全日本ラリー第3戦飛鳥で新井大輝/立久井大輝組が待望の今季初優勝!

レポート ラリー JAFWIM

2025年5月23日

全日本ラリー選手権 第3戦の「YUHO Rally 飛鳥 Supported by トヨタユナイテッド奈良」が、5月16〜18日に奈良県内を巡る形で開催された。昨年まで、京都府北部の丹後半島を舞台に開催してきたラリーが、今年は開催地を奈良県に変更。奈良県内で全日本ラリー選手権が開催されるのは1993年に奈良県と三重県を舞台に行われた「ASUKA RALLY」以来32年ぶりで、奈良県での単独開催は今回が初となる。

2025年 JAF 全日本ラリー選手権 第3戦「YUHO Rally 飛鳥 supported by トヨタユナイテッド奈良」
開催日:2025年5月16~18日
開催地:奈良県天理市周辺
主催:SYMPHONY、OECU-AC

 ラリー初日となる17日は、奈良県中央部の山岳エリアに3本の林道ステージを、サービスを挟み2ループする6SSが設定され、ラリー最終日となる2日目は奈良県北東部に舞台を移し、8.30kmの林道SSとジムカーナでおなじみのスポーツランド名阪Cコースの特設ステージをそれぞれ2回走る4SSが設定された。2日間合わせたSS数は10SSで、SS総距離は62.88kmとなる。

 スギやヒノキなどの針葉樹が高くそびえ立つ森林地帯を縫うように走る林道は、道幅が狭いうえにタイトなコーナーが連続するセクションやアベレージが高いハイスピードセクションが入り交じるという難ステージが連続する。そのうえ、17日のレグ1は終日雨が降りウェットコンディション、18日のレグ2は雨が上がったものの、木々に覆われた路面の一部は濡れた路面が残るという難しいコンディションとなった。

奈良県天理市内にHQとサービスパークが設定された。隣接するラリーパークでは各種催し物が開催され、会場にはJAFもブースを出展。家族連れが缶バッチの作成体験やレッカー車との記念撮影などを楽しんでいた。
市役所駐車場で行われたセレモニアルスタート前には、天理高校吹奏楽部が演奏で会場を盛り上げた。スタート時には並河健天理市長らがスタートフラッグを振って競技車両を送り出した。

JN-1クラス

 JN-1クラスは、雨のSS1でベストタイムをたたき出して主導権を握った新井大輝/立久井大輝組(シュコダ・ファビアR5)が、SS2では2番時計のヘイキ・コバライネン/北川紗衣組(トヨタ・GRヤリス・ラリー2)に14.3秒差、SS3でも同じくコバライネン/北川組に9.1秒と、最初のループで早くも27.5秒のアドバンテージを築き上げた。お昼のサービスを終え、2ループに入った新井選手は「最初のループでタイム差を確保できたので、危ない箇所はマージンを取りました」と言いながらも、1ループ目のリピートステージとなるSS4、SS5、SS6でベストを連発。コバライネン/北川組との差を39.2秒差に広げ、初日を終えた。3番手には、SS3で奴田原文雄/東駿吾組(トヨタ・GRヤリス・ラリー2)をSS4でかわした勝田範彦/保井隆宏組(トヨタ・GRヤリス・ラリー2)がつけている。

 濡れた路面と乾いた路面が入り交じったラリー2日目の18日は、SS7で勝田/保井組、SS8でコバライネン/北川組がベストを奪い応酬するものの、SS9で新井/立久井組がダメ押しともいえるベストを獲得。今シーズンは2戦連続メカニカルトラブルに見舞われた新井選手が、「このクルマはどれだけタイム差があっても、最後まで何が起こるか分からないので、『頼むから最後までもってくれ』と祈るような気持ちでした」という待望の今季初優勝を飾った。2位にコバライネン/北川組、3位勝田/保井組がそれぞれ入賞した。

JN-1クラス優勝は新井大輝/立久井大輝組(YAHAGI シュコダ ファビア R5)。
2位はヘイキ・コバライネン/北川紗衣組(AICELLO速心DLヤリスRally2)、3位は勝田範彦/保井隆宏組(GR YARIS Rally2)。
JN-1クラスの暫定表彰。左から2位のコバライネン/北川組、1位の新井/立久井組、3位の勝田/保井組。

