秋雨決戦の全日本ダートトライアル第7戦、4人の王者が確定

レポート ダートトライアル

2026年10月5日

全日本ダートトライアル選手権 第7戦「DIRT-SPRINT in INABE」が、前戦の切谷内から約1か月のインターバルを経て、9月12~13日に三重県いなべ市のいなべモータースポーツランドで開催された。シーズン開幕以来、2回目の開催となったいなべには、参加台数上限の総勢150台がエントリー。決勝は1台が不出走となり、149台が出場した。不成立となったPNE2クラスを除く10クラスで熱戦が繰り広げられ、最終戦を待たずしてPNE1、PN1、SC、D1クラスでチャンピオンが確定した。

2026年JAF全日本ダートトライアル選手権 第7戦「DIRT-SPRINT in INABE」
開催日:2026年9月12〜13日
開催場所:いなべモータースポーツランド(三重県いなべ市)
主催:FASC、CCST、ZEST

 公開練習が行われた12日はドライ路面だったが、決勝日の13日は朝から小雨が降り続き、ウェットコンディションでの競技となった。雨は第1ヒートの途中から小康状態となったものの、路面が乾くことはなく、競技は最後までウェット状態のまま進行した。

 第2ヒートは、第1ヒートよりも路面状況が悪化し、PNE1クラスとPN1クラスではタイムダウンに終わるドライバーが続出。しかし、PN3クラスが走行するころには路面を覆っていた泥が掃け、固い路面が顔を出す状態となり、Nクラス以降は路面のグリップが回復し、ベストタイムの更新が相次いだ。

 シリーズチャンピオン争いは、PN3クラスの竹本幸広選手が第6戦切谷内で4年連続となる王座を確定させている。その他のクラスのタイトル争いが注目される中、この第7戦で4クラスのチャンピオンが確定した。残る5クラスは、最終戦で決着を迎えることとなる。

秋雨前線の影響により雨の中で競技は進行し、路面コンディションは刻々と変化した。路面悪化により、第2ヒートでタイムダウンに終わるドライバーも多かった。
全日本ダートトライアル選手権に長年参戦してきた故・磯貝雄一選手が駆った“ZEAL MJT ランサーX”を前に参加者全員で黙とうを捧げた。
スタート後の高速区間からテクニカルなターンへとつながり、大小のコーナーとアップダウンを組み合わせたレイアウト。速度とライン取り、路面への対応力が問われるコースを設定。

PNE1クラス

 8台が出走したPNE1クラスは、シリーズチャンピオンに王手をかける小山健一選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、第1ヒートで1分21秒02のベストタイムをマークした。

 路面コンディションが悪化した第2ヒート。タイムアップできたのはハンター大谷ヒロシ選手(スズキ・スイフトスポーツ)の1台のみ。いずれも小山選手が第1ヒートでマークしたタイムには届かず、今季6勝目を挙げた小山選手が1年ぶりとなるシリーズチャンピオンを確定させた。

 2位は「第1ヒートはちょっと躊躇してしまいました」と反省する鈴木正人選手(スズキ・スイフトスポーツ)が獲得。3位には「第1ヒートは路面の状況がよくわからなかったので、抑え過ぎてしまいました」と語った田口和久選手(スズキ・スイフトスポーツ)が入った。

PNE1クラス優勝は小山健一選手(A DLベリティーMSスイフト)。
第1ヒートは抑え気味の走行だったという小山選手が両ヒートを制す。「走り的には第2ヒートの方が気持ち良く走ることができたんですけど、タイムアップは果たせませんでしたね。第1ヒートはちょっと抑え気味に走ってちょっとストレスが溜まったんですけど、逃げ切ることができて良かったです」
2位は鈴木正人選手(スマッシュSRP33スイフト)、3位は田口和久選手(MSH☆ATSDLS+スイフト)。
PNE1クラスの表彰式。左から4位の山部恭裕選手、2位の鈴木選手、1位の小山選手、3位の田口選手、5位の仲村柊太選手。
小山選手がPNE1クラスのチャンピオンを確定させた。

PN1クラス

 前走クラスと同様、路面悪化により第2ヒートでのタイムアップが困難となったPN1クラスは、第1ヒートで1分23秒422をマークした深谷文彦選手(マツダ・デミオ)が、そのまま逃げ切って全日本初優勝を飾った。

「若い選手も結構いますが、おじさんのパワーを見せることができて良かったと思います(笑)」と、喜びを語った深谷選手。続いて若手の井上翔太郎選手(トヨタ・ヤリス)が0.363秒差の2位に入った。

