RALLY HOKKAIDOで全日本3クラスがチャンピオン確定!

レポート ラリー JAFWIM

2025年9月12日

全日本ラリー選手権 第6戦「RALLY HOKKAIDO」が、北海道帯広市を拠点に9月5〜7日の日程で開催された。第5戦のカムイから約1カ月のインターバルを経て開催されたこの第6戦は、国際格式で行われるインターナショナルクラスが設けられるとともに、北海道で開催されるスノー&グラベルラリーを転戦する独自シリーズとして人気を集めているXCRスプリントカップ北海道が併催。全日本と合わせて総勢90台が、エントリーリストに名を連ねた。

2025年FIA International Rally
2025年JAF全日本ラリー選手権 第6戦
「RALLY HOKKAIDO」

開催日:2025年9月5~7日
開催地:北海道帯広市、音更町、池田町、足寄町、陸別町周辺
主催:AG.MSC 北海道

 ラリーは、初日に8SS(89.36km)、2日目に4SS(13.24km)の計12SS(SS総距離102.60km)が設定され、初日のSS1からSS5までの51.73kmはサービスなしで一気に走り切らなくてはならない。アベレージが高い上に過酷なステージが連続する今回のラリー北海道は、ラリーが始まるとともにいきなり大きなヤマ場を迎えることとなる。

5日には帯広駅前の広場と平原通りでラリーショーが行われ、会場には多くのラリーファンが詰めかけた。
関係各社と選手らの協力により、帯広市立若葉小学校で恒例の特別授業が開催された。生徒らは、迫力のデモランを見たりラリーカーのシートに座ったりしてラリーへの関心を深めていた。
ラリーショーが行われた会場でセレモニアルスタートが実施された。見送るファンにクルーが手を振り返していた。

JN-1クラス

 JN-1クラスは、SS1のスタートから約2km地点で4速を失ったヘイキ・コバライネン/北川紗衣組(トヨタ・GRヤリス・ラリー2)が、SS1を走り終えた時点でギヤボックスのトラブルからレグ離脱。さらに、鎌田卓麻/松本優一組(シュコダ・ファビアR5)がSS3でコースオフしてレグ離脱を余儀なくされるという波乱の展開が続く中、SS3でベストタイムをマークした新井大輝/立久井大輝組(シュコダ・ファビアR5)がトップに浮上。4.8秒差でカムイを制した奴田原文雄/東駿吾組(トヨタ・GRヤリス・ラリー2)が2番手、SS1を制した勝田範彦/保井隆宏組(トヨタ・GRヤリス・ラリー2)がトップから18.2秒差で追いかける展開となった。

 SS4からSS8まで新井/立久井組が連続ベスト、奴田原/東組が僅差のセカンドベストで追従するという息詰まる攻防が展開される中、サービス直後のSS6で3番手を走行していた勝田/保井組がスタートから約19km地点でコースアウト。ここでリタイアを余儀なくされた。

 また、勝田/保井組の離脱により3番手にポジションを上げた新井敏弘/小坂典嵩組(スバル・WRX VBH)も、SS7でエンジントラブルが発生してリタイア。3番手には福永修/齊田美早子組(シュコダ・ファビアRSラリー2)が浮上してきた。

 ウェットコンディションに見舞われたラリー2日目は、上位3台がしっかりとポジションをキープしてフィニッシュ。新井/立久井組が今季3勝目を獲得した。2位に入賞した奴田原/東組は、シリーズランキングでは勝田/保井組を3.5点逆転してトップに浮上、3位の福永/齊田組は今シーズン初表彰台となった。

JN-1クラス優勝は新井大輝/立久井大輝組(YAHAGI シュコダ ファビア R5)。
2位は奴田原文雄/東駿吾組(ADVANKTMSGRヤリスRally2)、3位は福永修/齊田美早子組(スミロン☆焼肉ふじ☆CTE555ファビア)。
JN-1クラス表彰の各選手。

