吉谷久俊/古賀勝美組が九州ラリー第3戦RH-1優勝で古豪KOC復活の狼煙をあげる!
2025年7月25日

全6戦、全てターマックラリーで競われる2025年JAF九州ラリー選手権は、シリーズ前半を締め括る第3戦「第37回FMSCマウンテンラリー2025」が6月14・15日の2日間、福岡県のJAF加盟クラブ、福岡モータースポーツクラブ(FMSC)の主催により佐賀県で開催された。
2025年JAF九州ラリー選手権 第3戦
2025年JMRC九州ラリー チャンピオンシリーズ第3戦
TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge 2025 Cup in神崎・吉野ケ里
第37回FMSCマウンテンラリー2025
開催日:2025年6月14~15日
開催地:佐賀県吉野ヶ里町周辺
主催:FMSC
4月第3週に宮崎県での第1戦「ひむかラリー2025」で開幕した今季の九州地区戦は、今回のFMSCマウンテンラリーが終わった後、2カ月以上の夏休みに入る。8月30・31日にやはり佐賀県で行われる第4戦「グラベルマインドラリー2025 in唐津」で再開。その後は9月、10月ともに最終週で残る2戦を開催し、シリーズの幕を閉じる。
例年、10月上旬に開催されてきた大分県のJAF加盟クラブ、ラリークラブオオイタ(RC-大分)主催の「EAST九州2025」が9月下旬の開催となるのが今季の話題のひとつ。また福岡県のJAF加盟クラブ、北九州オートクラブ(ACK)は今季も第2戦と最終第6戦の2戦を主催する。

今季のFMSCマウンテンラリーは、対照的な2本のステージを設定。“Thousand Cherry(千本桜)”4.75kmは道幅が狭く、タイトなコーナーが続くテクニカルなステージであるのに対して、“Sazanka Reverse(サザンカR)”4.88kmは道幅が広く、コーナリングの速度域も上がって豪快な走りが楽しめるステージだ。
以前のサザンカRは終盤に急勾配の下りが続き、ブレーキ泣かせのステージとして知られていたが、現在は短縮されて急勾配となった下り区間を数コーナー、クリアした後にゴールという設定になっている。基本的に千本桜は上り、サザンカRは下りが基調のステージとなる。
天候はレッキが行われた14日の土曜日は、曇天ながら激しい雨が降る時間帯もありコース、サービスパークともに雨の影響を受ける一日に。15日の日曜日は前日に降った雨が残るセミウェットコンディションの中スタートしたが途中から、小雨そして霧が立ち込めて特にSS4“サザンカR-2”は、多くのクルーが視界不良に悩まされることになった。
2025年JAF九州ラリー選手権 第3戦
2025年JMRC九州ラリー チャンピオンシリーズ第3戦
RH-1クラス
今季最多となる12台がエントリーしたRH-1クラス。前戦の第2戦ではなんと、2017・18年JAF全日本ラリー選手権JN5クラスのドライバーチャンピオン、小濱勇希選手がスバル・インプレッサを駆ってスポット参戦。地区戦のトップランカー達と接戦を繰り広げた末に、ロングの最終SS5で一気に引き離して優勝をさらったが、今回も九州地区戦には約5年ぶりの参戦となった“ゲスト”クルーが、このクラスを掻き回した。
その吉谷久俊選手は、長く九州地区戦のトップドライバーとして活躍した一人。2020シーズンからはRALLY HOKKAIDOへの参戦を年イチのラリーと決めて活動してきたが、「元々、舗装のラリーも好き」ということで、地区戦に戻ってきた。コ・ドライバーの古賀勝美選手は全日本でも活躍した、九州を代表するコ・ドライバーの一人。因みに古賀選手はおよそ20年ぶりの九州地区戦に挑んだ。
二人が所属する久留米カーメカニックオーナーズクラブ(KOC)は、1980年代には全日本の一戦も主催した実績を持つ老舗チーム。本格的に復帰したベテランの二人が、再びチームを盛りあげていくために先陣を切る意味合いを込めて、今回の参戦を決めたとのことだ。
吉谷/古賀組はSS1“千本桜-1”で開幕戦を制した津野裕宣/白𡈽辰美組を4.3秒差で下すと、その後もベストタイムを連発。特にサザンカRが速く、SS2で7秒、SS4では11秒もの大差を後続につけてリードを拡大。最終的に津野/白𡈽組に30.3秒のマージンをつくって優勝した。
古谷選手は「SS1はギクシャクしたけど、走ってるうちに昔の勘が戻ってきた(笑)。セミウェットでもイケるタイヤを履いたのも良かったね。ただ、ドライバー的にはペースを上げたつもりが、タイムが出なかった。道が悪くなっていたのかもしれないね」と、久々のターマックラリーの感触を楽しんだ様子だった。
僅差のバトルとなった3位争いは、阪本寧/牧野瞳子組が制して開幕戦以来のトップ3入賞。なお、前戦で小濱選手を抑えて2度のベストをマークした松尾薫/平原慎太郎組は、SS1を3番手で上がるも松尾選手が走行中に腰を痛めたため、車両は無傷ながらSS2を走ることなくリタイアとなってしまった。



