東日本ラリー初開催の利府ラリーはBC-2小舘優貴選手が新車FTOを駆って5連覇達成!
2025年10月8日
東北ラリー界秋の風物詩として知られる「利府ラリー」が、2025シーズンも9月27・28日に宮城県で行われた。5回目の開催を迎えた利府ラリーはJAF東日本ラリー選手権に昇格し、JAF地方選手権を争う関東地区のラリーストたちも集結。また、従来どおりJMRC東北ラリーシリーズの一戦としても開催された今回のラリーには、過去最多の40クルーが参戦した。
2025年JAF東日本ラリー選手権 第4戦
JMRC東北ラリーシリーズ第4戦
第5回 利府ラリー2025
開催日:2025年9月27~28日
開催地:宮城県利府町周辺
主催:RT-GRAND PROJCT、CMSC仙台、MSR
地区戦に昇格したことに伴って、コースについても大きな変更があり、二つの新ステージが設定された。「浜田Short」1.22kmは高速ターマックステージであるのに対し、ギャラリーステージとなった「葉山」0.5kmはグラベルのショートステージだ。この2本のステージはここ数年、「TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge in 利府」(ラリチャレ利府)でも使用されている。
利府ラリーの名物ステージとして知られた「沢乙」は今回のラリーからは外れたが、お馴染みの「森郷」は1.31kmを設定。基本的に簡易舗装であるが、所々で地のグラベルも顔を出すためミックス路面ともいえるこのステージでは、急勾配のクレストとなる難所“町長の罠”が今季も待ち構える。
2024シーズンまでは利府町役場内に置かれていたヘッドクォーターを、サービスパークに設定されたイオンモール新利府南館駐車場に移して主要施設を集約。当地で午前9時45分から行われたセレモニアルスタートで見送られたクルーたちは、午前中は浜田から葉山、再び浜田の順でアタックし、午後は森郷から葉山、最後に再び森郷を攻めてフィニッシュという設定でラリーに挑んだ。天候は終日、好天となり路面もドライコンディションが保たれた。
BC-1クラス
BC-1クラスは18クルーが参戦し、今回のラリー最大の激戦区となった。地区戦の上位ランカーたちに加えてかつてJAF全日本ラリー選手権にも参戦した、ドライバーの小西重幸選手が学生時代を過ごした“第2の故郷”で開催されるラリーにスポット参戦。また、2022シーズンの利府ラリーを制した岩手県のドライバー、伊藤一也選手も久しぶりに復帰を果たすなど、豪華な顔ぶれとなった。
SS1“浜田short 1”は利府ラリー総合二連覇を狙う、GRヤリスを駆る地元の綾部匡/山口清組がベストタイムを奪取。綾部/山口組はSS1の再走となるSS3“浜田short 2”でも、SS1と寸分違わぬタイムで再びベストをマークするが、SS4“森郷1”の町長の罠近くでアクシデント発生。復帰叶わず、リタイアとなってしまう。
SS4は橋本奨/吉田知宏組がスバル・インプレッサWRX STIを駆りトップであがる。東北シリーズのランキングトップで今回のラリーに臨んだ橋本/吉田組は、2番手以下に3秒近い差をつける快走を見せた。橋本/吉田組はSS4の再走となる最終SS6では、「ミスが多くて2秒ほどロスしました」とタイムダウン。このSSは3番手に終わるが、午前中に稼いだマージンも効いて逃げ切り、利府ラリー挑戦3回目で初優勝を手にした。
今回のラリーで勝敗を大きく左右したと思われたのが、タイヤ選択。3つのステージが全て異なる性格の路面だったことで、どのステージに重きをおいたタイヤ選択をするかでクルーたちは大いに頭を悩ませた。
中にはターマック主体になる午前と、グラベル主体になる午後でタイヤを変えるクルーもいたが、優勝した橋本/吉田組はグラベルの車両セッティングに新品のドライ用ラリータイヤを履いて駆け抜けた。「舗装の浜田は滑って大変だったけど、それなりに楽しく走れました(笑)」と語った橋本選手は「トータルで考えれば、タイヤ戦略は良かったと思います」とラリーを振り返った。
一方、2位争いは最終SSを前に0.4秒の間に3クルーがひしめき、熾烈を極めた。3週間前の2025年JAF東北ダートトライアル選手権 第6戦で4WD-1クラス王者を確定させた菊池恒博選手は、ターマック仕様のGRヤリスにコ・ドライバーの藤原悠希選手と乗り込んで参戦。セッティングが奏功したか、超硬質のグラベル路面もカバーするスーパードライのラリータイヤで走った浜田は2本ともセカンドベストタイムをマークした。
通常のドライ用ラリータイヤに履き替えた午後でさらなるタイムアップを狙ったが、「クルマが思ったより前に進んでくれなくて失敗でした」と、森郷でライバルに遅れをとり、4位に留まった。「浜田の2本目が1本目の走行で土が掻き出されてしまったこともあって、思ったほどはタイムアップできなかったのも痛かったです」と、悔やまれるラリーとなった。
村里尚太郎/御纏喜美子組と、渡辺謙太郎/松尾俊亮組の新旧三菱・ランサーエボリューションによるバトルは、最終SSでベストを奪った村里/御纏組が0.8秒差で渡辺/松尾組を振り切って2位を獲得した。菊池/藤原組同様、午前と午後でタイヤを使い分けたが3位に終わった渡辺/松尾組は、「どっちの路面も今ひとつ。ドライバーも要修行ですね」と渡辺選手が無念のコメントを残した。
中古のドライ用ラリータイヤでスタートし、午後はフロントだけ新品に換えた村里/御纏組は「当初から予定していたタイヤ戦略が、特に午後で当たってくれた感じですが、午前のステージでタイヤの差があまり出なかったのも大きかったと思います」と、村里選手は地区戦ランキングトップの座を守れたことに安堵の表情を見せていた。
