中四国ラリー開幕戦つるぎ山アルペンラリー、FG-3王者対決は松原久/和田善明組がV!
2024年6月27日

JAF中四国ラリー選手権は、5月25日に徳島県で行われた「つるぎ山アルペンラリー2024」で、2024シーズンのシリーズが開幕した。今季の中四国ラリーは、2023シーズンまで中国地区で開催されていた一戦がなくなり、全3戦で行われる。四国地区で開催される3戦はすべてグラベルラリーとなる予定で、国内でも類い稀なシリーズとなっている。
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2024年JMRC中国・四国ラリーシリーズ第1戦
西日本グラベルラリーツアー2024第1戦
つるぎ山アルペンラリー2024
開催日:2024年5月25日
開催地:徳島県美馬市周辺
主催:TSURUGI
5月下旬の開催がすっかり定着しているつるぎ山アルペンラリーは四国の名峰、剣山の北東に広がる高地を舞台とするラリーで、ヘッドクォーター(HQ)とサービスは標高1,000メートルに位置する徳島県美馬市木屋平(こやだいら)のアウトドアレジャー施設、中尾山(なこやま)高原の中に置かれた。
ラリーはここ数年の例に倣って、このHQから程近い5km弱の林道がSSとして設定され、サービスを挟んで往復で2回走るという構成になっている。4.6kmのSS1、SS3は緩やかに下るステージだが、このステージのゴールから400mほど下った位置からスタートする逆走のSS2、SS4は当然ながら上り主体となり、スタート後、300mほどは下りでは使われなかった簡易舗装の路面が待ち受ける。こちらの距離は4.99kmと下りのステージより長くなっている。
今回の一戦、天候は朝から快晴となったが、ここ数日も降雨がなかったこともあり、このラリーの名物でもある砂埃の影響を懸念する声も当初は聞かれた。しかしラリーがスタートすると、風が適度に吹き出したこともあり、砂埃が道の上に留まることはほとんどなく、各クルーとも視界を遮られることなくアタックできた模様だ。

FG-1クラス
FG-1クラスは2023シーズンのチャンピオン、長江修平/中岡和好組が主催にまわったために不参加となったが、北陸や近畿、九州からもクルーが駆けつけ、8台による賑やかなバトルが繰り広げられた。
SS1を制したのは近畿のマクリン大地/大橋正典組のGRB型スバル・インプレッサWRX STI。2番手につけた三菱・ランサーエボリューションⅨを駆る、渡部洋三/井関美貴組を7.2秒も突き放すスーパーベストをマークして頭一つ抜け出す。逆走のSS2では渡部/井関組がマクリン/大橋組を1.8秒上回ってベストタイムを奪取。セクション1はマクリン/大橋組が渡部/井関組を5.4秒差に従え、トップでサービスに戻ってきた。
マクリン/大橋組はSS1の再走となるSS3で再びベストを狙ったが昨季、コースオフを喫して下位に沈むことになったコーナーで、今季もコースオフ。築いたマージンを一気に吐き出して、渡部/井関組に0.6秒差に迫られてしまう。さらに、このSSでベストを奪った昨季のウィナー、堀川竜二/池田茂組にも5.6秒差に迫られ、最終のSS4は三つ巴の様相を呈した。
注目のSS4では、マクリン/大橋組がセカンドベストだった前走のSS2から4.1秒のタイムアップを果たしてフィニッシュ。一方、堀川/池田組は、「いつもより路面が掘れたのもあったけど、上りのフカフカの所でトラクションが今ひとつでした」とタイムアップは果たすも、マクリン/大橋組からは4秒遅れに留まり、逆転は果たせず。そして渡部/井関組はステージ中盤で左フロントダンパーが破損というまさかのアクシデントに見舞われ、何とかSSは走破するも、フィニッシュまで愛車を運ぶことは叶わず、リタイアとなった。
優勝で幸先の良いスタートを切ったマクリン選手は、「そこまでプッシュしていないのに、SS1で結構なタイム差をつけることができたので、“今日は余裕やなぁ”と思っていたら、またやらかしました(笑)。抑えたつもりだったけど、コース上にあった石に目がいって操作が遅れてしまいました。ただスローパンクチャーで済んだので、大きなタイムロスにならなくて良かったです。SS4は結構、全開でしたよ」と、フィニッシュ後は安堵の表情を見せた。
昨季はトップを快走しながらリタイアに終わったため、一年越しのリベンジを狙った渡部/井関組は、またしても勝利の女神から見放された。「最後のSS4は“勝つぞ!”と気合入れて、いつもの2割増くらいのペースで走れてはいたと思う。だけど、いきなりクルマが左に持っていかれた。多分、金属疲労だと思います」と、振り返った渡部選手。目前で取り逃がした勝利に悔しさを滲ませていた。



FG-2クラス
FG-2クラスは、このラリー二連覇を狙う二野下幸夫/梶山剛組のCA4A型三菱・ミラージュがSS1でベストを奪取し、好スタートを切る。CA4A型の後継、CJ4A型ミラージュを駆って関東から参加の高田修/箕作裕子組が1.7秒差の2番手につけ、まずはミラージュ勢が速さを見せる。
しかし二野下/梶山組はSS2でエンジントラブルに見舞われて痛恨のリタイア。高田/箕作組はこのSSも2番手であがるも、ベストを奪った山口貴利/山田真記子組のダイハツ・ブーンX4が高田/箕作組を2.3秒かわしてトップに立った。
昨季のこのラリーでは2WD勢の前に辛酸を舐めた山口/山田組は、「昨年、大負けした原因をゴールデンウィークのテストで探って、しっかりセッティングを出してきました」という走りで、徐々にペースを上げてセクション2の2SSを連取。高田/箕作組も、SS3では0.6秒差で食らいついたが、SS4では大きく遅れて逆転は果たせず、2位をキープしてフィニッシュした。
「このラリーは初めて勝てたので、過去一番いい走りができたということでしょう(笑)。SS1でリアが出過ぎるイメージがあったので、SS2の前にセットを調整したのも良かったと思います」と、山口選手は勝因を分析した。
一方、高田選手は「SS3はもうちょっとタイムアップできると思ったけど、思いのほか路面が荒れていて難しかった。SS4はもうタイムアップは厳しい路面でしたね。1ステ(セクション1)のタイムはあんなモンかもしれないけど、もう少し気合い入れて踏んでいたら、違った展開になったかもしれないですね」と、ラリーを振り返った。



