東北・宮城でラリーが久々復活!利府ラリーが初開催
2021年12月16日

11月21日に宮城県利府町で、県内では35年振りのJAF公認ラリーとなる「利府ラリー」が開催された。
JMRC東北ラリーシリーズ第6戦
利府ラリー2021
開催日:2021年11月21日
開催場所:宮城
主催:RT-GRAND PROJECT、CMSC仙台
今年のJMRC東北ラリーシリーズは、1月24日、秋田で開催するスノーラリーで開幕する全6戦のカレンダーが予定されていたが、コロナ禍により第5戦まですべて中止が相次ぐという残念な一年となってしまった。最終戦として予定されていた今回の利府ラリーも、当初は10月31日に開催される予定だったが、“第5波”の動きを踏まえて約3週間後に延期された。しかし、こちらは無事に開催され、満を持していたラリースト達が東北のほか関東からも駆け付け、賑やかな一戦となった。
利府町は、東北最大の都市、仙台市の東に位置する町で、2002年にはFIFAワールドカップ、今夏には東京五輪のサッカー会場地となるなど、「スポーツの町」として知られている。モータースポーツの開催にも積極的で、すでにオートテストが2018年から2年連続で開催されてきた実績を持つ。ラリーのホームタウンを担うのは今回が初となるが、ヘッドクォーターやスタート&ゴールそしてサービスの会場として、利府町役場を提供するなど、今回のラリーの開催を全面的にバックアップした。
宮城県内でJAF公認のラリーが開催されるのは実に35年振りとなる。山形県村山市に拠点を置くラリーチームグランドプロジェクト(RT-GRAND PROJECT)とコルトモータースポーツクラブ仙台(CMSC仙台)が主催を担当し、東北各地のJAF登録クラブのチーム員達もラリーの運営に協力した。RT-GRAND PROJECTは35年前に、山形と宮城をフィールドとして開催された「花笠ラリー」を主催したクラブ。結果的にはこれが宮城で開催された最後のラリーとなったわけだが、今回も東北ラリー界ではエポックメーキングなラリーとなった一戦を主催するという大役を担った。



今回のラリーでは2本の林道がSSとして設定された。0.91kmの「沢乙」はオールグラベルで、途中から普段はゲートで遮断され一般車の走行ができない区間に入ってゴールという形になる。道が狭く、ラリー開催前までは落葉が敷き詰められていたこともあって、湿り気のある泥状のダートが続くステージだ。もう一方の「森郷」は1.31kmの林道。路面は基本的には簡易舗装が敷かれているが、路側はダートであったり、舗装の割れ目から砂が浮き出したりと、舗装とは言え、スリッピーなステージだ。両林道とも上りのステージになる。
各クルーはまず朝、レッキで2本のSSをチェックした後に、利府町役場をスタート。まず午前中のセクション1は沢乙→森郷→沢乙の順でクリアして一旦、サービスイン。午後のセクション2は森郷→沢乙と走ってフィニッシュという設定だったが、森郷の2本目となるSS4が路面悪化によりキャンセルとなったため、沢乙3本、森郷1本の計4SS、4.04kmが勝負の舞台となった。
B-1クラスは関東からも地区戦の有力ドライバーも参戦したことで14台がエントリーと、今回最大の激戦区となった。SS1沢乙はその一台でマッドなコンディションでの速さには定評のある上原利宏/郷右近孝雄組が2番手をキロ2秒近くも引き離す圧巻のベストでトップに立つ。続くSS2森郷では東北勢が奮起し、熊坂敏彦/熊坂時彦組、菊池恒博/遠藤誠組の順で1-2を獲って追撃態勢に入った。
しかしSS3沢乙ではやはり上原組が強く、菊池組を1.5秒差で振り切って、この日2度目のベスト。SS4森郷がキャンセルとなったため、最終SSとなったSS5沢乙では菊地組が最後に意地を見せて初のベストを奪うが、上原組には2.9秒届かず、2位でフィニッシュ。菊地組に2.6秒遅れた熊坂組が3位に入り、東北勢が表彰台の両脇を固める結果となった。SS4が行われていれば、また違った結果もあり得ただけに、地元勢には何ともほろ苦い一戦となった。
優勝候補の前評判通りの速さを見せて優勝した上原選手は、長く乗り続けたランサー・エボリューションⅤからエボリューションⅦに乗り換えて今回が2戦目のラリー。「SSが違いを実感できるほどの長い距離ではなかったので、まだ何とも言えないところですが、エボVだったらアンダーが出ちゃうような所も、エボⅦはフロントがスッと入ってくれるので楽にはなりました」と徐々にNEWマシンを手なづけている様子。ラリーの印象については、「いままでのラリー人生の中でも、最も難易度の高いラリーでした」と評した。
「沢乙は滑る所とグリップする所の見極めが難しく、森郷も凄く滑ったのでグリップ感が分からないまま、ゴールした感じでしたね。車速は高くないんだけど、クルマを前に出すのが本当に難しい。沢乙の3本目は何となく見えてきた感じがあったので、攻めてみたら失敗しました。距離は短いけど、自分が持っている引き出しをすべて使い切って走った感じでした」とラリーを振り返った。




