中部・近畿ラリー開幕戦DE-1はクラス転向初戦の高畑智之/大西沙智組が制す!

レポート ラリー JAFWIM

2025年6月24日

2025年JAF中部・近畿ラリー選手権が、5月24・25日に開催された「豊田しもやまラリー2025」で開幕した。今季の中部・近畿ラリーは9月13・14日に兵庫県で行われる「第46回 神大ラリー」まで全5戦のターマックラリーが組まれている。前半2戦は中部地区での開催となり、第3戦からは近畿地区で三連戦となる。今季はほぼ1カ月のインターバルを経て、4カ月の間に5戦を行う短期決戦となる予定だ。

2025年JAF中部・近畿ラリー選手権 第1戦
2025年JMRC中部ラリー チャンピオンシリーズ第1戦
2025年JMRC中部ラリー チャレンジシリーズ第2戦
豊田しもやまラリー2025

開催日:2025年5月24~25日
開催地:愛知県豊田市
主催:MASC

2022年6月に初開催された豊田しもやまラリーは、今季で4シーズン連続の開催。FIA世界ラリー選手権(WRC)の一戦「ラリージャパン」でお馴染みのSS“Lake Mikawako”の舞台、豊田市下山地区をホストタウンとするラリーとして、すっかり定着している。

 SSのステージは“根池龍王”8.95kmと“ドラゴンレイク”7.36km、2本のターマックステージを用意。セクション1は根池龍王からドラゴンレイクの順で走った後に45分間のサービスイン。セクション2は逆にドラゴンレイクから根池龍王の順で走ってフィニッシュという設定だ。両ステージともこのラリーではお馴染みだが、2024シーズンはドラゴンレイクが1.5kmほど長く使用されており、走る区間は微妙に異なっている。

 24日午前にレッキが開始された時点で降雨はなかったものの、午後から降り出した雨は夜半まで降り続けた。そのため25日朝のスタート時では路面上に雨が残る中、各クルーはSSにアタックした。天気予報では25日は曇りとされていたものの、再び雨が降り出して落ち葉や路肩の泥が流れ出したため、ただでさえ狭いステージはリスキーなコンディションとなった。これが影響したか、参戦75台中15台がリタイアするサバイバルな要素も垣間見せたラリーとなった。

2025年JAF中部・近畿ラリー選手権の開幕を担った「豊田しもやまラリー2025」は、不安定な空模様の下での開催となった。ヘッドクォーターはラリー名称にもなっている愛知県豊田市の下山地区に建つ、下山保健福祉センターまどいの丘に、サービスはその駐車場に設けられた。

2025年JAF中部・近畿ラリー選手権 第1戦
2025年JMRC中部ラリー チャンピオンシリーズ第1戦

DE-1クラス

 DE-1クラスは排気量2500ccを超える4WDのRJまたはRF車両、あるいは4WDのRRN車両が対象となる。2024シーズンのこのラリーから4台増となる10台がエントリーし、盛りあがりを見せた。

 SS1“根池龍王1”でベストタイムを奪ったのは、コ・ドライバーの杉原慶彦選手と組んでの参戦となった昨季のドライバーチャンピオン、伊藤淳郎選手が駆る三菱・ランサーエボリューションⅨで、河野健司/北田稔組が操るGDB型スバル・インプレッサWRX STIを2.1秒差の2番手に従えた。しかし、伊藤淳郎/杉原組はその直後にメカニカルトラブルでリタイアしてしまい、河野/北田組もSS3“ドライゴンレイク2”でメカニカルトラブルが発生し、SSを上がった後に戦線離脱となった。

 SS3終了時点でトップに立ったのはマツダRX-8からGRB型インプレッサWRX STIに乗り換えて、DE-5クラスから転向してきた高畑智之/大西紗智組。SS2、SS3とドラゴンレイクでの連続ベストが効いて、2番手でランエボⅩをドライブする宮本雅彦/鈴木眞由美組に14秒差をつけて、最終SS4“根池龍王2”に臨んだ。

 高畑/大西組は、ここでも19.5秒差で宮本/鈴木組を下す三連続ベストをマーク。今季は混戦が予想されるDE-1初戦をまずは制した。3位にはGRヤリスを駆った八瀬誠/尾ノ上雅則組が入った。

 クラス転向初戦を勝利で飾った高畑選手は「GRBに乗るのは7年振りで、クルマが4月に出来上がったばかりなので、序盤の2本は様子見してしまいました。ただ、SS1はシーズン最初の一本で走る道としてはかなり厳しい、難しい道でしたね」と感想を語った。「雨と泥を踏まえて、敢えて超硬質路用のラリータイヤを履いたのが良かったと思う。最後のSS4も乾くと思ったけど、思った以上にまだ泥が出ていたので、ラリータイヤで正解だったと思います」と、勝因を分析した。

