レジェンドラリーカーの祭典が7年の時を経て、“ラストラン”
2018年11月15日
日本アルペンラリー、全日本ラリーで活躍したマシンが一堂に集ったLegend of THE RALLYが、今回の開催を以って7年の歴史に幕を閉じることになった。
レジェンドオブザラリー2018
(Legend of THE RALLY 2018)
開催日: 10月4~5日
開催場所: 長野・岐阜
主催: MSCC(マツダスポーツカークラブ)
2012年に始められたレジェンド・オブ・ザ・ラリーは今回で6回目(2015年は開催せず)を迎えたが、運営委員会は、「今回がラスト」とラリー前にあらかじめ公表しての開催となった。
レジェンド・オブ・ザ・ラリーは「昔ラリーで使ったコースを今もう一度走ったら面白いんじゃないか」というのが当初のコンセプトだったという。そのために、第1回大会では競技車両のクラス分けは現在の「レジェンド」、「ヒストリック」、「オールド」以外にも1991年以降に生産された“最新のレジェンドカー”が集う「ファミリア」というクラスも存在していた。さらに、この時はラリーコンピューターの使用も禁止していなかった(現在は使用禁止)。
しかし、蓋を開けてみるとファミリアクラスで出場してきたクルーは数台程度で、多くの人たちがガレージで眠っていた70年代、80年代のクルマに再び火を入れたり、ラリーで活躍したマシンをレストアしてラリーに臨んできたのだった。主催者としては1回きりの開催予定だったが、「第1回の表彰式の後に、募金を募ってみたら、ある程度の金額が集まってしまったんです。それで2回目を開催してみたら今度は署名活動が行われて、第3回目を開催することにしたんですよ。ただ、その時に、あと3回はやります、という話はしました」(レジェンド・オブ・ザ・ラリー運営委員会)。こうした経緯のもと、今回、最後の開催を迎えることになったという。また、これまで続けてきたルートを振り返ると、関東周辺のコースとしては、ほぼ網羅したという点も大きかったようだ。
今年のレジェンド・オブ・ザ・ラリーも参加車両のレギュレーションには大きな変更はなく、出場資格は1997年以前に製造されたクルマのみ。その中で、71年以前に製造されたクルマはレジェンドクラス、72年以降79年以前に製造されたクルマがヒストリッククラス、97年以前に製造されたクルマはオールド(&デバイス)クラスという形に分けられている。ただし、レギュレーションにも手を加えられ、今回はレジェンドクラスとヒストリッククラスは電子トリップを禁止し(オールドクラスは禁止をしなかったことから今回はオールドクラスの名称をオールド&デバイスに変更している)、機械式トリップだけしか認められていない。さらに乗車人数も3名以上からは1人増えるごとにデイで4秒プラス(3名乗車ならデイ1で4秒、デイ2でも4秒、トータル8秒減点に加算)となっていた。
ラリーのコースは「最後はここ」がふさわしいと、かつて日本アルペンラリーで名勝負を繰り広げた乗鞍岳周辺をチョイス。乗鞍観光センターをスタートした競技車は岐阜県との県境にある安房峠のセクションをクリアすると、白骨温泉を経由して一旦乗鞍へと戻り昼食。午後は野麦峠、地蔵峠を越えて現在、重要伝統的建造物群保存地区として江戸時代当時の町並みが保存されている奈良井宿での休憩を挟み安曇野で1泊する。デイ2は安曇野から東へと進み、美ヶ原スカイラインからビーナスラインを経由して蓼科を往復するコース。トータル距離は470kmを超えて、過去最長となった。
ラリーは伝説のアルペンラリーでも舞台となった乗鞍高原をスタート。
奈良井宿はDAY1終盤のルートに組み込まれた。レジェンドカーが景観に馴染む。
DAY2は美ヶ原スカイラインを経由して安曇野と蓼科間を往復するルートが設定された。