RH-2クラス
RH-2クラスにもビッグネームが参戦してラリーを盛りあげた。曽根崇仁/小川由起組は今季の全日本が終盤に2戦ターマックが続くことから、セッティングテストを兼ねて本番車のZN8型GR86を持ち込んできた。だが、この強豪を横目に激しい優勝争いを展開したのはスズキ・スイフトスポーツを駆る2クルーだった。
SS1から快走を見せたのは、前田宜重/勝瀬知冬組。4月に行なわれた全日本第2戦「ツール・ド九州2025 in唐津」のJN4クラスを制した黒原康仁/松葉謙介組を、2.3秒差で下した前田/勝瀬組は続くSS2とSS3も連取。黒原/松葉組に9.3秒のリードを築くが、前田選手によるとSS4の霧で視界が遮られたコーナーにオーバースピードで進入してしまい、「一人で大ドリフト大会をしてしまって(笑)」と、大きくタイムロス。このSSをベストであがった黒原/松葉組に一気に0.8秒差まで迫られてしまう。
最終SS5“千本桜-3”では、「プレッシャーはかかったけどいくしかなかったです。でも、クルマの動きもこっちのSSの方が合っていたので助かりました」と、前田/勝瀬組が再びベストをマーク。黒原/松葉組は「今回は減ったタイヤを持ち込んだので、流石に最後は厳しかったです。アンダー(ステア)が出ては消しての繰り返しで、人より多く距離を走った感じでした」と苦戦して4.4秒差の3番手タイムに留まり、逆転を果たせなかった。
優勝した前田選手は「今日は僕の方がタイヤに余裕があったので、拾えた勝利だと思います」と謙虚にラリーを振り返った。更に「実はこのスイフト、黒原君が仕上げたクルマなんですよ。おかげで動きが凄く良くて、手足のように操れました」とライバルに感謝しきり。
一方、黒原選手は「色々とクルマについても見えてきた一戦だったんで、次戦までにはリフレッシュしたいです」と、激戦を戦ってきた愛車を労わっていた。曽根/小川組は「道もコンディションも、ちょっとFRには厳しいラリーでした」と、苦戦を強いられた一戦を3位で終えた。



RH-3クラス
RH-3クラスは、三苫和義/猪熊悠平組がSS1で後続を7秒近くも引き離すベストをマークするが、SS2では有川大輔/山内將義組が三苫/猪熊組を3.5秒差で下すベストであがり、今季1勝ずつ分け合っている2クルーが先行する。
SS1の再走となるSS3では、三苫/猪熊組が有川/山内組を0.5秒上回って僅かにリードを広げるが、SS4“サザンカR-2”で、有川/山内組が三苫/猪熊組に9.4秒の大差をつけて逆転。最終のSS5では三苫/猪熊組が2.7秒巻き返すも、再逆転には至らず。有川/山内組がトータル2.6秒差で三苫/猪熊組を振り切り、今季2勝目を挙げた。
「Thousand Cherryの上りが、ヤリス的にギア比が合わなくてツラかったので、Sazanka Reverseで勝負するしかなかったんです」と、振り返った有川選手。「SS4は霧が深くて大変でしたが、ココでタイムを稼がないとどうにもならない、と思って頑張りました。下り基調なので、なんとか攻め切ることができました」と、決死のアタックだったことを明かした。
一方の三苫選手は、「SS4はSS2からギヤの使い方を変えてみたけど、タイムがあまり変わらなかったです。でも僕を含めてみんな霧でタイムを落としてる中、一人だけタイムを上げたんだから、今日の有川君には勝てんですよ」とライバルの速さを称えた。