FG-1クラスはGRB型スバル・インプレッサWRX STIに乗り換えてクラス転向初戦の高畑智之/大西沙智組(ADVANインプレッサWRX)が優勝した。
DE-1の2位は三菱・ランサーエボリューションⅩを駆る宮本雅彦/鈴木眞由美組(MD・AKT・K-one・TEINランサー)が獲得した(左)。八瀬誠/尾ノ上雅則組(OLDIES GR-YARIS)がGRヤリスを操って3位に入った(右)。
DE-1は左から、2位の宮本/鈴木組、優勝した高畑/大西組、3位の八瀬/尾ノ上組が表彰を受けた。

DE-2クラス

 1500ccを超え2500cc以下のRJ/RPNまたはRF車両、2500ccを超える2WDのRFまたはRJ/同一車両型式の最も古いJAF登録年が2006年1月1日以降のRPN車両、あるいは2WDのRRN車両で参戦できるDE-2クラス。

 このクラスは、開幕第1戦から19台がエントリーする激戦区となった。SS1では「ウェットを予想してスプリングを変えてきた」と、スズキ・スイフトスポーツを駆る渡辺謙太郎/船津和行組の作戦が奏功してベストを奪取。三菱・コルト ラリーアートVersion-Rをドライブする山口航平/中島大貴組が1.1秒差の2番手で続いた。

 ドラゴンレイクのSS2ではホンダS2000を操る新堂啓太/御領親幸組がベストを奪い、ホンダ・インテグラを駆る松村智/谷内壽隆組が0.6秒差で続いたが、ともにSS1での遅れが響いてトップ奪取を果たせず。このSSで渡辺/船津組を2.8秒しのいだ山口/中島組がトップに躍り出た。

 トップに立ったとはいえ、実はSS2でスピンのため20秒近くを失っていた山口/中島組は、SS2の再走となるSS3で、タイムロス分をきっちり20.2秒埋め合わすタイムで上がった。逆転を狙う渡辺/船津組と新堂/御領組、松村/谷内組の3組を、いずれも15秒以上も引き離す圧巻のベストで終えて盤石のリードを築くことに成功。そのまま逃げ切った。

 学生時代から中部・近畿ラリーではインテグラを駆って優勝を飾るなど、速さを見せてきた山口選手は、2022シーズンにDE-5クラスでトヨタ・ヤリスを駆ってチャンピオンを獲得。昨年の夏にコルトを購入し、このクラスで復帰している。

 豊田しもやまラリーはDE-5で優勝した、初年度の2022シーズン以来の参戦となった山口選手は、「根池龍王は2022年の時の逆走になっていたので難しかったです。3回くらいリタイアしそうになりましたが、ギリギリの所でクルマが止まってくれました」と、厳しいラリーだったことを明かした。

 愛車については「雨用のセットは減衰をちょっと変更した程度で、ウェットでもいけるタイヤをコルトでは初めて履きましたが、動きは悪くなかったです。ただコルトはちょっと扱いにくいところもあるので、まだまだ詰めていけると思います」とカイゼンの余地はあるようだ。そして、今季はこのシリーズを追うかについては未定とのこと。ただ、どのラリーにスポット参戦するにせよ、台風の目になることは間違いないだろう。

 一方、関東地区から遠征してきた渡辺選手と、船津選手のクルーは2位入賞。渡辺選手は「群馬の道に近い所もあったけど、難しかった。もう一歩攻めないと山口選手には勝てないんでしょうね。中部・近畿のレベルの高さをまた痛感しました」とラリーを振り返った。3位には松村/谷内組が新堂/御領組を僅か0.1秒差で振り切って食い込んだ。

三菱・コルト ラリーアートVersion-Rを駆る山口航平/中島大貴組(コルト)がDE-2クラスで優勝を果たした。
JAF東日本ラリー選手権BC-1クラスのドライバーチャンピオン三連覇中の渡辺謙太郎選手とコ・ドライバー船津和行選手のクルー(dirtroadスイフト)がスズキ・スイフトスポーツを操りDE-2の2位を獲得(左)。ホンダ・インテグラをドライブする松村智/谷内壽隆組(のらねこインテグラ)が3位入賞を果たした(右)。
DE-2は上位6クルーが表彰された。トップ3は左から、2位の渡辺/船津組、優勝した山口/中島組、3位の松村/谷内組。
DE-2の4~6位は左から、4位の新堂啓太/御領親幸組(シロキヤ・MRS・S2000)、5位の鈴木海斗/栗川創組(YH伊藤木型赤いスイスポ)、6位の佐橋徹/岩本映組(TLUCKhair@MoteCarlo.GR86)が表彰を受けた。

