新車両規定「Rally1」によるWRC新時代の幕開け! 勝田貴元選手はトラブルやミスを乗り越え8位獲得!
2022年1月31日

2022年のFIA世界ラリー選手権(WRC)が1月20日~23日、第1戦「ラリー・モンテカルロ」で開幕。今シーズンよりハイブリッドユニットを搭載する新たな車両規定「Rally1」が導入されるなか、TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加中の日本人ドライバー、勝田貴元選手が新型車両「GR YARIS Rally1」を駆って参戦。今回で90回目の開催を迎えた伝統のラリーで8位完走を果たした。
2022年FIA世界ラリー選手権 第1戦
ラリー・モンテカルロ
開催日:2022年1月20日~23日
開催地:モナコ・モンテカルロ周辺
2022年の勝田貴元選手は「TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team Next Generation」から2021年にひき続きフル参戦。コ・ドライバーは昨シーズン終盤からクルーを組んでいるアーロン・ジョンストン選手、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR WRT)と同じ新型車両、GR YARIS Rally1のステアリングを握る。
ハイブリッドシステムを搭載した新型車両はハイブリッドブーストにより500馬力以上のパワーを発揮する新世代のラリーカーで、勝田貴元選手は「センターデフがなくなったことと、リアにバッテリーを搭載していることで昨年までのWRカーと比べると乗り味が変わってアンダーステアが強い傾向にあります。空力パーツが制限されたことで高速域での安定性にも不安があるので、ドライビングとセッティングで合わせ込んでいく必要がありますね」とインプレッションを語っている。
さらに「あまりテストで走れなかったことに加えて、シェイクダウンでもトラブルが発生して2回しか走行できませんでした」と語り、ナイトステージが設定された20日のデイ1でも「ハイブリッドシステムのトラブルによりブーストなしの状態でした」とのことで、SS1が10番手、SS2が9番手に留まることになった。しかし、21日のデイ2ではこの遅れを挽回する。
オープニングステージのSS3 でスピンを喫したものの、その後はSS5、SS7、SS8で5番手タイムをマークするなどペースアップに成功した勝田貴元選手は順位を上げて8番手でデイ2をフィニッシュした。
22日のデイ3でも勝田貴元選手のペースは衰えない。SS10ではスピンしてしまったが、ライバルチームのクルーたちがタイヤや車両のトラブルで脱落していくなか、勝田貴元選手はSS9及びSS11、SS12で6番手タイムをマークし、総合順位でも5番手に浮上した。
しかし、デイ3最後のステージとなるSS13で「ラインは合っていたんですけど、路面が凍結していて止まれなかった」とのことでコースオフ。なんとかギャラリーの助けを借りてラリーへ復帰したものの、10分以上もロスをしたことから、総合13位まで順位を落としてしまった。
こうしてデイごとに浮き沈みを繰り返した勝田貴元選手だったが、23日のデイ4ではSS15およびSS16で3番手タイムを叩き出すなど、素晴らしいパフォーマンスを披露して順位を挽回。総合8位でフィニッシュしてポイントを持ち帰った。
「1ポイントでも多く取りたかったのでミスをしないようにマージンを残した走りでしたが、それでも全ドライバーが最終のパワーステージに向けてプッシュするなか、セバスチャン・オジエ選手の1.6秒差で走れたので自分でも驚きでした」と勝田貴元選手は語った。

今回のラリー・モンテカルロは「通常ならスタッドタイヤやスノータイヤを使用するんですけど、今年は雪が少なく、ドライのセクションが多かったので、スリックタイヤをどのように使うのか、タイヤ選択の難しいラリーでした」と勝田貴元選手が語ったように、例年以上に難易度の高い1戦となった。
しかし「テストであまり走れなかったこともあって、当初は不安もあったんですけど、オジエ選手とのタイム差を見て安心しましたし、モナコを通じて、ハイブリッドシステムを含めた新しいクルマに対する理解も深まってきました」と勝田貴元選手は手応えを掴んでいるようだ。
TGR WRTのチーム代表、ヤリ-マティ・ラトバラ氏も「タカ(勝田貴元選手)はスタッグして10分を失ってしまった。小さなミステイクで大きな代償を払うことになったけれど、ラリーではラッキーなこともあれば不運もあるからね。SSのタイムも良かったし、8位でしっかりポイントを獲得できたことはいいスタートになったと思う。全体的なパフォーマンスは高かった」と勝田貴元選手を高く評価した。
そして、勝田貴元選手は「第2戦のスウェーデンはピュアなスノーラリーなので、モナコと違ってコンディションは一定だと思いますが、Rally1カーはリアが重くてピーキーだし、ハイスピードのラリーで高速での安定感にも不安要素があるので、テストで感触を掴んで気持ちよく走りたい」と次戦への意気込みを語った。
開幕戦では8位に留まったものの、結果以上に多くの手応えを掴んだようだ。そして、ラリー・スウェーデンは過去に下位カテゴリーで優勝を飾っているだけに、勝田貴元選手の活躍に期待したい。

一方、優勝争いはデイ1からM-SPORT FORD World Rally Team(M-SPORT WRT)でフォード・プーマRally1を駆るセバスチャン・ローブ / イザベル・ガルミッシュ組と、コ・ドライバーにベンジャミン・ヴェイラ選手を迎えた2021年のチャンピオン、TGR WRTのオジエ選手による熾烈な「セバスチャン対決」がくり広げられた。
オジエ組がトップでデイ4を迎えたものの、SS16で痛恨のタイヤトラブル。このSSを制したローブ組が逆転して、ローブ選手とM-SPORT WRTにとっては2018年以来の勝利を挙げた。つい一週間ほど前までサウジアラビアでダカール・ラリーを戦い、2位を獲得していた47歳のレジェンドは、WRC史上最年長優勝記録を更新するとともに、WRC通算80勝目を飾った。
そして、ローブ選手とクルーを組んだ女性コ・ドライバーのガルミッシュ選手は50歳。数学の教師だという彼女は、世界最高峰のラリーに初挑戦で見事に優勝。そして女性選手がWRCで優勝したのは1997年、やはりモンテカルロを制したコ・ドライバーのファブリツィオ・ポンス氏以来と、ローブ組の優勝は記録づくしとなった。
第2戦、フルスノーラリーが期待されるラリー・スウェーデンは、2月24日~27日に開催の予定だ。




フォト/TOYOTA GAZOO Racing、Red Bull Content pool レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
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