レジェンドドライバーたちの競演! Legend's Club Cupが開催

レポート レース

2021年10月7日

6月末から東京オリンピック・パラリンピックの自転車競技会場となって、サーキットとしての営業を休止していた富士スピードウェイ。9月24日より再始動して早速、9月25~26日にレースを開催した。サポートレースとして行われたAIM Legend's Club CupとFCR-VITAのレポートをお届けする。

AIM Legend's Club Cup 2021
FCR VITA Round3
(2021インタープロトシリーズ第3大会内)

開催日:2021年9月25~26日
開催地:富士スピードウェイ(静岡県御殿場市)
主催:富士スピードウェイ株式会社、FISCO-C

 往年の名ドライバーがVITA-01で競い合うエキシビジョンレースAIM Legend's Club Cupが、2018年から数えて3回目の開催となった。なお本来なら4回目なのだが、昨年はコロナ禍によってやむなく中止となっているためだ。最年長は多賀弘明選手の87歳で、最年少は初参戦の片山右京選手の58歳、平均年齢は72歳という選手が揃った。

 予選は25日に行われ、ドライコンディションでの計測となった。序盤のトップは75歳になった今も現役で、しかもFCR-VITAで自ら走らせるマシンで挑んだ見崎清志選手。だが、ひとり先輩に花を持たせてくれなかったのが片山選手だった。折り返しのあたりでトップに立つとそのままタイムを縮め続けて、最後は見崎選手にさえほぼ1秒の差をつけた。

「ダカール・ラリーとかは出ているけど、ちゃんとした国内レースは2002年のGT以来。だからもう20年ぐらい経っているんだよね。金曜日にコソ練した時は3周しか保たなくて……でももう大丈夫。最後すごくいいスリップが使えたんだよ」と、片山選手は現役当時そのままの笑顔で語っていた。

 見崎選手に続く3番手は福山英朗選手で、4番手は中谷明彦選手と、まだ60代の“若手”が並ぶ中、5番手には関谷正徳選手、そして80代で最速だった黒澤元治選手が6番手となった。

 26日に行われた決勝レースはあいにくの雨模様。当初よりローリングスタートの予定だったが、急遽セーフティカースタートに改められた。3周の先導の後、きれいに隊列が整えられた状態からレースは開始。

 シグナルの点灯後、いきなり片山選手、見崎選手、福山選手、中谷選手による、1コーナーでの先陣争いが! ここでは中谷選手が福山選手をかわしただけだったが、コカコーラコーナーで続けて見崎選手をパス。見崎選手はダンロップコーナーで福山選手にも抜かれてしまう。

 そしてこの4台の後方では、1コーナーで黒澤選手がスピンし、コカコーラコーナーでは長谷見昌弘選手も。あまりにも滑る路面で、この後もスピンが相次ぐものの、誰ひとりマシンにダメージを負わず。そのあたりは「さすが!」の一言であった。

 トップ争いは5周目の1コーナーで福山選手が中谷選手をかわして2番手に浮上。その間にトップの片山選手が差を広げることとなっていた。ラスト2周はトップ争いも落ち着きを見せた一方で、より激しくなっていたのが関谷選手と柳田春人選手による5番手争いだ。いったんは前に出ていた柳田選手だったが、最終ラップの1コーナーで痛恨のスピン! 最後は関谷選手の単独走行となり、柳田選手は6番手を死守していた。

 片山選手が初参戦にしてポール・トゥ・ウィンを達成して「めちゃめちゃ慎重に走りました。楽しかったけど、怖かった(笑)。晴れでスリップ使い合って走っていたら、もっと楽しかっただろうね。とにかく滑る、こんなに滑るとは思わなかった」とコメント。続いて「でもね、原点に返って、モータースポーツ楽しいなぁ、って改めて思ったよ。1台買って、若い連中と一緒に耐久やる!」と、久々のレースをトップで終えてレーサー魂に再び火がついたようだ。

 2位は福山選手で、3位の中谷選手は3大会連続で表彰台に。見崎選手は2連勝ならず、表彰台もあと一歩のところで逃す。終わってみれば、ほぼ全員が「楽しかったね」と語っていた。