BC-2クラス
BC-2クラスは、東北ダートラ第6戦と同じ週に開催された2025年JAF全日本ラリー選手権の第6戦「RALLY HOKKAIDO」のJN3クラスで全日本初優勝を飾った青森県のドライバー、小舘勇貴選手が全日本JN1クラスで活躍するコ・ドライバー、松本優一選手を迎えて参戦してきた。小舘選手はこのラリーで負け知らずで、初開催の2021シーズンから4連勝中。今季はRALLY HOKKAIDOで衝撃のラリーデビューウィンを飾った、V6エンジンを搭載する三菱FTOの利府ラリー初優勝を狙う。
ヤマが減ったドライ用ラリータイヤを履いた小舘/松本組はSS1で順調にベストを奪うが、SS2“葉山1”はグラベルを得意とする、木下聡/佐瀬拓野組が三菱・ミラージュを操って0.8秒差で小舘/松本組を下してベストを獲る。
木下/佐瀬組は2度目の葉山となったSS5でも小舘/松本組を凌ぐが、林道ステージでは小舘/松本組が速く、午後の森郷でもベストを連発。最終的には木下/佐瀬組に9.3秒差をつけて優勝し、小舘選手は利府ラリーの連勝記録を5に伸ばした。SS5でベストをマークした沼尾秀公/沼尾千恵美組がスズキ・スイフトスポーツをドライブし、木下/佐瀬組に4.9秒遅れで3位に入った。
小舘選手は、2026シーズンに向けたセッティングテストも兼ねて参戦したとのことだ。「浜田はタイヤ的にはキツかったけど、森郷はまあまあの走りができました。FTOは以前乗っていたミラージュと比べてもハンドリング、安定感などが向上して明らかに速くなっていますね。特に森郷で取れたデータは、来年の全日本にも活かせると思います」と、確かな手応えがあった様子だった。
三菱対決に敗れて2位となった木下/佐瀬組は、スーパードライタイヤを選択したそうだ。「一番タイヤが合わないはずの葉山でベストが獲れたのは、良く分からないですけど(笑)、森郷もタイヤが滑ってクルマが何度も横向いてキツかったです」と、苦戦のラリーだったことを明かした。それでもランキング2番手をキープし、チャンピオン確定の可能性を残した。
BC-3クラス
BC-3クラスはこのラリー常連でもある関東勢の細谷裕一/蔭山恵組が、NCP13型トヨタ・ヴィッツを操ってSS1からベストを連発してマージンを稼いでラリーを折り返す。午後のSS4“森郷2”でもベストをマークしたが、SS5“葉山2”は関東勢でグラベルを得意とする藤田幸弘/藤田彩子組がマツダ・デミオをドライブして、細谷/蔭山組に1.1秒競り勝って一矢報いる。しかし、細谷/蔭山組は最終SSでベストを獲り返してフィニッシュし、13.4秒差で藤田組を下して優勝を飾った。3位にはスバル・ヴィヴィオをドライブする、石倉英昭/石倉あすか組が入った。
浜田と葉山はラリチャレ利府で走行した経験がある細谷選手は、路面によって2台のヴィッツを使い分けているが、今回はグラベル仕様の“赤ヴィッツ”を持ち込み、ドライ用ラリータイヤを選択した。「前回、葉山を走った際はウェットだったので大変でしたが、今日はドライになってくれたので楽しく走れました」と、利府ラリーでは初となるギャラリーステージを楽しんだ様子だった。
森郷については昨季、ドライブシャフトを破損してリタイヤしただけに「道の状態も昨年と変わらなかったので、あまりクルマに負担をかけないよう、今回は抑え気味で走りました。ただ自分の中では森郷はもうダートの林道というイメージなので、セッティングもタイヤ選択も正解だったと思います」と振り返った。
BC-4クラス
BC-4クラスにはいりえもん/川口達也組が、1週間前に開催された2025年JAF全日本ダートトライアル選手権 第7戦でもいりえもん選手が戦った、CVT搭載の三菱・コルト ラリーアートVersion-Rを持ち込んだ。いりえもん選手によると「ウェット用ラリータイヤを選択したので、舗装路面はなかなかスリリングな体験でした」とのことだったが、SS1で2番手以下に大差をつけるベストをマークする。SS2ではNCP131型ヴィッツCVTを駆る室田仁/鎌田雅樹組が同秒ベストで食らいつくが、浜田に戻ったSS3ではいりえもん/川口組が再びスーパーベストを叩き出してリードを広げる。
いりえもん/川口組はSS5でタイヤトラブルによってタイムを大きく失うも、素早くタイヤ交換を済ませて、SS6は再び断トツのベストをマーク。地区戦と東北シリーズともに二連勝を飾り、王座争いで優位に立った。
「ターボパワーにはやっぱり敵いませんね」と苦戦を強いられた室田/鎌田組は24.2秒の後れをとって2位。浜田では室田/鎌田組を上回る速さを見せたトヨタ・クラウンハイブリッドを操る津田宗一郎/堀秀和組は、葉山での遅れが響いて3位に留まった。
地区戦は10月下旬に開催される第5戦「第44回 八子ヶ峰ラリー2025」を残すのみ。そして、東北シリーズは11月第1週に岩手県で行われる「TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge pre-event in岩手」とともに第5戦「RALLY OF IWATE 2025」を行うことが決定。両シリーズの王座争いの行方もこれらのラリーでの決着となった。
フォト/田代康[Kou TASHIRO] レポート/田代康[Kou TASHIRO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]