FG-3クラス
FG-3クラスは、ここ数年の中では最も注目を集めるラリーとなった。2023年JAF北海道ラリー選手権RA-3クラスのタイトルを獲得、関東地区から参戦しDE5FS型マツダ・デミオを駆る藤田幸弘/藤田彩子組が、今季からこの中四国ラリーに戦いの場を移したからだ。このクラスの絶対王者的存在である、DJLFS型デミオを操る松原久/和田善明組との“新旧デミオ”対決となった。
SS1を制したのは藤田幸弘/藤田彩子組。「レッキが1周だけはつらい。まだ道の感じが掴み切れていないんです」と語るが、松原/和田組を3.3秒差で下してグラベルスペシャリストの速さを見せるが、松原/和田組もすぐさまSS2から反撃を開始。今度は4.8秒差で藤田幸弘/藤田彩子組を抑え、トップも奪取してセクション1を終えた。
松原/和田組はSS3でも前走のSS1からタイムを大きく上げて連続ベストを奪うが、藤田幸弘/藤田彩子組も0.9秒差で食らいついて、その差は2.4秒と逆転の余地を残して最終のSS4に臨んだ。
路面が荒れたSS4は2WD勢にはつらかったか、さすがの松原/和田組も前走のSS2から4.3秒、タイムを落としてフィニッシュ。一方の藤田幸弘/藤田彩子組は1.2秒のタイムダウンに留めたが、このステージも松原/和田組が1.7秒差をつけるベストをマーク。2WD勢の中でも2番目に速い好タイムでゴールした松原/和田組が4.1秒差で藤田幸弘/藤田彩子組を振り切り、まず初戦を制した。
「SS1はトラクションが感じられなくて路面のせいかな、と思ったけど空気圧が高かったみたいで、調整したらSS2から良くなりました。今日は上りでちょっとずつ勝てた感じです。実際、上りの方がクルマが前に進む感じがありました。タイヤの外径が大きかったからか、悪路になった時の方がトラクションのかかり方が良かった気がします」と、松原選手はラリーを振り返った。さらに、「今日は落ちない程度には踏みました(笑)。藤田選手もシリーズを追ってくれるそうなので、今年は力が入りそうです」と王座防衛への意気込みも語ってくれた。
一方、同じグラベルとはいえ幅もあり、フラットな路面の道が多い北海道とは、また性格が異なる四国のグラベルラリーに挑むことになった藤田幸弘/藤田彩子組。だが、元々は地元・群馬のタフなグラベルロードでのラリーでキャリアを始めたとあって、藤田幸弘選手は「今日の路面も全然、違和感なく走れました。ある意味、関東的なというか、避けられる範囲の道でした」と、四国のグラベルの印象を語った。
そして、今回の一戦については「でも、まぁ、悔しいの一言ですね。上りは結構、踏んで、下りは抑えたけど、どっちも勝てなかったです。特に上りのSS2とSS4のスタート後の舗装で引き離された感じがします。でも勝負できるタイム差だったので次戦以降、何とか巻き返したいですね」と、藤田幸弘選手はリベンジを誓っていた。



FG-4クラス
中四国ラリーでは排気量1,500cc以下の車両がFG-3の対象となるが、同じ1,500cc以下のRPN車両と、ハイブリッドなどのAE車両についてはFG-4クラスに組み込まれるかたちとなっている。今回はトヨタのヴィッツとヤリス、アクア、そしてホンダ・フィットという顔ぶれが揃った。
この中で速さを見せたのは昨季、アクアでこのクラスのチャンピオンを獲得した松岡竜也/縄田幸裕組。今季は久しぶりにヴィッツでの参戦となったが、SS1からベストを奪取。終わってみれば4SS全てでベストを奪って、連覇に向かって好調な滑り出しを見せた。
松岡選手は「セッティングは出てなかったけど、以前に乗っていたクルマなので、SS1でとりあえず攻めてみたら、20秒くらいのマージンがつくれたので楽な展開になりましたね。2ステ(セクション2)は道が荒れたこともあって抑えました」と、勝利を振り返った。
そして、「本当はアクアに代わるクルマで出る予定だったんだけど、開幕までに間に合わなかったので、ヴィッツを引っ張り出しました(笑)。多分、今年一年は他のクラスのタイムも見ながら、RPN車両の範囲でこのクルマを煮詰め直していくことになると思います」と、今季の抱負も語ってくれた。
昨季の最終戦で松岡/縄田組と接戦を演じ、今季の活躍が期待された小野守/原野雅子組のアクアは、車両をスイッチしてきたライバルとの勝負には持ち込めず、今回のラリーは2位。JAF四国ダートトライアル選手権のPNクラスを連覇し、SD1クラスに参戦中の萩原豪選手は、ダートラのチームメイトである石井雅行選手と組んでフィットで参戦。最終SSでは小野/原野組に迫る走りを見せて3位入賞を果たした。このクラスも昨季以上に話題を集めるクラスになりそうだ。



フォト/田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部
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