雨に翻弄された大荒れのスーパーGT開幕戦は実績ある“本命”チームが結果を残す
2025年4月18日

スーパーGTシリーズが今季も岡山で開幕した。予選は”晴れの国 岡山”らしく春の陽気で平和に終わったが、決勝は雨でウェットコンディションのためにセーフティカー(SC)スタートに。そして、序盤からアクシデントが発生して赤旗が掲出され、レースは中断となった。その後雨が上がってレースが再開されたが、随所でアクシデントが多発した。こうした大荒れの展開の中、GT500クラスは昨年のチャンピオンau TOM’S GR Supra(坪井翔/山下健太組)、GT300クラスは昨シーズン2位のLEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟組)と実績あるチームが手堅く開幕戦を制した。
2025 SUPER GT Round 1 OKAYAMA GT 300KM RACE
開催日:2025年4月11~13日
開催地:岡山国際サーキット(岡山県美作市)
主催:株式会社岡山国際サーキット、AC、株式会社GTアソシエイション
スーパーGT開幕戦の舞台は春の岡山。予選日となる4月12日はサーキット周辺の桜も満開に近く晴れ、公式練習の始まる9時半には気温15度と暖かい朝を迎えた。午後には薄曇りとなって気温23度、路面温度31度という14時に公式予選がスタートした。今季は基本的な予選方式が一昨年同様に戻りノックアウトスタイルとなった。

予選
GT500ではQ1突破が8台から10台に増え、Q2ではディフェンディングチャンピオンであるau TOM’S GR Supraの山下選手がコースレコードとなる1分16秒516をマークするも、最後にENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺組)の福住選手がこれを上回る1分16秒441で自身6回目のポールポジションを獲得した。3番手にはリアライズコーポレーション ADVAN Z(松田次生/名取鉄平組)で、以下、STANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐組)、WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南組)、KeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹組)が続いた。この中で多勢のブリヂストン勢に対し、3番手と5番手にヨコハマタイヤユーザーが入る健闘を見せた。
GT300では28台が2グループに区分され、各グループの上位9台ずつがQ2へ進出できるようになった(以前は8台ずつ)。Q2で最後にトップタイムをマークしたのはグッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝/片岡龍也組)の片岡選手で、チームとしては2023年第4戦富士以来となるポールポジションを獲得した。2番手はD’station Vantage GT3(藤井誠暢/チャーリー・ファグ組)で、3番手に新車を投入したSUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)となった。これにLEON PYRAMID AMG、UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI(片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン組)、PACIFIC アイドルマスター NAC AMG(阪口良平/冨林勇佑組)が続いた。

決勝
GT500決勝
決勝日の未明から弱い雨が落ちてきて、朝は霧雨ながら完全ウェットコンディション。予報では天気は回復傾向だったが、それに反して雨量が増え決勝前のウォームアップ走行時から傘が必要な程度の雨となった。気温11度、路面温度15度というウェットコンディションの13時10分、セーフティカー(SC)先導でレースはスタートした。
4周完了でSCが隊列から離れてバトルが始まった。フロントローの2台が先頭争いをする中、1コーナー先でKeePer CERUMO GR Supraの石浦選手が水に乗ってスピン! 後方にいた予選8番手のARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16(大津弘樹/佐藤蓮組)と、同9番手のTRS IMPUL with SDG Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット組)が接触する形となり、3台がストップしてパーツが散乱した。すぐにSCが導入されたが、赤旗が掲示されレースは中断となった。中断している間に雨はほぼ上がり13時55分にSC先導でレースは再開となった。
この後10周完了でバトル再開。アトウッドカーブの先で6番手走行中のMOTUL AUTECH Z(千代勝正/高星明誠組)の千代選手がまさかのスピン。そしてトップ争いはレッドマンコーナーでau TOM’S GR Supraの坪井選手が逆転した。
しかし14周目の1コーナーで4番手争いのNiterra MOTUL Z(佐々木大樹/三宅淳詞組)とリアライズコーポレーション ADVAN Zが接触しコースオフ&ストップ。これでまたもやSCランとなった。17周完了でバトルが再々開となり、au TOM’S GR Supra、ENEOS X PRIME GR Supra、STANLEY CIVIC TYPE R-GTの3台が抜け出す形となった。
トップのau TOM’S GR Supraを操る坪井選手は、徐々に後続とのギャップを広げ39周目には2番手との差を10秒以上として独走状態を築いた。3番手のSTANLEY CIVIC TYPE R-GTは33周と早めのピットイン。これで予選14番手から順位を上げていたDeloitte TOM’S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ組)が3番手となり、スープラがトップ3独占という形になった。
トップと20秒差の2番手を走行していたENEOS X PRIME GR Supraが、51周でピットインして大嶋選手へ交代。次の52周でトップのau TOM’S GR Supraもピットインし、山下選手へ交代してトップを守ってコースへ。やがて路面が乾き始め、62周でENEOS X PRIME GR Supraが、63周でau TOM’S GR Supraがスリックタイヤに交換した。終盤66周目のアトウッドカーブでWedsSport ADVAN GR Supraがストップしたことでフルコースイエロー(FCY)からSC導入となり、各車の距離は一気に詰まることとなった。
72周完了でレースは残り10周の超スプリントレースとしてリスタート。結果au TOM’S GR Supraが2位のENEOS X PRIME GR Supraに2.859秒差で逃げ切り優勝。3位チェッカーのDeloitte TOM’S GR Supraは危険なドライブ行為との判定になり10秒加算で5位に。4位のARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8(野尻智紀/松下信治)も同じ理由で40秒加算となり7位へ。DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/サッシャ・フェネストラズ)が3位でスープラ勢が表彰台を独占することとなった。ホンダの最上位は4位のSTANLEY CIVIC TYPE R-GT、日産の最上位は6位のMOTUL AUTECH Zだった。



