2年目のラリー三河湾はコンビ復活の勝田範彦/保井隆宏組が連覇!

レポート ラリー JAFWIM

2025年3月7日

全日本ラリー選手権2025シーズン開幕戦となる「RALLY三河湾2025 Supported by AICELLO」が、2月28日~3月2日にかけて愛知県蒲郡市内の複合リゾート施設ラグーナテンボス周辺のエリアを拠点に開催された。

2025年JAF全日本ラリー選手権 第1戦「RALLY三河湾2025 Supported by AICELLO」
開催日:2025年2月28日~3月2日
開催地:愛知県蒲郡市、岡崎市、豊川市、幸田町周辺
主催:MASC

 ラリーの拠点を新城市から蒲郡市に移して2年目となる全日本選手権は、初日となる3月1日のレグ1に7SS(レグ1SS総距離31.48km)、2日のレグ2に7SS(レグ2SS総距離44.84km)の計14SS(SS総距離76.32km)を設定。競技は、埠頭の広場やアクセス道路を利用した特設ステージ、サーキットと一般道路をつないだハイスピードステージ、道幅が狭くタイトなターンが連続するテクニカルな林道ステージ、観光道路を利用した道幅が広いワインディング、ダートの広場を利用した特設ステージなど千差万別。つまり、さまざまなシチュエーションに対応するドライビングとセットアップが要求されることとなる。

 ラリーの拠点となるラグーナテンボス周辺のエリアでは、サービスパークの他にイベント会場や各社ブース、飲食ブースが立ち並ぶラリーパークが展開された。2月28日の夕方には蒲郡駅南口前の道路を封鎖してセレモニアルスタートが行われ、ラリーパークや観戦エリアを合わせて延べ8万5800人(主催者発表)の観客が来場し、ラリー観戦を楽しんだ。

 また前日の27日夕方には、選手とオフィシャルを対象とした「2025年JAFモータースポーツ安全講習会」を実施。2月18日に公示された「細則:SSラリー開催規定」と「全日本ラリー選手権統一規則」の改定に合わせ、規則を運用するうえで選手が留意しなければならないことや、SS内でアクシデントが起きた時の対処、一般道路での道路交通法規の遵守など、ラリーに関する安全性の向上を目的とした講習が行われた。

三河湾を中心とした愛知県の蒲郡市、岡崎市、豊川市、幸田町にまたがる広域のエリアで展開された全日本ラリー選手権の第1戦。
昨年は大塚海浜緑地周辺にサービスパークとラリーパークが設置されたが、今年はサービスパークがラグーナテンボス・フェスティバルマーケット臨時駐車場へ移動し、ラリーパークはサービスパークからKIZUNAへつながる海沿いの参道に設置された。ケータリングやアフターパーツサプライヤー系ブースがズラリと並び、その中程にはJAFブースも出展。ロードサービスカーの展示や話題の「ジュニアライセンス」の発行などが行われていた。
開会式には開催自治体の関係者らが出席。大会会長の蒲郡市・鈴木寿明市長や、オーガナイザーで組織委員会の勝田照夫組織委員長が挨拶した。
今大会ではスペシャルステージへの車両進入を防ぐ対策が各所で徹底されていた。ステージ出入口はバリケードで封鎖され、競技車両を含むあらゆる車両が通行する際には、係員が逐一開閉する措置を採用。重ねて、出入口付近に競技役員らの車両をシケイン状に配置することで、実力行使をも予防する措置が採られていた。そして、リエゾン区間でも各ステージのはるか手前から規制を周知する看板が幾重にも設置され、ハイカー向けにも各登山道の出入口などにラリー開催を周知する看板が設置されていた。また、蒲郡市内の平坂街道には粋なキャッチフレーズとともにラリーを周知する横断幕が掲出され、ラリー三河湾の存在をアピールするとともに、安全な競技運営にも寄与する地域住民への周知がなされていた。
蒲郡駅前特設会場でセレモニアルスタートが行われた。金曜日の夕方から開始ということもあり、多くの観客がクルーに声援を送っていた。
スペシャルステージとして活用されたKIZUNAでは、土曜と日曜にTOYOTA GAZOO Racingによる同乗走行とデモランが行われた。TGR-WRTの勝田貴元選手が凱旋し、同乗走行とデモランのドライバーを担当するとともに、サービスパークにも訪れて各ドライバーを激励していた。そして、各日の午後に行われたデモランでは、勝田貴元選手とともにモリゾウ選手こと豊田章男会長がドライバーとして登場。今年の東京オートサロンでワールドプレミアされたGRカローラ・ラリーコンセプトのステアリングを握り、詰めかけた多くのギャラリーに土煙を浴びせる激走を披露した。
恒例のJAFセーフティ講習会が開催され、今回は木曜開催となったが、テストランへの参加および参加確認受け付けを行ったクルーは必ず参加する旨が特別規則書に記載されていた。多くのクルーが出席した18時からの講習会では、2025年の国内競技車両規則や、新たに公示されたラリー競技開催規定細則:スペシャルステージラリー開催規定の変更点の詳細解説をはじめ、ラリー中に生じるあらゆる出来事への現実的な対処方法など、参加者にとってかなり実践的ですぐに役立つ講義がもたらされたため、出席した多くのクルーがメモを取りながら真剣な表情で講義に臨んでいた。

