全日本ラリー最終戦でヘイキ・コバライネン/北川紗衣組とJN-2山田啓介/藤井俊樹組が逆転で戴冠確定!
2025年10月24日
今シーズンの全日本ラリー選手権最終戦となる第8戦「第52回 M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ 2025 supported by カヤバ」が、10月17~19日に岐阜県高山市郊外の高山市位山交流広場を拠点に開催された。
2025年JAF全日本ラリー選手権 第8戦「第52回 M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ 2025 supported by カヤバ」
開催日:2025年10月17~19日
開催地:岐阜県高山市周辺
主催:M.C.S.C.、MSCC
前戦の久万高原ラリーから2週間という短いインターバルで迎えた最終戦には、選手権クラスに62台、オープンクラスに18台の計80台のクルーがエントリーリストに名を連ねた。
ラリーは、初日にSS1/4「牛牧上り(4.35km)」、SS2/5「あたがす(9.54km)」、SS3/6「アルコピア-無数河(6.08km)」の3ステージをリピートする6SS/39.94km、2日目にSS7/10「青屋上り(8.72km)」、SS8/11「駄吉上り(6.24km)」、SS9/12「無数河-アルコピア(6.08km)」の3ステージを、サービスを挟んでリピートする6SS/42.08kmの計12SS/82.02kmを設定。ステージの一部には濡れた落ち葉がコース上に散乱する区間や、アスファルトの一部が剥がれたり路面に穴が空いたりしている区間があるなど、不安定なコンディションでの戦いとなった。だが、ショートコーナーがつづら折りのように連続するステージが多いことから、例年タイム差がつきにくい傾向にあり、今年も各クラスの上位陣たちは0.1秒を競うバトルが展開された。
JN-1クラス
シリーズランキングトップの勝田範彦/保井隆宏組(トヨタ・GRヤリス・ラリー2)を筆頭に、ヘイキ・コバライネン/北川紗衣組(トヨタ・GRヤリス・ラリー2)、奴田原文雄/東駿吾組(トヨタ・GRヤリス・ラリー2)、新井大輝/立久井大輝組(シュコダ・ファビアR5)が、有効得点で10.4点の中にひしめき合うJN-1クラス。
先手を奪ったのは、新型コロナの影響で開催中止となった2020年大会を除き、2019年から昨年まで同ラリーを5連覇しているコバライネン/北川組で、SS1からSS3まで3連続ベストをマークする。このコバライネン/北川組に、新井/立久井組が追従。SS1では2.3秒差、SS2は1.6秒差、SS3では0.9秒差のセカンドベストで食らいつき、4.8秒の僅差でコバライネン/北川組を追いかける。
だが、サービス後のSS4で逆転を狙ってフルアタックをかけていた新井/立久井組がスタートから約1km地点で足回りにダメージを負いレグ離脱。チャンピオン争いから脱落することになった。
新井/立久井組のレグ離脱により、2番手には、このステージでコバライネン/北川組に3.6秒差のセカンドベストをマークした勝田/保井組が浮上してくるが、コバライネン/北川組との差はSS4を終えた時点で16.6秒。コバライネン/北川組は、この後も福永修/齊田美早子組(シュコダ・ファビアRSラリー2)がベストを奪ったSS6以外、6ステージ中5本のSSでベストを奪い、勝田/保井組との差を24.9秒差に広げて初日を終えた。
ラリー2日目は、SS7と8で勝田/保井組がベストを奪い、コバライネン/北川組との差を18.6秒差に縮めるが、コバライネン/北川組もSS9と12でベストを奪い応酬。ラリーのスタート前に「この週末のターゲットはシンプル。このラリーに勝てばいい、それが唯一の目標」と語っていたコバライネン/北川組が、最終的には勝田/保井組との差を30.3秒差に広げ今季2勝目を獲得。有効得点でも勝田/保井組を抜きトップに浮上し、JN-1クラスでは2年ぶり3回目となるシリーズチャンピオンを確定させた。
2位に勝田/保井組が入賞、初日を終えて1.3秒の間に鎌田卓麻/松本優一組(シュコダ・ファビアR5)と奴田原/東組、福永/齊田組がひしめき合うという大激戦となった3位争いは、2日目オープニングとなるSS7で鎌田/松本組がサスペンションを破損し、ステージフィニッシュ後にリタイア。最終SSとなるSS12では3速ギヤを失いながらも、福永/齊田組を振り切った奴田原/東組が3位に入賞となった。
