山口貴利/山田真記子組が中四国ラリーFG-2で開幕二連勝して三連覇確定に王手!

レポート ラリー JAFWIM

2025年6月18日

2025年JAF中四国ラリー選手権の2戦目となる「つるぎ山アルペンラリー2025」が5月24日に徳島県で開催された。つるぎ山といえば、中四国ラリー開幕を告げる一戦としてすっかり定着していたが、例年は秋に愛媛県で開催されてきた「MACラリーin久万高原」が、今季は4月に開幕戦として開催されたため、このラリーは第2戦となった。これは昨季まで、4月下旬に開催してきたJAF全日本ラリー選手権の一戦「久万高原ラリー」が今季は10月に開催されることに伴う措置とみられる。ただし、つるぎ山を5月下旬に開催する時期は変更されなかった。

2025年JAF中四国ラリー選手権 第2戦
2025年JMRC中国・四国ラリーシリーズ第2戦
西日本グラベルラリーツアー2025第2戦
つるぎ山アルペンラリー2025

開催日:2025年5月24日
開催地:徳島県美馬市周辺
主催:TSURUGI

 SSは今回もお馴染みのグラベルステージ、赤帽子線を使用。下り基調の4.6kmを走った後に、逆走で上り基調とある4.99kmを走行。45分のサービスを挟んで、まったく同じかたちで再度往復する計4本、19.18kmで競われた。復路となるSS2とSS4の方が400mほど長いが、スタート直後のこの区間はほとんどが簡易舗装となり、路面が異なっている。

 タフなグラベルロードの印象があったつるぎ山だが、今季は路上から浮き砂利などが消え、土を入れた後に踏み固められた良好なフラットダートが用意されてクルー達を驚かせた。残念だったのは、これまで天候に恵まれることが多かったこのラリーが、今回は雨に見舞われてしまったことだ。しかも早朝のレッキではまだ雨がほとんど降っていなかったため、クルー達は大きく変わったウェットダートをぶっつけ本番で走ることになった。

2025年JAF中四国ラリー選手権の第2戦「つるぎ山アルペンラリー2025」のヘッドクォーターは徳島県美馬市の中尾山(なこやま)高原の林業センター、サービスはグラウンドに設定された。中尾山高原はラリー名称にもなっている剣山から北東の山間にあり、各種アウトドア施設も備えている。

FG-1クラス

 FG1クラスは、昨季もつるぎ山を制しているマクリン大地/大橋正典組が、SS1で開幕第1戦で優勝した堀川竜二/池田茂組を5.8秒突き離すベストタイムをマークして、上々のスタートを切る。しかし続くSS2でマクリン/大橋組は、雨とSS1の全車走行後でマッディとなった路面に手こずってリズムを崩し、3番手タイムに留まった。

 一方、堀川/池田組も、これまでのつるぎ山とは様相を異にした路面に手を焼いて2番手タイム。九州勢の一角でこのSSをベストで上がった、阪本寧/吉田賢吾組がトップに躍り出る。

 サービスを挟みSS3では、復調したマクリン/大橋組が堀川/池田組を3.2秒上回って2番手を奪取するが、阪本/吉田組はマクリン/大橋組に0.8秒差をつける連続ベストをマーク。4.4秒のマージンを持って最終SS4に臨んだ。

 雌雄を決するこのSSで堀川/池田組はコンディションが悪化する中、前走のSS2から4.8秒タイムアップして、マクリン/大橋組を再逆転して2番手に上がり、阪本/吉田組のタイムを待った。阪本/吉田組は、「スタートでミスってしまってそれまでの貯金がなくなったので、ゼンカイで攻めました」と、コースオフすれすれの限界アタックを見せてフィニッシュ。堀川/池田組のタイムをジャスト2秒上回って三連続ベストで締め括り、トータル7.3秒差で逃げ切った。

「難しい道でしたが、まぁラリーは長くやっているので、年の功で勝たせてもらいました(笑)。今年は、第1戦のMACラリーが3位で、地元の九州地区戦が2位だったんで“あとは1位を獲るしかないな”と思っていたので、嬉しいです」と振り返った阪本選手は、吉田選手とともに中四国ラリー初優勝を果たした。

 続けて 「たまたま195サイズのタイヤを持ってきていたので、自分だけ細いタイヤを使えたのが大きかったと思います。コ・ドライバーの吉田君も少ない時間の中でいいノートをつくってくれたので、最後まで合わせやすかったです」と、宮崎県から遠征してきた吉田選手に感謝していた。