JN-2クラス

 SS1でベストを奪った山田啓介/藤井俊樹組(トヨタ・GRヤリス)がSS2でパンク、そのSS2でベストを取りトップに立った小泉敏志/村山朋香組(トヨタ・GRヤリス)が今度はSS3でコースオフして大幅に順位を下げるという大荒れの幕開けとなったJN-2クラスは、SS3でベストを奪った貝原聖也/西﨑佳代子組(トヨタ・GRヤリス)がトップに浮上。初日の最終ステージとなるSS6で左前後タイヤがリム落ちしてタイムを落とすものの、2番手の内藤学武/大高徹也組(トヨタ・GRヤリス)に31.8秒差をつけて、初日を折り返した。

 2日目に入ると、初日SS2のパンクで一時はトップと1分6秒9差のクラス16番手まで順位を落としながらも、SS4からSS6まで3連続ベストをマークしてクラス3番手まで順位を上げた山田/藤井組が一気にスパート。2日目オープニングとなるSS7のベストで内藤/大高組をかわして順位を2番手に上げると、SS9でついに貝原/西﨑組をつかまえトップに再浮上。終わってみれば、最終SSのSS10も含め、この日4SSすべてでベストを奪った山田/藤井組が、今季2勝目を飾った。「前日のSS6でのダメージが残ってしまった」と悔やむ貝原/西﨑組が2位、「危ない場面もあったのですが、とりあえず無事に帰ってくることができました」という内藤/大高組が3位となった。

JN-2クラス優勝は山田啓介/藤井俊樹組(FIT-EASYソミック石川DLGRヤリス)。
2位は貝原聖也/西﨑佳代子組(ADVICS多賀製作所K1GRヤリスDL)、3位は内藤学武/大高徹也組(YH TEIN Motys GRヤリス)。
JN-2クラスの暫定表彰。左から2位の貝原/西﨑組、1位の山田/藤井組、3位の内藤/大高組。

TOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup

JN-2クラスに組み込まれているTOYOTA GAZOO Racing MORIZO Challenge Cup(MCC)。若手ドライバーの育成を目的に実施されているサブカテゴリーだ。MCC独自のポイントで競われ、今回は前戦に続き大竹直生/橋本美咲組が1位となった(JN-2クラス6位)。

JN-3クラス

 JN-3クラスは、ドライバーとして全日本3戦目の出場となる窪啓嗣/城野真輝組(トヨタ・GR86)がSS1とSS2で連続ベストをたたき出し、この2SSだけで2番手以降を19秒以上引き離す速さをみせるが、SS3でコースオフ。ここで無念のリタイアとなった。窪/城野組の脱落によりトップに立った山本悠太/立久井和子組(トヨタ・GR86)は、「午前中のセットを外してしまったけど、午後に変更したセットは良かったです」と、SS4とSS6でベストをマーク。2番手の曽根崇仁/小川由起組(トヨタ・GR86)に22.5秒差をつけるトップで初日を終えた。

 2日目は、曽根/小川組が林道ステージのSS7とSS9でベストを奪い山本/立久井組を追いかけるものの、初日のマージンを活かした山本/立久井組がトップの座を守ってフィニッシュ。開幕から負け知らずの3連勝を果たした。2位に曽根/小川組が入賞。初日3番手につけていた下口紘輝/小林一貴組(トヨタ・GR86)はSS7でコースオフしてリタイアとなる。結果3位には、「前も後ろもタイム差があるので、2日目は無理せずに走りました」という山口清司/丸山晃助組(トヨタ・GR86)が滑り込んだ。

JN-3クラス優勝は山本悠太/立久井和子組(SammyK-oneルブロスYHGR86)。
2位は曽根崇仁/小川由起組(P.MU☆DL☆INGING☆GR86)、3位は山口清司/丸山晃助組(エナペタルADVAN久與GR86)。
JN-3クラスの暫定表彰。左から2位の曽根/小川組、1位の山本/立久井組、3位の山口/丸山組。

JN-4クラス

 JN-4クラスは、今シーズンから全日本ラリー選手権に参戦し、今回が2戦目となる若手の藤原友貴/宮本大輝組(スズキ・スイフトスポーツ)が、SS1からSS3まで3連続ベストをマーク。セクション1で、2番手の高橋悟志/箕作裕子組(スズキ・スイフトスポーツ)を早くも1分以上引き離した。「アクセルを踏んでも加速しないし、ブレーキ踏んでも止まらない。セットアップを何とかしなきゃね」とSS3後のサービスで語っていた高橋/箕作組は、サービスアウト後のSS4でベストを奪い一矢報いるものの、「絶好調です!」という藤原/宮本組がSS5とSS6でもベストを連発。高橋/箕作組とのタイム差を1分16秒4まで広げ、初日を折り返した。

