濃霧のSUGO大会、86/BRZプロフェッショナルシリーズ川合孝汰選手がデビューウィン!
2020年8月12日

延期や中止により今シーズン最初の大会となった「SUGOチャンピオンカップレースシリーズ」第4戦。TCRジャパンやPCCJ、ヴィッツレースや86/BRZレース、ロータスカップ、菅生サーキットトライアルが行われたが、濃霧の影響で3つの決勝レースが中止となった。
「2020 SUGO Champion Cup Race Series Rd.4」
2020 TCR JAPAN SERIES Rd.1 Saturdayシリーズ/Sundayシリーズ
2020 Porsche Carrera Cup Japan第3戦・第4戦
TOYOTA GAZOO Racing Netz Cup Vitz Race 2020 東北シリーズ第2戦
TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race 2020 第5戦
LOTUS CUP JAPAN 2020 Rd.1
2020 JAF菅生サーキットトライアル選手権第2戦
開催日:2020年7月25~26日
開催地:スポーツランドSUGO
主催:株式会社菅生、SSC


第4戦とは銘打たれているものの、スポーツランドSUGOでの今季最初のレース、「SUGOチャンピオンカップレース」が7月25〜26日に開催された。
まだ梅雨が明けていないこともあって、レースウィークの天気は目まぐるしく変化し、タイムスケジュールの改訂版を4回も出したほど。雨ならばまだ良かったが、霧が何度もサーキットを覆ってしまったのだ。
多くのレースが2ヒートもしくは2レース開催だったものの、2回ともチェッカーが振られたのはTOYOTA GAZOO Racing 86/BRZレース第5戦プロフェッショナルシリーズのみ。そして、このレースが実にドラマチックな展開となっていた。
金曜日に行われたドライの専有走行では、連覇を狙う谷口信輝選手がトップ。しかし、土曜日の予選はうっすら霧がかかって、セミウェットというべき状態だった。
セオリー通りであればタイムが出るのはセッション後半ながら、開始から5分ほど経過したタイミングで赤旗が出されてしまう。その提示直前にタイムを出せたのは12人だけ。
「タイミングが良くて、運も実力のうちということで許してください」と語ったのは、トップタイムを記した服部尚貴選手だった。「最終コーナーで飛び出しているクルマを見て、『お願い、赤旗出ないで!』と願ったら、最初に見たのが2コーナー。本当にタイミングがすべて」と笑顔でつけ加えた。
再開後のアタックで2番手につけたのは、GT300でデビューウィンを飾ったばかりの川合孝汰選手。「赤旗前にも出て行ったんですが、タイヤを温める前だったんです。1コーナーでシフトミスしてるんですが、前にチームメイトの吉田(広樹)さんや谷口さんがいて、雨も降っている中、『最終コーナーをあれだけ行けるなら』と着いていっていったら良かったという。単独だったら怪しかったでしょう」と語る。
予選3番手は佐々木雅弘選手で、4番手は久保凛太郎選手だった。一方、川合選手の躍進に貢献した(?)谷口選手ながら、アタック中の赤旗によってタイヤを使ってしまい、7番手からのスタートとなってしまう。
土曜のヒート1はドライコンディションでの戦いとなった。まずレースをリードしたのは服部選手で、ピッタリと川合選手、佐々木選手、久保選手が食らいついて離れず。緊張感漂うトップ争いが続くも、その中で動いたのが川合選手だった。
7周目の1コーナーで服部選手のインを刺し、トップに躍り出たのだ。対して服部選手は4番手へと後退。「ちょっと強引ではあったんですが」とレース後に反省も、そのまま逃げ切った川合選手がヒート1を制覇した。
濃霧のため、3周減算された上にセーフティカー(SC)スタートとなったヒート2は、そのまま規定周回を満たしたところで赤旗終了となる可能性もあった。しかし、残り4周でバトルが繰り広げられることに。
リスタートを決めた川合選手は、佐々木選手をコントロールライン上でコンマ6秒離すも、それで十分であろうはずがない。次の周には真後ろにつけられ、馬の背コーナーで並ばれるが、辛くも逆転を許さなかった。
しかし、セミウェットの路面に調子を取り戻した服部選手が、レースのカギを握ることになる。8周目には久保選手を、最終ラップには佐々木選手をかわして2番手に浮上。そして、その間に川合選手が逃げ切りを果たしたのだ!
GT300に続くデビューウィンを果たした川合選手は、「キツかったぁ! タイヤは温めたつもりが、グリップが来ていなくて。佐々木さんを抑えるのに必死すぎて、ストレートではパニックでギヤをミスったことで並ばれて。抜かれなくて良かったです。ギリギリです、4周だから良かったです。まだまだもっと頑張りたいですね、いっぱい課題はありましたし、甘いところもあったので、もっと強いレースができたらな、って思います」と、快挙を成し遂げてなお、兜の緒をしっかり締め直していた。
ヒート2は2位の服部選手、佐々木選手、久保選手に続く5位は谷口選手。ポジションキープのままのレースに納得が行こうはずがない。