FG-1クラスは九州地区から参戦を続ける阪本寧/吉田賢吾組(SRエナペタルBRIGランサーMSW)が三菱・ランサーエボリューションIXを駆りシリーズ初優勝を挙げた。
ランエボIXを操ってFG-1開幕二連勝を狙った堀川竜二/池田茂組(BRIGち~むみかん サンライズランサー)は2位に終わった(左)。スバル・インプレッサWRX STIをドライブするマクリン大地/大橋正典組(大阪冷研TOFインディゴPマクリンGRB)は3位で今季シリーズ初優勝は成らず(右)。

FG-2クラス

 FG-2クラスでは、開幕戦のSS1スタート直後に車両トラブルによってリタイアを強いられた高田修/箕作裕子組が三菱・ミラージュを操り、優勝候補筆頭のダイハツ・ブーンX4を駆る山口貴利/山田真記子組を3.1秒差で下して開幕戦のうっ憤を晴らす。しかしSS2では山口/山田組が早速、反撃を開始。総合でも3番手に入るタイムでベストを奪い、一気に高田/箕作組を逆転、4.9秒のリードを築いた。

 4WDに対する2WDのデメリットを軽減できる下り区間で、これまでも速さを見せてきた高田/箕作組は、下りのSS3で再びベストを狙うが、ここは山口/山田組が1.3秒しのいで連続ベスト。高田/箕作組は上りの最終SS4で、前走のSS2から僅か0.3秒落ちのタイムで走り切るが、山口/山田組が3連続ベストで上がって逆転は果たせず。山口/山田組が10.8秒差で逃げ切り、開幕二連勝をマークした。

 早々と三連覇となるチャンピオン確定に王手をかけた山口選手は 「やっぱり、今日は駆動方式の差で勝てましたね。いつもより4WDのアドバンテージがあった路面やったと思います。SS1はレッキの時から路面が大きく変わっていたので様子見したところがあったんやけど、SS2からはプッシュしました」と、勝因を明かした。

 愛車について、「今年は消耗パーツを新しくしてきたので、クルマの動きに安心感を持って運転できているんです。雨やったけど路面の感触が安定していたので、今までで一番走りやすかったです」とつけ加えた。

 高田/箕作組に続く3位には、中部地区から遠征してきた牧瀬貫慈/藤井俊樹組のトヨタ86が食い込んだ。今季からスズキ・スイフトスポーツを投入し、開幕戦で2位を獲得した松岡竜也/縄田幸裕組は車両トラブルもあって6位に沈んだが、松岡選手は「次戦から新しい足回りでいけると思うので、上を狙っていきたいです」と捲土重来を期していた。

10クルーが参戦して今回のラリー最激戦区となったFG-2クラスは、ダイハツ・ブーンX4をドライブする山口貴利/山田真記子組(winmaxインディゴpNUTECブーン)が開幕二連勝を果たした。
FG-2で三菱・ミラージュを駆る高田修/箕作裕子組(RスポーツKYBミラージュ)が2位入賞(左)。3位はトヨタ86を操る牧瀬貫慈/藤井俊樹組(Tガレージ☆86)が獲得した。

FG-3クラス

 FG-3クラスは、開幕戦でコースオフしてリタイアとなった松原久/和田善明組が、「とりあえず走れる状態には戻してきた」と愛車DJ型マツダ・デミオでSS1のベストタイムを奪取。ディフェンディングチャンピオンで、DJ型より一代前のDE型デミオを駆る藤田幸弘/藤田彩子組は2.8秒差の3番手につけた。松原/和田組は続くSS2でも、2番手を奪取した藤田組を3.1秒差で下して連続ベスト。その差を5.9秒に広げてサービスに戻って来た。

 セクション2最初のSS3は前走クラスの車両がトラブルでコースを塞いだために、ラリー競技開催規定細則スペシャルステージラリー開催規定第28条15.6)に従った措置が採られた結果、FG-3の車両は全車、同一のタイムが与えられて順位の変動はないまま、最終SSをスタートすることになった。

 ここで藤田組が前走のSS2から3.2秒タイムを詰める快走を見せたのに対して、松原/和田組は、「大きなミスを3か所もやらかしてしまった」とSS2から5.7秒タイムを落としてフィニッシュ。しかし結果は松原/和田組が、猛追した藤田組を僅か0.1秒差で抑えて開幕戦のリベンジを果たした。

