今季最多エントリーのXCR第4戦でも、XC-2番場彬/梅本まどか組ハイラックスが最速!

レポート ラリー JAFWIM

2025年9月16日

2025年XCRスプリントカップ北海道は、前戦に続いて2025年JAF全日本ラリー選手権と併催となる第4戦が、9月5~7日に十勝地域を舞台に開催された。全6戦が組まれる今季のXCRスプリントカップは、シリーズ中盤の2戦が全日本と併催されるかたちがすっかり定着しており、「2025 ARKラリーカムイ」と併催された7月の第3戦には、ふたつのクラスに13クルーが参戦し、盛りあがりを見せた。「RALLY HOKKAIDO」と併催される今回のラリーも、シリーズが始まった2022シーズンから人気を博しており、前戦は不成立だったXC-1クラスが成立したほか、XC-2クラスに12クルー、XC-3クラスに9クルーがエントリーと、大幅なエントリー増となった。

2025年XCRスプリントカップ北海道 第4戦
(RALLY HOKKAIDO内)

開催日:2025年9月5~7日
開催地:北海道帯広市、音更町、池田町、足寄町、陸別町周辺
主催:AG.MSC北海道

 参戦車種もバラエティに富み、最速を誇るXC-2には7車種が揃った。ディフェンディングチャンピオン、番場彬/梅本まどか組も駆るトヨタ・ハイラックスは5台。また、カムイでデビューを果たした三浦昂/羽琉組のトヨタ・ランドクルーザー250も姿を見せた。2季目となる三菱・トライトンは川畑真人/中谷篤組、竹岡圭/山田政樹組が前戦に続いての参戦となったほか、三菱勢ではこのシリーズの常連である、浅井明幸/古川和樹組がドライブするエクリプスクロスPHEVも参戦した。

 更にXC-2では長谷川智秀/厚地保幸組が駆る三菱・アウトランダー、高桑春雄/安東貞敏組によってスバル・フォレスターがXCRスプリントカップ初参戦を果たした。昨季のこのラリーで、マツダCX-5を駆って2位に入った寺川和紘/石川美代子組が新たにマツダCX-60を投入して今季初参戦を果たすなど、SUV勢の台数増がラリーの盛りあげに一役買った。またXC-3では、9台中7台がスズキ・ジムニー/ジムニーシエラが占めて主力車両となっている。

 ラリーのフォーマットは全日本とまったく同一で、6日のLEG1は「PAWSE KAMUY SHORT」 9.47kmと「RIKUBETSU LONG」4.63kmを3回、今回最長の「YAM WAKKA REVERSE」23.53kmを2回走行。7日のLEG2は、「OTOFUKE REVERSE」6.12kmと500mのスーパーSS「IKEDA」を2回ずつ走行する設定だ。

 走行順については、これまで全日本勢の後に走行していたXCRスプリントカップのクルーたちは、最初に走る国際クラスの5クルーが走行した後にスタートするかたちに今季は変更された。1ループ目については比較的クリーンな路面を走れるかたちとなったことが、勝敗にどのような影響を与えるかも注目された。

3クラスに分かれて2025年XCRスプリントカップ北海道 第4戦に挑んだクルーたちは、ラリー前に開催された帯広市立若葉小学校での特別授業や帯広駅前で開催されたラリーショーにも、2025年JAF全日本ラリー選手権 第6戦はじめ「RALLY HOKKAIDO」に参戦したクルーとともに参加した。

XC-2クラス

 最激戦区のXC-2で、SS1“PAWSE KAMUY SHORT 1”のベストタイムを奪ったのは川畑/中谷組のトライトンで、寺川/石川組のCX-60が3.9秒差の2位につけ、番場/梅本組のハイラックスは4.8秒差の3位でまずは最初のSSを終える。続くSS2“RIKUBETSU LONG 1”は番場/梅本組が獲るが、 寺川/石川組と川畑/中谷組も僅差で続き、トップの川畑/中谷組を寺川/石川組が0.9秒差で追い、番場/梅本組も1.2秒差まで詰め寄った。

 明暗が分かれたのはSS3“YAM WAKKA REVERSE 1”。連続ベストを奪った番場/梅本組に対して、寺川/石川組は34.6秒の遅れをとってしまう。さらに川畑/中谷組のトライトンにエンジン制御系のトラブルが発生。番場/梅本組から2分弱も遅れ、順位も4番手に後退することになった。

 2ループ目に入ると、SS3で番場/梅本組に大きく水を開けられた寺川/石川組が挽回を開始して、SS4“PAWSE KAMUY SHORT 2”、SS5“RIKUBETSU LONG 2”でベストを連取。2度目のYAM WAKKA REVERSEとなったSS6は再び番場/梅本組が獲るが、寺川/石川組も2.9秒差の2番手で食らいつく。寺川/石川組はSS7“PAWSE KAMUY SHORT 3”とSS8“RIKUBETSU LONG 3”もベストを奪い、番場/梅本組との差を25.1秒差まで詰めてラリーを折り返すこととなった。

