モータースポーツ審査委員会裁定について

公示 その他 その他

公示No.2023-WEB075
2023年9月25日

JAFモータースポーツ審査委員会は、「ポルシェカレラカップジャパン2023第7戦」において出された控訴を審査し裁定しましたので、その裁定書を公示します。

2023年9月6日

裁 定 書

控訴人 BINGO RACING
代表  金室 洋之 殿

一般社団法人日本自動車連盟
モータースポーツ審査委員会
委 員 長 岩井 重一
委 員 木下 美明
委 員 佐久間 豊
委 員 鈴木 洋洲
委 員  園 高明

主 文
本件控訴を棄却する。
控訴料は控訴人に返還する。

裁定の理由

1 事案の概要

2023年8月5日、富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町中日向694)において開催されたポルシェカレラカップジャパン2023第7戦決勝(以下、「本件レース」という。)9周目の第1コーナーで控訴人がエントリーする9号車(武井真司氏運転)と22号車(Wang Zhongwei氏運転)とが衝突して22号車がスピンし、さらに後続の77号車(浜崎大氏運転)が22号車に衝突し、22号車及び77号車がスピンアウトした事故について、競技会審査委員会は、9号車に対し、富士スピードウェイ一般競技規則第5章第16条5.(1)1.他車への衝突行為 2.他の車両のコースアウトを強いるものにあたる危険行為として競技結果に対する30秒加算のタイムペナルティー(以下、「本件罰則」という。)を課した。なお、コース委員長は、9号車の違反の判定に際し、ポルシェカレラカップジャパン派遣のアドバイザーの同意を得ていた。
控訴人は、本件罰則に対し、衝突の責任は22号車にあるとして罰則の取り消し又はタイムペナルティーの軽減を求めて控訴(以下、「本件控訴」という。)した。

2 審査の経過及び判断の理由

(1)当審査委員会は、提出された本件レースに関するビデオを検証し、控訴人及び競技会関係者を審問するなどして審査委員会を開催して本件控訴について審査した。
(2)審査の要点は、9号車と22号車との衝突について9号車の他車への衝突行為として危険行為と評価できるかにある。
本件事故について競技長及び競技会審査委員会は、9号車と22号車は並走状態にあるから、9号車は第1コーナーにおいてトラック上に22号車が走行する余地を残す義務があるとして9号車の22号車の走路を妨害した衝突行為と判定し9号車に本件罰則を課した。
一方、控訴人は、走路を妨害したものではなく、衝突の責任は、オーバースピードでコーナーイン側に進入するという無謀な運転をした22号車にあると主張して本件控訴を提起した。また、控訴人は、競技長から1コーナー手前で半車身入れば並走状態にあるとの判定理由を説明されたが、レース前にこれらの説明を受けたこともなく納得できないと主張している。
(3)衝突の責任と罰則の適用に関する当審査委員会の判断は次のとおりである。
9号車と22号車との衝突の責任について検討するに、9号車は、後続車である22号車の動静について十分に注意すべきであるのにその注意義務を尽くすことなく、1コーナーイン側に22号車のラインを残さず、自車のラインを走行し、衝突の原因を作ったものである。また、9号車は、1コーナー手前で後続の22号車がインに向けて進路変更したことを認めており、それまでの22号車の走行を考えれば22号車がエイペックスに向けて走行してくることは予測可能であり、その後22号車をミラー等で確認できないのであればインに22号車の車幅を残しつつ衝突を避ける対応をとるべきであったといえる。したがって、9号車の22号車に対する衝突行為と判定したことに誤りがあるとはいえない。後述するように22号車にも衝突について一端の責任を認める余地はあるものの、その責任は主に9号車にあり、競技会審査委員会が9号車に対してのみタイムペナルティーを課した処分は相当であり、レース中のピットスルーペナルティーを課した場合のタイムロスを考慮して30秒としたタイムペナルティーが重きに失するともいえない。

ところで、本件審査において、競技長は、コーナー進入時の「車両の並走」と判断する基準として追い越そうとする車両(本件では22号車)先端が先行車両(本件では9号車)のホイルベースの中間にある場合は「並走」にあたり、このような場合には、先行車にはコーナーにおいてイン側に1台分の車幅を空ける義務が生じるとしている。しかし、この基準が競技開始前に競技運転者に対し守るべきルールとして徹底されていたとはいえない。22号車も1コーナー進入に際し9号車に完全に並ぶ状態に至っていないのであるから、9号車がエイペックスに向けて走行することは予測可能であり、インへの進入には強引な面があり、速度の調整により衝突を避けうる余地があったものと認められ、控訴人の主張にも一定の理由があるものと認められる。
よって、控訴は理由がないから棄却することとするが、控訴には傾聴すべき内容を含むことから控訴料は返還することとする。

因みに、前記のとおり、コースのインに1台分の車幅を空けるべき並走の基準が全てのクラスのレースにおいて周知されているとは言えない。当審査委員会として、各レースにおいてドライバーブリーフィングなどにより判断基準が周知徹底され、コーナー事故が減少されることを望む。

以上

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