 優勝した松原選手は「いつもとは全然違う路面だったので最初は戸惑ったけど、SS2からは感触が掴めたので踏んでいけました。最後は抑えたわけではなくて凄く路面が滑ったのでミスってしまい、負けたかもしれないと思いました」と走りを振り返った。続けて「開幕戦でフロントの入りが良くなかったので、クルマを直すついでにスプリングを変えたんですけど、そこで入りが良くなったのが今日は大きかった」と“怪我の功名”を勝因に挙げた。

 0.1秒届かず、開幕二連勝を逃した幸弘選手は、「開幕戦でミッションが壊れてしまったのでギヤ比を変えてきたんですが、2速と3速の使い方で迷うところがあって、前半は遅れてしまいました。SS4でその辺が掴めてきたのでタイムを上げられたけど、ちょっと届かなかったですね」と悔やんだ。なおこのクラスの3位は、SS1で藤田組を抑えて2番手タイムをマークした片山浩三/阿部孝子組が獲得した。

DE-3クラスは4位までマツダ・デミオ勢が占めた。DJ型を駆り王座奪還を狙う松原久/和田善明組(インディゴパワー☆BRIG☆DL☆デミオ)が優勝を果たした。
FG-3でDE型を操る藤田幸弘/藤田彩子組(MスポーツYHデミオ)は2位で開幕二連勝成らず(左)。片山浩三/阿部孝子組(Rスポーツ・デミオ)はDJ型をドライブして2戦連続で3位を獲得した(右)。

FG-4クラス、OP-Aクラス

 FG-4クラスでは今季、関東地区から中四国ラリーに参戦を始めた出納美朝/松浦俊朗組が好調。開幕戦を圧倒的なスピードで制した小野守/原野雅子組を0.8秒差で下すベストをSS1でマークした。出納/松浦組は続くSS2でも小野/原野組に1.4秒差をつけて連続ベストを奪う。2クルーによる一騎討ちは、後半2本のSSに持ち込まれた。

 しかしSS3で小野/原野組は大きくタイムロス、出納/松浦組に25.9秒もの遅れをとってしまい、逆転はほぼ不可能な状況となる。最終SSも出納/松浦組がベストで上がって、今回のラリーはSSを完全制覇。参戦僅か2戦目でシリーズ初優勝をゲットした。

 出納選手はダートトライアル出身の52歳。グラベルラリーに出るべく、2年前にグラベル仕様のトヨタ・ヤリスを造ったが、地元でグラベルラリーがなかったことから出納選手曰く「悶々としていた」ところ、チームメイトであるFG-3の藤田組に誘われてこのシリーズに参戦することになったそうだ。

「開幕戦が終わった後にスプリングと車高を変えてそれなりの準備はしてきましたが、一度実戦を経験して、ドライバーがグラベルラリーというものに慣れることができたのが、今回は大きかったと思います」と出納選手は勝因を語った。

 そして「元々が高所恐怖症なので谷が見えると怖かったですけど(笑)、自分自身は開幕戦よりは走りやすく感じました」と路面の感想とともに思わぬ弱点を明かした。出納/松浦組の台頭によって、このクラスもトップ2によるガチンコバトルが最終第3戦「四国のてっぺんラリー2025 in嶺北」でも見られることに期待したい。

 なお小野/原野組に続く3位には、土居嘉嗣/中村育代組が最後まで順位を守ってフィニッシュしている。また2025年JMRC中国・四国ラリーシリーズのOP-Aクラスは、開幕戦に続き武田友己/安藤恭平組がNCP13型トヨタ・ヴィッツで孤軍奮闘となったが無事、完走を果たした。

今季から中四国ラリーに挑み始めたFG-4クラスの出納美朝/松浦俊朗組(エムスポーツSHAF銀玉鉄砲ヤリス)はトヨタ・ヤリスを駆って2戦目にしてシリーズ初優勝を飾った。
開幕戦に続きトヨタ製コンパクトカー勢が占めたFG-4の2位はアクアを操る小野守/原野雅子組(チェリッシュAQUAインディゴ@TWIN)が獲得(左)。3位は土居嘉嗣/中村育代組(ビーサイドオート&どろやヴィッツ)がNCP131型ヴィッツをドライブして入賞した(右)。
2025年JMRC中国・四国ラリーシリーズのOP-Aクラスは武田友己/安藤恭平組(青ヴィッツ)がひとり旅でNCP13型ヴィッツをフィニッシュまで運んだ。

フォト/田代康[Kou TASHIRO]  レポート/田代康[Kou TASHIRO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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