 3位はランキング首位の工藤清美選手(ホンダ・フィット)が獲得し、4年ぶりとなるシリーズチャンピオンを確定させた。

PN1クラス優勝は深谷文彦選手(AMフカミDL狐様デミオ)。
「今まで、勝負がかかると縮こまってしまうところがあったんですけど、今回は落ち着いて走ることができたのが勝因だと思います」と、全日本初優勝の喜びもひとしおの深谷選手。
2位は井上翔太郎選手(DLJT鴎FUAC505ヤリス)、3位は工藤清美選手(工藤ホンダDLワコーズフィット)。
PN1クラスの表彰式。左から4位の大場元貴選手、2位の井上選手、1位の深谷選手、3位の工藤選手、5位の坂本勇樹選手、6位の北原栄一選手。
工藤選手がPN1クラスのチャンピオンを確定させた。

PN2クラス

 鈴木良信選手が駆るトヨタ・ヴィッツを除き、スズキ・スイフトスポーツのワンメイクの様相となっているPN2クラスは、第1ヒートで1分20秒757を記録した張間健太選手がトップに立つ。

 第2ヒートでは奈良勇希選手が1分22秒254、佐藤卓也選手が1分23秒475までタイムを縮めたものの、張間選手が第1ヒートのタイムを守り切り、優勝を獲得した。

 2位の奈良選手は「第6戦からのインターバルの間にいなべで結構練習したのですが、ウェットコンディションはあまり得意ではなく、張間選手に届くことができませんでしたね」と悔しさをにじませた。

 佐藤選手は3位に終わったことでチャンピオン争いから離脱。この結果、最終戦は張間選手と奈良選手の一騎打ちとなる。

PN2クラス優勝は張間健太選手(DLラブカWinmaxスイフト)。
「いなべはライバルの奈良選手が得意なコースだと思うのですが、残り戦数を考えるとここで勝っておかなければならないと思い、気合いを入れて走りました」と語った張間選手が重要な一戦を制した。
2位は奈良勇希選手(ブリッドDLレプソルスイフト)、3位は佐藤卓也選手(DLΩKYBオクヤマ・スイフト)。
PN2クラスの表彰式。左から4位の加地真志選手、2位の奈良選手、1位の張間選手、3位の佐藤選手、5位の鈴木良信選手、6位の谷尚樹選手。

PN3クラス

 第6戦で早々に竹本幸広選手がシリーズチャンピオンを確定させたPN3クラス。今回、竹本選手はSA1クラスでの参戦となり、王者不在となる優勝の行方に注目が集まった。

 第1ヒートは加藤琢選手(スバル・BRZ)が後続を3秒近く引き離す1分23秒171をマークしてトップに立つ。第2ヒートは路面状況が回復しつつあり、ライバル勢はタイムアップを果たすが、第1ヒートの記録を上回る選手はなく、加藤選手が今季初優勝を飾った。

 2位は、同じく2Lエンジンを搭載したトヨタ・86を駆る名倉陽太選手が獲得。名倉選手は「第2ヒートは、肝心なところで大きなシフトミスをしてしまいました」と振り返りながらも、1分25秒803までタイムを縮めた。

 3位には、和泉泰至選手(トヨタ・GR86)が入り、「第1ヒートは2番手で、第2ヒートもそれなりにうまくまとめることができたと思ったら、名倉選手と約0.1秒差。ガクッとしました」と悔しさをにじませた。

PN3クラス優勝は加藤琢選手(GネモトFINEクラフトBRZ)。
「第1ヒートの路面は雪道みたいで、走りやすかったんですよ」と語った加藤選手。雪国育ちならではの感覚を武器にして勝利につなげた。
2位は名倉陽太選手(クスコWMDL・モティーズ86)、3位は和泉泰至選手(DLクスコTEIN・GR86)。
PN3クラスの表彰式。左から4位の上野倫広選手、2位の名倉選手、1位の加藤選手、3位の和泉選手、5位の畑窪琢巳選手、6位の齊藤道夫選手。

Nクラス

 Nクラスは、路面の泥が掃けてグリップが回復した第2ヒートで大きく順位が動いた。

 第1ヒートは6番手だった山崎利博選手(トヨタ・GRヤリス)が、第2ヒートで1分18秒066までタイムを縮め、逆転優勝。今季初勝利を挙げた。

 杉尾泰之選手(トヨタ・GRヤリスDAT)は1分18秒28、浦上真選手(トヨタ・GRヤリス)も1分18秒491とベストタイムを更新し、それぞれ2位、3位を獲得。

 第1ヒートで唯一1分18秒台をマークし、シリーズをリードする宝田ケンシロー選手(トヨタ・GRヤリス)も第2ヒートで0.093秒タイムを更新したが、最終的には4位となった。