JN-2クラス
SS1から0.1秒を競う僅差のバトルが展開されたJN-2クラスは、SS3を終えて2番手の小泉敏志/村山朋香組(トヨタ・GRヤリス)に2.2秒差のトップに立っていた三枝聖弥/木村裕介組(トヨタ・GRヤリス)がSS4のスタート直後にコースオフ。三枝/木村組の脱落によりトップに立った小泉/村山組もSS5で「フィーリング的にも抑える必要があったので、抑えました。雨の影響もかなりありました」とタイムが伸びず、4番手まで順位を下げる。このSS5でトップに立ったのが、SS1からSS3のセクション1では、エンジンの制御系のトラブルからタイムが伸びなかった山田啓介/藤井俊樹組(トヨタ・GRヤリス)だ。「サービスで午前中のトラブルを修正してもらって、かなり走りやすくなりました。貝原選手がトップになるとタイトルを獲られてしまうので、少し安全マージンを取りつつも、午前中よりペースを上げていきます」と、貝原聖也/西﨑佳代子組(トヨタ・GRヤリス)に3.1秒差のトップで初日を折り返す。
一方、シリーズランキングトップの大竹直生/橋本美咲組(トヨタ・GRヤリス)は、SS2で右リヤを壁に当ててしまい、タイヤのサイドウォールをカット。このタイヤトラブルにより、このステージだけで1分以上のタイムをロスし、大きく順位を落としてしまう。
ラリー2日目、雨と霧に覆われたSS8で山田/藤井組がベストを奪い貝原/西﨑組とのタイム差を広げる一方、貝原/西﨑組はSS8の序盤で左リヤとフロントにダメージを負いスロー走行。このステージだけで3分以上をロスし、優勝争いから離脱することとなった。
SS8を終えて、2番手に浮上してきた大倉聡/豊田耕司組(トヨタ・GRヤリスDAT)に40秒以上の差をつけていた山田/藤井組は、その後はマージンを活かしてペースをコントロール、トップの座を守ったままフィニッシュし、今季4勝目。シリーズポイントでも今回8位に終わった大竹/橋本組を逆転し、念願のJN-2クラスチャンピオンを獲得した。「雨のステージは危なくて踏み切れませんでしたね。後半スタートになればなるほど、リスクが大きくなるステージでした」という大倉/豊田組が入賞。ラリー終盤まで競り合った3位争いは、SS10で吉原將大/石田裕一組(スバル・WRX STI)を逆転した内藤学武/大高徹也組(トヨタ・GRヤリス)が入賞した。
TOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup
トヨタ・GRヤリスのワンメイクカップで、若手ドライバーと女性ドライバーが出場するTOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup(MCC)は、SS1で今シーズンのMCCチャンピオン・大竹/橋本組がベストを奪うものの、SS2で右リヤをヒットし、タイヤがリム落ちして大きく順位を落とす。このSS2でベストを奪った最上佳樹/小藤桂一組は、その後も4本のステージでベストを重ね、MCC初優勝を飾った。2位には、ウェット&荒れた路面となったレグ2で、6SS中5本のSSでベストを奪い、一時は1分近くあった2番手との差を大逆転した兼松由奈/山下秀組が入賞。3位には、SS9で2番手に浮上したものの、猛烈な勢いで追い上げてくる兼松/山下組に逆転を許した大竹/橋本組が入賞した。
JN-3クラス
JN-3クラスは、SS1で鈴木尚/島津雅彦組(スバル・BRZ)がベスト、SS2で上原淳/漆戸あゆみ組(スバル・BRZ)がベスト、SS3で山口清司/竹原静香組(トヨタ・GR86)がベスト、SS4で窪啓嗣/藤口裕介組(トヨタ・GR86)がベスト、SS5で上原/漆戸組がこの日2回目のベストという混戦模様となった。「たぶん、他の選手はドライタイヤだったと思うんですけど、うちのチームだけウェットで行きました。SS6の直前に雨が降ってきて、それが最後に当たったと思います」という、すでに今季のチャンピオンを確定させている山本悠太/立久井和子組(トヨタ・GR86)がSS6でベストを奪い、レグ1をトップで折り返す。
