北海道ラリー第2戦RA-2は雪上のK-Car決戦を佐藤秀輝/松井浩二組アルトが制す!
2025年2月28日

2025年JAF北海道ラリー選手権は、2月16日に千歳市と安平町を舞台に開催された「第39回 EZO ENDLESS RALLY」で早くも第2戦を迎えた。シリーズ序盤にスノーラリー2戦を走り、雪解けを待つしばしの休息後にシリーズ再開するというのが北海道地区戦ではすっかりお馴染みとなったカレンダーだが、今季もその日程を継承している。
2025年JAF北海道ラリー選手権 第2戦
2025年JMRC北海道TEINラリーシリーズ第2戦
2025年XCRスプリントカップ北海道 第2戦
2025年北海道スノーチャレンジカップ第2戦
第39回EZO ENDLESS RALLY
開催日:2025年2月16日
開催地:北海道千歳市、安平町
主催:EZO
開幕第1戦の「北海道ブリザードラリー」が行われたのは2週間前。今回のラリーも、開幕戦に準じたかたちのアイテナリーが用意された。新千歳モーターランドに設定された特設SS、0.57kmの“Shin Chitose A”と0.84kmの“Shin Chitose B”を2回ずつ走行した後に、20km超のリエゾンを移動。2.43kmの林道SS“Kasuga”を2回走って新千歳に戻ってフィニッシュという設定だ。
Kasugaは2023シーズンのブリザードラリーで初めて使用されたステージで、このラリーでは一昨季以来2度目の使用となる。距離が短いながらも北欧でのラリーを彷彿とさせる高速ステージで、北海道ラリー最速のRA-1クラス上位車両のアベレージスピードは90km/hを超えた。
開幕戦は雪不足に悩まされたKasugaだが、今回のラリーでは雪が薄く積もった状態からスタート。敢えて除雪しなかった路面はレッキで踏み固められもしたが雨が降り出したこともあり、積もった雪の一部がシャーベット状となるなど、なかなか手ごわい路面となった。
2025年JAF北海道ラリー選手権 第2戦
2025年JMRC北海道TEINラリーシリーズ第2戦
RA-1クラス
11台によるバトルとなったRA-1クラスは、関根正人/松川萌子組がSS1“Shin Chitose A-1”で、近藤拓/川名賢組に1.8秒差をつけるベストタイムをマーク。続くSS2“Shin Chitose B-1”でも連続ベストを奪い、幸先良いスタートを切る。
2ループ目のSS3“Shin Chitose A-2”では近藤/川名組が、SS4“Shin Chitose B-2”では和氣嵩暁/高橋和多利組がそれぞれベストであがって関根/松川組との差を詰めるが、Kasugaの2本を前に関根/松川組は和氣/高橋組に1.6秒、近藤/川名組には2.4秒のマージンをつくってラリーを折り返した。
しかしながら、ディフェンディングチャンピオンゆえに1番ゼッケンでSS5“Kasuga 1”に臨んだ関根/松川組は雪掻き役を強いられて失速。クラス5番手タイムに沈んでしまう。一方、ベストを奪ったのは和氣/高橋組で、2番手タイムの近藤/川名組に2.1秒差をつける圧巻の走りを見せる。
和氣/髙橋組は最終SS6“Kasuga 2”でも後続を2秒以上も引き離す走りでリードを拡大。近藤/川名組を6.7秒差で下して開幕戦に続く優勝を飾った。関根/松川組はSS6で近藤/川名組を0.4秒上回ったものの、SS5でのタイムロスが響いて0.5秒落ちの3位でフィニッシュした。
開幕二連勝達成の和氣選手は、「林道は雪が溶けていて一部は地の路面が出ているところもあっったので、どうなるんだろうと思いながら走りましたが、なぜかタイムが出ましたね。滑りやすかったけど、横向けて踏んでいくと意外と進んでいく感じがする路面でした。開幕戦の走りをふまえてセッティングを変えたことも、タイムにつながったかもしれません」と勝因を自己分析した。
更に「昨年のスノーラリーの最終SSでスピンしたのが、ちょっとトラウマになってたんですけど(笑)、開幕戦で勝てたことで消えてくれたので、今日は変なプレッシャーもなく走れました」とも振り返った和氣選手は、就職で北海道を離れて現在は兵庫県在住。だが、「今年は1戦スキップしますが、5戦は出てチャンピオンを狙います。この二連勝でちょっと楽になりました」と二季ぶりの王座奪還を宣言した。