 シリーズランキング2番手の細木智矢選手(トヨタ・GRヤリス)は5位、同3番手の岸山信之選手(トヨタ・GRヤリス)が6位で終わったことにより、3名によるタイトル決着は最終第8戦へ持ち越された。

Nクラス優勝は山崎利博選手(レプソルDLオクヤマTGヤリス)。
「いなべは地元ということもあり、短い時間でもしっかりと練習することができました」とコメントした山崎選手。
2位は杉尾泰之選手(フォルテックオクヤマ小松ヤリス)、3位は浦上真選手(EXDHKサービスDLヤリス)。
Nクラスの表彰式。左から4位の宝田ケンシロー選手、2位の杉尾選手、1位の山崎選手、3位の浦上選手、5位の細木智矢選手、6位の岸山信之選手。

SA1クラス

 SA1クラスは、泥が掃けたレコードラインの路面を巧みに走った平川慶一選手(スズキ・スイフトスポーツ)が、第2ヒートで3.269秒のタイムアップを果たし、第1ヒート3番手から逆転優勝。今季2勝目を挙げるとともに、シリーズランキングトップに躍り出た。しかし、平川選手は「妹の結婚式が以前から決まってるんです」と最終戦のタカタラウンドは欠場の意向を示している。

 2位は「このクルマに乗り換えてから、最上位です」と、満足げに話した松岡修司選手(スズキ・スイフトスポーツ)が獲得。

 今季、3回の優勝を遂げた一宮悠人選手は、第1ヒートでトップタイムをマークしていたものの、「第2ヒートは自分なりに頑張ったんですけど、走りはドタバタでした。そもそも、地区戦も含めて雨で勝ったことがないんですよ」と明かした。第2ヒートでタイムアップは果たしたが、3位に後退し、シリーズランキングも2番手にポジションを落とす。チャンピオン決定は最終戦に持ち越されることとなった。

SA1クラス優勝は平川慶一選手(メープルクスコWMDLスイフト)。
シリーズの行方は「遠い空から祈っています(笑)」と、最終戦を欠場予定の平川選手。
2位は松岡修司選手(S+クスコDLWMOLスイフト)、3位は一宮悠人選手(502YHFA初音ミクスイフト)。
SA1クラスの表彰式。左から4位の河石潤選手、2位の松岡選手、1位の平川選手、3位の一宮選手、5位の宮西怜選手、6位の中島孝恭選手。

SA2クラス

 SA2クラスは、雨がやみ始めた第1ヒート終盤から第2ヒートにかけて、路面状況が大きく変化。第1ヒート2番手の三枝光博選手(トヨタ・GRヤリス)が1分17秒275をマークして逆転し、SA2クラスでの初優勝を飾った。

 第1ヒートトップの三浦陸選手(三菱・ランサーエボリューションX)は、第2ヒートで1分17秒989にタイムを更新したものの「頑張ってはいけないところで、頑張り過ぎてしまいました」と、三枝選手に0.714秒届かず、惜しくも2位に。

 3位には、第2ヒートで6秒以上のタイムアップを果たした西田裕一選手(三菱・ランサーエボリューションIX)が入った。

 シリーズランキングトップの浜孝佳選手(三菱・ランサーエボリューションIX)は5位、同2番手の荒井信介選手(三菱・ランサーエボリューションX)が8位だったことにより、この2名のチャンピオン争いは最終戦に持ち越された。

SA2クラス優勝は三枝光博選手(DL・ENACITYGRヤリス)。
三枝選手は「第2ヒートはステアリングが効いたので、ギャップに気をつけながら攻め切ることができました」と勝因を語った。
2位は三浦陸選手(YHレプソル藤大ミカサランサー)、3位は西田裕一選手(DL・BOOBOWランサー)。
SA2クラスの表彰式。左から4位のマイケルティー選手、2位の三浦選手、1位の三枝選手、3位の西田選手、5位の浜孝佳選手、6位の星住祐弥選手。

SCクラス

 SCクラスは、第1ヒートでスタート後のストレートから高速コーナーにかけて大きくラインを外しながらも2番手につけた岡本泰成選手(三菱・ランサーエボリューションIX)が、第2ヒートでD2クラスの上位に迫る1分14秒291を叩き出して逆転優勝。今季4勝目を挙げ、SCクラスデビューイヤーでシリーズチャンピオンを確定させた。