8台が参加したB-2クラスは、一か月前、北海道で行われたJMRCオールスターラリーフェスティバルを制して、速さ健在をアピールした青森の小舘優貴/福田智治組のミラージュがSS1で圧巻のベスト。SS2、SS3では父親の小舘久/伴英憲組がいずれもコンマ差で食らいついたが、3本目の沢乙となるSS5では小舘優貴組が、「2本走って、走り方が分かってきた」と、それまでの自己のベストを2秒近くも縮めるタイムをマークし、小舘久組を突き離してフィニッシュ。2度目となる“親子対決”を制した。
「(オールグラベル)オールスターラリーからはちょっとセッティングを変えただけでしたが、ダートは問題なく走れたし、舗装もうまく走れたと思います。沢乙のような、砂利がなくて土だけの道というのは、今はあまりないので難しかったですけど、元々ああいう道は好きなので(笑)、楽しく走れました」と、今回も持ち前のアグレッシブな走りを見せた小舘優貴選手。グラベル育ちのラリーストには、恰好のステージだったようだ。




B-3クラスには、今年、東日本地区戦やTGRラリーチャレンジで連戦連勝の活躍を見せた細谷裕一/石垣晴恵組が栃木から遠征してきた。当然、細谷組が優勝候補本命と見られていたが、ラリーが始まると伏兵が現れる。その石倉英昭/永由元人組は、クラス中、唯一の4WD車であるヴィヴィオの強みを生かして、SS1では4.6秒も細谷組のヴィッツを突き離して、いきなり首位に躍り出る。
SS1で大きくリードを奪って逃げ切るという、いつもの“必勝パターン”を相手に許した形となった細谷ヴィッツだったが、2度目の沢乙となったSS3では2WDながら石倉ヴィヴィオに2.1秒競り勝って、石倉組を射程距離に捉える。しかしSS5では石倉組が1.2秒、細谷組を再び振り切ってゴール。トータル3.7秒差で優勝をさらった。
19年振りに復活したラリーで見事、優勝を飾った石倉選手は関東の出身。2年前の春から単身赴任で岩手県北上市に住んでいる。今年の冬に行われたCMSC岩手主催のスノートライアルに参戦し、モータースポーツスピリットに再び火が付いた。コ・ドライバーを務めたのは上原選手と並んで関東のトップラリーストとして知られる永由元人選手。若き日に、千葉の名門ラリーショップであるテンダー・モータースポーツを拠点にして、ともにラリーに勤しんでいた旧友がコ・ドライバーに名乗りを上げてくれたことで、今回の参戦を決めたという。
「TC(タイムコントロール)ラリーは初めてだったので、一か月前くらいから永由選手と準備しました。ペースノートもどうやって作ったらいいか分からなかったので、コ・ドラ任せでした(笑)。本当に久し振りのラリーだったので、最初は怖かったですけど、今日は4WDで走ったのがやっぱり勝因ですね。沢乙はスタートしてすぐに、“この道は2WDには厳しいだろうなぁ”と思いましたから」と石倉選手。「ヴィヴィオは23年前に買いましたが、手放したら二度とラリーができなくなると思ったので(笑)、ずっと維持してきて、5年くらいかけてエンジン、ミッションも自分でオーバーホールしました。やっと復活できたので、来年もまたラリーに出たいですね」と今後の参戦にも意欲を見せていた。









レポート&フォト/JAFスポーツ編集部
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