RA-2クラス
9台が参戦したRA-2クラスは、開幕戦でも新千歳で速さを見せていた佐藤秀輝/松井浩二組のHB21S型スズキ・アルトワークスRS/Zが今回のラリーでもSS1・2を連取するが、SS3でタイムロス。前戦を制した谷岡一幸/岸田勇人組のスバル・ヴィヴィオRX-Rがその隙を突いて首位を奪取して2秒、佐藤/松井組をリードしてKasugaの2SSに移った。
谷岡/岸田組はSS5でも佐藤/松井組を0.2秒差で下して僅かながらもリードを広げて最終SSに臨んだが、フィニッシュからふたつ手前の右コーナーでイン側の雪壁に乗り上げてしまいタイムロス。それでも谷岡/岸田組はSS5よりもタイムを上げて終えるが、佐藤/松井組は更に3.2秒上回るタイムでフィニッシュ。結果、1秒差で谷岡/岸田組を逆転して優勝をさらった。
林道ステージでタイムを大きく落とした開幕戦の反省を活かして今回は無理をしなかった、とも語った佐藤選手は「開幕戦よりも難しい路面でしたが、最終SSは気負うことなくスムーズに走れました。今年、4年ぶりにラリーに復活したので自分の走りが今どの辺にあるのか、をまだ手探りしている段階です。ラリー勘は若干戻ってきたな、という感じですね(笑)」と復帰直後で本調子ではなさそうな中でも速さを見せた。
実は佐藤選手と谷岡選手、4WDの軽自動車を愛機とする宿命のライバルとして長く戦ってきた相手でもある。「悔しいけど、(佐藤選手が)帰ってきてくれたのは嬉しい限りです」と、谷岡選手は語った。ただしヴィヴィオはもうボディが限界にきているため、新たにつくり直すことを現在、検討中とのこと。「何とか夏のシーズンが始まるまでにはつくって、今度はグラベルで勝負したいですね」と、リベンジを誓っていた。



RA-3クラス
RA-3クラスは6台が出走したが、新千歳から僅差のバトルが勃発。SS3では6台全車が1.9秒の間にひしめくという大接戦となったが、そこから抜け出したのが序盤の2SSを連取した藤澤和弘/坂井理崇組が駆るNCP91型トヨタ・ヴィッツと、ダイハツ・ストーリアを操る三橋清哉/宗片さおり組の2クルーだった。
ドライバーの藤澤選手は一昨季、ブリザードラリーのKasugaで速さを見せてRA-1を制した実力者。しかし、今季から車両をその時も駆っていたGDB型スバル・インプレッサWRX STIから、ラリー人生初となる前輪駆動のヴィッツにスイッチ。それでも開幕戦では見事、新車両でのデビューウィンを飾っている。
一方のドライバー、三橋選手はダートトライアル出身の若手で24歳。ラリーデビューとなった開幕戦でいきなり3位に入って注目を集めた。今回のラリーでは新千歳でベスト1本、セカンドベスト3本と安定した速さを見せ、0.6秒差で藤澤/坂井組を抑え込みトップでKasugaの2本に臨んだ。
だが、1本目のSS5では藤澤/坂井組が1.9秒、三橋/宗片組を上回って逆転。SS6でも0.6秒差で三橋/宗片組を下し、トータル1.9秒差で逃げ切った。開幕二連勝達成の藤澤選手は、「林道はパワー的にはキツかったですけど、ヴィッツも2戦目ということで、クルマとも仲良くなれて楽しく走れました」と一言。
加えて「以前からついていたグラベル仕様の足回りのままで走りましたが、このままではちょっと厳しいと思うので、しっかり煮詰めてグラベル戦に備えたいですね」と、今季に向けた意気込みも語った。
敗れた三橋選手は、「変化に富んだ路面を走れて楽しかったですが、開幕戦と一緒で林道の1本目で路面の見極めができず、遅かった。初見の道でも最初から速く走れるように、経験を積んでいきたいです」と若手らしいコメントを残した。
このクラス、結果的には藤澤/坂井組が開幕二連勝を果たしたが、今回のラリーでは6SS中5SSで異なるクルーがベストをマークした。グラベルラウンドに入っても、混戦のクラスとなりそうだ。


RA-4クラス、ジュニアRA-2クラス、ジュニアRA-3クラス、OPENクラス
RA-4クラスは2021シーズン以来となる北海道でのスノーラリー参戦となった、関東から遠征してきた室田仁/鎌田雅樹組が、乙供邦彦/中村朝子組との一騎討ちを制して優勝。グラベルラウンドに向けて弾みをつける一勝をもぎ取っている。
なお、地区戦と今季も併催となる2025年JMRC北海道TEINラリーシリーズのジュニアクラスでは、ジュニアRA-2クラスで村山隆太/山口昌洋組が駆る三菱・ミラージュが、ジュニアRA-3クラスはダイハツ・エッセを操る島田勝正/佐竹尚子組が、それぞれ完走を果たした。またOPENクラスでは、渡部康太/伊藤貴弘組がスズキ・スイフトスポーツをフィニッシュまで運んだ。




2025年北海道スノーチャレンジカップ第2戦
CL-AWDクラス、CL-2WDクラス
冬のみ開催される2025年北海道スノーチャレンジカップの第2戦も併催された。昨季は単独での開催も含め3戦が行われたこのシリーズだが、今季は今回のラリーが最終戦となる。駆動方式で分けられた2つのクラスに、開幕第1戦を8台上回る22台が参戦し、賑わいを見せた。
スノーチャレンジカップについてはKasugaでのSSはなし。地区戦とまったく同じ設定の新千歳内での4SSで勝敗を決した。CL-AWDクラスは、SS2で後続を1.7秒も引き離す快走を見せた辻祥汰/渡邉雪斗組のHA23S型アルトが、3本のSSでベストを奪う快走でトップフィニッシュした。
僅差のバトルとなった2位争いは、最終のSS4をサードベストで上がった野島優樹/其田陸登組が平岡宗洋/吉岡英樹組を0.6秒、逆転して制した。またCL-2WDクラスではSS1・2を連取した竹田慎一郎/菊田耕平組のNCP13型ヴィッツが、最後までライバルたちを抑え込んでトップに立った。