 翌日のLEG2は朝から小雨がパラつくコンディションで、スリッピーな路面が待ち受けたSSSの“IKEDA 1”は寺川/石川組がベストを獲り、この日も好調をキープするかに見えた。しかし、林道ステージのSS10“OTOFUKE REVERSE 1”は番場/梅本組が1.4秒差で寺川/石川組を抑えてベストを奪取する。

 番場/梅本組はSS11“IKEDA 2”を挟んだ2度目のOTOFUKE REVERSEとなる最終のSS12もベストで締めくくり、この日は寺川/石川組とのリードを広げることに成功。最終的には36.1秒差をつけて優勝を飾った。終わってみれば寺川/石川組が最多の6本のSSでベストを奪ったが、LEG1、LEG2とも勝負所となったSSを番場/梅本組が全て押さえたことが勝利に繋がった。

 番場選手は「PAWSE KAMUY SHORTは踏みっ放しでイケる道なので、ドリフトで全開率の高い走行に慣れている川畑さんや比較的、車体が軽い寺川さんに先行されることはある程度、覚悟していました。その後のRIKUBETSU LONGを含めた2本を、最小限のロスに留めたことが逆転に繋がったと思います」と、レグ1を振り返った。

 続けて「YAM WAKKA REVERSEは自分のクルマの長所の走破性が生かせる道だったので、そこでしっかりタイムを出せたのが勝因ですね。今回は特にブレーキの仕様を変えたのが効いて凄くコントローラブルな運転ができたので、2日間とも道の狭い所もナーバスにならずに踏んでいけたのも、タイムに繋がったと思います」と勝利のポイントを分析した。

 ライバルたちについて、CX-60のスピードには「まだまだ速くなる余地のある段階でこれだけ速いので、我々ももっとハイラックスを煮詰めていかないと追いつかれちゃうかもしれないですね」と率直に語った。トライトンについては、8月にタイで行われたアジアクロスカントリーラリー2025で、番場選手もステアリングを握っているが「バランスのいいクルマ、という印象でした。足回りが決まれば日本の狭い林道でも十分に速く走れると思うので、こちらも警戒していきたいです」とつけ加えた。

 一方、寺川選手は「最初のYAM WAKKA REVERSEは路面コンディションが微妙で、まだ自分もクルマに慣れてないこともあって、何カ所か大きなドライビングミスをしてしまいました。速度域もバリエーションに富んだ道でしたが、特に低速コーナーの処理が最初はイメージを掴めずに難しかった。クルマは滅茶苦茶良かったので、クルマに申し訳ないという気持ちです」と苦笑しつつラリーを振り返った。

 ディーゼルターボエンジンを積み、マイルドハイブリッド仕様のCX-60はCX-5よりもワイドトレッド化されたこともあって、「PAWSE KAMUY SHORTのような道は最高の動きをしてくれます。ただ、RIKUBETSU LONGのような低速のコーナーではサイドブレーキがないので、かなり神経を使うんです」とのことだ。「どちらかというと高速に振ったセットで正直、思った以上のタイムが出せたので、一番の売りのコーナリング性能の高さは発揮できたと思います。今後は低速域の動きも煮詰めて、次回走る際はしっかりと優勝を狙っていきたいです」とリベンジを誓った。

 また、川畑/中谷組は車両が復調したLEG2ではベストとセカンドベストを一本ずつ奪うなど、4本の走行を全て3番手以上のタイムであがり、トップ2と遜色ない走りを見せたが8位。川畑選手は、「今日も本来のパワーまでは戻らなかったけど、かなり攻めの走りができてタイムを残せたし、ベストを獲ったIKEDAではドライバーとしての技量も見せられたと思います」と、トライトンのポテンシャルの片鱗を見せることができた一日となった。

 更に「昨日はいいかたちでスタートできて、そのままの勢いでガンガンいきたかったので、この結果は残念ではあるけど、前戦のカムイから仕様変更した分はクルマが確実に速くなったと実感できた一戦でした。負けたままトライトンでのラリーを終えたくないので、次は勝利を狙っていきたいです」と、川畑選手も闘志を燃やしていた。

 なお寺川/石川組に続く3位には、タイから参戦するMana Pornsiricherd/Kittisak Klinchan組のハイラックスが入賞して表彰台の一角を射止めた。今季は開幕第1戦にも挑んで2位を得たMana/Kittisak組は残る2戦も参戦の予定とのこと。番場/梅本組にどこまで迫ることができるか、注目される。