JN-1クラス

 JN-1クラスは、SS1で昨年のチャンピオンドライバー新井大輝選手と新しくコンビを組んだ立久井大輝選手(シュコダ・ファビアR5)のクルーが、スタート直後にリアデフのトラブルに見舞われレグ離脱となり、早々と優勝戦線から脱落してしまう波乱の幕開けに。その中、今シーズンからシュコダ・ファビアR5に乗り換えた鎌田卓麻/松本優一組がSS2でトップに立つ。

 この鎌田/松本組をヘイキ・コバライネン/北川紗衣組、勝田範彦/保井隆宏組、奴田原文雄/東駿吾組らトヨタ・GR Yaris Rally2勢が追いかける展開となり、SS6でコバライネン/北川組が首位に浮上してくる。ところが、初日最後のSS7でコバライネン/北川組がミスコースしたために1分のペナルティタイムを計上し、クラス6番手まで順位を落とすことに。この結果、初日は鎌田/松本組が首位、4.8秒差の2番手に勝田/保井組、さらに7.2秒離れて奴田原/東組が3番手という展開となった。

 ラリー2日目、SS9でレグ1首位の鎌田/松本組がスピン。フロントにもダメージを負い、3番手にポジションを落とす。このSSで首位に立った勝田/保井組は、その後もしっかりとポジションを守り切りフィニッシュ。勝田選手は昨年に続き三河湾2連覇を達成した。2位には、レグ1の最終SSで6番手までポジションを下げたコバライネン/北川組がレグ2で一気にポジションを上げ入賞。3位には「ヘイキ選手に逆転されたのは残念ですけど、昨年よりも少しずつクルマが仕上がってきています。細かく見直してきたこともあって、唐津に向けて頑張ります」という奴田原/東組が入賞した。

JN-1クラス優勝は勝田範彦/保井隆宏組(GR YARIS Rally2)。
2位はヘイキ・コバライネン/北川紗衣組(AICELLO速心DLヤリスRally2)、3位は奴田原文雄/東駿吾組(ADVAN KTMS GRヤリスRally2)。
JN-1クラスのセレモニアルフィニッシュ。左から2位のコバライネン/北川組、1位の勝田/保井組、3位の奴田原/東組。