RH-4クラス
RH-3と同じ排気量1500cc以下の車両が対象ながら、2WDで改造範囲が狭まるRPN車両のみが参戦できるRH-4クラスは、開幕二連勝中の泉勇希/WATAKEN組が今回のラリーも全SSを制する速さを見せて快勝した。
吉谷/古賀組と同じKOCに所属する泉選手は、昨季ラリーデビューしたばかりの23歳。「同じフィットに乗る三苫さんや、有川さんが目標ですが、少しずつタイムが近づいてきたなと感じています。ただ、Sazanka Reverseは今まで走ったことのない速度域だったので、めちゃくちゃ怖かった(笑)。スピードが上がってくるとペースノートのズレも出てきたので、今後の課題も見つけられました」と、改善点も見えたラリーだったようだ。


RH-5クラス、RH-6クラス、オープンクラス
RH-5クラスとRH-6クラスはともにAT車両、オートマチックやCVTを搭載したラリーカーを対象としている。排気量や駆動方式等によりふたつのクラスに分けているが、AT限定クラスを2クラス設定しているJAF地方ラリー選手権は九州のみ。今回のラリーは2クラス合わせて8クルーが参戦した。
RH-5は三菱・コルト ラリーアートVirsion-Rを駆る石井誠/松本知巳組が、SS1とSS2を連取。しかし、前戦優勝した日産・リーフを操る常慶明秀/三谷優雅組が、SS3で石井/松本組を6.7秒差で下して反撃開始。SS4でも石井・松本組に7.5秒差をつけて、1.6秒差の首位に躍り出る。常慶/三谷組は最終SS5でも 9.1秒差で石井/松本組を下し、二連勝を飾った。
RH-6は2022シーズンの最終第7戦から参戦した全てのラリーで優勝を飾っている、ホンダCR-Zを駆る納富瑠衣選手が、コ・ドライバーの藤澤卓弘選手と組んだ今回のラリーも絶好調。5本のSS全てをベストで駆け抜けて快勝し、川中天兵/河嶋康史組がNHP10型トヨタ・アクアを操って今季最上位となる2位を獲得した。
またOPENクラスは、冨安純/西田侑弘組が三菱・ランサーエボリューションVをフィニッシュまで導いた。






TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge 2025 Cup in神崎・吉野ケ里
今回のラリーには、TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge 2025 Cup in神埼・吉野ケ里(TGRラリチャレ)が併催され、全国からエントリーした38クルーが8クラスに分かれて熱戦を展開した。TGRラリチャレは、地区戦からSS1を減らした4本のSSで競われたが、その総距離は19.26kmと、通常のTGRラリチャレの一戦よりもかなり長い距離を走る設定となった。
E-1クラス、E-2クラス、E-3クラス、E-4クラス
TGRラリチャレでの総合優勝を巡るバトルが白熱したのはE-2クラス。SS2、SS3を連取した石川紗織/鈴木重隆組がそのまま逃げ切るかと思われたが、SS4では境一輝/増田好洋組が4.4秒差で石川/鈴木組を下して、今回のラリー最初のベストを奪取。最終SS5でも石川/鈴木組に4.6秒差をつけてフィニッシュするが、僅か0.4秒届かず。沖縄県での開幕戦以来の勝利を飾った石川/鈴木組が、王座争いのリードを大きく拡大した。
E-4クラスではSS1から三連続ベストをマークしたTOM SUZUKI/MIHO KUNO組が今季初優勝を獲得。今回のラリーで最多の8クルーがエントリーしたE-3クラスは、総合でも3位に入る好タイムでフィニッシュした天野浩明/羽琉組が、こちらも今季初となる一勝をマークした。E-1クラスは親子クルーの三好明宏/三好陽人組が快勝。ドライバーの三好明宏選手は、この勝利でランキングトップに立った。








C-1クラス、C-3クラス、C-4クラス、OPEN-C/Eクラス
C-4クラスは今季すでに3勝をマークしているドライバーの織田輔選手と、コ・ドライバー行徳聡選手のクルーが今回のラリーでも好調をキープ。SS1では2番手に甘んじるも、SS2では後続を12.2秒引き離すスーパーベストをマークしてトップを奪取。そのまま逃げ切って、王座争いでも大きなリードを築いた。
C-3クラスでは森田浩平/山田啓輔組が全SSを制して快勝。C-1クラスでは2本のサザンカRで圧倒的な速さを見せた古谷優弥/縄田瑛介組が優勝をさらった。OPEN-C/Eクラスは、GRヤリスを駆った加藤慎也/武藤太史組が、こちらも4本のSS全てを制して圧勝。沖縄県からスバル・ヴィヴィオで参戦した照屋伸作/宮平真人組が2位争いを制した。








フォト/田代康[Kou TASHIRO] レポート/田代康[Kou TASHIRO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]