JN-2クラス

 JN-2クラスは、三菱・ランサーエボリューションIXを投入したシリーズランキングトップの山田啓介/藤井俊樹組がターボパイプのトラブルによりSS3でレグ離脱。そして、第2戦を制した大倉聡/豊田耕司組(トヨタ・GRヤリスDAT)もSS3でパンクを喫し5分をロスし、優勝争いから早々と脱落するという波乱が続く中、モリゾウチャレンジカップ(MCC)にエントリーしている若手の大竹直生/橋本美咲組(トヨタ・GRヤリス)と、ベテランの松岡孝典/坂口慎一組(スバル・インプレッサWRX STI)が好勝負を展開。SS2を終え大竹/橋本組が松岡/坂口組を7.8秒リードするものの、ロングステージのSS3でベストを奪った松岡/坂口組が一気に逆転し、大竹選手に8.9秒差をつけるトップに立った。だが、その後は大竹/橋本組が逆襲。SS4でこの日2回目のベスト、SS5ではベストの内藤学武/大高徹也組(トヨタ・GRヤリス)に1.2秒差のセカンドベストを奪った大竹/橋本組は、このSSをトップから7.9秒差のクラス12番手と大きく遅れた松岡/坂口組を再逆転することに成功し1.0秒差で再びトップに返り咲いた。

 再々逆転を狙う松岡/坂口組だが、続くSS6のスタートから約9km地点で痛恨のコースオフ。車両のダメージは少なかったものの、ここでレグ離脱を余儀なくされた。

 松岡/坂口組の脱落により、2番手に浮上した内藤/大高組に40秒以上のマージンを築いた大竹/橋本組は、フィニッシュまでしっかりとトップの座をキープ。前戦のカムイに続き、グラベルラウンドで2連勝を飾るとともに、シリーズランキングでもトップに浮上した。

 最終SSまで僅差の勝負が続いた2位争いは、内藤/大高組が2位に入賞。3位には、MCCの長尾綱也/安藤裕一組(トヨタ・GRヤリス)を振り切った石川昌平/大倉瞳組(トヨタ・GRヤリス)がそれぞれ入賞した。

JN-2クラス優勝は大竹直生/橋本美咲組(GR YARIS GR4 RALLY)。
2位は内藤学武/大高徹也組(YH TEIN Moty's GRヤリス)、3位は石川昌平/大倉瞳組(ARTAオートバックスGRヤリス)。
JN-2クラス表彰の各選手。

TOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup

若手育成を目的に、JN-2クラスにシリーズが組み込まれているTOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup(MCC)は、JN-2クラス同様に大竹/橋本組が優勝した。これにより、大竹選手が2戦を残してMCCの今季暫定チャンピオンとなった。

JN-3クラス

 JN-3クラスは、3年連続のチャンピオン獲得に王手をかけている山本悠太/立久井和子組(トヨタ・GR86)がSS1とSS2で順調にベストを重ねる。ロングステージのSS3ではトラブルのためスロー走行していた前走車6台に追いついてしまうアクシデントがあり1分以上をロスしたが、救済タイムが与えられトップの座を堅守。終わってみれば、特設ステージのSS11以外12SS中11SSでベストを奪う速さをみせ、今季5勝目とともに3年連続のシリーズチャンピオンが確定した。

 SS6の約18km地点で3番手を走行していた曽根崇仁/小川由起組(トヨタ・GR86)がコースオフしてリタイア。また、2番手を走行していた上原淳/漆戸あゆみ組(スバル・BRZ)が、エンジントラブルによりSS7ゴール後にリタイアとなった。「全体的に悪かった方が多く大負けしましたが、最後まで走り切れたのは良かった」という加納武彦/島津雅彦組(スバル・BRZ)が2位となった。

JN-3クラス優勝は山本悠太/立久井和子組(SammyK-oneルブロスYHGR86)。
JN-3クラスの表彰式。左から2位の加納武彦/島津雅彦組、1位の山本/立久井組。
JN-3クラスのドライバー部門チャンピオンを山本選手が、コ・ドライバー部門チャンピオンを立久井選手が確定させた。

JN-4クラス

 ベテランの高橋悟志/箕作裕子組(スズキ・スイフトスポーツ)と、若手の藤原友貴/宮本大輝組(スズキ・スイフトスポーツ)のタイトル争いが注目となるJN-4クラスは、「このラリーに出場するために、2年前から準備していた」という小舘優貴/伴英憲組(三菱・FTO)が、SS1からSS4まで4連続ベストを叩き出し、2番手以降を一気に引き離す。2番手につける鮫島大湖/船木佐知子組(スズキ・スイフトスポーツ)は、SS5とSS6でベストを奪い小舘/伴組とのタイム差を縮めてくるものの、SS7とSS8は再び小舘/伴組が連取し、鮫島/船木組との差を広げる。

 ラリー2日目もトップの座をしっかりとキープした小舘/伴組は、「昨日の後半から前兆があったのですが、2日目はデフが壊れた状態でだましだまし走っていました。満身創痍ですが、最後まで走り切れて良かったです。仲間の協力があったからこそ、ここまで来れたと思います」と、念願の全日本初優勝。2位には、ラリー終盤まで粘りの走りを見せた鮫島/船木組が入賞した。

