野沢のドライ路面で”空中戦”が勃発!? N1井之上優、N2浅沼賢志が嬉しい初勝利
2019年7月22日
ドライコンディションに恵まれたモーターランド野沢の全日本ダートトライアル選手権第6戦では初勝利が続出! N1では井之上優、N2では東北の浅沼賢志が全日本ダートラを初制覇した。

2019年JAF全日本ダートトライアル選手権第6戦「NOZAWAダートトライアル」
開催日: 2019年7月6~7日
開催地: モーターランド野沢(長野県野沢温泉村)
主催: RT-はと車、ROAD-KNIGHT
昨年に引き続き、レースウィークの悪天候が予想された全日本ダートトライアル選手権のモーターランド野沢ラウンド。天気予報は二転三転しながらも、決勝当日の日曜日は曇り空でスタート。結局、路面は2ヒートともドライコンディションに恵まれて、絶好のダートラ日和となった。
長野県の野沢温泉村にあるモーターランド野沢は、元々オートクロスを開催できるコースとして完成した経緯もあり、広いコース幅が特長となっている。また、ダートコースとしては珍しく高低差があるため、特に下りの外周では、いかに高い速度を維持してブレーキングを遅らせるかといった、ドライビングスキルの高さが問われるコースでもある。
決勝コースレイアウトは、ハイスピードな外周とテクニカルな内周を組み合わせた、野沢では定番のコースを採用。スタートして外周を全開で下り、再び駆け上がる序盤の設定は、ギャラリー席の目前を走るため腕の見せどころとなる。内周エリアも、走る路面をいかに選ぶかでタイムに大きく影響するため、ゴールまで気が抜けない、常にギリギリの走りが要求される設定となった。
第6戦は全日本ラリー選手権と日程が重なってしまったが、PN1からD部門までのクラスが成立。PN1とDでは17台、N2とSA1では最多の18台を集め、合計138台のエントリーによる戦いとなった。
全日本ダートラのN部門は来年からクラス分けが廃止され、駆動方式を問わない部門になることが発表されている。そのため、全日本のN1については今年がファイナルイヤーとなっている。
そんな今シーズンの全日本ダートラN1では、関東のベテラン古沢和夫(YHターマックテインミラージュ)が開幕戦丸和で勝利を挙げたが、第2戦恋の浦では九州の濱口雅昭が初優勝して第3戦コスモスも連勝、第5戦門前では中部のベテラン前田利幸が初優勝ということで、中盤戦は全日本初優勝ラッシュとなっている。
そんな状況で迎えた第6戦野沢では、第5戦門前では3位表彰台を獲得してみせた井之上優(有事即応μ航空自衛隊インテグラ)が第1ヒートから気を吐いた。曇り空ながらドライ路面へと変化していった第1ヒートは、序盤の1分50秒台の戦いを井之上が1分48秒503でベストタイムを更新。後続のパルサー使い・北原栄一(YHナスカrocoパルサー)は1分49秒833に迫ったものの、最終走者の古沢は1分51秒台の3番手に留まってしまう。
第2ヒートに入っても会場を曇が覆っていたが、気温は高く風も吹いていたことから路面は順調に乾いていた。また、野沢の第2ヒートは、第1ヒートで変化した路面のギャップやうねりが強調されてしまうため、上下に暴れるマシンをどう抑え込むか、もしくは、ギャップに飛ばされないライン選びが好タイムをマークする秘訣とされているが、それらを熟知したベテランが集う全日本選手権ということで、今大会では第2ヒートでしっかりタイムアップする展開となった。
N1では自己タイムを約2秒程度アップする選手が多く、クラス2番目に出走した井之上は、いきなり1分46秒748を叩き出してベストタイムを46秒台に引き上げた。続く三枝聖博(M2 DL WAKO'Sインテグラ)は48秒台、北原は47秒台に終わり、最終走者の古沢は1分46秒台に叩き込んだものの、約コンマ2秒届かず2番手。この結果、全日本ルーキーの井之上が全日本初勝利をモノにした。
「いつもは”フルセルフサービス”なんですけど、今回はダートロードの皆さんや渋谷オートサービスなどの皆さんにお世話になり、走りに集中することができました。野沢は初めてでしたが、そういう皆さんのサポートのおかげでここに立てたと思います。野沢はうねりがあって”飛べる”コースでした。空中戦だったら負けないと思ってますので、また野沢を走りたいと思います」
とは井之上。ラリー出身のまだまだ伸び盛りな26歳ということで、ベテランを脅かす勢いのあるダートラドライバーがまた誕生することになった。
そして、18台の戦いとなったN2でも番狂わせが起きることになった。第1ヒートでは、スポット参戦してあと少しで優勝という争いをしているベテラン角皆昭久(Aion DLランサー)が1分39秒027で暫定ベストをマーク。この39秒台には結局5人がひしめく接戦となり、昨年の優勝者である信田政晴(DL itzzオメガHKランサー)が角皆からコンマ003秒という僅差の2番手を獲得。このままベテラン勢による戦いが繰り広げられるかと思われた。
