「ゴーカート等の乗り物体験等を含むイベントに係る当面の安全対策(推奨事項)」について

JAFからのお知らせ


2022年12月2日

 ゴーカート等の乗り物(以下「乗り物」という)には様々な種類があり、玩具として楽しむもの、自転車などある程度スピードが出る乗り物が遊戯施設や都市公園等にも設置されており、遊戯施設やイベント会場等では、日常的に運転しない乗り物を気軽に楽しく運転・体験することができます。
 これらの乗り物には、原動機(エンジン、モーター等)を動力源とした歩行速度を上回る物もあり、公道(一般交通の用に供する道)で運転免許が必要となる乗り物と同様、運転操作には注意すべき点や技術が必要な場合もあり、運転誤操作や乗り物の不具合やコース逸脱等を起因とした事故を未然に防ぐ措置を講じることが求められます。
 この安全対策の目的は、専ら原動機を動力源とした乗り物向けに設置・設定される施設・会場(※)において、利用者および施設・サービス提供者(以下「提供者」という)が安全に参加・運営いただくことを支援することにあります。
※遊園地、都市公園や遊戯施設におけるアトラクション(ジェットコースター、メリーゴーランド、観覧車等)の一部として提供される電動バッテリーカーや軌道路面を低速で走行するゴーカート等は非対象ではあるものの必要に応じて参照いただく。

