラを操って2位を得た(左)。ZC33S型スイフトをドライブする池田雅将選手(DL・タイムスポーツスイフト)が3位を守った(右)。
FF-2/4WD-1は4位まで表彰された。左から2位の川口選手と優勝した内藤選手、3位の池田選手と4位のMCタマー選手(DLPガレR6スイフト)。

4WD-2クラス

 1600ccを超える4WDのP・PN・N・B・SA・SAX・SC車両で競う4WD-2クラス。ディフェンディングチャンピオンの小林茂則選手がランキングトップ、6ポイント差で村上周選手が追う展開となっている。

 Heat-1でトップに立ったのは小林選手でも村上選手でもなく、笠原陸玖選手。2番手以降に2秒以上の差をつける1分12秒台をマークした。全日本第4戦では強豪揃いのSA2クラスで2位入賞、2024シーズンに続く全日本スナガワ連覇こそ逃したものの、成長著しい若手ドライバーだ。地区戦では第2戦で1勝を挙げており、今回の一戦でもHeat-1からその速さを見せつける。

 Heat-2でもトップタイムを約1.653秒更新し、1分11秒156まで詰めた笠原選手。後続ゼッケンもこのタイムには及ばず、5秒以上のタイムアップで猛追したラストゼッケン小林選手も1分12秒301と1秒以上の差で2位止まり、笠原選手が圧倒的な速さで優勝を飾った。

「今回は両ヒート、ドライタイヤを選択しました」と、笠原選手はタイヤ選択を明かした。「今日のような天候、気温であれば、ドライタイヤでもイケることを試したかったのと、個人的にドライタイヤが好きなので。実際は、確実にグリップが効いてるという感触はなかったのですが、タイムは出ているといったところです。ちょっとモヤッとした感じではありますが(笑)、好きなタイヤを使って勝てたということが嬉しいですね」と語った。

 季節、路面に関わらず、ウェットタイヤが定石とされているスナガワで、敢えてドライタイヤを選んだ笠原選手。果敢なチャレンジ精神で今季2勝目を獲得した。

笠原陸玖選手(DL☆TRSドルービーランサー)は三菱・ランサーエボリューションVIをドライブして4WD-2クラスで圧勝した。
4WD-2はトップ3をランエボ勢が占めた。小林茂則選手(Hash9DLシーンランサー)がランエボⅨを操って2位(左)、ランエボVIを駆る杉本義実選手(YH・AIMランサーVI)が3位を獲得した(右)。
4WD-2は左から、4位の村上周選手(PGDL相互車両NLインプさん)、2位の小林選手、優勝した笠原選手、3位の杉本選手、5位の島部亨選手(NUTEC・シーンDLランサー)。

2025年JMRC北海道Moty’sダートトライアルシリーズ ジュニアクラス

J-1クラス

 2WDのP・PN・N・B・SA・SAX・SC・AE車両が対象のJ-1クラスは、ランキングトップに原田大響選手が立ち、2番手、3番手に林真史選手と堀井開斗選手が同ポイントで続いている。

 Heat-1をトップで折り返したのは、今季初参戦の及川隼兵選手。2番手につけた原田選手を2.711秒引き離す1分23秒557をマークした。Heat-2では、及川選手が0.435秒のタイムアップに留まるも、トップをキープ。ラストゼッケン原田選手も1分23秒台までタイムを詰めるが0.347秒及ばず2位止まり、及川選手が優勝を果たした。

「ダートトライアルは昨年3回くらい出た程度で、それ以来です。1本目はフィーリングで走ったら良いタイムが出て、逆に2本目は『イケた!』と思ったのですが、あまりタイムが伸びなかったので、自分は自然な感じで走った方がタイムを出せるのかもしれませんね(笑)」と、及川選手は久しぶりの本番でも冷静に走りを振り返った。

J-1クラスはZC32S型スイフトを駆る及川隼兵選手(令和Backettsスイフト)が優勝した。
J-1の2位はZC31S型スイフトをドライブする原田大響選手(室工大DLLOVCAスイフト)が獲得(左)。トヨタ・ヴィッツを操る桑原正裕選手(ルート6ヴィッツ)は3位に入った(右)。
J-1は左から、2位の原田選手と優勝した及川選手、3位の桑原選手が表彰台に上がった。

J-2クラス

 4WDのP・PN・N・B・SA・SAX・SC・AE車両で争うJ-2クラスには4選手が挑み、中澤昌彦選手がHeat-1から1分18秒台の好タイムを刻みトップで折り返す。Heat-2ではさらに1分16秒台までタイムを詰め、2番手以下に4秒以上の差をつける快勝となった。

「J-2クラスは昨年から参加してます。実はそれまで地区戦に出てたのですが、あまりにもトップとの差がありすぎるので、周りからは人でなしと言われながら(笑)、J-2降格というかたちで修行中です。よく曲がるといわれているインプレッサを曲げられなかったり、四駆のスピードコントロールが上手く出来なかったりと、まだまだですね」と、中澤選手は勝っても苦笑い。課題は山積みのようだ。

J-2クラスはスバル・インプレッサWRX STIを駆る中澤昌彦選手(AKTワコーズDLインプレッサ)が両Heatを制して圧勝した。
トップ2が表彰されたJ-2は左から、2位の中島歩選手(ルート6GRヤリス)と優勝した中澤選手が表彰台に登壇した。

ビギナークラス、賞典外クラス

 これからダートラを始めたいドライバー向けで、排気量と駆動方式による区分がないビギナークラスは、三つ巴の争いとなった。Heat-1で1分19秒475をマークしてトップで折り返した吉川直克選手が、Heat-2では0.149秒のタイムダウンを喫するも、トップの座を守り切った。

 ビギナーと同じく車両区分がなく、トヨタ・ヴィッツによる一騎討ちとなった賞典外クラスでは、鎌田幹宏選手がトップタイムをマークした。

ビギナークラスはインプレッサを駆る吉川直克選手(サポートインプレッサ)がHeat-1のタイムで逃げ切った。

フォト/友田宏之 [Hiroyuki TOMODA] レポート/友田宏之[Hiroyuki TOMODA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
※一部誤りがございましたので、修正を施して再公開いたしました。

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