第2ヒートでは各車が1秒以上の自己タイム更新をしてきたことから、昨年同様にシード勢による逆転劇が展開されることが予想された。しかし、N2の5台目に出走した岩手の浅沼賢志(ROOF・YH・VTランサー)が自己タイムを2秒近く更新。1分37秒812の暫定ベストを叩き出して後続のゴールを待った。
ところが、第2ヒートのタイムは、角皆の38秒005を筆頭にベテラン勢やシード勢をもってしても1分38秒台が精一杯。最終走者の北條倫史(DL itzz NUTECランサー)は何と1分38秒614に留まってしまった。この結果、浅沼がクラス唯一の37秒台の暫定トップタイムを守り切って全日本初優勝。東北地区のダートラを追いながら、全日本ダートラにスポット参戦を続けて約13年、初めて表彰台の高みに立つことができた。
「ミスしないように走ったんですがミスはあって。自分の走りをしつつカバーする走りでした。押さえ込みすぎたり、タイムを出そうと思うとダメなことが分かってきたので、自分の走りができるようにと強い気持ちを持つように心がけました。今回はそれができて、なおかつタイムも出たのかなと思います」
「最近の東北シリーズはN車両とSA車両が混走なんですよ。クルマの差もあるし、ライバルは凄い人たちばっかりなので、何でタイムを詰めるかというと『自分』しかないんですよね。自分がしっかりと自分の走りをしないと、あの人達には追いつけない。大西さんも一緒ですから(笑)。ノーミスでいかないとチャンスはないんです」
「だから、セッティングがどうとかタイヤがどう、という以前に、ドライバーが常に100%の走りをしないと、スタートラインにすらつけない。東北戦ではそういう考えでやってきてたので、普段からのメンタルトレーニングが効いた、今回の優勝だったのかもしれません」
ゴールしてから10台以上待たされて掴んだ勝利の瞬間。思わず目頭が熱くなるシーンも見られた。ベテランだらけの東北地区では浅沼はまだまだ中堅ドライバー。そこで鍛えられたスキルの蓄積でようやく掴んだ全日本初勝利は、今後の大きな自信に繋がったことだろう。
PN1は第1ヒートでトップの上野倫広(DL田中自Lub BRGスイフト)が、佐藤卓也(DLΩKYBオクヤマ・スイフト)と児島泰(ALEX DL FTヤマトCR-Z)を僅差で振り切って、2ヒートともベストの完全勝利。今季3勝目を挙げた。
PN2は川島秀樹(DL☆テイン☆GRヴィッツSC)がこちらも2本奪取で今季初優勝。ヴィッツGRMNに全日本ダートラ初勝利をもたらした。細木智矢がスキップした今回、2位は濱口龍一(ワークDLタクミDXLスイフト)、宝田ケンシロー(YH KYBオクヤマスイフト)は3位に終わった。
13台が集まったPN3は、野沢を得意とする岡翔太(itzzオクヤマDL BRZ)が第1ヒートを制したが、第2ヒートでは熊久保信重(YHユークスオレンジ86)が約コンマ25秒差で、第2ヒートの岡を下して今季2勝目。熊久保がPN3では唯一となる今季2勝目を挙げたドライバーとなった。
SA1は第1ヒートでは驚愕の1分44秒台を叩き出した浦上真(DL☆VT☆MSPインテグラ)が暫定トップに立ったが、第2ヒートでは仕切り直しで、CJ4Aミラージュの岩澤研一(TRS飛蝗itzzミラージュ)が暫定ベストで粘ったが、最終走者の小山健一(A DLベリティーMSシビック)が逆転。関東ラウンド2勝目を挙げてチャンピオン、そして地元の意地を見せた。
SA2は北村和浩(MJトレーHKサーDLランサー)が第5戦門前の勢いそのままに第1ヒートを獲ったが、第2ヒートでは僅かに失速。超硬質ドライ路面を制した荒井信介(クスコADVAN itzzランサー)がクラス唯一の1分35秒台で今季3勝目を挙げた。
SC1は第1ヒートはチャンプ山崎迅人(YHゲンシンMAXミラージュ)がブッちぎりの1分44秒台で暫定ベストをマーク。しかし、第2ヒートは坂田一也(itzz DLグローバルアクセラ)がクラス唯一の42秒台を計測して優勝。開幕戦丸和、第4戦スナガワに続く3勝目を挙げた。
SC2は第5戦門前でSC2初勝利を挙げた大西康弘(YH・TEIN・AGランサー)がクラス唯一の1分37秒台で第2ヒートへ折り返したが、大西も自己タイムを更新したものの、最終走者の梶岡悟(DL・レイズ・ingsランサー)が1分36秒台で逆転。今季4勝目を挙げてランキングトップを快走している。
Dは地元の宮入友秀(itzz DLグローバルランサー)と、ニューマシンBRZで2戦目となる谷田川敏幸(トラストADVANクスコBRZ)が異次元の戦いを見せた。第1ヒートは宮入が1分33秒台で暫定ベスト。2番手につけていた谷田川は、第2ヒートの不安定な路面でも自分の走りをしっかり見せつけ、1分33秒494の大会オーバーオールタイムを計測。宮入を逆転して今季初勝利、ニューマシン投入2戦目にしてBRZに初勝利をプレゼントした。












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