  • 1 コース
  • (1)常設コース(コースや諸設備が常設で、常時使用可能なコース)および仮設・臨時コース(コースや諸設備が仮設・臨時的で、特定のイベント等に使用するために一時的に準備されるコース)ともに、乗り物が制御不能になった際に随行者・観者に接触・衝突することを防ぐために物理的に防護体を設置して分離・隔離することが推奨されます。
  • (2)利用者の年齢、体格、経験を考慮したコース設定(全長、幅員、直線路長さ、曲線部の数)とし、緊急時には直ちに提供者が補助可能なコース・走行台数を設定いただくとともに、体験イベントや低年齢対象イベントは、専ら慣熟走行に特化したコース設定とし、規格(外形寸法、形状や速度)の異なる乗り物の混走は制限することが推奨されます。
  • (3)物理的に分離・隔離する防護体には以下1.~6.を用いることが推奨されます。なお、1.および2.硬質固体(表面内面とも)を設置する場合は、利用者および乗り物を保護するために衝撃を吸収できる弾力性のある防護体を前面に覆うことが推奨されます。
    •   1.コンクリートウォール
    •   2.ガードレール
    •   3.タイヤバリア(堅固に既存構造物に固定され、確実に相互結束されていることにより衝撃緩衝効果を発揮)
    •   4.気体・液体注入型バリア(エアーマットバリア、バルーンバリア等)
    •   5.ウレタン製バリア
    •   6.プラスチック製バリア
  • (4)上記(3)の防護体は、乗り物の接触・衝突時に効果を安定して発揮できるよう設置し、乗り物がその下をくぐり抜けたり、その上に乗り上げたりすることがないよう設置します。
  • (5)上記(3)の防護体は、提供者・運営スタッフと利用者の双方の視点から、コースの視認性を考慮して設置します。
  • (6)随行者・観者の立ち入り区画は、乗り物の進行方向に対面する区画や曲線部外側には設定せず、乗り物の走路直線部と並行した区画(進行方向外側)とし、防護体によるコース、走路との分離・隔離に加え、防護体から一定の距離の後方に設定することを考慮します。
  • (7)路面は硬質(舗装等)路面とし、表面は均一で、穴や凹凸のないことに留意します。なお、非舗装路面を設定する場合は、専用の乗り物を配備してのサービス提供となります。
  • (8)屋外コースでは、雨天時や雨上がりに水が排出されることを想定し、水が溜まったり滞留したりする場所を避けることに留意します。なお、雨天時や雨上がりに走行・イベント等を実施する場合は、当該路面状況を考慮したサービスを提供することに留意します。
  • (9)屋内コースの施設は、換気システムと空気中の一酸化炭素(CO)含有量に対し常時作動する警報システム等を備え、照明は利用者にとって走行の支障要因にならないよう均一かつ眩しくないことに留意します。
  • (10)乗降区画(ピット)は、乗り物の進入速度の抑制に留意します。また、複数台の乗り物や随行者・観者の滞留が発生する可能性が高いため、同区画およびその周囲の立ち入りはスタッフのみとし、十分なスタッフを配置して乗り物同士の接触・追突を回避するとともに、乗降補助等はスタッフが対応します。
  • (11)コースは良好な状態(防護体の点検、路面清掃等)に保たれていることに留意します。
  • (12)消火・救急対応として、以下1.~3.が推奨されます。
    •   1.消火器または消火施設の設置。
    •   2.救急施設の設置とともに緊急時搬送車両の配備。
    •   3.医師または応急手当のできる有資格者の配置。
  • 2 乗り物
    乗り物が製造・販売される国の安全規格・基準(「ST、SP(国内安全面に配慮された規格・製品)マーク」や「CE(EU安全性能基準)マーク」等)同等の製品であることの確認や以下(1)~(6)を満たしていることが推奨されます。
  • (1)衝撃に対する保護として、前部車輪(フロントタイヤ・ホイール)と後部車輪(リアタイヤ・ホイール)を含む乗り物の全周が覆われ(他車との混走が物理的に発生しない場合は除く)、以下1.~3.の保護装置が装備されていることに留意します。
    •   1.車輪(タイヤ・ホイール)と車輪(タイヤ・ホイール)の接触が防がれていること。
    •   2.ステアリングシステム(シャフト、ナックル、キングピン等)が効果的に保護されること。
    •   3.乗り物は接触・衝突時も安定しており、乗り物が他の乗り物の上に乗り上げたり、宙返りをしたりするリスクを最小限に抑えていること。
  • (2)高温で回転する部品に対する利用者の保護
    乗り物の高温部は、利用者の身体または身体の一部がその場所に不用意に接触しないよう、適切な方法で保護されていることに留意します。回転する部品に長い髪やスカーフ、衣服などが巻き込まれないように保護されていることに留意します。
  • (3)乗り物を利用者の体格に適合させるための機能として、乗り物のペダルとシートは、利用者の体格の違いに容易に合わせられる方法を備えていることに留意します。
  • (4)ブレーキ、ステアリング、ペダル、シート、タイヤ、燃料タンク、バンパー等は、乗り物の安全性にとって特に重要であり、バッテリー (電動カート等) とガスタンク (ガス燃料式カート等) は事故発生時でも安全性が確保できる位置や向きに配置されていることに留意します。
