利府ラリーがJMRC東北ラリーシリーズの最終戦として今年も開催!
2024年11月20日

全4戦が組まれた今年のJMRC東北ラリーシリーズのラストを飾る一戦、「利府ラリー2024」が11月9~10日に宮城県利府町を拠点として行われた。
JMRC東北ラリーシリーズ 第4戦
利府ラリー2024
開催日: 2024年11月9~10日
開催場所: 宮城県利府町周辺
主催: RT-GRAND PROJECT、CMSC仙台
約1か月半前に「TOYOTA GAZOO Racing Rally Challenge in 利府」が開催されたばかりの利府町は、今季2度目となるラリーのホームタウンを担当。昨年に続いて決勝日の10日のHQとサービス会場はイオンモール新利府南館の駐車場に置かれた。ここで行われたセレモニアルスタートでは、同モールの開館時間前にも関わらず、多くのギャラリーが集まり、戦いの場に臨む選手達のラリーカーに声援を送った。
利府町ではこのほどスポーツ振興課を新設。利府ラリーが行われた週末は、「利府スポーツ流鏑馬大会」も開催されたため、利府町役場前の掲示板では、「利府スポーツDAY 11/10」として、ふたつのイベントを告知するなどPRが盛んに行われたことも、ラリー人気の盛り上げに一役買ったと思われる。


今年の利府ラリーも、「森郷」、「沢乙」という、このラリーが始まって以来の名物ステージがSSとして設定された。森郷1.31kmは、TGRラリーチャレンジでも使われた舗装&グラベルのミックスステージ。沢乙0.91kmはフルグラベルのステージで、両SSとも基本的には上りのステージとなる。
グラベルの沢乙はもちろんだが、森郷も舗装が雑な箇所があって滑りやすく、道幅が狭いこともあって、距離が短いとは言え、最後まで高い集中力が要求されるステージだ。例年、天候には恵まれることの多いこのラリーだが、今回もレッキが行われた土曜も含め、最後まで晴天がキープされた。
なおラリー開催の直前に、来年のJAF地方ラリー選手権のカレンダーが公示され、利府ラリーはJAF東日本ラリー選手権の一戦へと格上げされることが決まった。来季はスケールアップも予想される利府ラリーだが、各クルーとも例年同様の気合十分の走りをふたつの名物ステージで今年も競い合う形となった。
B-1クラス
全くの同点でシリーズトップに並ぶ2台の対決に注目が集まったB-1クラスは、SS1沢乙でその一台、橋本奨/吉田知宏組のスバル・インプレッサが、ライバルの渡辺謙太郎/箕作裕子組の三菱・ランサーをきっちり1秒差で下すベストタイムをマークして好スタートを切る。
しかしSS2森郷では、9月のTGRラリーチャレンジin利府で十数年ぶりにラリー復活を遂げた、地元仙台の綾部匡/山口清組のトヨタ・GRヤリスが、トップを争う2台を尻目にスーパーベストをマークして一気に首位に躍り出る。綾部/山口組は続くSS3森郷も連取。サービスを挟んだ後のSS4森郷も獲って今大会の森郷SSを完全制覇。そのまま逃げ切って、初参加の利府ラリーで見事に優勝を果たした。
「森郷は1本目のSS2でアンダーを出しまくったので、ダメだったなと思ったら、ベストが獲れました(笑) 」とは綾部選手。「でも2本目はいい感じで走れたと思ったら2秒もタイムダウンしてしまって。3本目は滑らせる所はうまく走れて、滑る所は調整しながら走ったらタイムは上がったんですが、SS2のタイムは超えられなかった。TGRラリチャレの時とは路面も違っていたこともありますが、森郷は最後まで正解がつかめなかったですね」と振り返った。
「沢乙はギア比が合わなくて1速か2速で迷う場面がありました。今回はグラベル用の足回りを入れてきたんですが、走りもセッティングも、まだまだ詰め所はいっぱいあるなぁという感じですね。来年はできればグラベルのラリーを中心に参戦して、仕上げていきたいと思います」と綾部選手は今後に向けた抱負を語った。
注目のチャンピオン争いは、渡辺/箕作組がSS2、SS3で橋本/吉田組を抑え込んで逆転。1.1秒のリードで最終のSS5沢乙に臨んだが、ここで橋本/吉田組が、前走のSS1から0.7秒タイムを詰めるベストタイムを奪取。綾部/山口組に続くサードベストに終わった渡辺/箕作組を最後に0.3秒上回って再逆転。劇的な形でシリーズチャンピオンを決めた。
「サービスでタイヤをウェットからドライに変えたことが良かった。SS4は渡辺さんに負けましが、0.3秒差まで詰められたので、それが最後の沢乙につながったと思います」と橋本選手。「ラリーを始めて苦節十年で、ようやくタイトルが獲れてうれしい限りです。支えてくれたコ・ドライバーの吉田選手にも感謝したいです」と、感慨深げにラリーを振り返っていた。