2年目を迎えたTCRジャパンシリーズは、やはり濃霧のため予選を行えない状況。サタデーシリーズ第1戦のグリッドは、何と抽選で決められることになってしまった。
その結果、金曜日の公式練習でトップタイムを記していた篠原拓朗選手が最後尾に沈む波乱とは対照的に、ポールポジションを射止めたのはTCR初レースの大蔵峰樹選手。セミウェット路面にウェットタイヤを選ぶも、実際にマッチしたのはドライタイヤ。瞬く間に順位を落としてしまう。
5番グリッドから絶妙のスタートを決めたHIROBON選手がトップに立つも、2周目のヘアピンで松本武士選手が逆転。しかし、その松本選手も逃げを許されず。迫ってきたのが篠原選手だった。1周目を4番手で終えた篠原選手は、4周目にHIROBON選手をかわし、その勢いを保ったまま12周目のヘアピンでトップに躍り出る。
TCRらしくバトルはこれでは終わらず、今度はTCRジャパン初登場となったクプラを駆る一條拳吾選手が急接近。松本選手を交えて三つ巴の戦いに。一條選手が13周目の最終コーナーでごぼう抜きを果たして、一気にトップに立ってみせた。
しかし、次の周には篠原選手が再逆転に成功。篠原選手が逃げ切って優勝を飾った。「スタートダッシュは良かったんですが、その後の位置取りがうまくいかず、突っかかっちゃいました。その後のペースが悪くなくて追いつくことができて、再びトップに立てたのもヘアピンです」とは篠原選手。
2位でゴールの一條選手はブロンズクラスの優勝を飾り、またファステストラップも記録したことから、サンデーシリーズにはポールポジションから臨めるはずだった。しかし、濃霧のためサンデーシリーズ第1戦はキャンセルとなり、惜しまれる結果となった。





ポルシェカレラカップジャパン(PCCJ)第3戦・第4戦も予選を行えず、こちらはすでに2戦を終了していることから、ランキング順でグリッドが決定された。
ポールポジションは開幕2連勝の上村優太選手が獲得し、近藤翼選手、石坂瑞基選手、小河諒選手の順で続くことに。セミウェットの路面ではあったが、全車ドライタイヤを装着しての争いとなった。
好スタートを切ったのは石坂選手で、近藤選手をかわすも、トップに立つまでには至らず。石坂選手と近藤選手が激しくやり合う間は「自分のペースで、後ろを伺いながら走っていた」と語る上村選手。10周目に近藤選手が2番手に上がって近づいてくると「最後は思いっきりスパート」したという。
上村選手はゴール直前に並びかけられたが、コンマ08秒差で先着し、「なんとかトップを守りきれて良かったです。最近はがむしゃらに走らなくなって、ちょっとは成長したかな、と思います」と笑顔を見せた。
Pro-Amクラスは内山清士選手が今季初優勝、Amクラスは高田匠選手が3連勝を飾っている。なお、日曜に予定されていた第4戦は、視界不良のためキャンセルされた。





TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZレース第5戦クラブマンシリーズのオープンクラスでは、咲川めり選手が初のポールポジションを獲得。しかし、土曜のヒート1では2番手スタートの西澤嗣哲選手が鋭いダッシュを決めてトップに浮上し、そのまま咲川選手を従えてフィニッシュとなった。
「咲川さんと、バトルしていると後ろからビシバシ来ちゃうので、ヒート1は二人で逃げましょう、と約束していたので……」と西澤選手が語っていた通り、ヒート2で真の勝負が繰り広げられるはずだったが、濃霧により水を差されてしまう。
日曜のヒート2は、SCスタートで開始されるも4周のSC先導の後、赤旗が出されて終了となってしまった。「やっぱりヒート1のスタートがすべて。消化不良ではありますが、勝ちは勝ちなんで嬉しいです。やっと初めて勝ちましたし」と西澤選手。
TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZレース第5戦クラブマンシリーズのエキスパートクラスは、濃霧により土曜のヒート1が行えず、急きょ1ヒート制へと改められた。
エキスパートクラスのポールポジションは鶴賀義幸選手が獲得。セッション前半でトップだった松井宏太選手を終了間際に逆転した。「最後に一発で決めるというのは、前からやってみたかったことなので」と、してやったりの表情を見せた。
だが、ドライからウェットに転じた日曜の決勝レースでは、鶴賀選手が装着したタイヤより松井選手の装着していたタイヤの方がマッチしていたようだ。
やはりSCスタートながら、先導は1周のみとなった。鶴賀選手は完璧なリスタートで、いきなり1秒引き離すも、ペースで明らかに上回っていたのは松井選手だった。6周目の3コーナーから何度も仕掛けて、SPコーナーでようやく前に出ることに成功した。
そのまま逃げ切った松井選手が優勝。「走り始めた段階で探り探りでしたが、この路面でも行けることが分かって。最初は様子見で、状況を見ながらでした。1回で仕留め切れなかったんですが、接触なく、いいバトルができました」と振り返った。
2位は予選3番手スタートの呉良亮選手。3位に甘んじた鶴賀選手は「内圧を失敗しちゃって。直すことはできたはずなのに、グリッドついた時には時間なくなってしまって」と悔しがることしきりだった。








