佳境の九州ラリー第6戦、2023年RH-2ドライバー王者の林大河選手が86初優勝!
2024年10月16日

全7戦で競われる2024年JAF九州ラリー選手権は残り2戦となり、王座争いも佳境を迎えた。第6戦「EAST九州2024」は10月5・6日に大分県豊後大野市に建つ清川公民館にヘッドクォーター(HQ)を設けて開催された。
2024年JAF九州ラリー選手権 第6戦
2024年JMRC九州ラリー チャンピオンシリーズ第6戦
EAST九州2024
開催日:2024年10月5~6日
開催地:大分県豊後大野市
主催:RC-大分
HQが置かれた清川公民館と、サービスパークとなった豊後大野市清川支所駐車場は国道502号沿いに位置し、「道の駅きよかわ」も隣接して立地に恵まれた。同公民館の神楽会館で行われた開会式では、地元の清川小中学校太鼓隊の生徒たちが郷土芸能である清流太鼓を披露し、ラリーを盛り上げた。
SSは、2022シーズンから使用されているオールターマックの「SAKURA」を今回も設定。セクション1ではステージをふたつに分けて中央部分をリエゾン区間として、南方向へ走る「SAKURA Short」3.58kmと、北方向に走る「SAKURA Short Reverse」2.33kmを2回ずつ走行。
セクション2はSAKURA Short Reverseのゴール地点からスタートし、SAKURA Shortのゴール地点まで一気に駆け抜ける、「SAKURA」6.65kmを2本走ってフィニッシュするという、6SS、計25.12kmで競われた。天候は朝から霧雨となり、路面はセミウェットで始まったが、天候は徐々に回復。午後は陽も射して路面が急速に乾き始め、ほぼドライに変わっていった。

RH-1クラス
RH-1クラスは、SS1「SAKURA Short1」で四国・徳島県から遠征してきた長江修平/中岡和好組が、岩本昂大/岸本香太郎組を2秒引き離すベストタイムをマークし、好スタートを切ったかに見えた。しかし、SS2「SAKURA Short Reverse1」でコースアウトからリタイア。このSSでベストを奪った岩本/岸本組が代わって首位に立つ。
一方、優勝候補の津野裕宣/岡崎辰雄組はSS1でエンジントラブルが発生。SS2走行後に戦線を離脱し、2戦連続のリタイアとなってしまう。岩本/岸本組は2ループ目となるSS3「SAKURA Short2」、SS4「SAKURA Short Reverse2」も連続ベストを獲得。2番手の神田和徳/後藤義則組に23.1秒もの大差をつけてサービスに戻ってきた。
セクション2に入っても、岩本/岸本組は「朝は路面が濡れていたこともあってクルマを労わりつつ、様子見の走りをしてしまいましたが、午後は路面も乾いてきて気持ちもノッてきたので、思いきり攻めました」とロングSSとなるSAKURAのSS5、SS6でもベストを連発。後続とのリードをさらに広げて逃げ切った。
2位争いは、最後の2本でセカンドベストを並べた松尾薫/平原慎太郎組が抜け出してフィニッシュ。阪本寧/西高志組は、セクション2で猛追を見せた廣川慎一/森下史朗組を最後は0.1秒差でかわして3位に入った。
今季3勝目を挙げたドライバーの岩本選手は「このラリーは去年ヴィッツで走っているので、今年初めて経験ある道を走るということで気分的には楽な部分がありました。もうクルマもボロボロで(笑)、バネも柔らかいモノをつけているので完全ドライになると厳しかったですが、クルマ的にも微妙なコンディションだったので助けられましたね」と、ラリーを振り返った。



RH-2クラス
RH-2クラスはドライバーランキング2番手の黒原康仁選手が主催に回って不参戦。3番手の鶴田健二選手も欠場となったため、トップの筒井克彦選手にとって首位固めに入る絶好の機会到来と思われた。
しかしSS1・2を連取したのは林大河/重富駿組。第2戦から4戦続けて3位に甘んじてきた林/重富組は、今季から乗るトヨタ86での初勝利に向けて好スタートを切る。しかし筒井/丸山晃助組もペースを取り戻してSS3・4で連続ベストをマーク。5秒差まで巻き返してセクション1をあがった。
セクション2で最初の勝負所となったSS5は、「午後は晴れるという前提で選択したタイヤが路面に合ってきました」と上り調子の林/重富組が、筒井/丸山組を1.6秒差で抑える渾身のベスト。最終のSS6は筒井/丸山組が林/重富組を2秒差で下すも逆転は果たせず、林/重富組が逃げ切って待望の86での初優勝を達成した。
林選手は「午前中は路面が濡れていたのでヤバいなと一瞬、思いましたが何とか走り切れました。開幕戦でクラッシュして、その後ずっと恐怖感が残っていたんですけど、今日は最初から気合いを入れて走ったのが良かったと思います」と振り返った。
続けて「今回は好きなタイプの道だったということも大きかったと思うので、今後もセッティングと走りを詰めて、ライバルの方々との差を縮めていきたいですね」と意欲を見せた。RH-2は3位に枝光展義/枝光祐子組が入り、福岡県の名門加盟クラブ、北九州オートクラブ(ACK)のクラブ員がトップ3を占めた。