レグ2もレグ1同様に各ステージで僅差の勝負が展開される中、山本/立久井組は2本のステージでベストを奪い2番手以降とのタイム差を拡大。今季6勝目を挙げ、タイトルに華を添えた。2位には、2日目のウェット路面で順位を挙げた窪/藤口組が全日本表彰台を獲得。初日を5番手で折り返した曽根崇仁/小川由起組(トヨタ・GR86)が、2日目にポジションを上げて3位になった。
JN-4クラス
JN-4クラスは、第6戦の3位入賞でチャンピオンを確定させた高橋悟志/箕作裕子組(スズキ・スイフトスポーツ)と、「シリーズ2位のチャンスがあるので」と出場した鮫島大湖/船木佐知子組(スズキ・スイフトスポーツ)がSS1からベストを奪い合う展開となったが、SS5で鮫島/船木組がコースアウト。「レグ1はウェットタイヤをスペアで積んで行ったんですけど、JN-1のタイムを見て『これはウェットだ、履き替えなくては!』と思った時にはスタートまで10分を切っていたので、交換するのを諦めました」という高橋/箕作組が、ラリー2日目は6ステージすべてでベストを奪い、今季3勝目を獲得した。
2位には、「新たにラリー車を作ってきました。ドライタイヤかウェットタイヤか、難しいラリーでしたね」という須藤浩志/新井正和組(スズキ・スイフトスポーツ)が入賞。3位には、レグ1の序盤はターボの過給がかからないトラブルに悩まされながらも、その後のサービスで修復し、最後までしっかりと走り切った鶴岡雄次/山岸典将組(スズキ・スイフトスポーツ)が入った。
JN-5クラス
JN-5クラスでは、SS4まで阪口知洋/野口智恵美組(日産・マーチNISMO S)がトップを快走するが、ウェット路面となったSS5で小川剛/山本祐也組(トヨタ・ヤリス)が逆転。ラリー2日目は、阪口/野口組が3ステージでベストを叩き出し、小川/山本組とのタイム差を縮めてくるが、「前戦の久万高原でクルマをひっくり返してしまったので、今回は借り物のクルマで出場しました。無理して貸していただいたので、無傷で返さなければなりません。ウェットタイヤを選択したのですが、安心感もあって楽しかったです。荒れた路面も安全に走れました」という小川/山本組が逃げ切り、開幕戦以来となる今季2勝目を飾った。
2位には、「結果的には、濡れた路面でスライドコントロールの上手い選手に持って行かれたという感じですが、自分自身ではドライタイヤで滑る路面を攻めるという貴重な経験を積むことができました」という阪口/野口組が入賞。「初日の午後はドライタイヤの方が良かったかなという場面もありましたが、ロスは最小限に抑えることができたと思います」という島根剛/粕川凌組(トヨタ・ヤリス)が、2戦連続となる3位表彰台を獲得した。
JN-Xクラス
JN-Xクラスは、第7戦まで7連勝を挙げている天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・RAV4 PHEV)が、初日の6SSすべてでベストをマーク。「今年、いろいろとセットアップを試してきて、この最終戦が集大成ですね。ドライ路面は悪くないですが、ウェットになるとタイヤのグリップが落ちて大柄なクルマなので厳しくなりますが、明日のステージ、特に駄吉は下りなので相当ペースを落とすと思います」という天野/井上組は、その言葉どおりにしっかりとペースをコントロール。それでも2番手以降に2分以上の差をつけ、JN-5クラスの優勝タイムを上回るタイムで今シーズン全勝となる8勝目を獲得した。
2位には、「自分なりには速くなってきているんだけど、それでも天野選手には追いつけない。今回のラリーはドライとウェットのタイヤの特性も見えてきたし、しっかり走れるようになってきたので、今までの中で一番良い走りができていると思う」という清水和夫/山本磨美組(トヨタ・ヤリスHEV)が入賞。3位には、「SS1の1.5kmくらいの下りでクラッシュしかけてしまい、SS3ではギャラリーエリアから森に入っていくところでコースアウトしかけ、気持ちが怖じけついてしまい、まったくダメなラリーでした」と反省する海老原孝敬/蔭山恵組(ホンダ・CR-Z)が入賞した。
PHOTO/CINQ、大野洋介[Yousuke OHNO]、小竹充[Mitsuru KOTAKE]、中島正義[Tadayoshi NAKAJIMA] REPORT/CINQ、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]



