東北ラリー第5戦は久々に岩手が舞台、B-1橋本奨/吉田知宏組はじめ地元勢が躍動!

レポート ラリー JAFWIM

2025年11月12日

11月1・2日の二日間、岩手県雫石町にある小岩井農場を拠点とする、2025年JMRC東北ラリーシリーズ第5戦「RALLY OF IWATE 2025」とTOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge pre-event in岩手が開催された。今回のラリーの発端は、今季の8月29日にラリチャレが秋と冬に計2戦、岩手県でプレイベントを行うことを発表したことに遡る。今回に続いて、来年の2月7・8日に二回目のプレイベントがスノーラリーとして行われる予定となっている。一方、今季の東北ラリーは全4戦でカレンダーが組まれていたが、8月に延期されていた第2戦が中止となることが同月に公示されたため、その代替のラリーをラリチャレと併催することとした。東北シリーズは今回の一戦が最終戦という位置づけとなる。

2025年JMRC東北ラリーシリーズ第5戦
RALLY OF IWATE 2025
TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge pre-event in岩手

開催日:2025年11月1~2日
開催地:岩手県雫石町周辺
主催:CMSC岩手、ふうりん

 岩手でのラリー開催は実に38年ぶり。1980年代に岩手山岳ラリーや栗駒山アルペンラリーそして、のちに青森県に開催地が変更となったツール・ド・東北などJAF全日本ラリー選手権の一戦を開催するなど、岩手は元々ラリーが盛んに開催された土地だ。連続して行われる二つのプレイベントが、ラリー王国復活への一歩となることが期待される。

 主催は地元岩手県のJAF加盟クラブであるコルトモータースポーツクラブ岩手(CMSC岩手)と、ラリー・チーム風鈴(ふうりん)。CMSC岩手はJAF東北ダートトライアル選手権の一戦も主催する他、スノーイベントなどを開催してきた。ふうりんは、そのクラブ名から知れるように現在、多くのクラブ員が東北ラリーやJAF東日本ラリー選手権などに参戦中だ。

 かつて岩手のラリーは盛岡市の東のエリアで開催されることが多かったが、今回は盛岡市の西、雫石町にある岩手を代表する観光施設のひとつ、小岩井農場が拠点となり、SSは二本の林道を使用した。

 小岩井農場内の作業道を使用した「小岩井」は2.14kmのグラベルステージで、北海道を思わせる広大な景色の中を駆け抜ける高速ステージ。一方の「夜景ロード」は1.89kmのターマックで、1.5~2車線程度の道幅が確保された中高速ステージだが、当日は落葉が路面を覆ったスリッピーなステージとなった。

 ラリーはセクション1で小岩井、夜景ロード、小岩井の順で3本のSSを走行。午後のセクション2では夜景ロード、小岩井の順で計2本走ってフィニッシュという設定で行われ、リエゾンを含めたラリールートの総距離は54.72kmとコンパクトなラリーとなった。

 天候は小雨がパラつくことがあったものの、ラリー中は概ね好天が保たれた。ただ小岩井は陽が届かないセクションが一部あり、マッドな路面が待ち受けるなど、最後まで気が抜けないステージとなった。東北ラリーは5クラスに28クルー、ラリチャレには8クラス14クルーがエントリーした。なお、東北ラリーのクラス区分は、東日本ラリーと同様だ。

2025年JMRC東北ラリーシリーズを締めくくる最終第5戦「RALLY OF IWATE 2025」は、全国的に知られる岩手県雫石町にある「小岩井農場」が拠点となった。農場内にヘッドクォーターが置かれ、駐車場の一部はサービスパークを担った。
初開催RALLY OF IWATEの路面はミックス。小岩井農場内に設定された「小岩井」2.14kmは、B-4クラスを制したドライバーのいりえもん選手が「プランテーションの中を走るタイのラリーに似ている」と評したグラベルステージだ。

2025年JMRC東北ラリーシリーズ第5戦
RALLY OF IWATE 2025

B-1クラス

 15クルーがエントリーしたB-1クラスは、今回のラリー最大の激戦区となった。「岩手のラリーはやっぱり、岩手の人間が勝たないと」と、意気込み先頭でスタートを切った、地元勢の橋本奨/吉田知宏組が“小岩井1”でまずはベストタイムを奪取。