  • (5)安全装置として、緊急停止装置および遠隔操作可能な速度調整装置や原動機停止装置等の安全装置が装備されていることに留意します。なお、利用者の年齢、体格、経験を考慮した乗り物の速度設定やリード引綱の装備を考慮します。
  • (6)メンテナンスとして、以下の1.~8.を基本に乗り物製造・販売者の指示に従い、良好な状態で使用できることに留意します。安全機能に関する部位・箇所は、特に注意して点検し、激しく接触した乗り物は、再度コースで使用する前にフレームコントロール・ジオメトリーコントロール(外的要因等によりシャシー/フレームに歪みが生じた可能性のある場合、当初のシャシー/フレーム形状に修正等を実施)を含めたすべての検査を行うことに留意します。燃料補給は、エンジンを停止し、利用者が乗車していない状態で行うことに留意します。
    •   1.ブレーキ
    •   2.ステアリング
    •   3.タイヤ
    •   4.衝撃保護装置
    •   5.熱や回転する部品からの保護
    •   6.ナット、ボルト
    •   7.安全警告装置等(安全操作・運転に係る注意事項を記載したステッカー等の視認性や安全警告装置が装備されている場合の作動状況)
    •   8.燃料(またはバッテリー、ガス)
  • 3 利用者
    安全に利用いただくために以下(1)~(6)が推奨されます。
  • (1)利用者の年齢、体格(身長、体重等)は、乗り物の製造・販売者が示す対象範囲等に留意します。
  • (2)こどもや未経験(未体験)者および経験の浅い利用者は、原動機出力(パワー)と速度に一定の制限のある乗り物に限定して利用・提供され、当該利用者にとって限定的なアクティビティとなっていることに留意します。
  • (3)特にこどもが利用する場合は、体格に合う調節可能な乗り物のみを使用するとともに提供者・スタッフとの意思疎通を図ることができ、乗り物の基本操作ができることに留意します。
  • (4)利用前への説明・ブリーフィングとして、以下の1.~12.を基本にパネルやボード、動画を通して明確に実施されることに留意します。基本操作(ブレーキ・アクセル・ハンドル)は、複数回の反復を行い、特に停止操作方法に留意します。
    •   1.エンジンや熱を持った部分に触れないこと。
    •   2.スロットルケーブルを踏まないこと。
    •   3.燃料とブレーキホースの接続部を踏まないこと。
    •   4.乗り降りする際、車体(ボディワーク)を踏まないこと。
    •   5.アクセル(スロットル)とブレーキペダルの使い方。
    •   6.ハンドルに置く手の位置。
    •   7.シート、ステアリングコラム、ペダルのロック方法(調整可能な場合)。
    •   8.乗り物同士の接触を避けること。
    •   9.最初の数周はタイヤが温まっていないので低速で走行すること。
    •   10.安全装置(遠隔速度調整装置、遠隔原動機停止装置)。
    •   11.提供者・スタッフの指示に従うこと。
    •   12.ルールに従わない場合、特に危険な走行をした場合の対応。
  • (5)服装は以下1.~3.を基本とします。
    •   1.カート用乗車用ヘルメットとして国内法令・基準適合した頭部サイズに合ったフルフェイスヘルメット・幼児/子供用ヘルメットの着用(長髪者はヘルメットの下に長い髪を固定する対策)。
    •   2.使い捨てのヘアキャップ(衛生上の観点)。長髪者はヘルメットの下に長い髪を固定する対策として、バラクラバ(目出し帽)の着用が有効。
    •   3.肌が露出しないグローブ、長袖、長ズボン、靴(つま先を覆う平坦な底部のもの)の着用。
  • (6)健康状態として、飲酒者や健康状態に問題のある方、既往歴(心臓疾患、頭・首・背中の病気、神経障害、てんかんの発作、運転に支障をきたす可能性のある健康上の問題)がある方、異常行動や薬・アルコール依存症の方の利用は控えていただくことに留意します。
  • 4 提供者
    利用者および提供者が安全に参加・運営いただくため、以下(1)~(9)が推奨されます。
  • (1)提供者の組織として、スタッフの役割と責任やサービスを実施・提供するために必要なスタッフの数やスタッフに求める資格(JAFオフィシャルライセンス:公認審判員許可証等)と業務・役務のレベルに留意します。
  • (2)安全計画(緊急時対応)として、施設・会場最寄りの受入可能な応需病院を指定し、所轄消防当局に催事等の届出をするとともに緊急事態(火災、事故等)発生時の対応についての手順書を作成します。
  • (3)スタッフのトレーニング
  • (4)安全設備のメンテナンス
  • (5)乗り物とコースのメンテナンス
  • (6)運営の監督
  • (7)記録
  • (8)保険として、サービス提供中に発生したいかなる事故、火災等による損害を補填できる適切な損害保険に加入し、サービス提供者または利用者の過失により、第三者、他の利用者または観者に生じた、または影響した、個人または法人への人的損害および財産に対する損害または損失を適切に補償するものとなっていることに留意します。
  • (9)その他安全な参加・運営のために必要な関連事項

以上

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