GT300決勝
GT300クラスのスタートは、GT500のマルチクラッシュで発生した1コーナー先に散乱したパーツを避けるため混乱。2コーナーでD’station Vantage GT3の藤井選手がグッドスマイル 初音ミク AMGの片岡選手をかわしてトップを奪った。しかし直後にSC導入からレースは中断となり、13時55分にレースは再開された。
10周完了でバトルが再開されD’station Vantage GT3は2番手に3秒ほどのギャップを作った。しかしGT500車両が1コーナーのグラベルでストップしたことで、再びSCランとなり各車の差はなくなった。17周完了でバトルが再開すると、21周目のパイパーコーナーでグッドスマイル 初音ミク AMG がD’station Vantage GT3に接触して藤井選手がスピン&ストップ。FCY導入となりグッドスマイル 初音ミク AMG、SUBARU BRZ R&D SPORT、8番手スタートのPONOS FERRARI 296(ケイ・コッツォリーノ/篠原拓朗組)、LEON PYRAMID AMG、UPGARAGE AMG GT3(小林崇志/野村勇斗組)、デビュー戦となったseven × seven PORSCHE GT3R(藤波清斗/近藤翼組)がトップ6となり、28周目のヘアピンでLEON PYRAMID AMGの菅波選手がSUBARU BRZ R&D SPORTの井口選手をかわして2番手へ順位を上げた。
トップのグッドスマイル 初音ミク AMGは、ピットロードのドライブスルーというペナルティを受けた。これでLEON PYRAMID AMGが難なくトップへ浮上し、32周目には2番手争いをするUPGARAGE AMG GT3とseven × seven PORSCHE GT3Rに6秒以上のギャップを作る。4番手はUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARIで、15番手スタートから追い上げて来た昨年のチャンピオン、ゼッケン「0」を付けるVENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥組)が5番手まで順位を上げていた。
中盤の42周でVENTENY Lamborghini GT3がピットインすると、トップのLEON PYRAMID AMGもピットインしたが、タイヤ無交換作戦を採って作業時間を短縮した。ほぼ全車がピットインを終えた54周目にトップのLEON PYRAMID AMGが2回目のピットインを行いスリックタイヤに交換。しかし、なかなかタイヤが暖まらずUPGARAGE AMG GT3に先行を許すこととなった。3番手に21番手スタートのANEST IWATA RC F GT3(イゴール・オオムラ・フラガ/安田裕信組)、4番手は地元チームであるK-tune RC F GT3(新田守男/高木真一組)という順に。UPGARAGE AMG GT3はLEON PYRAMID AMGに対し57周目に12秒もの差をつけていたが、63周目にGT500車両がストップしたことでSC導入となるとその大きなマージンを一気に失うこととなった。
69周完了でリスタート。71周目のアトウッドでLEON PYRAMID AMGがUPGARAGE AMG GT3と接触しながらもインを突きトップを奪還した。これでUPGARAGE AMG GT3は4番手へ順位を落とし、LEON PYRAMID AMGには決勝結果に5秒加算というペナルティが与えられることになった。しかしLEON PYRAMID AMGの蒲生選手は2位のANEST IWATA RC F GT3に15秒近い大差をつけ、ペナルティを加算しても優勝。3位には後半怒涛の追い上げを見せたリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/平手晃平組)がゴールした。
最終盤には3台による4番手争い、6台による7番手争いという超接近戦が演じられたが、一部接触もあり、4~6位はグッドスマイル 初音ミク AMG、PACIFIC アイドルマスター NAC AMG、K-tune RC F GT3の順になった。



フォト/石原康[Yasushi ISHIHARA]、吉見幸夫[Yukio YOSHIMI] レポート/皆越和也[Kazuya MINAKOSHI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]