日曜の1デイレースだった、TOYOTA GAZOO Racingネッツカップ ヴィッツレースの東北シリーズ第2戦。「雨は得意。ポールは1年ぐらい前に、やっぱり雨の中獲っているので。ドライになると具合が悪いので、このままウェットのままであって欲しいです」と語る阿部友哉選手がポールポジションを獲得した。
決勝レースの路面はかなり乾いてしまったが、濃霧の影響でSCスタートで開始され、1周の先導後のリスタートをうまく決めた阿部選手は言葉とは裏腹に、2番手につけた横田健一郎選手を徐々に引き離していく。
横田選手が佐久間進選手との応戦一方だったことも状況に拍車をかける中、霧が濃くなって6周目から再びSCが入ってしまう。そのままチェッカーが振られて阿部選手が優勝。「優勝は2回目で、久しぶりの表彰台です。開幕戦で勝てたので、このまま最終戦まで突っ走りたいと思います」と語った。
同じく1デイレースのロータスカップジャパン第1戦は、飯田敏雄選手がいったんは荒田良浩選手の逆転を許すも、終盤の再逆転でポールポジションを獲得した。
「思ったより詰められなくて。いつもは1周で出しているのに。ただ、路面が乾いていく状況だったので、なんとかまたトップになれました」と語るのは飯田選手。
飯田選手と荒田選手が約コンマ3秒の僅差だったこともあり、決勝レースでは激戦が期待されたが、やはり濃霧による視界不良で第1戦決勝レースがキャンセルとなった。



JAF菅生サーキットトライアル選手権第2戦は1デイの2ヒート構成だが、お昼のヒート1は行われたものの、日曜の最終走行枠だったヒート2がキャンセルされて一発勝負に。合計22台がB6、B5、B4、B2、B1クラスに分かれてヒート1の計測が開始された。
ヒート1でECR32スカイラインの門馬勇人選手が計測1周目からトップに立ち、次の周回で記録したタイムで逃げ切りに成功。RX-7の森田正穂選手が、唯一終盤のタイムアップを果たしたもののコンマ8秒及ばず。門馬選手はB5クラスで総合優勝を飾っている。
「昨年の最終戦でエンジンブローしちゃって、今週やっと直って、なんとか間に合いました。結果も出たので、かなり合格点かなと思います。昨年1度だけクラス優勝したんですが、総合では本当に初めてです」と門馬選手。
総合4位でB6クラス優勝はCT9Aランサー・エボⅨの佐藤清貴選手。「ちょい濡れのコンディションなのに、2駆の人に総合優勝持って行かれたのがねぇ(苦笑)。本当はヒート2でもうちょっとタイムを出したかったので残念ですけど、とりあえずクラス優勝はできたので、嬉しかったです」。
トヨタ86で総合7位、B4クラスの優勝は市川忠康選手。「いつもは筑波サーキットや富士スピードウェイを走っていて、スポーツランドSUGOは今日初めて来たんです。すごくスリリングで楽しいコースで、コース全長が長い分、筑波よりクリア取りやすくて走りやすかったです」と満足そう。
カプチーノで総合10位に食い込んだのは吉崎久善選手。「3台いないと(選手権として)成立しないので、嬉しさは半減ですね。関東から来て、不成立が4回ぐらい続いているので、なんとかしてほしいなぁ、と思っています」と正直な胸の内を明らかに。
続く総合11位は、今回最多出場のB2クラスで優勝を飾った湯崎伸選手。「3月から何回か走行会で走らせてもらって、その成果も出せて、とても喜んでおります。今まで筑波で3位が精いっぱいで、SUGOは初めてなんですけど、それで優勝できたので、めちゃくちゃ大好きなコースになりました!」と語っていた。
















フォト/JAFスポーツ編集部 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部