AIM Legend's Club Cup優勝は片山右京選手(TEAM HERO'S NAGISA VITA)。
AIM Legend's Club Cupの表彰式。左から2位の福山英朗選手、1位の片山選手、3位の中谷明彦選手。
1コーナーに3ワイドで飛び込む福山選手、片山選手、中谷選手。レジェンドの技が光る見ごたえのあるレースを展開した。

 本来なら全4戦の開催予定だったFCR-VITAは急遽1戦加えられることとなり、全5戦のうちの第3戦が9月25日に開催された。予選は未明に降った雨が路面に残り、ウェットコンディションでのスタートとなったが、雲の切れ間から日差しが注いだことから、後半になるほど路面状態は向上していった。

 予選序盤のトップは下野璃央選手だったが、第2戦を制してポイントリーダーとなっている徳升広平選手が、ほぼ折り返しの段階でトップに浮上。そのままタイムを更新し続けてポールポジション(PP)を獲得した。

「最初はちょい濡れで、でも太陽が出ていたんで、これは乾いていくなって。1周前のコンディションとは違う状態になっていたので、最後の最後にタイムを出してやろう、路面を読んだもの勝ちだなって思っていました。しっかり集中して路面を見ながら走ったことで、PPが獲れました」と徳升選手。

 2番手は最終計測周に、自己ベストを2秒近く詰めてきたイノウエケイイチ選手が獲得。3番手から5番手まではKYOJOドライバーでもある下野選手と辻本始温選手、翁長実希選手が並んでいた。

 決勝レースを迎えるころには路面はすっかりドライコンディションに。スタートを誰より決めたのがイノウエ選手だったが、徳升選手を抜くまでには至らず。逆にヘアピンでは下野選手の先行を許してしまう。ペースの上がらぬイノウエ選手は、その後も徐々に順位を落としていた。

 一時は徳升選手と下野選手の一騎討ちかと思われたが、3周目に辻本選手が一気に差を詰め、さらに5周目の1コーナーでは3ワイドになる光景も見られたものの、徳升選手はなんとかトップをキープ。この後のプッシュが効いたことで、徳升選手はセーフティマージンを稼ぐこととなる。

 一方、2番手争いは最後まで激しく繰り広げられ、下野選手、辻本選手、翁長選手の順で飛び込んだ最終ラップのヘアピンで、辻本選手はエスケープゾーンに足を落としてしまう。そして最終コーナーでは翁長選手が下野選手に並ぶ。だが、遅れを取っていなかった辻本選手が、立ち上がり重視のラインを選んで一気に近づき、ストレートでは3台が完全に横一列に! それぞれコンマ03秒、08秒という超僅差で、辻本選手、下野選手、翁長選手の順でゴールとなった。

 もちろんその間に逃げ切りとなった徳升選手は2連勝を果たし「最後は後ろがバトルしてくれたので助かりました。セクター3の速さには自信があったので、なんとかスリップに入られないよう考えながら走っていました。でも、こんなにうまくいくとは思いませんでした!」と会心のレース展開に、興奮気味に語っていた。

 なお余談ではあるが、富士スピードウェイはこの営業休止中に、セクター3の路面改修を一部行っており、その影響はどうなのか併せて徳升選手に聞いてみた。

「路面が変わった部分は相当グリップしていましたよ。濡れていたら油が浮いて滑るのかなと思っていたら、そんなことはなくて。ただ、ひとつ注意しなくてはいけない場所がGRスープラコーナーです。ちょうど横Gのかかるところで、新しい路面と古い路面が入れ替わるため、そこのギャップがちょっと怖いですね。いきなりグリップが来るので、そこまでにクルマの向きを変えておくのがポイントじゃないでしょうか」と徳升選手。

FCR-VITA優勝は徳升広平選手(Keeper号)。
FCR-VITAの表彰式。左から2位の辻本始温選手、1位の徳升選手、3位の下野璃央選手。

フォト/石原康 レポート/はた☆なおゆき、JAFスポーツ編集部

ページ
トップへ