 ラリー2日目に入っても藤原/宮本組の勢いは止まらず、この日すべてのSSでベストタイムをマーク。結局、10SS中9SSでベストを奪い、シリーズ参戦2戦目で全日本初優勝を飾った。2位には、「このままではダメですね。何とかしなければ」という高橋/箕作組が入賞。初日のSS3まで高橋選手とコンマ差で2番手を争っていた筒井克彦/本橋貴司組(スズキ・スイフトスポーツ)が、SS4に向かうリエゾンでハブボルトを折損してリタイアとなる。「ターマックなんだかグラベルだか分からないコンディションを楽しんでます。勉強になります」という鶴岡雄次/山岸典将組(スズキ・スイフトスポーツ)が3位を獲得した。

JN-4クラス優勝は藤原友貴/宮本大輝組(ロッソレーシング WM DL スイフト)。
2位は高橋悟志/箕作裕子組(ミツバWMDLマジカル冷機スイフト)、3位は鶴岡雄次/山岸典将組(スマッシュ梓itzzフォルテックスイフト)。
JN-4クラスの暫定表彰。左から2位の高橋/箕作組、1位のは藤原/宮本組、3位の鶴岡/山岸組。

JN-5クラス

 昨年のチャンピオン、松倉拓郎/山田真記子組(トヨタ・ヤリス)が今季初出場となったJN-5クラス。その松倉/山田組が初日をトップで折り返すものの、名阪スポーツランドに設定された特設ステージのSS8で縁石にフロントタイヤを引っかけ転倒。ここまで2番手の河本拓哉/有川大輔組(マツダ・デミオ15MB)を18.4秒引き離しながらも、まさかのリタイアとなった。「(松倉)拓郎さんが速かったですが、気持ちで負けてはいけないと思いプッシュし続けたことが、結果につながったと思います」という河本/有川組が、2番手以降を2分以上引き離し、今季2勝目を飾った。

 2位には、「ウェット路面が怖すぎて全然ダメでした。何とか攻略しなくてはいけませんね」という中溝悠太/佐々木裕一組(トヨタ・ヤリス)が入った。「松倉選手の転倒を見て、思わずすくんでしまいました。林道ステージでは松倉選手や河本選手に引き離されているので、そこは反省して改善していかなければなりませんね」という阪口知洋/野口智恵美組(日産・マーチ)が3位となった。

JN-5クラス優勝は河本拓哉/有川大輔組(DLクスコWMタカタOTS・TWRデミオ)。
2位は中溝悠太/佐々木裕一組(AQTEC KYB DLヤリス)、3位は阪口知洋/野口智恵美組(FORVIA日産自動車大学校マーチDL)。
JN-5クラスの暫定表彰。左から2位の中溝/佐々木組、1位の河本/有川組、3位の阪口/野口組。

JN-Xクラス

 JN-Xクラスは、「クルマが重くて大きいので、ちょっと抑えようと余裕を持つと、すぐにタイムが落ちてしまう。そのあたりが難しい」としながらも、初日の6SS中5SSでベストを並べた天野智之/井上裕紀子組(トヨタ・RAV4 PHEV)が、2日目もトップの座を守り切ってフィニッシュ。「リエゾンでも手を振ってくれる人が多くて、僕たちのような最後のクラスも見てくれるのもうれしいですね。バッテリーの持ちも良く、クルマもドライバーも最後まで元気に走ることができました」と、開幕から負け知らずの3連勝を飾った。

 2位には「奈良の道は適度に荒れていて、アップダウンもあるからクルマが鍛えられると思います」という清水和夫/山本磨美組(トヨタ・ヤリスHEV)が、2日目はレグ得点トップを奪う速さを見せて入賞。3位には、MT仕様のホンダ・CR-Zに乗り換えた海老原孝敬/蔭山恵組が入った。

JN-Xクラス優勝は天野智之/井上裕紀子組(TRT・DL・RAV4 PHEV)。
2位は清水和夫/山本磨美組(SYE YARIS HEV)、3位は海老原孝敬/蔭山恵組(スマッシュ DL itzz CR-Z)。
JN-Xクラスの暫定表彰。左から2位の清水/山本組、1位の天野/井上組、3位の海老原/蔭山組。

PHOTO/CINQ、大野洋介[Yousuke OHNO]、小竹充[Mitsuru KOTAKE]、中島正義[Tadayoshi NAKAJIMA]、山口貴利[Takatoshi YAMAGUCHI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/CINQ、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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