 第1ヒートトップの亀田幸弘選手(スバル・インプレッサ)は、「今回は岡本選手が強過ぎました」と1.887秒差の2位を獲得。3位には「第1ヒートの方が走りやすかったのですがミスしてしまったので、第2ヒートはより集中力を高めて走りました」と、第1ヒート6番手から4.267秒のタイムアップを果たした上村智也選手(三菱・ランサーエボリューションX)が入った。

SCクラス優勝は岡本泰成選手(DLアルテックおかつねランサー)。
「第1ヒートはかなり大きなミスをしてしまったんですけど、それでもトップと大きな差がなかったことが自信に繋がりました。第2ヒートは、迷うことなく攻め切れたと思います」と今季4勝目の岡本選手。
2位は亀田幸弘選手(YH栗原オート企画インプレッサ)、3位は上村智也選手(JURANitzzYHランサー)。
SCクラスの表彰式。左から4位の北村和浩選手、2位の亀田選手、1位の岡本選手、3位の上村選手、5位の岩下幸広選手。
岡本選手がSA2クラスのチャンピオンを確定させた。

D1クラス

 第1ヒートでは2番手だったパッション崎山選手(トヨタ・MR-S)が、第2ヒートで1分20秒011をマークして逆転優勝を飾った。

 第1ヒートでブッちぎりのトップを奪った若手の伊東拓海選手(スズキ・スイフトスポーツ)は「第2ヒートはちょっと抑え気味に走ってしまいました。タイヤをうまく使い切れば、もうひとつ上も狙えたと思うんですけど」と2位を獲得。

 3位には、怪我のため第5~6戦を欠場していた大谷皇就選手(トヨタ・86)が入り、「まだ本調子ではないんですけど、クルマのバージョンアップがすごく効きました」とコメント。復帰戦で見事に表彰台を獲得した。

 また、シリーズランキング2番手の山崎迅人選手(三菱・ミラージュ)が6位に終わったことにより、優勝したパッション崎山選手が最終戦を待たず、2年連続のシリーズチャンピオンを確定させた。

D1クラス優勝はパッション崎山選手(DL☆ラブカ☆テインMR-S)。
「雨の影響で轍や泥がすごく、クルマが飛び跳ねてしまって大変だったんですけど、なんとか踏み切ることができました」と語ったパッション崎山選手。
2位は伊東拓海選手(DLクルーズSmaSHスイフト)、3位は大谷皇就選手(渡洋自動車ワコーズYHMR86)。
D1クラスの表彰式。左から4位の志村雅紀選手、2位の伊東選手、1位のパッション崎山選手、3位の大谷選手、5位の多門寛晃選手、6位の山崎迅人選手。
パッション崎山選手がD1クラスのチャンピオンを確定させた。

D2クラス

 D2クラスは、第1ヒートは2番手だった鎌田卓麻選手(スバル・BRZ)が第2ヒートで1分13秒216をマークし、第1ヒートトップの田口勝彦選手(三菱・ランサーエボリューションX)を逆転して優勝。第6戦に続き今季2勝目を挙げるとともに、シリーズランキング2番手の田口選手との有効得点差を12点に広げ、王者決定戦となる最終戦を迎えることとなった。

 2位の田口選手は「第1ヒートはコントロールしやすかったけど、第2ヒートはアンダーが強かった。セッティングを読み違えてしまったのが敗因です。最終戦は頑張ります」と気を引き締めた。

 3位には、ゴール手前のタイトコーナーでアウト側の泥につかまってしまった炭山裕矢選手(三菱・ミラージュ)が入った。炭山選手は「完全に自分のミスです。気が逸ってしまい、アクセルを開けるタイミングが早過ぎました。そこまでは勝っていたと思うんですけどね……」と、無念の表情を浮かべた。

 この結果、3位の炭山選手と、今回は4位に終わった谷田川敏幸選手(スバル・BRZ)がチャンピオン争いから抜け、最終戦は鎌田選手と田口選手のマッチレースとなった。

D2クラス優勝は鎌田卓麻選手(Castrol TEIN BRZ)。
「難しいコンディションでの戦いでした。培った引き出しが多い選手が上に行くだろうと思っていましたが、なんとか勝つことができて良かったです」と喜びを語った鎌田選手。
2位は田口勝彦選手(HKSランサーエボリューション)、3位は炭山裕矢選手(ZEAL by TSDLミラージュ)。
D2クラスの表彰式。左から4位の谷田川敏幸選手、2位の田口選手、1位の鎌田選手、3位の炭山選手、5位の須藤正人選手、6位の田辺剛選手。

PHOTO/CINQ、大野洋介 [Yousuke OHNO] REPORT/CINQ、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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