 また、終盤のSS11まで藤原/宮本組が3番手につけていたが、2番手の鮫島/船木組と4.8秒差で迎えた最終ステージのSS12で、フィニッシュまであと200mの地点でまさかのコースアウト。ラリー序盤からエンジントラブルに苦しめられていた高橋/箕作組が3位に入賞。藤原/宮本組がノーポイントで終わったことにより、トラブルに見舞われながらも「諦めない、腐らない、逃げない」と最後まで執念のラリーを戦った高橋/箕作組が、10年ぶりとなるシリーズチャンピオン確定となった。

JN-4クラス優勝は小舘優貴/伴英憲組(BMKsport FTO)。
2位は鮫島大湖/船木佐知子組(el・DL・スピードハート スイフト)、3位は高橋悟志/箕作裕子組(ミツバWMDLマジカル冷機スイフト)。
JN-4クラス表彰の各選手。
JN-4クラスのドライバー部門チャンピオンを高橋選手が、コ・ドライバー部門チャンピオンを箕作選手が確定させた。

JN-5クラス

 JN-5クラスは、連覇を狙う松倉拓郎/山田真記子組(トヨタ・ヤリス)が、ラリー序盤からライバル勢を一蹴。SS1では「ブレーキが温まっていなくて、スタートから1km地点でコースオフしかけ、もう終わったと思いました」と言いながらも結果的にベストを奪い、その後もSS7まで7連続ベストを獲得。

 ラリー2日目も、4SS中3本のSSでベストを奪う快走で、第4戦モントレーから続く3連勝を達成。逆転チャンピオンに望みを繋いだ。「新しいショックでセッティングしながらのラリーでした。乗り心地は良かったんですけど、タイムを出すまでに少し時間がかかりました」という小川剛/山本祐也組(トヨタ・ヤリス)が2位。3位には「SSの距離は、昔のラリー北海道のようにもっと長い方がいいね。長ければ長いほどチャンスが増えるので(笑)」というベテランの三苫和義/遠藤彰組(ホンダ・フィット)が入った。

JN-5クラス優勝は松倉拓郎/山田真記子組(DL☆Gセキネン鹿ソニックセラメタヤリス)
2位は小川剛/山本祐也組(itzzノアBRIDE DL ANヤリス)、3位は三苫和義/遠藤彰組(ISMF奥原商会DLWMエナジィフィット)。
JN-5クラス表彰の各選手。

JN-Xクラス

 JN-Xクラスは、チャンピオンに王手をかけている天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・アクア)が、前走車のアクシデントによりノーショナルタイムが与えられたSS12以外、すべてのSSでベストタイムをマークするという快走で、今季負け知らずの6連勝。天野選手が12年連続17回目、井上選手が16年連続18回目のチャンピオンを獲得する偉業を達成した。

 「ハイブリッドのマニュアル車にしたことが成果に出たと思います」というベテランの中西昌人/山村浩三組(ホンダ・CR-Z)が2位。3位には「中西さんはハイスピードが速いので、さすがでした。グラベルでは天野選手に敵わないですね。ターマックで勝負できても、RALLY HOKKAIDOを制覇しないと、本物のラリーストじゃない(笑)」という大ベテランの清水和夫/山本磨美組(トヨタ・ヤリス)が入賞した。

JN-Xクラス優勝は天野智之/井上裕紀子組(TRT・DLアクアGR SPORT)。
2位は中西昌人/山村浩三組(YH・WM・OR・マクゼス・CR-Z)、3位は清水和夫/山本磨美組(SYE YARIS HEV)。
JN-Xクラス表彰の各選手。
JN-Xクラスのドライバー部門チャンピオンを天野選手が、コ・ドライバー部門チャンピオンを井上選手が確定させた。

 国際クラスは2位以下に2分以上の差をつけた吉谷久俊選手/髙田新二選手(三菱・ランサーエボリューションIX)が、RALLY HOKKAIDO3連覇を達成。

国際クラス優勝は吉谷久俊/高田新二組(ランサーエボリューション IX)。
国際クラスの表彰式。左から2位の高橋冬彦/中村光雄組、1位の吉谷/高田組、3位の伊藤暁/藪本啓介組。

PHOTO/CINQ、遠藤樹弥[Tatsuya ENDOU]、大野洋介[Yousuke OHNO]、小竹充[Mitsuru KOTAKE]、中島正義[Tadayoshi NAKAJIMA]、山口貴利[Takatoshi YAMAGUCHI] REPORT/CINQ、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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