DE-5クラス

 中部・近畿ラリー最大の激戦区として知られるDE-5は、1500cc以下のRJ/RPNまたはRF車両で競い、RPN車両のJAF登録年については、DE-2の2500㏄以上で2WDのRPN車両と同様となる。今回も22台がエントリーして熱戦を展開したが、前述したサバイバルな展開が影響を与えるかたちとなった。

 DE-5とDE-6の2クラスについては、SS1とSS2で前走クラスの車両が道を塞いで後続車両を停止させたため、ラリー競技開催規定細則スペシャルステージラリー開催規定第28条15.5)及び16.5)により結果的に全車、同一のタイムが与えられることになった。そのため、この2クラスについてはSS3から仕切り直しとなり、実質的にSS3とSS4、2本のSSタイムで勝敗をつけることになった。

 SS3でベストをマークしたのはトヨタ・ヤリスを駆る城野真輝/山本哲士組。DE型マツダ・デミオを操り2番手タイムの明治慎太郎/坂口元弥組に2.8秒差、3番手タイムでDJ型デミオをドライブする伊藤祐悟/船木淳史組には8.5秒差をつけて最終SS4に臨んだ。

 城野/山本組は「ドラゴンレイクも滑ったけど、なんとか路面の見極めはできました」とのことだったが、SS4では残り4kmというところでリアタイヤを側溝に落としてしまい、その後は「クルマがまっすぐ進まない」状態となりながらも幸うじてフィニッシュしたが、大きくタイムを落としてしまった。

 一方、昨季の第2戦「いなべ東近江ラリー2024」では最終SS4で爆発的な速さを見せて大逆転優勝を飾った伊藤祐悟/船木組は、今回も明治/坂口組を2.4秒差で下すベストで締め括った。それでも明治/坂口組には3.3秒届かず、2位でラリーを終えた。城野/山本組は手負いのヤリスで5番手タイムだったが、3位を確保した。

 荒れ模様のラリーでも2SSともに2番手タイムを並べ、元全日本チャンピオンのプライドを垣間見せた明治選手と、坂口選手は勝利を収めた。「1本もベストが獲れずに優勝というのは、ちょっと……」と明治選手は苦笑しつつ、「クルマの動きはドラゴンレイクの方が合っていました。最後のSS4はもう、チキンレースみたいなモンだったと思います(笑)。難しい道だったので、何とか完走できて良かったです」とラリーを振り返った。

 再びの大逆転劇を果たせなかった伊藤祐悟選手は、「SS4は道が荒れていて手こずったけど、何とか道から外れないようには走れました。経験値の差が出たのかな、という気もしますが、SS4は終わってみると自分の技量の中でもっと速く走れたと反省しています」とベストを獲った自らの走りにも手厳しい評価を下した。26歳、期待の若手の走りは今後、更なる注目を集めそうだ。

DE-5クラスはDE型マツダ・デミオを駆る明治慎太郎/坂口元弥組(ガレージO.K.U.デミオ)が優勝した。
DE-5の伊藤祐悟/船木淳史組(DL北沢自動車MASCデミオ)はDJ型デミオを操り最終SS4で猛追するも、2位でフィニッシュ(左)。トヨタ・ヤリスをドライブする城野真輝/山本哲士組(クロノスYHヤリス)はSS4で失速して3位に終わった(右)。
DE-2も上位6クルーが表彰を受けた。トップ3は左から、2位の伊藤祐悟/船木組、優勝した明治/坂口組、3位の城野/山本組。
DE-2の4~6位は左から、4位の小土橋宏紀/牛田啓太組(ADVAN TASC Vitz)、5位の亀高秀也/松尾俊亮組(K’sBRIGヤリスチームif)、6位の伊藤祐哉/渡部世季香組(ADVICS新興K1DLヤリス)が表彰された。

DE-6クラス

 DE-6クラスは1500cc以下のATのRPN・RF車両と全てのAE車両で争う。やはりRPN車両のJAF登録年はDE-5と同様となる。DE-5の後に走行するため、やはり後半2本のSSで勝負となった。SS3でヤリスのCVT車両を駆るHARU/浦野純乃介組が横山慎太郎/松原周勢組に11.3秒差をつけてトップに立つ。HARU/浦野組は、SS4でDE-5でも4番手に相当する好タイムで駆け抜けて連続ベストをマーク。ライバルたちを寄せつけない速さで快勝した。2位の横山/松原組に続く3位には女性クルーの蓑島琴美/貫明日香組が入賞を果たした。

「WOMEN’S RALLY in恵那」などのラリーでスバルBRZやトヨタ86を駆り、ドライバーとしても速さを見せてきたHARU選手。今季はこれまでほぼドライバー経験がない、前輪駆動のCVT車両というパッケージに挑戦しているが、一週間前に参戦した2025年JAF全日本ラリー選手権 第3戦での経験が活かせたことを勝因に挙げた。