2025年XCRスプリントカップ北海道 第2戦
XC-2クラス
4シーズン目を迎えるXCRスプリントカップ北海道も、地区戦の開幕に併せて今季のシリーズがスタート。今回のラリーで第2戦を迎えた。今季も全6戦が組まれるが、内2戦は例年どおり、北海道で開催される2025年JAF全日本ラリー選手権のグラベルラウンドとの併催となる。
開幕第1戦では海外からの参戦もあって賑わったXC-2クラスは、昨季もシリーズを追った3台によるバトルとなったが、番場彬/藤田めぐみ組が駆るトヨタ・ハイラックスが6本のSSを完全制圧して開幕戦に続く勝利を飾った。
過去二季はスノーラリーをパスしてグラベルラウンド初戦の第3戦から参戦してきた番場選手だが、「昨年も、ライバルの不運などに助けられて獲れたという側面もあったので、今年はしっかりと初めからシリーズを追ってタイトルを狙っていきたいんです」とのことで、フル参戦の予定だ。
Kasugaでは開幕戦よりタイムを落としたが、「今日のような水を含んだ雪は重たいクルマには厳しくて、特に下りのブレーキングは全然止まらなかった。久々に難しい路面でした」と、苦戦を強いられたことを明かした。
更に「自分自身、まだスノーラリーは通算でも5戦目なので、自分の引き出しを増やすことにも繋がった一戦でした。夏が来ればまた強力なライバルも出てくると思うので、この優勝で弾みをつけていきたいと思います」と、王座防衛に自信を覗かせた。
なおXC-2では、番場/藤田組のチームメイトでもある参戦二季目のドライバー、羽根田琴選手とコ・ドライバーの鈴木博選手が操るハイラックスが、昨季ドライバーランキング2位の浅井明幸選手とコ・ドライバーの古川和樹選手がドライブする三菱・エクリプスクロスPHEVをしのぐ速さを見せて、過去最上位となる2位を獲得した。


XC-3クラス、XC-1クラス
XC-3クラスは開幕戦から1台増えて5台によるバトルとなったが、トヨタ・ライズを駆った昨季のドライバーチャンピオン、塙郁夫選手は引き続き不在。スズキ・ジムニー/ジムニーシエラ勢が3台で最多車種となり、ライズと兄弟車のダイハツ・ロッキーが1台ずつという顔ぶれとなった。
開幕戦では昨季、塙選手に土をつけた唯一の一台となった奈良裕/花田圭一組が操るジムニーが優勝したが、今回のラリーは新千歳で苦戦。奈良/花田組はSS2で大きく遅れたことが響き、トップで折り返した相原泰祐/上原あずみ組がドライブするロッキーに6.1秒のビハインドを背負ってしまう。
Kasugaで逆転を期した奈良/花田組だったが、RA-2の谷岡/岸田組が雪壁に乗り上げた右コーナーで、インを巻き込んでハーフスピンを喫してタイムロスしてしまう。しかし、これで勝利安泰かと思われた相原/上原組のロッキーもCVTが不調となり、ここでベストを奪った前戦2位でジムニーシエラを駆る藤野秀之/玉城詩菜組が0.7秒差まで詰め寄ることに。勢いに乗る藤野/玉城組はSS6でも相原/上原組に5.3秒差をつけるベストでフィニッシュ。XCR参戦3戦目でシリーズ初優勝を果たした。
「林道は前回と全然コンディションが違って怖かったですけど(笑)、その中で前回よりタイムを上げられたのはセッティングがある程度決まってきて、コントロールしやすいクルマになったことが大きいですね」と藤野選手は分析した。言わずと知れたJAF 日本ドリフト選手権D1グランプリシリーズのトップドライバーだが、「ようやく自分もコ・ドライバーもラリーに慣れてきました(笑)。ペースノートも問題なかったです」と、XCR初優勝を振り返った。
藤野選手は続けて「ラリーやダートラの経験は全くないんですけど、元々滑る道を走るのは好きだったので、ラリーも楽しくなってきました(笑)。ただ、まだまだやるべきことは多いので、次戦までにさらに煮詰めていきたいですね」と意気込む。今季はD1と重なるラリーを欠場するため取りこぼしができない一年となるが、チャンピオンを見据えていた。
なおXC-1クラスは1台のみの参戦となったが、今季もトヨタ・ランドクルーザーを持ち込んだ惣田政樹/猿川仁組が開幕戦に続いて完走を果たした。




フォト/田代康、JMRC北海道 レポート/田代康、JAFスポーツ編集部
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