今年は台風の本州直撃が多く、レジェンド・オブ・ザ・ラリーが開催された10月4~5日も台風の進路に気を揉む場面もあったが、ラリー当日は時折、晴れ間も覗くなど、心配された天候の崩れはなく、ラリーは開催された。過去最高の42台のラリー車が出場となったが、TE27をはじめ歴代のレビン&トレノ、310や510ブルーバード、コルト1100F、A73やA175Aランサーなど当時のラリーを彩った名車たちが、昔とは様変わりしたとはいえ、各峠道を懐かしむかのように走り抜けた。
一方で、97年以前に製造されたクルマも出られることからGC8インプレッサやDC2インテグラ、KK4ヴィヴィオも出場するなど、現在の国内ラリーでも主力を張れるようなマシンも出場可能になってきたことはある意味、驚かされた。また、篠塚建次郎や日下部保雄などといった往年の名ドライバーが顔を揃えることでもこのラリーのファンは多いが、今年はついに“リトルジャイアント”こと元全日本ラリーのトップドライバーであった綾部美津雄がTE27トレノを駆り、出場を果たしている。
ラリーは各クラスとも接戦となり、レジェンドクラスは園田裕一/芹沢豊組(510ブルーバード)がデイ1のリードを守り切って勝利を手にした。ヒストリッククラスは寺島滋/上坂次良組(TE47トレノ)が最終CPで逆転して優勝を獲得し、オールド&デバイスクラスは永瀬浩一/小久保正巳組(HNU12ブルーバードSSS-R)がトータル23CPを減点29点で上がり、オールド&デバイスクラス念願の初優勝を飾るとともに総合優勝も手にした。今回のラリー後の表彰式でも「ラスト」を惜しむ人は数多く、懐かしのコースは走り尽くしたとは言え、形を変えて継続や復活を望む声が聞かれたのも事実だった。
まずは、このラリーに携わったすべての人に、お疲れさま、の言葉を捧げたい。またいつかどこかでレジェンドラリーカーの勇姿に触れる日が来ることを、静かに待ちたいと思う。
レジェンドクラスは園田裕一/芹沢豊組の510ブルーバードがDAY1のマージンを守って優勝。
ヒストリッククラスはDAY1を4位で折り返した寺島滋/上坂次良組TE47トレノが最終CPを減点0で上がって大逆転した。
綾部美津雄/橋本寿/高橋光一組 TE27スプリンタートレノ
リトルジャイアントこと綾部美津雄が遂に「レジェンド」の仲間入り。20年以上前には手に入れていたと言うTE27トレノだが「震災の影響もあったし、仕事も忙しかったりでそのまま。車検をとったの去年の10月かな」。ロールケージは現車合わせだったことで間に合わなかったが、エンジンのオーバーホールは済ませ、KYB製の足回りやクロスミッション、LSDは装着済み。「ガードがないからダートはダメだけど、競争しようと思えばできるよ(笑)」
小林勝美/永渕直大組 A63ギャランFTO GSR
80年代後半から90年代にかけて全日本ラリーのAクラスはKカーバトルが激しかったが、当時、アルトやミラで全日本ラリー等にチャレンジしていた小林勝美が当時もナビとして組んだこともある永渕直大とエントリー。「第3回大会は510ブルーバードでレジェンドクラスだったんですけど、今回は標高も高いのでキャブのセッティングとか考えないでいいノーマルFTOで来ました」と話す。現在は旧車を集めるのが趣味と言い、10台を超すマシンがガレージにあるという。
永瀬浩一/小久保昌巳組 HNU12ブルーバードSSS-R
自身は全日本ラリーなどでナビでも活躍してきた永瀬浩一が全日本ラリーでもコンビを組んだ経験のある小久保昌巳と組んでエントリー。レジェンド・オブ・ザ・ラリーは皆勤賞だが、これまで一度も優勝がなく、有終の美を飾るべく臨んだ今回は逆転でオールドカークラスで念願の優勝を勝ち取った。「(レジェンド・オブ・ザ・ラリーの)魅力は長い距離を走れるし、主催者がラリーを知っている人たちだから、設定もよく考えられている点だね」
今回の参加者の皆さん。数年前は突然の降雪などハプニングもあったが、ラストラリーは好天に恵まれた。