B-2クラス
B-2クラスは、このラリーが初開催された2021年から3年連続で優勝を飾っている青森の小館優貴選手が、今年は伴英憲選手とのコンビで参戦。SS1から後続を大きく引き離すタイムをマークしてラリーをリードする。
第2戦で優勝した同じチームBMKの吉田健人/林浩次組は、得意とするグラベルの沢乙で3.0秒差の2番手につけるが、SSが森郷に移って以降も、“師匠”の小館/伴組を脅かすことはできず、逆にシリーズタイトルを競い合う佐々木松紀/遠藤誠組、沼尾秀公/沼尾千恵美組との三つ巴の2位争いに引き込まれる形となる。
小館/伴組は、森郷でも圧倒的なベストを連発してリードを広げ、最終の沢乙のSS5もベストで締めくくってゴールして4連覇を達成。「4年も走っているとコースのことは大体分かってきて、タイムの詰め所もつかめて来るので、今日はノートにその場所を入れて、そこでコンマ何秒かでも詰める走りをしました。皆が行けないんじゃないか、っていう所を頑張って行ってみるとポンとタイムが上がる、そんな感じの林道だったと思います」と小館選手はラリーを振り返った。
注目の2位争いは、最終SSを前に3台が0.7秒の間にひしめく大接戦となったが、このSS5をセカンドベストで上がった吉田/林組が最後に抜け出して、チームBMKが1-2フィニッシュでラリーを終えた。一方、こちらもチーム内バトルとなったシリーズチャンピオン争いは、沼尾/沼尾組が0.3秒という僅差で佐々木/遠藤組を下して3位を確保。この順位が効いてシリーズポイントでは2ポイント差で佐々木/遠藤組を上回り、タイトルを獲得している。



B-3クラス
B-3クラスも、TGRラリーチャレンジin利府に参戦し、優勝を飾った栃木の細谷裕一選手が有川美知代選手とともにエントリー。小館選手同様、このラリー負けなしの3連覇を続けている岩手の石倉英昭ヴィヴィオとの対決が注目された。
両者は利府ラリー1年目の2021年に対決しているが、この時は沢乙のマッディな路面に苦戦した細谷ヴィッツを、4WDの強みを生かした石倉ヴィヴィオが抑え込んだ。しかし今回、先行したのは細谷/有川組。沢乙のSS1で0.2秒差ながら、石倉/石倉あすか組をしのいで首位に立つと、森郷のSS2、SS3では石倉/石倉組をともに約3秒も突き離してリードを広げる。
しかし好事魔多し。細谷/有川組はSS4でミッショントラブルが発生してゴールできずリタイヤ。利府ラリー初制覇の夢は潰えてしまう。一方、代わって首位に立った石倉/石倉組はSS4、SS5と連取してゴール。今回も利府マイスターの座を守った。
「今年はまた例年と違って滑りやすくて難しい路面でしたが、4連覇できて良かったです」と安堵の表情で振り返った石倉選手は、「コ・ドラもラリーデビューだった前戦の羽州ラリーはSSの距離が長くて苦労したようですが、今回はしっかりノートを読んでくれました」と愛娘のあすか選手を労った。そのあすか選手も、表彰式では、「父の4連覇がかかっていたのでプレッシャーが凄かったですけど、何とか優勝できて良かったです」と、ほっとした表情を見せていた。



B-4クラス
B-4クラスも、このラリー3連覇中の室田仁選手がトヨタ・ヴィッツのCVT車で平野隆選手とともにエントリーしてきた。このクラスは、前戦の羽州ラリーではトヨタ・クラウンを持ち込んだ津田宗一郎がベストタイムを1本奪取するなど、室田ヴィッツに迫り、2週間前に行われた長野の八子が峰ラリーでは遂に室田ヴィッツを下して優勝したため、2台のバトルが期待されたが、残念ながら津田クラウンは今回、不参加。ともにシリーズを追っている西村章/藤田美登里組のスズキ・アルトとバトルになった。
しかしラリーが始まると、今季足回りを強化した室田ヴィッツは安定した速さを披露。5本のSSすべてを制して優勝し、シリーズを4戦全勝で締めくくった。小館、石倉両選手とともに利府ラリー連勝記録も更新した室田選手は、「沢乙は道幅が広くなっただけでなく、路面も整備されたので、今回は、きれいに掘れてくれましたね。お陰でハンドルでクルマを自由にコントロールできる走りができたと思います」と名物ステージのコンディションを称えていた。



なお今回の一戦では、9月のRALLY HOKKAIDOと併催されたXCRスプリントカップ北海道でクラス優勝を飾ったスズキ・ジムニーの奈良裕/花田圭一組が青森から参戦。クロスカントリーカーということで賞典外の扱いとなったが、総合16位に入るタイムで完走を果たした。
「RALLY HOKKAIDOの時からタイヤを変えてみるとどういう動きをするんだろう、ということを知りたくて今日は参戦しました。なかなか最初は乗り切れなかったですけど、SSを重ねるごとに特性はつかめるようになったと思います。でも、ある意味、RALLY HOKKAIDOより大変でした(笑)」と奈良選手。
「ずっとタイムトライアル系の競技を続けてきましたが、ラリーではその経験を生かすことができると思うので、来年は参戦回数を増やしてチャレンジしていきたいですね」と、高速ラリーとはまた違ったスプリントラリーの醍醐味を楽しんだ様子だった。
JMRC東北ラリーシリーズでは、2025年以降、奈良/花田組ジムニーのようなXCRスプリントカップに参戦できる車両を対象としたクラスを設ける方向で検討するとのこと。さらなる盛り上がりが期待できそうだ。

フォト/田代康 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部