 SS2“夜景ロード1”では同じ地元勢の伊藤一也/平野正志組と福島県から参戦の善方広太/佐藤佑地組が同タイムのベストであがる。しかし、SS3“小岩井2”では橋本奨/吉田組が2番手以下に1.9秒差をつけて2度目のベストを奪取し、トップでセクション1を折り返す。

 SS4“夜景ロード2”は宮城県の綾部匡/山口清組がベストを獲って、橋本奨/吉田組にプレッシャーをかける。最終のSS5“小岩井3”で橋本奨/吉田組は、関東地区から遠征してきた上原利宏/郷右近孝雄組にベストを譲るも、セカンドベストをマークしてトップを堅持。最終SSで綾部/山口組をかわして2位に上がった村里尚太郎/御纏喜美子組に5.5秒差をつけて逃げ切った。

 有言実行で優勝を果たした橋本奨選手は、「得意のグラベルでリードを築けたのが、やっぱり勝因ですね。道幅があるため、多少挙動が乱れてもリカバリーできるので、そんなに危ない場面はなかったです。ただ直線が長いので、そこからのブレーキングには神経を使いましたね。舗装のSSの方は、午後晴れて路面も乾いてきたので、落葉は残ってましたけど踏んでいけました」と、ラリーを振り返った。

B-1クラスはスバル・インプレッサWRX STIを駆る橋本奨/吉田知宏組(たばしね雪山倶楽部ハザードGRB号YH)が地元、岩手勢の意地を見せて優勝した。
橋本奨/吉田組が逃げる後ろで、B-1の2番手争いはセクション2でヒートアップ。最終SS5で再逆転した村里尚太郎/御纏喜美子組(メープル17代目くりまんじゅうランサー)が三菱・ランサーエボリューションVIIを操って2位でフィニッシュ(左)、GRヤリスをドライブする綾部匡/山口清組(アヤベMOTUL GRヤリス2号車)が3位を獲得した(右)。
B-1は左から、4位の上原利宏/郷右近孝雄組(三菱ランサーエボリューションしち)、2位の村里/御纏組、優勝した橋本奨/吉田組、3位の綾部/山口組(代理)、5位の菊池恒博/藤原悠希組(アヤベMOTUL遠藤板金DLヤリス、代理)、6位の伊藤一也/平野正志組(たばしね帰ってきた伊藤平野組ランサー8)が表彰された。

B-2クラス

 B-2クラスは、上位ランカーであるドライバーの佐々木松紀選手、沼尾秀公選手たちが今回は主催に回ったため、不参戦。本命不在のラリーとなったが、このクラスも地元勢が速さを見せ、ともにダートトライアルが本業の武蔵真生人/遠藤誠組が三菱・ミラージュの強みを活かしてSS1のベストを奪う。

 SS2では同じくミラージュを駆る秋田県の秋元星大/小山内駿太組が1.1秒差で武蔵/遠藤組を下して、その差を2.5秒まで詰めてくるが、グラベルでは武蔵/遠藤組が速く、SS3では0.7秒差で秋元/小山内組を下して2度目のベストを奪う。

 ターマックのSS4は秋元/小山内組がベストを奪って斬り返すが、最後のSS5では武蔵/遠藤組がリードを広げ、結果、4.5秒差で秋元/小山内組を振り切って優勝を決めた。3位にはトヨタ・カローラレビンを持ち込んだ成田正彦/yukiha組が続いた。

三菱・ミラージュ使いによる優勝争いとなったB-2クラス。武蔵真生人/遠藤誠組(夢藏屋連邦仮鮫ミラージュ)はダートトライアラ―の本領を発揮してグラベル小岩井の3SSでタイムを稼いで優勝した。
B-2の秋元星大/小山内俊太組(BMKsport星徳自動車ミラージュ)はターマックステージ「夜景ロード」を2本とも制するも小岩井3本での差が響いて2位に甘んじた(左)。トヨタ・カローラレビンを駆る成田正彦/yukiha組(こめやのレビン)は5SS全てで3番手タイムを並べて3位を獲得した(右)。
B-2は左から、2位の秋元(代理)/小山内組、優勝した武蔵/遠藤組、3位の成田/yukiha組のトップ3が表彰を受けた。