XC-2はトヨタ・ハイラックスを駆る番場彬/梅本まどか組(CUSCO YHジオランダーHILUX)が破竹の開幕4連勝を達成した。
XC2にスポット参戦した寺川和紘/石川美代子組(MAGIC TY MAZDA CX-60)がデビュー戦のマツダCX-60で2位に入り、ポテンシャルの高さを見せた(左)タイから海を渡り、ハイラックスで挑んだMana Pornsirichard/Kittisak Klinchan組(トヨタハイラックスファストフォワード)が3位を獲得した(右)。
XC-2は5位までのクルーが表彰された。左から4位の能戸知徳/田中一弘組(JAOS HILUXカヤバ×トーヨー)、2位の寺川/石川組、優勝した番場/梅本組、3位のMana/Kittisak組、5位の浅井明幸/古川和樹組(TOYO帯広三菱エクリプスクロスPHEV)。

XC-3クラス

 9クルーが参戦と、こちらも今季最大のエントリーを数えたXC-3は、第2戦から二連勝中の藤野秀之/玉城詩菜組のジムニーシエラが今回のラリーも絶好調。SS1から7連続ベストを奪ってLEG1をトップで折り返す。昨季のRALLY HOKKAIDOで衝撃のXCRスプリントカップデビューウィンを飾った奈良裕/花田圭一組のジムニーはエンジン不調でペースを上げられず、1分を超える遅れをとって苦しい展開となる。

 LEG2に入っても藤野/玉城組のペースは衰えず。昨季は悪夢の転倒を犯したIKEDAでは慎重な走りに徹してベストを譲るも、OTOFUKE REVERSEは2本ともベストを奪って、最後までライバルたちに隙を見せずに完勝した。

「リタイアに終わった去年のリベンジが達成できました!」と開口一番で喜んだ藤野選手は、「この一年ラリーに出させてもらって、組み立て方がなんとなく分かってきたので、今回は攻める所と守る所をしっかり分けて走ることができました」と勝因を一言。そして「路面も難しい所がありましたが、ノートの精度もかなり上げることができているので、危ない局面もありましたが、最後まで安定して走れたと思います」とコ・ドライバー玉城選手のリーディングを称えた。

 一方、白熱したのは2位争いで、ワイドトレッド化したジムニーを持ち込んだ和田智弘/伊神敬太郎組がSS10で奈良/花田組をかわして2位を奪取すると、僅か1.3秒のリードで臨んだ最終のSS12でも奈良/花田組を抑えてポジションキープに成功。昨季の3位に続く二季連続の表彰台を獲得した。

スズキ・ジムニーシエラをドライブする藤野秀之/玉城詩菜組(WISTERIA TYジムニーシエラ)がXC-3クラスで快走を見せて優勝、リタイアした昨季のリベンジを果たした。
XC-3のトップ3はジムニー勢が占めた。2位はトレッドを広げたジムニーを駆る和田知弘/伊神敬太郎組(ショウワガレージJB64 TOYO)が(左)、7.7秒後方の3位には奈良裕/花田圭一組(TRIBALラリーJB64TOYO/S+)が入賞した(右)。
XC-3は上位4クルーが表彰を受けた。左から、2位の和田/伊神組、優勝した藤野/玉城組、3位の奈良/花田組、4位の相原泰祐/上原あずみ組(D-SPORT Racingロッキー)。

XC-1クラス

 XC-1は1クルーのみのエントリーだったが、このクラスの常連である惣田政樹/猿川仁組が今回のラリーから持ち込んだ三菱・デリカD:5で完走を果たした。「一般の人にも、“こんなクルマでも出られるんだ”という馴染みのある車両をとおして、モータースポーツに興味を持ってもらえれば」と、惣田選手はデリカD:5を選択した理由を語った。

 続けて「シェイクダウンもできないまま走ったんで、今回はとりあえず組んだだけ。セットアップもこれからという状態ですけど、エンジンが不調だったのがちょっと残念。運転はすごく快適です」と本来の走りを披露できなかったことには、悔いが残るラリーに。ただし参戦予定の終盤2戦では、砂塵巻き上げるデリカD:5の迫力ある走りが見られそうだ。

孤軍奮闘となったXC-1クラスは惣田政樹/猿川仁組(ジオランダーブラV・SFデリカD5)が、デビュー戦の三菱・デリカD:5をフィニッシュまで駆った。

フォト/大野洋介[Yousuke OHNO]、小竹充[Mitsuru KOTAKE]、中島正義[Tadayoshi NAKAJIMA]、山口貴利[Takatoshi YAMAGUCHI] レポート/田代康[Kou TASHIRO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

ページ
トップへ