JN-2クラス

 JN-2クラスは、TOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup(MCC)参戦2年目となる大竹直生/橋本美咲組(トヨタ・GRヤリス)が初日の首位に立ち、昨年のJN-4クラスチャンピオンを獲得し、今シーズンはトヨタ・GRヤリスでJN-2クラスに参戦する内藤学武/大高徹也組が0.1秒差の2番手につける。ラリー2日目は、オープニングとなるSS8で内藤/大高組がタイヤトラブルに見舞われ、クラス6番手までポジションダウン。その後、SS10ではギャップに飛ばされクラッシュを喫しリタイヤという無念の開幕戦となった。一方、初日首位の大竹/橋本組は「あくまでもMCC優勝が目標」と、2日目は慎重な走りに切り替え、SS9を終えクラス5番手に順位を下げる。その中、昨年のMCCで初代チャンピオンとなった山田啓介/藤井俊樹組(トヨタ・GRヤリス)が一気に首位に浮上。そのまま最終SSまで首位の座を守り切り、開幕戦を制した。2位には、一時は山田/藤井組に9.2秒差まで迫った小泉敏志/村山朋香組(トヨタ・GRヤリス)が入賞。3位は、昨年のJN-2クラスを制した三枝聖弥/木村裕介組(スバル・WRX STI)が獲得した。

JN-2クラス優勝は山田啓介/藤井俊樹組(FIT-EASYソミック石川DLGRヤリス)。
2位は小泉敏志/村山朋香組(DLドリームドライブGRヤリス)、3位は三枝聖弥/木村裕介組(名古屋スバル ラック DL WRX)。
JN-2クラスのセレモニアルフィニッシュ。1位の山田/藤井組。

TOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup

 JN-2クラスに組み込まれているMCCは、JN-2クラス全体でも4位でフィニッシュした大竹/橋本組が優勝。2位に、同じくMCC参戦2年目の稲葉摩人/竹下紀子組(トヨタ・GRヤリス)が入賞。暫定結果の時点では兼松由奈/山下秀組(トヨタ・GRヤリス)が3位だったが、ジール・ジョーンズ/バイデン・トムソン組(トヨタ・GRヤリス)に救済タイムが与えられ3位に繰り上がったことにより、正式結果で4位となった。ニュージーランドからMCCに参戦するジョーンズ/トムソン組は、SS13内で停止していた前走車が「OK」「SOS」ボードを提示していなかったことで、車両を停めてクルーの安全を確認したため、救済タイムの適用が認められた。

MORIZO Challenge Cup(MCC)は、若手ドライバーの育成を目的に昨シーズンからJN-2クラスのサブカテゴリーとして組み込まれていて、MCC独自のポイントで競われる。今回は9組のクルーがエントリーし、大竹直生/橋本美咲組が優勝した。

JN-3クラス

 JN-3クラスは、前年度チャンピオンの山本悠太/立久井和子組(トヨタ・GR86)が、長﨑雅志/大矢啓太組(トヨタ・GR86)に7.7秒差をつけて初日を折り返すが、2日目のオープニングステージとなるSS8でタイヤトラブル。首位の座を長﨑/大矢組に明け渡す。その後、長﨑/大矢組はSS12までクラストップを守るが、SS13でコース脇の側溝に落ち、大きくタイムロス。側溝からの脱出には成功するものの、このステージでベストタイムをマークした山本/立久井組から3分32秒遅れでフィニッシュし、3番手に順位を落とすこととなった。

 最終ステージとなるSS14目前でふたたび首位に返り咲いた山本/立久井組は、ショートステージのSS14を慎重に走り切りフィニッシュ。最後の最後に開幕戦優勝をつかみ取った。2位には、山本/立久井組と同じチームで走る全日本参戦5戦目の下口紘輝/小林一貴組(トヨタ・GR86)が、全日本初表彰台を獲得。3位には、無念の表情をみせる長﨑/大矢組が入賞した。

JN-3クラス優勝は山本悠太/立久井和子組(SammyK-oneルブロスYHGR86)。
2位は下口紘輝/小林一貴組(K-one YH GR86)、3位は長﨑雅志/大矢啓太組(NTP NAVUL GR86)。
JN-3クラスのセレモニアルフィニッシュ。1位の山本/立久井組。

JN-4クラス

 JN-4クラスは、全日本初出場となる若手の藤原友貴/宮本大輝組(スズキ・スイフトスポーツ)が初日を首位で折り返す快挙をみせるが、ラリー2日目に入るとベテラン勢が逆襲。初日を首位から7.1秒差の3番手で折り返した前年度チャンピオンの高橋悟志/箕作裕子組(スズキ・スイフトスポーツ)がSS10とSS11で猛烈な追い上げを見せ一気に逆転。その後も2位以降との差を広げ、開幕戦優勝を果たした。