B-3クラス、B-4クラス、OPENクラス

 好調の地元勢は続くB-3クラスでも速さを見せて、スバル・ヴィヴィオを駆る石倉英昭/石倉あすか組がSS1から4連続ベストの快走を見せて優勝。2位に柳本弘信/星光行組、3位は橋本寿/大野千明組が続き、宮城勢がウィナーの両脇を固めた。

 関東遠征組のCVT車両2台によるマッチレースが予想されたB-4クラスは、その一角、NCP131型トヨタ・ヴィッツを駆る室田仁/鎌田雅樹組がライバルで三菱・コルト ラリーアートVersion-Rをドライブする、いりえもん/川口達也組を0.9秒差で下してSS1のトップに立つ。しかし、いりえもん/川口組はSS2から反撃を開始。SS3とともに室田/鎌田組を大差で下して一気に形勢は逆転。

 午後のセクション2でいりえもん/川口組のコルトにターボトラブルが発生し、残す2本のSSを自然吸気で走ることを強いられる。しかし、2SSともに室田/鎌田組の追撃を退けてベストをマークして優勝を遂げた。

 タイでラリーの参戦経験をもつ、いりえもん選手は「長い直線から直角に入っていく所などは、プランテーションの中を走る同じようなレイアウトのタイのラリーに似ていると感じました」と、今回のラリーの印象を語った。

 なお室田/鎌田組に続く3位にはスズキ・アルトを駆る西村章/藤田美登里組が入賞し、B-4は関東勢がトップ3を独占した。

 またOPENクラスは、地元勢の中野渡美咲/玉熊彦士組の孤軍奮闘となったが無事、完走を果たしている。

軽自動車のスバル・ヴィヴィオでB-3クラスを戦う石倉英昭/石倉あすか組(スバルヴィヴィオ)は、スタートから4SSを連取して優勝を果たした。
柳本弘信/星光行組(PS24Sマジックμnagiヤリス)はトヨタ・ヤリスを武器にB-3で2位。最終SS5を制して石倉組に一矢報いた(左)。トヨタ・スターレットを駆る橋本寿/大野千明組(アヤベスターレット)は優勝争いから離されてしまったが全てのSSを駆け抜けて3位に入った(右)。
B-3は左から2位の柳本/星組と優勝した石倉組、3位の橋本寿/大野組、参戦した3クルーが表彰された。
前戦「利府ラリー2025」に続き関東地区勢の一騎討ちとなったB-4クラスはCVT搭載の三菱・コルト ラリーアートVersion-Rをドライブする、いりえもん/川口達也組(FLYSAFE EVOLiSTACOLT)が連勝を果たした。
B-4でNCP131型トヨタ・ヴィッツのCVT車両を駆る室田仁/鎌田雅樹組(DUCちのねSPルート6 Vitz)はSS1を制して好スタートを切ったが、逆転を喫して2位となった(左)。西村章/藤田美登里組(ALEX&チノネスポーツALTO)はスズキ・アルトを武器に奮闘し、3位でフィニッシュした(右)。
B-4は完走した3クルーが表彰された。左から2位の室田/鎌田組、優勝したいりえもん/川口組、3位の西村/藤田美登里組。
OPENクラスはSCP10型ヴィッツを駆る中野渡美咲/玉熊彦士組(ジェネリック五目ご飯SVヴィッツ)のひとり旅となり、5本全てのSSを駆け抜けてフィニッシュした。

TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge
pre-event in岩手

 ラリチャレは8クラスともに少数精鋭での戦いとなった。E-4クラスは地元岩手県出身のレーシングドライバー、佐々木雅弘選手とコ・ドライバー中村健太郎選手のクルーがZN8型GR86を駆ってSS1でベストを奪う好スタートを切る。チームメイトの小倉康宏/高田高志組もGRヤリスをドライブして1.3秒差で食らいつき、まずはこの2クルーが頭一つ抜け出す。