「全日本で突っ込み過ぎないことを学んだので、SS4もクルマ1台分くらいブレーキのポイントを手前に持ってきたのが良かったと思います。チームも私が乗ってきたFR的な味付けをヤリスに加えてくれているので、雨でもリアが滑っても怖くない、いい動きをしてくれました」と会心の笑顔でHARU選手はラリーを振り返った。

ヤリス勢がトップ3を占めたDE-6クラスはHARU/浦野純乃介組(G-EYESクスコWMDLヤリス)が優勝を果たした。
DE-6の2位は横山慎太郎/松原周勢組(LUCK京都トヨタMASCヤリス、左)、3位は簑島琴美/大貫明日香組(Team Kojima ARTヤリス、右)が入賞した。
DE-6は左から、2位の横山/松原組、優勝したHARU/浦野組、3位の簑島/大貫組が表彰を受けた。

2025年JMRC中部ラリー チャレンジシリーズ第2戦

チャレンジクラス

 中部・近畿ラリーなどへの登竜門となり、排気量や駆動方式、車両による区分がないチャレンジクラスも、16台がエントリーと賑わいを見せた。このクラスもDE-5とDE-6同様、後半2本のSSでのバトルとなったが、SS3で平山将太/高野浩明組が後続を20秒近くも引き離すベストをマーク。SS4でもぶっちぎりのベストでフィニッシュし、大差で優勝を飾った。亀石典/中根達也組が2位、岡田登/岡田宗彰組が3位で続いた。

チャレンジクラスではトヨタ86を駆る平山将太/高野浩明組(トヨタ紡績自動車部@86E)が圧勝した。
チャレンジの2位はGRヤリスRSをドライブする亀石典/中根達也組(TRT・GRヤリスRS)が獲得した(左)。岡田登/岡田宗彰組(元 三五86)が86を操って3位に入った(右)。
チャレンジの表彰はトップ5クルーが受けた。左から2位の亀石/中根組、優勝した平山/高野組、3位の岡田登/岡田宗彰組。
チャレンジの4・5位は、左から4位の神田悠吾/神田英樹組(シロキヤ賑やかしインテグラ)、5位の藤浪琢門/古橋範雄組(ランサーエボリューションⅢ)が表彰された。

Women’s Rally Cup

 女性のラリー参加を促進し、中部・近畿地区のラリー環境活性化を図ることを目的として、今季から始まった「Women’s Rally Cup」も、今回の豊田しもやまラリーで初戦を迎えた。

 Women’s Rally Cupは中部・近畿ラリー全5戦と12月に開催予定の「WOMEN'S RALLY CHALLENGE in恵那2025」を加えた6つのラリーで併催されるシリーズ。Women’s Rally Cup独自のクラスは設けないが、各ラリーそれぞれのクラス毎に、女性のドライバー/コ・ドライバーを対象としたポイントを付与する。

 ポイントは個人が対象のためクルーの変更があっても、参加するクラスを変更しても通算されるかたちとなる。シリーズ最終戦となるWOMEN'S RALLY CHALLENGEで、ドライバー/コ・ドライバーそれぞれランキング3位までに入った選手たちが表彰されることになっている。

 ちなみに豊田しもやまラリーには21名の女性ラリーストが5クラスに分かれてWomen’s Rally Cupにエントリーし、表彰式では各クラスで最上位のポイントを上げた選手が、ドライバー/コ・ドライバーに分かれて表彰された。

 DE-6を制したHARU選手は「シリーズを追いかける、もうひとつのモチベーションになるし、完走するという気持ちもさらに強くなると思う。面白い試みだと思います」とこのシリーズに期待を寄せるなど、開幕戦からWomen’s Rally Cupへの関心の高さが感じ取れた。女性ラリースト達の熱いバトルにも目が離せない一年となりそうだ。

Women’s Rally Cupのドライバーは左から、DE-5トップの小川由起選手(RA.project DLヤリス)、DE-2トップの石川紗織選手(大仏86)の代理で2位の洪銘蔚選手(Love Drive♡DUNLOP 86 IEC)、DE-6で優勝したHARU選手が表彰を受けた。チャレンジトップのJu Ya選手(ラビットフットレーシングVitz)は欠席。
Women’s Rally Cupのコ・ドライバーは左から、DE-1で優勝した大西選手、DE-2トップの市橋真由子選手、DE-6トップの大貫選手、チャレンジトップの水野睦子選手(Bittaおかぁさんずヴィッツrs)が表彰された。DE-5トップの渡部選手は欠席。

フォト/田代康[Kou TASHIRO] レポート/田代康[Kou TASHIRO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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