 逆転を許した藤原/宮本組も2番手を死守していたが、最終SSのショートステージで痛恨のミスコース。ひとつずつ順位を上げた筒井克彦/本橋貴司組(スズキ・スイフトスポーツ)が2位、須藤浩志/新井正和組(スズキ・スイフトスポーツ)が3位に繰り上がり、速さをみせながらも最終SSで4位に転落した藤原/宮本組にとっては、ほろ苦い全日本デビュー戦となった。

JN-4クラス優勝は高橋悟志/箕作裕子組(ミツバWMDLマジカル冷機スイフト)。
2位は筒井克彦/本橋貴司組(TEAM221 DL スイフト)、3位は須藤浩志/新井正和組(スマッシュBRIGコマツYHスイフト)。
JN-4クラスのセレモニアルフィニッシュ。1位の高橋/箕作組。

JN-5クラス

 前年度チャンピオンの松倉拓郎/山田真記子組が開幕戦をスキップ、シリーズ2位の大倉聡/豊田耕司組がJN-2クラスへと移ったため、本命不在となったJN-5クラスは、昨年のMCCに参戦していた中溝悠太/佐々木裕一組(トヨタ・ヤリス)が、2番手以降を30秒近く引き離す速さで初日を折り返す。ラリー2日目も快調に首位を走行していた中溝/佐々木組だったが、SS11で痛恨のクラッシュ。マシンのダメージが大きく、ここで戦線離脱となった。中溝/佐々木組の脱落により、2番手を走行していた小川剛/山本祐也組が首位に浮上し、そのままフィニッシュ。小川選手にとっては2021年の第4戦久万高原以来、4年ぶりの全日本優勝となった。

 2位には、レグ1を終えてクラス7番手まで順位を落としていた河本拓哉/有川大輔組(マツダ・デミオ)が、レグ2で激しく追い上げ入賞。3位には、今回が全日本参戦11戦目となる阪口知洋/野口智恵美組(日産・マーチ)が各ステージでコンスタントに好タイムを刻み、自身初となる表彰台の一角をつかんだ。

JN-5クラス優勝は小川剛/山本祐也組(itzzノアBRIDE DL ANヤリス)。
2位は河本拓哉/有川大輔組(DL CUSCO WM TWR OTS TAKATAデミオ)、3位は阪口知洋/野口智恵美組(FORVIA日産自動車大学校マーチDL)。
JN-5クラスのセレモニアルフィニッシュ。1位の小川/山本組。

JN-Xクラス

 今シーズンから「駆動方式を問わず、気筒容積が2500cc以下のAE車両」という新たな環境対応クラスとして登場したJN-Xクラスは、昨年のJN-6クラスを制した天野智之/井上裕紀子組が、トヨタ・RAV4 PHEVで参戦。昨年のJN-6クラスに出場していた車両をそのままキャリーオーバーしてきた清水和夫/山本磨美組(トヨタ・ヤリスHEV)、中西昌人/山村浩三組(ホンダ・CR-Z)を抑え、全日本の選手権クラスでは初となるSUV車での開幕戦優勝を果たした。

JN-Xクラス優勝は天野智之/井上裕紀子組(TRT・DL・RAV4 PHEV)。
2位は清水和夫/山本磨美組(SYE YARIS HEV)、3位は中西昌人/山村浩三組(YH・WM・KYB・MOTUL・マクゼス CR-Z)。
JN-Xクラスのセレモニアルフィニッシュ。1位の天野/井上組。
セレモニアルフィニッシュでは、普段クールな天野選手が笑顔を見せ、新クラス初参戦で完走そして優勝に安堵していた。

フォト/CINQ、遠藤樹弥、大野洋介、小竹充、中島正義、山口貴利、JAFスポーツ編集部 レポート/CINQ、JAFスポーツ編集部

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