 しかし、ターマックのSS2では佐々木選手がレーシングドライバーの本領を発揮。6.6秒差で小倉/高田組を下してリードを広げるとSS3でも前走のSS1から2.4秒タイムを詰めてあがった。小倉/高田組もタイムを上げてくるが、0.3秒のタイムアップに留まったため、佐々木/中村組が三連続ベストを奪取する。

 佐々木/中村組はセクション2に入ってもSS4、SS5ともに約3秒の差で小倉/高田組を下して全SSを制覇。トータル17.4秒差をつけて地元開催のラリーで圧倒的な速さを見せつけた。3位にはZN8型GR86を操る富川悠太/Aki HATANO組が入った。

 E-3クラスは細谷裕一/みなぴよ組NCP13型ヴィッツと入谷和幸/水谷多江子組MXPK11型トヨタ・アクアのバトルとなったが、やはりこのクラスのトップランカーである細谷選手の速さは健在で、今回も全SSを制して快勝した。

 ラリチャレで全国を転戦する細谷選手は、今回のラリーについて「道が広くてラインの自由度があるのでワダチができにくい分、車高が低い自分のようなクルマでも思い切り走れました。ぜひ冬だけといわず、またこの時期に開催してほしい。ラリチャレの仲間も今回の評判を聞いて駆けつけると思います(笑)」と印象を語った。

 OPEN-C/Eクラスでは、中島大輔/夷藤新基組が駆るGRヤリスが制した。レクサスLBXを持ち込んだ石原広/安岡志朗組は小岩井でコースオフする場面もあったが、持ち前の車高を活かして難なくコースに復帰。2位完走を果たしている。

 ライバルが序盤でリタイア、鈴木満也/藤田充宏組の一人旅となったE-2クラス、そしてC-4クラスとC-3クラス、C-2クラス、C-1クラスは孤軍奮闘となった。鈴木/藤田充宏組、C-4の小林一貴/牧口達哉組、C-3の幡谷武史/宮田英行組、C-2の原田尚真/宇佐見友彦組、C-1の安井健人/岡野亘輝組はそれぞれ5本のSSを走り切り、完走を果たした。

E-4クラスはニュルブルクリンク24時間耐久レースなどに参戦するレーシングドライバー、佐々木雅弘選手(小倉クラッチBS GR86-MASA)がコ・ドライバーに中村健太郎選手を迎えてZN8型GR86を駆って5SS全てを制した。
E-4は左から、2位の小倉康宏/高田高志組(小倉クラッチBS GRヤリス-ORC)と優勝した佐々木/中村組が表彰を受けた。
E-3クラスはJAF東日本ラリー選手権やJMRC群馬ラリーシリーズなどでもNCP13型ヴィッツで活躍する細谷裕一選手と、コ・ドライバーみなぴよ選手のクルー(メープルYHDXLMotyS毒苺ヴィッツ)が全SSを制して圧勝した。
E-2クラスは早々に鈴木満也/藤田充宏組(FORUM-1・86)の単独走行となったが、ZN6型トヨタ86をフィニッシュに導いた。
ヤリスを操る若手クルー、小林一貴/牧口達哉組(C&A Racingはばたくヤリス)がC-4クラスで完走を果たした。
ZN6型86を駆る幡谷武史/宮田英行組(TEAMいばとよGATS86)はC-3クラスに参戦、全てのSSを駆け抜けてフィニッシュを果たした。
C-2クラスはNCP131型ヴィッツRSをドライブする原田尚真/宇佐見友彦組(トヨタ東日本Vitz)の孤軍奮闘となったが、完走を成し遂げた。
安井健人/岡野亘輝組(TCD自動車部アクア)はC-1クラスでMXPA10型アクアをフィニッシュまで運んだ。
GRヤリスとレクサスLBXの異色対決となったOPEN-C/Eクラスは、GRヤリスを駆る中島大輔/夷藤新基組(VC_SU_GRヤリス)がトップでフィニッシュした。

フォト/田代康[Kou TASHIRO] レポート/田代康[Kou TASHIRO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
※一部誤りがございましたので、修正を施して再公開いたしました。

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