RH-3クラス
RH-3クラスは、今季4戦4勝と圧倒的な速さを見せているドライバーの平川真子選手は欠場したが、JAF中四国ラリー選手権FG-3クラスのトップドライバーである松原久選手が参戦し、ラリーが盛り上がった。SS1はその松原/山田英明組を3.9秒差で下した三浦勇二/山本祐介組が首位に立つが、SS2では松原/山田組が0.5秒、三浦/山本組をしのいで、今回のラリー最初のベストをマークした。
しかしSS3と4では、「2ループ目ということもあってグリップ感が掴めてきました」とのことで、三浦/山本組が連続ベストをマークしてリードを拡大。セクション2では、松原/山田組が「細い道を予想してきたのでセクション1は戸惑ったけど、午後は九州の道の特徴が掴めてきた」と、SS5で三浦/山本組を3.6秒差で下してSS6も連取するが、このSSは三浦/山本組が0.1秒差で食らいついて首位を堅持。トータル6.4秒差で逃げ切った。
三浦選手がステアリングを握ったデミオは、大分高等学校自動工学専攻科と九州マツダにより結成された「KOMレーシング」が造りあげたラリーカーで、2023シーズンは見事にRH-3チャンピオンに輝いた。しかしドライバーを務め、同校の教師でもあった後藤章文選手が今冬、急逝したためにチームは一旦、活動を休止。第5戦から復活を果たした。
三浦選手も同校の教師で2輪レースの経験は長いが、ラリーは前戦が初参戦。「サーキットはランオフエリアがありますけど、ラリーはしくじったら、すぐガードレールなので(笑)、ビビりまくりでした」とデビュー戦は最下位に終わった。「今回は、クルマの感触が何となく分かってきて、ペースノートも改善したことでアクセルオンのタイミングを早くできました。ノートの重要性を痛感した一戦でした」と、三浦選手はラリー2戦目を振り返った。
続けて「デミオは学生はじめチームが煮詰めてきて、安心して乗れるクルマになっているので、後はドライバー次第。まだ後藤君のタイムには追いつけてないし、今日も背中の方から“まだイケる!”と、後藤君の声が聞こえた気がして励まされたので、これからも速さを身につけていきたいと思います」と意欲を明かした。



RH-4クラス
RH-4クラスは、JAF全日本ラリー選手権でJN5クラスを追っている、ドライバーの小川剛選手が参戦。今季は地元の九州地区戦にトヨタ・アクアでRH-6クラスにスポット参戦していたが、今回はトヨタ・ヤリスを持ち込んだ。セクション1は小川/藤田めぐみ組と、ポイントリーダーでやはり全日本ドライバーの三苫和義選手とコ・ドライバーの春日美知子選手のクルーが、互いにベストを獲り合う接戦となるが、セクション2のロングSSで大きなマージンをつくった小川/藤田組が優勝を果たした。
「初めて履いたタイヤがコントロール性は良いんだけど、いまひとつ前に出ていかなかったんです」と、タイヤに苦戦したことを明かした三苫/春日組は無念の2位に留まり、チャンピオン確定は最終第7戦にもつれることとなった。



RH-5クラス
RH-5クラスは、昨季のこのラリーで日産・リーフに初優勝をもたらした常慶明秀/徳永琢磨組が再び優勝。セクション1ではSS1から3連続ベストと好スタートを切ると、ロングのSS5でも後続を10秒以上も突き離して勝利を決定づけるベストを出して快勝。今季3勝目を飾って安定した速さを見せつけた。
常慶選手は「リーフはランサーより重いので、今日は特に前半濡れていた所もあって下りはキツかったですけど、クルマの良さが活かせる所もあって、低速トルクがあるのでヘアピンなどではクルマが前に出てくれる感じがありました。AT車全体でも2番手のタイムだったので意外と走れたな、と思います(笑)」と、EAST九州を2連覇した走りを振り返った。
続けてリーフについて「競技用のパーツがないという制約はありますが、せっかく造ったクルマだし、何より経済性に優れているので、バネなどをテストしながら速さを追求していきたいですね」と、今後に向けての抱負を語った。



RH-6クラス
RH-6は2022シーズンの最終第7戦にシリーズ初参戦して以来、連勝記録の更新を続けている、ホンダCR-Zを駆るドライバーの納富瑠衣選手が優勝候補の大本命。その期待に違わぬ走りを見せた納富/安田裕太朗組は、全SSベストの快走を見せて優勝。納富選手の連勝記録を12に伸ばした。
このラリーを主催する大分県のJAF加盟クラブ、ラリークラブ大分(RC-大分)のクラブ員ということもあり、過去2季は主催にまわり、今回のステージは初走行だった納富選手は、「デフを入れた効果で、下りや平坦な所は走りやすくなりました」と勝因を振り返った。しかし「前戦同様に制御系のトラブルも出たので、対策を考えないといけないですね」と不安材料も見えたラリーだった様子。今季の走り納めとなる最終戦に向けて、新たな課題を見据えていた。



フォト/田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部